最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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獣人国

兵士の反乱

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「貴様等、何の真似だ!!」
「うるさい!!もうお前の下で働くのは懲り懲りだ!!」
「お前を捕まえて俺達はガオン将軍に降伏するんだ!!」
「おのれ、謀反人共め……この紅蓮の錆にしてやる!!」


槍を構える兵士達に対してガルファンは背中の紅蓮を抜き取り、紅色の刃を構えると兵士達は怖気ついたように後退る。そんな彼等の姿を見てガルファンは笑みを浮かべ、七大魔剣と恐れられた刀の力を見せつけるために剣を突き刺す。


「食らえっ!!」
「ぎゃああっ!?」
「うわぁっ!?」


ガルファンが刀身を地面に突き刺した瞬間に小規模の爆発が発生し、爆炎によって吹き飛ばされた砂利が兵士達に襲い掛かった。ガルファンは兵士達が怯んだ隙に剣を抜き取り、地面に倒れ込んだ兵士達を見下ろす。


「貴様等は全員後で処刑してやる!!おい、誰かいるか!!反逆者だ!!」
「ま、待て……!!」
「ふん、退けっ!!屑共が!!」


幕の外に向かおうとするガルファンに対して負傷した兵士達が必死に引き留めようとしたが、足元に縋りつく手を振り払い、ガルファンは幕の外へ抜け出して別の兵士を呼び出そうとした。しかし、既に外の方でもガルファンに不満を抱いた兵士達が待ち構えており、見張り役の兵士と交戦を行っていた。


「うおおおっ!!」
「ガルファンを捕まえろ!!」
「ま、待て!!お前達、落ち着くんだ……ぐああっ!?」
「こ、これは……!?」


獣人国軍の兵士達が争う姿を見てガルファンは動揺を隠せず、反乱を企てたのは幕の中に入り込んだ者達だけだと思い込んでいたが、既に100や200では数えきれない程の兵士がガルファンを捕縛するために押し寄せていた。その光景を見たガルファンは慌てて指示を出そうとしたが、同じ獣人国の兵士同士の戦闘なので自分の敵味方が区別できない。


「おい、あそこに居たぞ!!全員で捕まえろ!!」
「お、お逃げ下さい将軍!!」
「くっ、くそっ!!近寄るな……!?」


反乱を起こした兵士達が幕の外に飛び出したガルファンを見て殺気立ち、ガルファンの側近が彼等を抑えようとするが圧倒的な数の差に持ちこたえる事が出来ず、数十人の兵士がガルファンの元に向かう。殺気を滲ませながら自分に接近してくる兵士達の姿を見てガルファンは危機感を抱き、慌てて駆け出す。

大勢の兵士達に追われながらガルファンは陣内を移動し、安全な場所を探す。幸いな事に反乱を企てたのは一部の兵士だけらしく、逃げ惑うガルファンの姿を見て陣内の兵士達は異変に気付いてガルファンを追跡する兵士達を取り抑えようとした。


「おい、どうしたんだお前等!?一体何をしているんだ!?」
「落ち着けって!!何があった!?」
「離せ!!あいつを捕まえるんだ!!」
「邪魔をするな!!」
「ぐっ……お前達、そいつらを捕まえろ!!反逆者は全身死刑だ!!」


逃走の最中に通りかかった兵士達に助けを求めながらガルファンは陣内を走り続け、追跡する兵士達を取り押さえるように他の兵士達に命じる。だが、逃走の最中にもガルファンに不満を抱いていた兵士達が賛同し、徐々に数を増やしながら追跡を行う。


「お前等もこれでいいと思っているのか!?あいつの態度にはもう我慢できないと考えている奴もいるだろう!?」
「そうだそうだ!!あんな馬鹿将軍に付いていけるか!!」
「それは……確かにそうかもしれないな」
「おい、お前までなんて事を言い出すんだよ!?落ち着けって……」


遂には反乱者を抑えつけようとした兵士達の中にも彼等の言葉に賛同する人間が現れ始め、これまでのガルファンの身勝手な行動に不満を抱いていた人間が集まり、無様に逃げ惑うガルファンを追う。


「ガルファンを捕まえろ!!奴を捕まえてガオン将軍に差し出せば俺達は助かるんだ!!」
「あんな代理の大将軍の言う事なんて聞けるか!!」
「魔剣には気を付けろ!!誰か弓矢を持ってこい!!」
「ば、馬鹿共が……!!」


逃げ続ける間にも追跡者が増加している事に気付いたガルファンは怒りを滲ませるが、内心では非常に追い詰められていた。いくら妖刀が自分の身に存在しようと数百人の兵士を敵に回して勝ち残る自信はなく、このまま捕まえれば間違いなく最悪な事態に陥る。

しかし、ガルファンの知恵では現状を打開する方法など簡単には思いつかず、まずは自分が生き延びる方法を探すしかなかった――




――同時刻、防壁の上にて見張りを行っていたガオンは獣人国軍の陣の方角が騒がしい事に気付き、何かが起きた事を確信する。しかし、距離があるので詳しい内容までは分からず、レナ達に陣の様子を調べるように提案した。


「おい、敵の陣の様子がおかしい!!奴らが攻めてくるかもしれん!!」
「えっ!?本当ですか?」
「先ほどから妙に騒がしい声が聞こえてくる。おい、小娘!!お前のガーゴイルに偵察させる事は出来るか?」
「誰が小娘よ!!あんた、自由になった途端に偉そうになったわね……ちょっと待ちなさいよ」


リディアは意識を集中させて瞼を閉じると別行動中のガーゴイルとの感覚を共有化させ、上空から陣内の様子を伺う。
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