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獣人国
牙竜VS赤毛熊
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「ウガアアッ……!?」
「グガァアアアッ!!」
牙竜は赤毛熊の死骸から離れると、今度は兵士達と戦闘している残りの2体に視線を向け、樹木を破壊しながら突進する。唐突に出現した牙竜に兵士達は戸惑い、慌ててその場を離れた。
「牙竜だとっ!?退避、退避しろ!!」
「なんでこんな森の中に……うわぁっ!?」
「ガアアッ!!」
赤毛熊との戦闘を中断して兵士達は牙竜に道を開くと、牙竜は近くに存在した赤毛熊の肩に食らいつき、押し倒す。必死に赤毛熊は逃れようとしたが、下位とはいえ竜種である牙竜の力に敵わず食い千切られる。
「グガァッ!!」
「ガァアッ!?」
「ウガァッ!!」
仲間の肩を食い千切った牙竜に対してもう1体の赤毛熊が怒ったように後ろから飛び掛かり、牙竜の首元を掴む。必死に仲間を救うために牙竜を引き剥がそうとするが、自分の首を絞めつける赤毛熊に対して牙竜は尻尾を振り回して顔面を叩く。
「グガァッ!!」
「ガウッ!?」
顔面に強烈な一撃を受けた救出に向かった赤毛熊は怯んでしまい、その間にも牙竜は肩を食い千切った赤毛熊に対して牙を剥け、今度は容赦なく喉元へ食らいついた。
「アガァアアアッ!!」
「アアアアッ!?」
「うえっ……酷いな」
喉の肉を食いちぎられた赤毛熊の悲鳴が森中に響き渡り、その光景を間近で目撃したトラネコは顔をしかめ、大量の出血をしながら赤毛熊が地面に倒れ込むのを目撃する。食い千切った肉を咀嚼しながら牙竜は自分の背中から離れた最後の赤毛熊に視線を向けると、体当たりを仕掛けて近くの樹木に衝突させた。
「グガァアアッ!!」
「アウッ!?」
体当たりをまともに受けた赤毛熊は樹木に衝突して血反吐を吐き、このままでは殺されると判断して痛みを堪えて逃げようとするが、牙竜は隙だらけの獲物を逃すはずがなく背後から赤毛熊の頭部を掴んで地面に叩きつけた。
「ガアアアッ!!」
「ギャウッ!?」
逃げる隙も与えずに赤毛熊は取り抑えられ、右前脚で抑え込みながら牙竜は口元を開き、顎が外れるほどに開いた口で今度は腕に噛みつこうとした。だが、牙が触れる寸前で動作を停止させ、何かに気づいたように牙竜は洞窟に視線を向ける。
攻撃を中断した牙竜を見て周囲で様子を伺っていた兵士達は疑問を抱き、牙竜が何かに気付いたのかと全員が洞窟に視線を向けると、洞窟の奥から小柄の赤毛熊が出現して牙竜の元へ向かう。
「ガウガウッ!!」
「ッ……!?」
体長がまだ2メートルにも満たない小柄な赤毛熊は牙竜の元へ向かい、左前脚に食らいつく。しかし、頑丈な皮膚に覆われている牙竜の肉体には子供の赤毛熊では傷を与える事も出来ず、煩わしそうに牙竜が軽く突き飛ばすと赤毛熊は地面に転がる。
「ギャうッ……!?」
「ガアアアアアッ!!」
地面に倒れた子供の赤毛熊に対して牙竜は咆哮を放つと、子供の赤毛熊は怯えたように身体を震わせるが、それでも牙竜に抑えつけられている母親の赤毛熊を見て勇気を振り絞るように指先に噛みつく。
「ガウッ!!」
「グギィッ……!?」
「ガアッ……ウガァッ!!」
牙竜の指先に噛みついた子供の赤毛熊を見て抑えつけられている母親熊は逃げるように鳴き声を上げるが、子供は意地でも母親熊を助けるために牙竜に食らいつく。そんな子供を見て牙竜は何かを考え込むように視線を向け、ゆっくりと右前脚を退かして赤毛熊を解放した。
「ガアッ!!」
「ウガァッ……!?」
「ギャンッ!?」
「……見逃した?」
牙竜が母親熊と子供を解放した姿を見て兵士達は動揺し、どんな相手であろうと情け容赦なく蹂躙する存在として恐れられている牙竜が自分と敵対する赤毛熊を解放した姿を見て驚きを隠せない。それは開放された赤毛熊の母子も同じらしく、母親熊は子供を咥えると慌てて洞窟の奥へ避難した。
2体の赤毛熊が洞窟に戻った事を確認すると、牙竜は少しつまらなそうに首を振り、やがて自分の周囲に存在する兵士達に視線を向ける。赤毛熊が消えた事で今度は自分達に襲い掛かるつもりなのかと兵士は身構えるが、予想に反して牙竜は観察するように兵士達の様子を伺う。
「…………」
「ふ、副団長……どうしますか?」
「どうするも何も逃げるしかないだろ。流石にこんな化物を相手に勝てるはずがないからね……けど、こいつさっきから動く気配がないのが気になるね」
「もしかして我々を助けたのでは……?」
「馬鹿な、牙竜が人間を助けるなど有り得ない!!」
「だが、実際に我々を襲っていた赤毛熊を撃退してくれたんだぞ?もしかしたら……」
一向に襲い掛かる様子がない牙竜を見て兵士達は混乱を引き起こし、状況的に考えれば牙竜が赤毛熊を撃退した事で兵士達は命拾いした事になるのだが、やはり相手が竜種という時点で警戒を解くことが出来ず、判断に困った兵士達はこの場の指揮官であるトラネコに指示を仰ぐ。
「グガァアアアッ!!」
牙竜は赤毛熊の死骸から離れると、今度は兵士達と戦闘している残りの2体に視線を向け、樹木を破壊しながら突進する。唐突に出現した牙竜に兵士達は戸惑い、慌ててその場を離れた。
「牙竜だとっ!?退避、退避しろ!!」
「なんでこんな森の中に……うわぁっ!?」
「ガアアッ!!」
赤毛熊との戦闘を中断して兵士達は牙竜に道を開くと、牙竜は近くに存在した赤毛熊の肩に食らいつき、押し倒す。必死に赤毛熊は逃れようとしたが、下位とはいえ竜種である牙竜の力に敵わず食い千切られる。
「グガァッ!!」
「ガァアッ!?」
「ウガァッ!!」
仲間の肩を食い千切った牙竜に対してもう1体の赤毛熊が怒ったように後ろから飛び掛かり、牙竜の首元を掴む。必死に仲間を救うために牙竜を引き剥がそうとするが、自分の首を絞めつける赤毛熊に対して牙竜は尻尾を振り回して顔面を叩く。
「グガァッ!!」
「ガウッ!?」
顔面に強烈な一撃を受けた救出に向かった赤毛熊は怯んでしまい、その間にも牙竜は肩を食い千切った赤毛熊に対して牙を剥け、今度は容赦なく喉元へ食らいついた。
「アガァアアアッ!!」
「アアアアッ!?」
「うえっ……酷いな」
喉の肉を食いちぎられた赤毛熊の悲鳴が森中に響き渡り、その光景を間近で目撃したトラネコは顔をしかめ、大量の出血をしながら赤毛熊が地面に倒れ込むのを目撃する。食い千切った肉を咀嚼しながら牙竜は自分の背中から離れた最後の赤毛熊に視線を向けると、体当たりを仕掛けて近くの樹木に衝突させた。
「グガァアアッ!!」
「アウッ!?」
体当たりをまともに受けた赤毛熊は樹木に衝突して血反吐を吐き、このままでは殺されると判断して痛みを堪えて逃げようとするが、牙竜は隙だらけの獲物を逃すはずがなく背後から赤毛熊の頭部を掴んで地面に叩きつけた。
「ガアアアッ!!」
「ギャウッ!?」
逃げる隙も与えずに赤毛熊は取り抑えられ、右前脚で抑え込みながら牙竜は口元を開き、顎が外れるほどに開いた口で今度は腕に噛みつこうとした。だが、牙が触れる寸前で動作を停止させ、何かに気づいたように牙竜は洞窟に視線を向ける。
攻撃を中断した牙竜を見て周囲で様子を伺っていた兵士達は疑問を抱き、牙竜が何かに気付いたのかと全員が洞窟に視線を向けると、洞窟の奥から小柄の赤毛熊が出現して牙竜の元へ向かう。
「ガウガウッ!!」
「ッ……!?」
体長がまだ2メートルにも満たない小柄な赤毛熊は牙竜の元へ向かい、左前脚に食らいつく。しかし、頑丈な皮膚に覆われている牙竜の肉体には子供の赤毛熊では傷を与える事も出来ず、煩わしそうに牙竜が軽く突き飛ばすと赤毛熊は地面に転がる。
「ギャうッ……!?」
「ガアアアアアッ!!」
地面に倒れた子供の赤毛熊に対して牙竜は咆哮を放つと、子供の赤毛熊は怯えたように身体を震わせるが、それでも牙竜に抑えつけられている母親の赤毛熊を見て勇気を振り絞るように指先に噛みつく。
「ガウッ!!」
「グギィッ……!?」
「ガアッ……ウガァッ!!」
牙竜の指先に噛みついた子供の赤毛熊を見て抑えつけられている母親熊は逃げるように鳴き声を上げるが、子供は意地でも母親熊を助けるために牙竜に食らいつく。そんな子供を見て牙竜は何かを考え込むように視線を向け、ゆっくりと右前脚を退かして赤毛熊を解放した。
「ガアッ!!」
「ウガァッ……!?」
「ギャンッ!?」
「……見逃した?」
牙竜が母親熊と子供を解放した姿を見て兵士達は動揺し、どんな相手であろうと情け容赦なく蹂躙する存在として恐れられている牙竜が自分と敵対する赤毛熊を解放した姿を見て驚きを隠せない。それは開放された赤毛熊の母子も同じらしく、母親熊は子供を咥えると慌てて洞窟の奥へ避難した。
2体の赤毛熊が洞窟に戻った事を確認すると、牙竜は少しつまらなそうに首を振り、やがて自分の周囲に存在する兵士達に視線を向ける。赤毛熊が消えた事で今度は自分達に襲い掛かるつもりなのかと兵士は身構えるが、予想に反して牙竜は観察するように兵士達の様子を伺う。
「…………」
「ふ、副団長……どうしますか?」
「どうするも何も逃げるしかないだろ。流石にこんな化物を相手に勝てるはずがないからね……けど、こいつさっきから動く気配がないのが気になるね」
「もしかして我々を助けたのでは……?」
「馬鹿な、牙竜が人間を助けるなど有り得ない!!」
「だが、実際に我々を襲っていた赤毛熊を撃退してくれたんだぞ?もしかしたら……」
一向に襲い掛かる様子がない牙竜を見て兵士達は混乱を引き起こし、状況的に考えれば牙竜が赤毛熊を撃退した事で兵士達は命拾いした事になるのだが、やはり相手が竜種という時点で警戒を解くことが出来ず、判断に困った兵士達はこの場の指揮官であるトラネコに指示を仰ぐ。
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