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獣人国
物資の盗難
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「くそっ!!賊は見つかったのか?」
「いえ、まだ見つかっていません。ですが、見知らぬ少年兵を見かけたという報告が何人か届いていますが……奪われた物資の数を確認してもとても一人で運び出せる量ではなく……」
「何だと……そうか、収納石だ!!敵は収納石を持っているのか!!」
普通に考えれば敵が単独の場合は何万人の兵士の物資を運び出すことなど出来るはずがない。しかし、獣人国の間では殆ど出回っていない「収納石」と呼ばれる魔石を使用すれば異空間に物体を保存できるので不可能ではなく、ガルファンは血相を変えて侵入者の捕縛を命じる。
「すぐに眠っている兵士を叩き起こせ!!何としても侵入者を見つけ出し、奪われた物資を回収するのだ!!」
「は、はい!!」
「それと残りの物資の確認も行え!!場合によっては周辺の村や街から徴収を行わねばならん!!」
「分かりました……あの、ですが現れた牙竜の対処はどうしましょうか?」
「そんな物は後回しだ!!今は物資を守る事だけに集中しろ!!」
数万人の兵士の物資が失われれば追い詰められるのは獣人国軍の方であり、王都から新しい物資を輸送させるにしても時間が掛かり、食料や武具が不足した状態で籠城戦を行う相手に挑むのは無謀過ぎる。相手よりも先にこちらの食料が尽きてしまえば士気が下がり、離反を考える者も続出するだろう。
ガルファンは将軍としては若手なので未熟者だと思われているが、それでも将軍として兵士を指導する立場なので戦争においての物資の重要性は理解している。だからこそ物資を奪われないように大量の見張りを配備させていたにも関わらずに今回の事態が起きた事に違和感を覚えた。
(しかし、敵はどうやって物資を奪った?収納石を使ったとしても一人で運び出すのは時間が掛かるはず……それに都合がいいときに牙竜が襲ってきた事も気になる……まさか、これは陽動作戦か!?)
牙竜が現れて獣人国軍の陣営に襲い掛かったのは偶然ではなく、敵の中に魔物使いが存在して牙竜を操作して軍隊の注意を引き、その間に警備の隙をついて侵入者が潜り込み、物資を奪い取る作戦ではないかと気づいたガルファンは悔し気に地面を何度も踏みつける。
「この俺を罠に嵌めたか……ガオンの奴め!!おい、今すぐに兵士を集めろ!!牙竜の討伐部隊を結成する!!」
「えっ!?討伐!?」
「そうだ!!牙竜を仕留めない限りはいつまた陣に襲ってくるか分からん!!すぐに用意しろ!!」
「ですが侵入者の方は……」
「それも何とかしろ!!ともかくすぐに5000の騎馬隊を用意しておけ、いいなっ!?」
『…………』
あまりにも無茶な命令を告げて幕から立ち去るガルファンに兵士達は不満そうな表情を浮かべ、中には苛立ちを隠さずに鼻を鳴らし、ガルファンが座り込んでいた椅子を蹴飛ばす。
「あの野郎、俺達に全部任せて自分一人だけで行きやがったぞ!!こんなのやってられるか!!」
「物資の警備に侵入者の捜索、それに牙竜の討伐だと?そんなの同時にやれるかよ!!」
「だいたいどうして牙竜を討伐しないといけないんだよ!?別に今すぐでなくてもいいだろうが!!」
警備の強化と侵入者の捜索だけならば兵士達も納得は出来ないが、竜種の中でも獰猛で気性が激しい牙竜の討伐に関しては不満を抱かずにはいられず、竜種との戦闘は常に最前線を絶たされる兵士が命の危機を齎す。竜種の中では下位の存在だとしても普通の人間(獣人)から見たら牙竜も他の竜種に負けず劣らずの恐ろしい存在であり、普通ならば自ら進んで挑むような相手ではない。
それでも兵士達は大将軍の代理を任されているガルファンの命令には逆らず、渋々と行動に移る。だが、着実にガルファンの自分達に対する態度と無茶な要求に心の中では不満を蓄積させており、もう間もなく彼等の限界を迎えようとしていた――
――その一方で幕から離れたガルファンは急いで物資が保存されている陣地に向かい、様子を確認する。既に大勢の兵士達が忙しなく陣内を動き回っており、侵入者の捜索と奪われた物資の点検を行っていた。
「おい、状況はどうなっている!!」
「あ、将軍!?おいでになられましたか……」
「現状を報告しろと言っている!!一体何が起きた!?」
「それが……こちらを見てください。今の所確認できた奪われた物資の目録です」
「これは……!?」
点検中の兵士から差し出された羊皮紙を確認したガルファンは唖然とした表情を浮かべ、物資の大半が既に消失しており、更に軍隊に同行させていたマダラバイソンも逃げ出してしまったという。
「確認できるだけで食料、武具の大部分を失い、しかも荷物の運搬のために同行させていたマダラバイソンも十数頭が逃げ出してしまいました……その際に見張りの兵士の多くが負傷しています」
「ぐううっ……それで物資はどの程度残っている!?」
「盗まれてからそれほど時間は経過していないと思いますが、まだ3分の2程は残っているかと……」
「た、隊長!!大変です!!」
会話の最中に物資が搭載された木箱を抱えた兵士が二人の元に駆け寄り、慌てた様子で木箱を二人の目の前に降ろす。
「いえ、まだ見つかっていません。ですが、見知らぬ少年兵を見かけたという報告が何人か届いていますが……奪われた物資の数を確認してもとても一人で運び出せる量ではなく……」
「何だと……そうか、収納石だ!!敵は収納石を持っているのか!!」
普通に考えれば敵が単独の場合は何万人の兵士の物資を運び出すことなど出来るはずがない。しかし、獣人国の間では殆ど出回っていない「収納石」と呼ばれる魔石を使用すれば異空間に物体を保存できるので不可能ではなく、ガルファンは血相を変えて侵入者の捕縛を命じる。
「すぐに眠っている兵士を叩き起こせ!!何としても侵入者を見つけ出し、奪われた物資を回収するのだ!!」
「は、はい!!」
「それと残りの物資の確認も行え!!場合によっては周辺の村や街から徴収を行わねばならん!!」
「分かりました……あの、ですが現れた牙竜の対処はどうしましょうか?」
「そんな物は後回しだ!!今は物資を守る事だけに集中しろ!!」
数万人の兵士の物資が失われれば追い詰められるのは獣人国軍の方であり、王都から新しい物資を輸送させるにしても時間が掛かり、食料や武具が不足した状態で籠城戦を行う相手に挑むのは無謀過ぎる。相手よりも先にこちらの食料が尽きてしまえば士気が下がり、離反を考える者も続出するだろう。
ガルファンは将軍としては若手なので未熟者だと思われているが、それでも将軍として兵士を指導する立場なので戦争においての物資の重要性は理解している。だからこそ物資を奪われないように大量の見張りを配備させていたにも関わらずに今回の事態が起きた事に違和感を覚えた。
(しかし、敵はどうやって物資を奪った?収納石を使ったとしても一人で運び出すのは時間が掛かるはず……それに都合がいいときに牙竜が襲ってきた事も気になる……まさか、これは陽動作戦か!?)
牙竜が現れて獣人国軍の陣営に襲い掛かったのは偶然ではなく、敵の中に魔物使いが存在して牙竜を操作して軍隊の注意を引き、その間に警備の隙をついて侵入者が潜り込み、物資を奪い取る作戦ではないかと気づいたガルファンは悔し気に地面を何度も踏みつける。
「この俺を罠に嵌めたか……ガオンの奴め!!おい、今すぐに兵士を集めろ!!牙竜の討伐部隊を結成する!!」
「えっ!?討伐!?」
「そうだ!!牙竜を仕留めない限りはいつまた陣に襲ってくるか分からん!!すぐに用意しろ!!」
「ですが侵入者の方は……」
「それも何とかしろ!!ともかくすぐに5000の騎馬隊を用意しておけ、いいなっ!?」
『…………』
あまりにも無茶な命令を告げて幕から立ち去るガルファンに兵士達は不満そうな表情を浮かべ、中には苛立ちを隠さずに鼻を鳴らし、ガルファンが座り込んでいた椅子を蹴飛ばす。
「あの野郎、俺達に全部任せて自分一人だけで行きやがったぞ!!こんなのやってられるか!!」
「物資の警備に侵入者の捜索、それに牙竜の討伐だと?そんなの同時にやれるかよ!!」
「だいたいどうして牙竜を討伐しないといけないんだよ!?別に今すぐでなくてもいいだろうが!!」
警備の強化と侵入者の捜索だけならば兵士達も納得は出来ないが、竜種の中でも獰猛で気性が激しい牙竜の討伐に関しては不満を抱かずにはいられず、竜種との戦闘は常に最前線を絶たされる兵士が命の危機を齎す。竜種の中では下位の存在だとしても普通の人間(獣人)から見たら牙竜も他の竜種に負けず劣らずの恐ろしい存在であり、普通ならば自ら進んで挑むような相手ではない。
それでも兵士達は大将軍の代理を任されているガルファンの命令には逆らず、渋々と行動に移る。だが、着実にガルファンの自分達に対する態度と無茶な要求に心の中では不満を蓄積させており、もう間もなく彼等の限界を迎えようとしていた――
――その一方で幕から離れたガルファンは急いで物資が保存されている陣地に向かい、様子を確認する。既に大勢の兵士達が忙しなく陣内を動き回っており、侵入者の捜索と奪われた物資の点検を行っていた。
「おい、状況はどうなっている!!」
「あ、将軍!?おいでになられましたか……」
「現状を報告しろと言っている!!一体何が起きた!?」
「それが……こちらを見てください。今の所確認できた奪われた物資の目録です」
「これは……!?」
点検中の兵士から差し出された羊皮紙を確認したガルファンは唖然とした表情を浮かべ、物資の大半が既に消失しており、更に軍隊に同行させていたマダラバイソンも逃げ出してしまったという。
「確認できるだけで食料、武具の大部分を失い、しかも荷物の運搬のために同行させていたマダラバイソンも十数頭が逃げ出してしまいました……その際に見張りの兵士の多くが負傷しています」
「ぐううっ……それで物資はどの程度残っている!?」
「盗まれてからそれほど時間は経過していないと思いますが、まだ3分の2程は残っているかと……」
「た、隊長!!大変です!!」
会話の最中に物資が搭載された木箱を抱えた兵士が二人の元に駆け寄り、慌てた様子で木箱を二人の目の前に降ろす。
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