最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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獣人国

コネコの動揺

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「ガオン将軍、この子供達は?」
「うむ、紹介しよう。まずこちらの御方は国王様の隠し子であるワン子様だ」
「わぅんっ!!」
「ええっ!?」


ガオンの言葉を聞いたルノが肩車をしていたワン子を両手に抱えて差し出すと、コネコは動揺した声を上げる。やはりワン子の存在は一部の人間にしか知らされていないようであり、一体どういうことなのかとコネコは尋ねる。


「しょ、将軍!!隠し子とはどういう意味ですか!?」
「それは私の方から説明しましょう。お久しぶりですね、コネコ将軍」
「あ、貴方は!?」


ガオンの代わりに隅に控えていたワン子の父親が近づき、二人は面識が会ったのかコネコは驚いた表情を浮かべた。その後はワン子の父親が彼女の出生の秘密を明かし、証拠として国王がワン子のために残した獣人国王家の人間だけが装備を許されるペンダントを取り出す。


「……という事情でこの子は本当に国王様の娘なのです。こちらが王族の証であるペンダントでございます」
「こ、これは確かに第二王子様が所有しているペンダントと同じ物……しかし、まさか国王様に4人目の子供が居たとは……」
「まあ、驚くのは無理もない。正直に言えば俺も最初に聞かされた時は驚いたからな……」
「えっ!?ガオン様はこの子が王族である事を見抜かれていたのでは……!?」
「ああ、いや!!今のは言葉の綾で……そ、それよりも第二王子を迎えに行こうではないか!!コネコよ、案内を頼むぞ」


偶然にもワン子の正体を見破ったガオンは慌てて話題を変更させようと、ワン子の頭に手を伸ばそうとしていたコネコに話しかけると、彼女も慌てて頷く。


「そ、そうですね……ですが、この話はガウ様にも話さなければなりません。やはりここは皆様も同行を願えますか?」
「俺はいいけど」
「私も本当のお兄さんに会ってみたいです!!」
「よし、話は決まったな。では馬車で迎えに行くか」
「あの……ところで先ほどからワン子様を抱いている御方はどちら様でしょうか?」
『…………』


仮にも国王の娘であるワン子をぬいぐるみのように両手で抱きかかえているルノにコネコは正体を尋ねると、ここで全員が黙ってしまう。なにしろルノの正体を教えろと言われてもこの場全員が彼が何者なのか完全には把握しておらず、必然的にルノに視線が集中する。

ここまで獣人国と関わった以上は正体を隠すのは難しく、どう答えるべきかルノが悩んでいると、部屋の扉がノックされて返事も待たずにリディアが入り込む。


「ちょっと、誰かいるの?」
「リディア?どうかしたの?」
「ああ、ここに居たのねあんた等……って、誰よその女?取り込み中?」


リディアは中の様子を見て首を傾げ、コネコも困惑した風に彼女とガオンを見比べると、よりにもよって面倒な時に現れた彼女にガオンはため息を吐きながら紹介する。


「コネコよ、こいつは今現在我が軍で雇っている魔物使いのリディアだ。そしてこの男は我々が雇った腕利きの魔術師だと考えてくれ」
「魔物使いに魔術師……ですか?見たところ、この国の住民ではないようですが……」
「まあ、その辺はあまり気にするな。二人とも流れ者だが腕は確かだ」


適当にルノとリディアの紹介を行うガオンにコネコは違和感を抱くが、あながち流れ者であるという点は間違ってはおらず、敢えて否定も肯定もしない。それよりもリディアはこの場所に尋ねた理由を思い出し、窓の外を指差す。


「ねえ、なんかうちの僕が変な奴等を見つけたみたいなんだけど、どう対処すればいいか困ってるんだけど」
「僕?それは使役獣の事ですか?」
「そうそう、私が飼っているガーゴイルが空から森の中に隠れている変な奴等を発見したらしいんだけど、どうしたらいいの?」
「森の中!?それはももしやガウ様と私の部隊の事では……!!」


リディアが使役しているガーゴイルが街の周囲を探索させている最中、偶然にも森の中で待機している部隊を発見したらしく、どのように対処すればいいのか困ってリディアに連絡したらしい。彼等が身に着けている装備が獣人国軍という事もあり、敵の部隊なのかと考えたリディアは皆に相談するために尋ねに来たという。

恐らく彼女が発見したのはコネコが引き連れてきたガウ王子と自分の部隊で間違いなく、彼女に詳しい場所を尋ねようとした時、リディアが唐突に瞼を閉じてガーゴイルと感覚を共有化させる。


「あっ……ちょっと待って、なんか様子がおかしいわね。森の中にいる奴等が動き出したわ」
「動き出した?そんなバカな……無暗に動かないように命令しておいたはずですが」
「なんか随分と焦ってるわね……あ、理由が分かったわ。あいつら魔物に追われてるわ」
「魔物!?それはどういう事ですか!?」
「ちょ、止めなさいよ!?集中が切れると様子が見れないんだから離しなさいよ!?」
「落ち着けコネコ!!」


とんでもない事を言い出したリディアの肩をコネコが揺さぶると、慌ててガオンが後ろから抑え込み、リディアに詳細を尋ねた。
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