411 / 657
獣人国
第二王子の出迎え
しおりを挟む
「たくっ……仕方ないね、全員下がれ!!ゆっくりと距離を取るんだ。こいつはあたしが何とかする!!」
「何とかって……どうするつもりですか?」
「そんなのあたしが知りたいぐらいだよ」
兵士達を下がらせてトラネコは武器を構ながら牙竜の元へ向かい、様子を観察する。牙竜は自分の元へ近寄るトラネコを見ても特に反応は示さず、黙って見つめる。
(こいつ……あたし達を食べるつもりはなさそうだけど、油断は出来ない)
牙竜がその気になれば200人程度の兵士など簡単に蹴散らすことが出来るだろうが、それをせずに黙って観察するように様子を伺う時点でトラネコは牙竜が何者かに命じられているのではないかと考えた。そうでなければ獰猛な牙竜がわざわざ人間を襲わないわけがない。
意を決したトラネコは大剣を背中に戻して両手を上げて牙竜に近付き、敵意が無い事を示しながら話しかけようとする。彼女の行動に兵士達に緊張が走るが、牙竜は反応を示さない。
「あははっ……どうも?」
「ガアッ……」
愛想笑いを浮かべながらトラネコが話しかけても牙竜は面倒そうに一瞥しただけですぐに身体を休ませ、何かを気にするように上空を見上げる。その行為に不思議に思ったトラネコは空を見上げると、こちらに向けて接近する氷の物体を発見した。
「何だありゃ!?」
「と、飛んでいる!?」
「あれは……乗り物なのか!?」
空を移動する氷の自動車を発見したトラネコ達は驚愕し、彼女達と同様に存在に気付いたガウも驚きの表情を浮かべ、やがて自動車が牙竜の前に着地すると内部から大勢の人間が出現した。
「ガウ様!!ご無事ですか!?」
「こ、コネコ将軍!?」
「うぷっ……やはり、この乗り物は好かん」
「ガオン将軍も!?」
最初に扉を開いて現れたのは血相を変えてガウの元へ向かうコネコと、外に出た瞬間に吐き気を催してその場に跪くガオンだった。続いてルノとリディアも後に続き、最後にワン子と彼女の父親も出る。
「ガウ様、お怪我はありませんか!?」
「あ、ああっ……どうにかな」
「ちょっとちょっと……コネコさん、一体どういう事ですか?何があったんですか?」
「……それは後で説明します。その前に皆に怪我をしている者は治療を行いなさい」
ガウの無事を確かめたコネコは安堵の表情を浮かべると、ルノに振り返って頷き、氷自動車のトランクを開いて木箱に詰め込まれた回復薬の配布を行う。
「じゃあ、怪我をした人はこちらに集まってください。回復薬は十分にあるので安心してください」
「か、かたじけない……」
「ありがとうございます……」
赤毛熊の襲撃を受けて怪我をした兵士達の治療が開始され、街から運んできた回復薬を受け取り、負傷人の治療を行う。全員の治療を行う間にコネコはガウに何が起きたのかを説明し、無事に交渉が成立した事を話す。
「ガウ王子、こうして顔を合わせるのは久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
「おお、ガオン将軍!!貴方も無事だったのか……だが、噂では獣人国軍と激しい戦闘を繰り広げたと聞いていたが」
「うむ。その事に関してだがまずは紹介したい者達がいる。おい、こっちに来てくれ!!」
ガオンがルノ達を呼びかけると全員が集まり、ガウは現れた4人に疑問を抱くが、まずガオンはワン子と彼女の養父の紹介を行う。
「ガウ王子、ご紹介しよう。貴方の妹に当たるワン子様です」
「わぅんっ!!」
「い、妹!?それにワン子って……私の妹はこんなに小さくはないぞ!?」
「ガウ王子、まずはガオン様のお話を聞いて下さい」
唐突に妹と紹介されたガウは混乱を隠せず、確かに彼には「ワン子」という妹は存在するが目の前に養父に抱えられている小さな女の子は見覚えがなく、そもそも本当の妹は日の国に避難させている。そんな彼にガオンから話を伺っていたコネコが代わりに説明する。
「ガウ様、驚くのも無理はないでしょうがこの御方は本当にガウ様の妹なのです。先ほど、王家の証であるペンダントも確認しました」
「そんなバカな!?私の知る妹は一人だけだぞ!?」
「実は国王様には隠し子が存在したのです。実は――」
――コネコが国王に隠し子が存在した事、王家のしきたりでワン子は一般人として育てられたことを知り、ガウは動揺を隠せなかったが将軍であるガオンとコネコの言葉に彼は自分にもう一人の妹が居た事を理解して激しく動揺した。
「まさか父上に隠し子が居たとは……だが、確かにお前の顔にも見覚えがある。お前は元々は貴族だったな?」
「はい、お久しぶりでございます王子様」
「それにこの子も妹の面影がある……小さい頃の妹とそっくりだ」
「くぅんっ」
ワン子の養父はガウ王子とも面識があり、日の国に避難した第一王女の面影があるワン子を見てガウは彼女が本当に自分の妹である事を確信する。
※タイトルを変更しました。
「何とかって……どうするつもりですか?」
「そんなのあたしが知りたいぐらいだよ」
兵士達を下がらせてトラネコは武器を構ながら牙竜の元へ向かい、様子を観察する。牙竜は自分の元へ近寄るトラネコを見ても特に反応は示さず、黙って見つめる。
(こいつ……あたし達を食べるつもりはなさそうだけど、油断は出来ない)
牙竜がその気になれば200人程度の兵士など簡単に蹴散らすことが出来るだろうが、それをせずに黙って観察するように様子を伺う時点でトラネコは牙竜が何者かに命じられているのではないかと考えた。そうでなければ獰猛な牙竜がわざわざ人間を襲わないわけがない。
意を決したトラネコは大剣を背中に戻して両手を上げて牙竜に近付き、敵意が無い事を示しながら話しかけようとする。彼女の行動に兵士達に緊張が走るが、牙竜は反応を示さない。
「あははっ……どうも?」
「ガアッ……」
愛想笑いを浮かべながらトラネコが話しかけても牙竜は面倒そうに一瞥しただけですぐに身体を休ませ、何かを気にするように上空を見上げる。その行為に不思議に思ったトラネコは空を見上げると、こちらに向けて接近する氷の物体を発見した。
「何だありゃ!?」
「と、飛んでいる!?」
「あれは……乗り物なのか!?」
空を移動する氷の自動車を発見したトラネコ達は驚愕し、彼女達と同様に存在に気付いたガウも驚きの表情を浮かべ、やがて自動車が牙竜の前に着地すると内部から大勢の人間が出現した。
「ガウ様!!ご無事ですか!?」
「こ、コネコ将軍!?」
「うぷっ……やはり、この乗り物は好かん」
「ガオン将軍も!?」
最初に扉を開いて現れたのは血相を変えてガウの元へ向かうコネコと、外に出た瞬間に吐き気を催してその場に跪くガオンだった。続いてルノとリディアも後に続き、最後にワン子と彼女の父親も出る。
「ガウ様、お怪我はありませんか!?」
「あ、ああっ……どうにかな」
「ちょっとちょっと……コネコさん、一体どういう事ですか?何があったんですか?」
「……それは後で説明します。その前に皆に怪我をしている者は治療を行いなさい」
ガウの無事を確かめたコネコは安堵の表情を浮かべると、ルノに振り返って頷き、氷自動車のトランクを開いて木箱に詰め込まれた回復薬の配布を行う。
「じゃあ、怪我をした人はこちらに集まってください。回復薬は十分にあるので安心してください」
「か、かたじけない……」
「ありがとうございます……」
赤毛熊の襲撃を受けて怪我をした兵士達の治療が開始され、街から運んできた回復薬を受け取り、負傷人の治療を行う。全員の治療を行う間にコネコはガウに何が起きたのかを説明し、無事に交渉が成立した事を話す。
「ガウ王子、こうして顔を合わせるのは久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
「おお、ガオン将軍!!貴方も無事だったのか……だが、噂では獣人国軍と激しい戦闘を繰り広げたと聞いていたが」
「うむ。その事に関してだがまずは紹介したい者達がいる。おい、こっちに来てくれ!!」
ガオンがルノ達を呼びかけると全員が集まり、ガウは現れた4人に疑問を抱くが、まずガオンはワン子と彼女の養父の紹介を行う。
「ガウ王子、ご紹介しよう。貴方の妹に当たるワン子様です」
「わぅんっ!!」
「い、妹!?それにワン子って……私の妹はこんなに小さくはないぞ!?」
「ガウ王子、まずはガオン様のお話を聞いて下さい」
唐突に妹と紹介されたガウは混乱を隠せず、確かに彼には「ワン子」という妹は存在するが目の前に養父に抱えられている小さな女の子は見覚えがなく、そもそも本当の妹は日の国に避難させている。そんな彼にガオンから話を伺っていたコネコが代わりに説明する。
「ガウ様、驚くのも無理はないでしょうがこの御方は本当にガウ様の妹なのです。先ほど、王家の証であるペンダントも確認しました」
「そんなバカな!?私の知る妹は一人だけだぞ!?」
「実は国王様には隠し子が存在したのです。実は――」
――コネコが国王に隠し子が存在した事、王家のしきたりでワン子は一般人として育てられたことを知り、ガウは動揺を隠せなかったが将軍であるガオンとコネコの言葉に彼は自分にもう一人の妹が居た事を理解して激しく動揺した。
「まさか父上に隠し子が居たとは……だが、確かにお前の顔にも見覚えがある。お前は元々は貴族だったな?」
「はい、お久しぶりでございます王子様」
「それにこの子も妹の面影がある……小さい頃の妹とそっくりだ」
「くぅんっ」
ワン子の養父はガウ王子とも面識があり、日の国に避難した第一王女の面影があるワン子を見てガウは彼女が本当に自分の妹である事を確信する。
※タイトルを変更しました。
0
お気に入りに追加
11,323
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。