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獣人国
ガルファンの作戦
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――時刻は昼を迎え、暗い顔色の兵士達と共に机を挟み、ガルファンは作戦会議を行う。最も作戦と言っても彼等に残されている手段は限られており、物資が残り少ない以上は現状を維持する事も出来ず、一か八かの賭けに出るしかなかった。
「……今日の夕刻、街に攻撃を仕掛ける。それしか方法はない」
「ですが、王子が人質に取られている以上は迂闊な真似は……」
「他に方法はない!!明日の朝にはこちらの食料は全て尽きてしまうのだ!!そうなれば追い詰められるのはわれわれだぞ!?」
「しかし、薬剤も不足している状態で街に攻め入るのは危険なのでは……負傷兵を治療する事も出来ません」
「だからこそ何としても1日で落とすのだ!!街の中には我々から盗み出した大漁の物資が存在するはずだ!!それさえ取り返せれば全ては元通りなのだ!!」
頑なに街に攻め入る事を提案するガルファンに対して兵士達はため息を吐き出し、確かに現状では彼の言葉も一理ある。今の時点では食料の調達も行えない獣人国軍では籠城戦を行う13番街の軍隊よりも先に食料が尽きてしまう。兵力の差は圧倒的に獣人国軍の方が有利であり、物資が尽きる前に街に攻め寄せるという考え自体は間違ってはいない。
しかし、13番街には戦上手であるガオン将軍が率いる部隊が存在し、さらにガルル王子が人質に取られている。もしもガルルを失えば獣人国軍は大義を失い、ただの賊軍へと変わり果ててしまう。あくまでもガルルという存在が居るからこそ獣人国軍は正規の軍隊として認識されているのだ。
それでも追い詰められたガルファンは王子の事など気にも留めず、作戦を立てて街を攻め寄せる方法を見出す。彼にとって最早ガルルというい存在は必要ではなく、むしろ自分が王位に就くために邪魔な存在だと考えていた。だからこそ街に攻め寄せる際にガオンと共に王子を葬ろうかとも考えていた。
(何としても物資を取り返し、そして民衆共にこの俺の威厳を見せつけねばならん……幸いにもこちらには100人を超える魔術師が揃っている。奴等を使えば城攻めなど容易い事だ)
獣人国軍の最大の戦力は魔術師のみで構成された「魔術師部隊」であり、彼等の扱う砲撃魔法は最も強力な兵器である。実際に城攻めの際に魔術師が存在するだけでも心強く、机の地図を確認しながらガルファンは駒を動かす。
「作戦はこうだ。魔術師部隊を分散し、四方の門から同時に攻撃を行う。但し、実際に襲うのは三か所だけで十分だ。まずは北、東、南門に30人の魔術師を配置し、残りの10人は最も防備が固い西門に集めろ」
「ですが将軍、敵にも厄介な魔術師が存在します。もしもまたあれが現れたら……」
「ふん!!あんな氷使いなどこの俺が屠ってやろう!!お前達も見ただろう?奴が俺の剣を恐れて逃げ狩る様を!!」
魔術師という単語に兵士達はガルルを誘拐した人間の魔術師であるルノを思い出して恐怖を抱くが、そんな彼等に対してガルファンは自信満々に自分の背中に取り付けた紅蓮を握り締める。そんなガルファンの言葉を聞いて兵士達は呆れた表情を浮かべ、先日の襲撃の際にルノが作り出した氷車に無様に轢かれて気絶していたガルファンの姿を思い出す。
だが、都合が悪い事に氷車に衝突したときに軽い記憶喪失を起こしているのか、ガルファンは自分の持つ七代魔剣の一角である「紅蓮」がルノの作り出した氷盾を破壊した光景を思い出し、どれほどの強力な魔術師だろうと紅蓮が手元に存在する限りは自分の敵ではないと本気で信じていた。
「お前達が不安を抱く必要はない!!例の魔術師が現れたらこの俺の手で始末してやる!!さあ、早く準備を始めろ!!」
「将軍!!兵士を分散させて全方位から攻めるのは何故ですか?一点に集中して攻め寄せた方が成功確率は高いのでは……」
「大馬鹿者!!そんな事をすれば奴等を逃がしてしまうではないか!!誰一人として街の外へ出すな!!」
「しかし……」
「やかましい!!貴様等は俺の言う事だけを聞いていればいいのだ!!」
『…………』
部下の意見も聞き入れずにガルファンは苛立ちを隠さずに座り込み、幕から出ていくように兵士達に指示を出す。そんなガルファンの横暴な態度を見て兵士達は不満の表情を浮かべながらも渋々と立ち去る――
――幕の外に出た途端、兵士達は悪態を吐きながら準備を行う。城攻めのために用意した梯子を運び出し、弓矢の攻撃を防ぐための鉄製の盾も運び込もうとするが、その肝心の武具や防具も昨日の夜に大半が凍り付いて使い物にならない状態だった。
「おい、どうだ?氷は解けたのか?」
「駄目だ、魔法で氷結化されたせいか普通の水じゃ簡単には溶けないみたいだ」
「そもそも貴重な水を武器を溶かすために使用する事になるなんて……やってられねえよな」
兵士達は凍り付い武具を溶かすために大きな壺に入れた水を利用して武器や防具に振りかけて氷解を試みるが上手くいかず、しかも城攻めに必要となる弓矢の類は完全に駄目になっていた。予備の武具や防具も当てにならない以上は現在の装備だけで城攻めを果たすしかなく、兵士達は大きなため息を吐く。
「……今日の夕刻、街に攻撃を仕掛ける。それしか方法はない」
「ですが、王子が人質に取られている以上は迂闊な真似は……」
「他に方法はない!!明日の朝にはこちらの食料は全て尽きてしまうのだ!!そうなれば追い詰められるのはわれわれだぞ!?」
「しかし、薬剤も不足している状態で街に攻め入るのは危険なのでは……負傷兵を治療する事も出来ません」
「だからこそ何としても1日で落とすのだ!!街の中には我々から盗み出した大漁の物資が存在するはずだ!!それさえ取り返せれば全ては元通りなのだ!!」
頑なに街に攻め入る事を提案するガルファンに対して兵士達はため息を吐き出し、確かに現状では彼の言葉も一理ある。今の時点では食料の調達も行えない獣人国軍では籠城戦を行う13番街の軍隊よりも先に食料が尽きてしまう。兵力の差は圧倒的に獣人国軍の方が有利であり、物資が尽きる前に街に攻め寄せるという考え自体は間違ってはいない。
しかし、13番街には戦上手であるガオン将軍が率いる部隊が存在し、さらにガルル王子が人質に取られている。もしもガルルを失えば獣人国軍は大義を失い、ただの賊軍へと変わり果ててしまう。あくまでもガルルという存在が居るからこそ獣人国軍は正規の軍隊として認識されているのだ。
それでも追い詰められたガルファンは王子の事など気にも留めず、作戦を立てて街を攻め寄せる方法を見出す。彼にとって最早ガルルというい存在は必要ではなく、むしろ自分が王位に就くために邪魔な存在だと考えていた。だからこそ街に攻め寄せる際にガオンと共に王子を葬ろうかとも考えていた。
(何としても物資を取り返し、そして民衆共にこの俺の威厳を見せつけねばならん……幸いにもこちらには100人を超える魔術師が揃っている。奴等を使えば城攻めなど容易い事だ)
獣人国軍の最大の戦力は魔術師のみで構成された「魔術師部隊」であり、彼等の扱う砲撃魔法は最も強力な兵器である。実際に城攻めの際に魔術師が存在するだけでも心強く、机の地図を確認しながらガルファンは駒を動かす。
「作戦はこうだ。魔術師部隊を分散し、四方の門から同時に攻撃を行う。但し、実際に襲うのは三か所だけで十分だ。まずは北、東、南門に30人の魔術師を配置し、残りの10人は最も防備が固い西門に集めろ」
「ですが将軍、敵にも厄介な魔術師が存在します。もしもまたあれが現れたら……」
「ふん!!あんな氷使いなどこの俺が屠ってやろう!!お前達も見ただろう?奴が俺の剣を恐れて逃げ狩る様を!!」
魔術師という単語に兵士達はガルルを誘拐した人間の魔術師であるルノを思い出して恐怖を抱くが、そんな彼等に対してガルファンは自信満々に自分の背中に取り付けた紅蓮を握り締める。そんなガルファンの言葉を聞いて兵士達は呆れた表情を浮かべ、先日の襲撃の際にルノが作り出した氷車に無様に轢かれて気絶していたガルファンの姿を思い出す。
だが、都合が悪い事に氷車に衝突したときに軽い記憶喪失を起こしているのか、ガルファンは自分の持つ七代魔剣の一角である「紅蓮」がルノの作り出した氷盾を破壊した光景を思い出し、どれほどの強力な魔術師だろうと紅蓮が手元に存在する限りは自分の敵ではないと本気で信じていた。
「お前達が不安を抱く必要はない!!例の魔術師が現れたらこの俺の手で始末してやる!!さあ、早く準備を始めろ!!」
「将軍!!兵士を分散させて全方位から攻めるのは何故ですか?一点に集中して攻め寄せた方が成功確率は高いのでは……」
「大馬鹿者!!そんな事をすれば奴等を逃がしてしまうではないか!!誰一人として街の外へ出すな!!」
「しかし……」
「やかましい!!貴様等は俺の言う事だけを聞いていればいいのだ!!」
『…………』
部下の意見も聞き入れずにガルファンは苛立ちを隠さずに座り込み、幕から出ていくように兵士達に指示を出す。そんなガルファンの横暴な態度を見て兵士達は不満の表情を浮かべながらも渋々と立ち去る――
――幕の外に出た途端、兵士達は悪態を吐きながら準備を行う。城攻めのために用意した梯子を運び出し、弓矢の攻撃を防ぐための鉄製の盾も運び込もうとするが、その肝心の武具や防具も昨日の夜に大半が凍り付いて使い物にならない状態だった。
「おい、どうだ?氷は解けたのか?」
「駄目だ、魔法で氷結化されたせいか普通の水じゃ簡単には溶けないみたいだ」
「そもそも貴重な水を武器を溶かすために使用する事になるなんて……やってられねえよな」
兵士達は凍り付い武具を溶かすために大きな壺に入れた水を利用して武器や防具に振りかけて氷解を試みるが上手くいかず、しかも城攻めに必要となる弓矢の類は完全に駄目になっていた。予備の武具や防具も当てにならない以上は現在の装備だけで城攻めを果たすしかなく、兵士達は大きなため息を吐く。
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