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獣人国
不安的中
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「まあ、安心してくださいよ。帰りが遅いのは気になるけど、うちの部隊の隊員は一騎当千揃いですよ?この地方の魔物なんて敵じゃないですから」
「それはそうかもしれんが……戻ってこないのは心配じゃないのか?」
「別に大丈夫でしょ。まあ、王子がそこまで不安なら探しに行きますけど……いや、その必要もなさそうですね」
「なに?」
「ほら、足音が聞こえて来たでしょう?こっちに向かってますよ」
トラネコの言葉にガウは獣耳を澄ませると、確かに洞窟の奥から人間の足音が響き渡り、安心しかける。だが、足音が妙に響いている事に気付き、こちらに向けて駆け出しているようにしか聞こえなかった。
「おい、何か様子がおかしいのではないのか?」
「そうですかね?お~い!!何かあったのか?」
まだ姿は見えないが足音が聞こえる距離まで接近しているため、洞窟の奥に向けてトラネコが声を掛けると、こちらに駆け出す二人の女性騎士の声が響き渡る。
「ふ、副団……逃げ……さい……!!」
「ここは……危険……!!」
「何だ~?よく聞こえないんだよ、もっとはっきり喋れ~!!」
奥から聞こえてくる声は危機感が込められている事は分かるのだが、走りながら喋っているせいなのか声が途切れ途切れでよく聞き取れず、トラネコが問い返す。すると距離が縮まったのか今度ははっきりと聞き取れる声量で返事が戻って来た。
「危険です!!早く、逃げてっ!!」
「ここは赤毛熊の住処です!!」
『ガアアアッ……!!』
ランタンを抱えた二人の騎士が遂に姿を現すと、奥の方から熊の鳴き声が響き渡り、それを聞いたガウは血相を変える。やがて二人の背後の闇から全身が赤毛に染まった巨大な熊が姿を現し、獰猛な牙を剥きだしにして噛みつこうとしてきた。
「ガアアッ!!」
「きゃあっ!?」
「おっと、させるか!!」
逃走する女性騎士の一人に赤毛熊が噛みつく前にトラネコが走り出し、背中に身に着けていたバスタードソードを引き抜くと、赤毛熊の口に向けて振りぬく。結果から言えば女性騎士は噛みつかれるのは阻止され、代わりにトラネコの剣の刃に噛みつく。
トラネコとしては口内を切り裂くつもりで振りぬいたのだが、刃が牙で止められた事で切り裂くことも出来ず、自分の邪魔をしたトラネコに対して赤毛熊は煩わしそうに視線を向ける。
「グギギッ……!!」
「へっ、王子様良かったですね!!今夜は熊鍋ですよ!!」
「何を言っているんだ!?すぐに逃げろ、殺されるぞ!?」
王子はトラネコに退避するように叫ぶが、彼女は一度だけ振り返って問題ない事を示す様にウィンクを行い、そして両腕の筋肉を肥大化させて噛みつかれたバスタードを引き抜く。
「おら、離せデカブツ!!」
「グエッ!?」
顔面に向けて前脚を繰り出してトラネコは無理やりにバスタードを取り返すと、顔面を蹴りつけられて怯んだ赤毛熊の胸元に対して切り裂く。
「牙斬!!」
「ウガァッ!?」
「おおっ!?」
トラネコの繰り出した不規則な軌道の斬撃が赤毛熊の胸元を切り裂き、体毛が地面に散らばる。しかし、深手を負わせた様子はなく、即座に赤毛熊は反撃を繰り出す。
「ガアアッ!!」
「おっと」
繰り出された右腕に対してトラネコは上半身を後ろにそらして回避すると、今度は剣を足元に切りつける。相当な切れ味を誇るのか刃が触れた瞬間に体毛が散らばり、内部の肉を切り裂く。それでも攻撃は浅く、赤毛熊は激怒したように頭上から攻撃を繰り出す。
「ウガアアアッ!!」
「うわっと……ほらほら、こっちだぞ!!」
「何故挑発する!?」
赤毛熊の攻撃を全て回避しながらトラネコは反撃の隙を伺い、一方で攻撃を繰り出す赤毛熊もちょこまかと逃げ回るトラネコに苛立ちを抱き、攻撃を中断して様子を伺う。
お互いに観察し合うように立ち止まり、余裕の態度を貫くトラネコに対して赤毛熊は苛立ちを隠せず、やがて我慢の限界を迎えたように両腕を広げ、巨体を利用してトラネコを押し潰そうとした。
「ガアッ!!」
「おっと、それを待ってたんだ!!」
自分を押し潰そうと倒れ込んできた赤毛熊に対してトラネコは剣を構え、顔面の位置を予測して剣を突き刺す。咄嗟に赤毛熊は回避しようと慌てて首を逸らすが、その隙を待っていたトラネコは後方に移動して赤毛熊の巨体を躱す。
「隙あり!!」
「ッ……!?」
『おおっ!!』
赤毛熊が転んだ瞬間にトラネコは跳躍を行い、後頭部に向けて剣を突き刺す。彼女の全体重を乗せた一撃が赤毛熊の頭部を貫通し、確実に絶命させる。その光景を見た王子と他二人の騎士は歓声をあげ、剣を引き抜いたトラネコは額に浮かんだ汗を拭って満面の笑みを浮かべる。
「へへへっ……中々の強敵だったな。だが、あたしの勝ち……なんだ?」
しかし、勝利を喜ぼうとしたトラネコの獣耳が洞窟の奥から鳴り響く音に気付き、不思議に思った彼女は後ろを振り返ると、女性騎士が地面に落としたランタンの光を浴びながらもう1体の赤毛熊が姿を現した――
「それはそうかもしれんが……戻ってこないのは心配じゃないのか?」
「別に大丈夫でしょ。まあ、王子がそこまで不安なら探しに行きますけど……いや、その必要もなさそうですね」
「なに?」
「ほら、足音が聞こえて来たでしょう?こっちに向かってますよ」
トラネコの言葉にガウは獣耳を澄ませると、確かに洞窟の奥から人間の足音が響き渡り、安心しかける。だが、足音が妙に響いている事に気付き、こちらに向けて駆け出しているようにしか聞こえなかった。
「おい、何か様子がおかしいのではないのか?」
「そうですかね?お~い!!何かあったのか?」
まだ姿は見えないが足音が聞こえる距離まで接近しているため、洞窟の奥に向けてトラネコが声を掛けると、こちらに駆け出す二人の女性騎士の声が響き渡る。
「ふ、副団……逃げ……さい……!!」
「ここは……危険……!!」
「何だ~?よく聞こえないんだよ、もっとはっきり喋れ~!!」
奥から聞こえてくる声は危機感が込められている事は分かるのだが、走りながら喋っているせいなのか声が途切れ途切れでよく聞き取れず、トラネコが問い返す。すると距離が縮まったのか今度ははっきりと聞き取れる声量で返事が戻って来た。
「危険です!!早く、逃げてっ!!」
「ここは赤毛熊の住処です!!」
『ガアアアッ……!!』
ランタンを抱えた二人の騎士が遂に姿を現すと、奥の方から熊の鳴き声が響き渡り、それを聞いたガウは血相を変える。やがて二人の背後の闇から全身が赤毛に染まった巨大な熊が姿を現し、獰猛な牙を剥きだしにして噛みつこうとしてきた。
「ガアアッ!!」
「きゃあっ!?」
「おっと、させるか!!」
逃走する女性騎士の一人に赤毛熊が噛みつく前にトラネコが走り出し、背中に身に着けていたバスタードソードを引き抜くと、赤毛熊の口に向けて振りぬく。結果から言えば女性騎士は噛みつかれるのは阻止され、代わりにトラネコの剣の刃に噛みつく。
トラネコとしては口内を切り裂くつもりで振りぬいたのだが、刃が牙で止められた事で切り裂くことも出来ず、自分の邪魔をしたトラネコに対して赤毛熊は煩わしそうに視線を向ける。
「グギギッ……!!」
「へっ、王子様良かったですね!!今夜は熊鍋ですよ!!」
「何を言っているんだ!?すぐに逃げろ、殺されるぞ!?」
王子はトラネコに退避するように叫ぶが、彼女は一度だけ振り返って問題ない事を示す様にウィンクを行い、そして両腕の筋肉を肥大化させて噛みつかれたバスタードを引き抜く。
「おら、離せデカブツ!!」
「グエッ!?」
顔面に向けて前脚を繰り出してトラネコは無理やりにバスタードを取り返すと、顔面を蹴りつけられて怯んだ赤毛熊の胸元に対して切り裂く。
「牙斬!!」
「ウガァッ!?」
「おおっ!?」
トラネコの繰り出した不規則な軌道の斬撃が赤毛熊の胸元を切り裂き、体毛が地面に散らばる。しかし、深手を負わせた様子はなく、即座に赤毛熊は反撃を繰り出す。
「ガアアッ!!」
「おっと」
繰り出された右腕に対してトラネコは上半身を後ろにそらして回避すると、今度は剣を足元に切りつける。相当な切れ味を誇るのか刃が触れた瞬間に体毛が散らばり、内部の肉を切り裂く。それでも攻撃は浅く、赤毛熊は激怒したように頭上から攻撃を繰り出す。
「ウガアアアッ!!」
「うわっと……ほらほら、こっちだぞ!!」
「何故挑発する!?」
赤毛熊の攻撃を全て回避しながらトラネコは反撃の隙を伺い、一方で攻撃を繰り出す赤毛熊もちょこまかと逃げ回るトラネコに苛立ちを抱き、攻撃を中断して様子を伺う。
お互いに観察し合うように立ち止まり、余裕の態度を貫くトラネコに対して赤毛熊は苛立ちを隠せず、やがて我慢の限界を迎えたように両腕を広げ、巨体を利用してトラネコを押し潰そうとした。
「ガアッ!!」
「おっと、それを待ってたんだ!!」
自分を押し潰そうと倒れ込んできた赤毛熊に対してトラネコは剣を構え、顔面の位置を予測して剣を突き刺す。咄嗟に赤毛熊は回避しようと慌てて首を逸らすが、その隙を待っていたトラネコは後方に移動して赤毛熊の巨体を躱す。
「隙あり!!」
「ッ……!?」
『おおっ!!』
赤毛熊が転んだ瞬間にトラネコは跳躍を行い、後頭部に向けて剣を突き刺す。彼女の全体重を乗せた一撃が赤毛熊の頭部を貫通し、確実に絶命させる。その光景を見た王子と他二人の騎士は歓声をあげ、剣を引き抜いたトラネコは額に浮かんだ汗を拭って満面の笑みを浮かべる。
「へへへっ……中々の強敵だったな。だが、あたしの勝ち……なんだ?」
しかし、勝利を喜ぼうとしたトラネコの獣耳が洞窟の奥から鳴り響く音に気付き、不思議に思った彼女は後ろを振り返ると、女性騎士が地面に落としたランタンの光を浴びながらもう1体の赤毛熊が姿を現した――
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