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獣人国

第二王子の出迎え

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「たくっ……仕方ないね、全員下がれ!!ゆっくりと距離を取るんだ。こいつはあたしが何とかする!!」
「何とかって……どうするつもりですか?」
「そんなのあたしが知りたいぐらいだよ」


兵士達を下がらせてトラネコは武器を構ながら牙竜の元へ向かい、様子を観察する。牙竜は自分の元へ近寄るトラネコを見ても特に反応は示さず、黙って見つめる。


(こいつ……あたし達を食べるつもりはなさそうだけど、油断は出来ない)


牙竜がその気になれば200人程度の兵士など簡単に蹴散らすことが出来るだろうが、それをせずに黙って観察するように様子を伺う時点でトラネコは牙竜が何者かに命じられているのではないかと考えた。そうでなければ獰猛な牙竜がわざわざ人間を襲わないわけがない。

意を決したトラネコは大剣を背中に戻して両手を上げて牙竜に近付き、敵意が無い事を示しながら話しかけようとする。彼女の行動に兵士達に緊張が走るが、牙竜は反応を示さない。


「あははっ……どうも?」
「ガアッ……」


愛想笑いを浮かべながらトラネコが話しかけても牙竜は面倒そうに一瞥しただけですぐに身体を休ませ、何かを気にするように上空を見上げる。その行為に不思議に思ったトラネコは空を見上げると、こちらに向けて接近する氷の物体を発見した。


「何だありゃ!?」
「と、飛んでいる!?」
「あれは……乗り物なのか!?」


空を移動する氷の自動車を発見したトラネコ達は驚愕し、彼女達と同様に存在に気付いたガウも驚きの表情を浮かべ、やがて自動車が牙竜の前に着地すると内部から大勢の人間が出現した。


「ガウ様!!ご無事ですか!?」
「こ、コネコ将軍!?」
「うぷっ……やはり、この乗り物は好かん」
「ガオン将軍も!?」


最初に扉を開いて現れたのは血相を変えてガウの元へ向かうコネコと、外に出た瞬間に吐き気を催してその場に跪くガオンだった。続いてルノとリディアも後に続き、最後にワン子と彼女の父親も出る。


「ガウ様、お怪我はありませんか!?」
「あ、ああっ……どうにかな」
「ちょっとちょっと……コネコさん、一体どういう事ですか?何があったんですか?」
「……それは後で説明します。その前に皆に怪我をしている者は治療を行いなさい」


ガウの無事を確かめたコネコは安堵の表情を浮かべると、ルノに振り返って頷き、氷自動車のトランクを開いて木箱に詰め込まれた回復薬の配布を行う。


「じゃあ、怪我をした人はこちらに集まってください。回復薬は十分にあるので安心してください」
「か、かたじけない……」
「ありがとうございます……」


赤毛熊の襲撃を受けて怪我をした兵士達の治療が開始され、街から運んできた回復薬を受け取り、負傷人の治療を行う。全員の治療を行う間にコネコはガウに何が起きたのかを説明し、無事に交渉が成立した事を話す。


「ガウ王子、こうして顔を合わせるのは久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
「おお、ガオン将軍!!貴方も無事だったのか……だが、噂では獣人国軍と激しい戦闘を繰り広げたと聞いていたが」
「うむ。その事に関してだがまずは紹介したい者達がいる。おい、こっちに来てくれ!!」


ガオンがルノ達を呼びかけると全員が集まり、ガウは現れた4人に疑問を抱くが、まずガオンはワン子と彼女の養父の紹介を行う。


「ガウ王子、ご紹介しよう。貴方の妹に当たるワン子様です」
「わぅんっ!!」
「い、妹!?それにワン子って……私の妹はこんなに小さくはないぞ!?」
「ガウ王子、まずはガオン様のお話を聞いて下さい」


唐突に妹と紹介されたガウは混乱を隠せず、確かに彼には「ワン子」という妹は存在するが目の前に養父に抱えられている小さな女の子は見覚えがなく、そもそも本当の妹は日の国に避難させている。そんな彼にガオンから話を伺っていたコネコが代わりに説明する。


「ガウ様、驚くのも無理はないでしょうがこの御方は本当にガウ様の妹なのです。先ほど、王家の証であるペンダントも確認しました」
「そんなバカな!?私の知る妹は一人だけだぞ!?」
「実は国王様には隠し子が存在したのです。実は――」



――コネコが国王に隠し子が存在した事、王家のしきたりでワン子は一般人として育てられたことを知り、ガウは動揺を隠せなかったが将軍であるガオンとコネコの言葉に彼は自分にもう一人の妹が居た事を理解して激しく動揺した。


「まさか父上に隠し子が居たとは……だが、確かにお前の顔にも見覚えがある。お前は元々は貴族だったな?」
「はい、お久しぶりでございます王子様」
「それにこの子も妹の面影がある……小さい頃の妹とそっくりだ」
「くぅんっ」


ワン子の養父はガウ王子とも面識があり、日の国に避難した第一王女の面影があるワン子を見てガウは彼女が本当に自分の妹である事を確信する。



※タイトルを変更しました。
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