392 / 657
獣人国
妨害
しおりを挟む
「さあ、早く出発しろ!!もたもたすれば自分達が追い詰められるのだぞ!!」
「で、ですが……そんな事をすれば民に大きな負担が掛かります。ここはやはり、停戦を申し込んで引き返す方が……」
「何を馬鹿なことを言っている!?相手はガルル王子を人質にしているのだぞ!!自分達の主君を置いて引き返せというのか!!」
ガルファンの言葉に兵士達は黙り込み、確かガルファンの言葉にも一理ある。しかし、実際の所はガルファンがガルル王子に忠誠を誓っているわけではなく、あと少しで自分が国王の座に就けるのに諦めきれられるはずがないという彼の欲望が垣間見えていた。
ここまで来た以上はガルファンも退く気はなく、どうにか食料を調達して救援物資が送り込まれるまで耐え抜き、籠城戦に耐え切れなくなった13番街の人間達を追い詰めて降伏させる。反逆者であるガオンを自らが仕留めれば自分の名声も上がり、隙を乗じてガルル王子を含めた他の二人の王族も殺せばガオンの野望は果たされる。
「さっさと行け!!手ぶらで帰ってきた者は厳罰を与えるからな!!」
「……了解しました」
「ちっ……怒鳴ったら腹が減ったな。おい、食事の用意をしろ」
「え、あっ……は、はい!!」
不満を露わにする兵士達に対してガルファンは怒鳴りつけて兵士達を派遣させ、自分は改めて幕に戻ると兵士に命じて食事を用意させる。食料を大分消耗したにも関わらずに自分の分の朝食だけはしっかりと用意させようとする。その姿を見て兵士達はより一層にガルファンに不満を抱き、これがもしもガオンやウォンのような歴戦の将軍ならば率先して自分の食事を減らし、食料の消耗を抑えるだろう。
「おい、もう我慢出来ないぞ俺は……あんな奴、ここにいる全員でとっちめれば……!!」
「待て、落ち着け!!そんな事をすれば俺達が……」
「構わねえよ!!この近くには俺の村も存在するんだぞ!?お前等は俺の家族から冬を乗り過ごすための大切な食料を奪うつもりか!?」
「それは……」
兵士の中には13番街地方の村の出身の者も多く、これから自分の村に食料の調達のために兵士達が訪れると知って気が気ではない。冬を過ごすために備蓄した食料さえも奪い去れば村の人間も無事では済まず、場合によっては村を捨てるか命を落とす結果にもなりかねない。
実際にガオンの雇った傭兵の仕業で大量の食料や金品を奪われた村のいくつかは滅んでおり、ワン子が暮らしていた村の人間も少数とは言い切れない程の数の人間が反抗して殺されている。その報告も受けている兵士達だからこそ自分達が更に食料を民衆から奪うという事に気が重くなる。
「なあ、本当にどうにか出来ないのか?あの将軍を捕まえてどうにか13番街の奴等と交渉すれば……」
「駄目だ、報告を聞いていなかったのか?仮に交渉して王子を返してもらったとしても食料は街の奴等も不足しているんだ……俺達から奪った食料があいつらの手に渡っていたとしても黙って返すと思うか?」
「けどよ、このままだと俺達の方が悪者になっちまう気がして……」
「仕方ないだろ。他に方法がないというのも事実だ。嫌だけど、従うしかないんだ……」
命令を受けた兵士達は渋々と食料の調達のために馬に乗り、各地の村に向かう。だが、これから自分達が強制的に民衆から食料を奪い取る結果になるかもしれないという事実に気が重くなり、足取りは遅い。そんな彼等の様子を上空から伺うガーゴイルが存在し、兵士達の行動を監視していたガーゴイルは急いで街に戻って主人たちに報告に向かう――
――それから数時間後、幕の中で昨日の酒のせいで二日酔いに陥っていたガルファンの元に大勢の兵士達がなだれ込み、彼等はベッドに横たわっていたガルファンを無理やりに起こす。
「将軍!!起きてください!!寝ている場合ではありません!!」
「ふがっ!?な、何だ……何事だ?」
「外に来てください!!」
自分の寝所にまで入り込できた兵士達にガルファンは頭を抑えながら睨みつけるが、彼等の必死の表情を見て只事ではないと悟り、慌てて外へ飛び出すとそこには異様な光景が広がっていた。
「こ、これは……どういう事だ!!一体何が起きたお前達!?」
「ううっ……」
「しょ、将軍……」
「申し訳ありません……」
ガルファンの視線の先には数時間前に派遣させたはずの大勢の兵士達が治療を受けており、回復薬が不足している状態なので包帯や薬草の粉で作り出した傷薬で治療を行うしかなく、彼等の代わりに別の兵士が報告を行う。
「どうやら村に向かう途中、牙竜とガーゴイルに襲撃を受けたそうです。どうにか命からがら逃げ切ったようですが、食料の調達は失敗したようです」
「ぐぬぬっ……またあの忌まわしい竜か!!」
「幸い、死傷者が出ていませんが残された薬剤の殆ども使い切ってしまいました。これではもう治療は満足に行えません……」
「何、だと……!?」
遂には食料だけではなく、武具と薬剤さえも尽きてしまったという報告を受けたガルファンは愕然としてしまい、完全に獣人国軍は追いつめられてしまった。
※今回の投降の10秒前
ルノ「なんか変なボタンを見つけた……押してみるか」(´・ω・)ノ公開ボタン
カタナヅキ「そ、それは!?どうしてここに!?(; ゚Д゚)」
「で、ですが……そんな事をすれば民に大きな負担が掛かります。ここはやはり、停戦を申し込んで引き返す方が……」
「何を馬鹿なことを言っている!?相手はガルル王子を人質にしているのだぞ!!自分達の主君を置いて引き返せというのか!!」
ガルファンの言葉に兵士達は黙り込み、確かガルファンの言葉にも一理ある。しかし、実際の所はガルファンがガルル王子に忠誠を誓っているわけではなく、あと少しで自分が国王の座に就けるのに諦めきれられるはずがないという彼の欲望が垣間見えていた。
ここまで来た以上はガルファンも退く気はなく、どうにか食料を調達して救援物資が送り込まれるまで耐え抜き、籠城戦に耐え切れなくなった13番街の人間達を追い詰めて降伏させる。反逆者であるガオンを自らが仕留めれば自分の名声も上がり、隙を乗じてガルル王子を含めた他の二人の王族も殺せばガオンの野望は果たされる。
「さっさと行け!!手ぶらで帰ってきた者は厳罰を与えるからな!!」
「……了解しました」
「ちっ……怒鳴ったら腹が減ったな。おい、食事の用意をしろ」
「え、あっ……は、はい!!」
不満を露わにする兵士達に対してガルファンは怒鳴りつけて兵士達を派遣させ、自分は改めて幕に戻ると兵士に命じて食事を用意させる。食料を大分消耗したにも関わらずに自分の分の朝食だけはしっかりと用意させようとする。その姿を見て兵士達はより一層にガルファンに不満を抱き、これがもしもガオンやウォンのような歴戦の将軍ならば率先して自分の食事を減らし、食料の消耗を抑えるだろう。
「おい、もう我慢出来ないぞ俺は……あんな奴、ここにいる全員でとっちめれば……!!」
「待て、落ち着け!!そんな事をすれば俺達が……」
「構わねえよ!!この近くには俺の村も存在するんだぞ!?お前等は俺の家族から冬を乗り過ごすための大切な食料を奪うつもりか!?」
「それは……」
兵士の中には13番街地方の村の出身の者も多く、これから自分の村に食料の調達のために兵士達が訪れると知って気が気ではない。冬を過ごすために備蓄した食料さえも奪い去れば村の人間も無事では済まず、場合によっては村を捨てるか命を落とす結果にもなりかねない。
実際にガオンの雇った傭兵の仕業で大量の食料や金品を奪われた村のいくつかは滅んでおり、ワン子が暮らしていた村の人間も少数とは言い切れない程の数の人間が反抗して殺されている。その報告も受けている兵士達だからこそ自分達が更に食料を民衆から奪うという事に気が重くなる。
「なあ、本当にどうにか出来ないのか?あの将軍を捕まえてどうにか13番街の奴等と交渉すれば……」
「駄目だ、報告を聞いていなかったのか?仮に交渉して王子を返してもらったとしても食料は街の奴等も不足しているんだ……俺達から奪った食料があいつらの手に渡っていたとしても黙って返すと思うか?」
「けどよ、このままだと俺達の方が悪者になっちまう気がして……」
「仕方ないだろ。他に方法がないというのも事実だ。嫌だけど、従うしかないんだ……」
命令を受けた兵士達は渋々と食料の調達のために馬に乗り、各地の村に向かう。だが、これから自分達が強制的に民衆から食料を奪い取る結果になるかもしれないという事実に気が重くなり、足取りは遅い。そんな彼等の様子を上空から伺うガーゴイルが存在し、兵士達の行動を監視していたガーゴイルは急いで街に戻って主人たちに報告に向かう――
――それから数時間後、幕の中で昨日の酒のせいで二日酔いに陥っていたガルファンの元に大勢の兵士達がなだれ込み、彼等はベッドに横たわっていたガルファンを無理やりに起こす。
「将軍!!起きてください!!寝ている場合ではありません!!」
「ふがっ!?な、何だ……何事だ?」
「外に来てください!!」
自分の寝所にまで入り込できた兵士達にガルファンは頭を抑えながら睨みつけるが、彼等の必死の表情を見て只事ではないと悟り、慌てて外へ飛び出すとそこには異様な光景が広がっていた。
「こ、これは……どういう事だ!!一体何が起きたお前達!?」
「ううっ……」
「しょ、将軍……」
「申し訳ありません……」
ガルファンの視線の先には数時間前に派遣させたはずの大勢の兵士達が治療を受けており、回復薬が不足している状態なので包帯や薬草の粉で作り出した傷薬で治療を行うしかなく、彼等の代わりに別の兵士が報告を行う。
「どうやら村に向かう途中、牙竜とガーゴイルに襲撃を受けたそうです。どうにか命からがら逃げ切ったようですが、食料の調達は失敗したようです」
「ぐぬぬっ……またあの忌まわしい竜か!!」
「幸い、死傷者が出ていませんが残された薬剤の殆ども使い切ってしまいました。これではもう治療は満足に行えません……」
「何、だと……!?」
遂には食料だけではなく、武具と薬剤さえも尽きてしまったという報告を受けたガルファンは愕然としてしまい、完全に獣人国軍は追いつめられてしまった。
※今回の投降の10秒前
ルノ「なんか変なボタンを見つけた……押してみるか」(´・ω・)ノ公開ボタン
カタナヅキ「そ、それは!?どうしてここに!?(; ゚Д゚)」
1
お気に入りに追加
11,307
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。