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獣人国
クズノの逃走
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「あの……王子さんはそのクスキという人が今何処にいるのか知ってるんですか?その人を捕まえれば何もかも解決しそうなんだけど……」
「く、クスキの奴はもういない。こちらが用がある時に勝手に現れて情報だけを渡して姿を消すんだ……」
「そんな奴をよくも信用したな!?」
「いや、それはあんたも言える事でしょうが」
ガルルの言葉を聞いてガオンは驚いた声を上げるが、リディアが冷静に突っ込む。ガオンもクズノに騙されていた立場であり、両者共に素性も明かさないクズノを信用しきってとんでもない事態を引き起こしてしまった。しかし、ここでルノはある疑問を抱く。
「そういえばクズノという人はどんな能力を持っているの?詳しくは聞いてなかったけど……」
「あいつは戦闘が苦手だから策略を用いて他の人間を利用する事を好むわ。能力という程でもないけど、人を騙す事に長けていて他人の弱味を見つけ出す事に関しては誰よりも鼻が鋭いわね。正に「洗脳」のように他人を操る事が出来るの」
「うむ……言われてみれば確かに俺も奴の話に乗せられてとんでもない事をしてしまったな。もっと早くに奴の目的に気づくべきだった」
リディアの言葉を聞いてガオンは心当たりがあるのか渋い表情を浮かべて腕を組み、これまでのクズノの行動を思い返せばいくらでも怪しい点はあった。しかし、ガオンはそんな事も気づかずにクズノの事を信用しきってしまい、結果としてはルノが訪れなければ今頃は大量の傭兵と配下と共に獣人国の軍隊に戦闘を挑んでいただろう。
クズノの自体はリディアによればそれほど強い戦闘力を持っているわけではないが、彼の恐ろしさは人心を利用して最悪の結果を齎す事に有り、自分は決して手を汚さずに他人を利用するという点では魔王よりも厄介な存在と言える。クズノを捕まえる事が出来れば今回の事態を全て彼の責任として押し付ける事も出来るが、肝心のクズノの居場所が掴めなければ意味はない。
「ああ、もう面倒くさいわね!!獣人国の軍隊だか何だか知らないけど、要はこの王子を人質にすれば奴等は襲ってこないんでしょう!?だったらこいつを磔にして晒しておけばいいのよ!!」
「そ、そんな!?」
「いや、落ち着け……それでは何の解決にもならんだろう。この馬鹿王子がここに居る限りは軍隊が襲う事はないが、逆に言えば王子がここに居ない限りは奴等は襲撃を仕掛けてくる。下手に拷問紛いの事をして王子が死んだらどうする気だ?」
「拷問!?」
「お兄さんが魔法の力で大きな竜をまた作るのはどうですか?きっと兵士の皆さんも驚いて逃げちゃうと思います!!」
「竜だとっ!?」
「さっきからうるさいなこの人……」
会話の最中にちょくちょく反応するガルルを無視してルノ達は話し合い、どうやって穏便に獣人国の軍隊を追い返すのか悩む。先日のようにルノの魔法の力を見せつけて強引に降伏させるという手段もあるが、この方法だとルノがこの国から立ち去った時に問題がある。ルノの力で降伏した兵士達がルノが居なくなった後に従い続けるとは限らず、根本的な解決には至らない。
今回の相手が国家の軍隊である事が問題であり、相手が人間(性格には獣人だが)である以上はルノは本気で戦う事は出来ない。人殺しを恐れるルノが軍隊を相手に強力な魔法を使用する事は出来ず、せいぜい怖がらせる程度の事しか出来ないのも問題だった。だが、あまりにこの国に長居すると帝国の皆に迷惑を掛けてしまうと考えたルノはどうにか軍隊を退散させる方法を考える。
(何か方法はないかな……ガルル王子を改心させて軍隊を引き換えさせる?いや、この王子が素直に改心するとは思えないし……待てよ?)
妙案が思いついたルノは他の人間に自分が考え付いた案を口にすると、全員に驚かれるが確かに実現性が高く、確実に軍隊の戦意をそぐ方法なので全員が賛同した――
――数十分後、遂に獣人国の軍隊の本隊が到着し、彼等は最初に13番街を包囲すると陣を築く。王子が街に捕らわれている以上は迂闊に襲撃を仕掛ける事は出来ないが、兵力差は5倍も存在するので自分達が優位であると考え、あくまでも立場が不利であるとは考えずに軍隊を指揮するがルファンは降伏勧告を行う。
「我が名は獣人国の大将軍に任命されたがルファンだ!!謀反人のガオンに告げる!!今すぐに王子を解放して兵士ともども投稿しろ!!そうすれば街の住民には手を出さない!!」
数騎の部下と共にガルファンは街の城門の前で大声をあげるが、城壁の上に立つ兵士達は何も反応を返さず、黙って将軍の様子を伺う。そんな彼等の態度にガルファンは脅迫するように言葉を続ける。
「王子を返さなければこのまま街を包囲する!!そんな事になればお前達の方が困るだろう?あと数日も経てば街の食料も尽きて全員が餓死してしまうだけだぞ!!」
ガルファンの言葉通り、街の備蓄が少ない13番街では籠城したところで数日も持たずに食料が失ってしまう。その一方でガルファンが率いる軍隊は大量の物資を運んでおり、約一か月分の食料を既に確保していた。
「く、クスキの奴はもういない。こちらが用がある時に勝手に現れて情報だけを渡して姿を消すんだ……」
「そんな奴をよくも信用したな!?」
「いや、それはあんたも言える事でしょうが」
ガルルの言葉を聞いてガオンは驚いた声を上げるが、リディアが冷静に突っ込む。ガオンもクズノに騙されていた立場であり、両者共に素性も明かさないクズノを信用しきってとんでもない事態を引き起こしてしまった。しかし、ここでルノはある疑問を抱く。
「そういえばクズノという人はどんな能力を持っているの?詳しくは聞いてなかったけど……」
「あいつは戦闘が苦手だから策略を用いて他の人間を利用する事を好むわ。能力という程でもないけど、人を騙す事に長けていて他人の弱味を見つけ出す事に関しては誰よりも鼻が鋭いわね。正に「洗脳」のように他人を操る事が出来るの」
「うむ……言われてみれば確かに俺も奴の話に乗せられてとんでもない事をしてしまったな。もっと早くに奴の目的に気づくべきだった」
リディアの言葉を聞いてガオンは心当たりがあるのか渋い表情を浮かべて腕を組み、これまでのクズノの行動を思い返せばいくらでも怪しい点はあった。しかし、ガオンはそんな事も気づかずにクズノの事を信用しきってしまい、結果としてはルノが訪れなければ今頃は大量の傭兵と配下と共に獣人国の軍隊に戦闘を挑んでいただろう。
クズノの自体はリディアによればそれほど強い戦闘力を持っているわけではないが、彼の恐ろしさは人心を利用して最悪の結果を齎す事に有り、自分は決して手を汚さずに他人を利用するという点では魔王よりも厄介な存在と言える。クズノを捕まえる事が出来れば今回の事態を全て彼の責任として押し付ける事も出来るが、肝心のクズノの居場所が掴めなければ意味はない。
「ああ、もう面倒くさいわね!!獣人国の軍隊だか何だか知らないけど、要はこの王子を人質にすれば奴等は襲ってこないんでしょう!?だったらこいつを磔にして晒しておけばいいのよ!!」
「そ、そんな!?」
「いや、落ち着け……それでは何の解決にもならんだろう。この馬鹿王子がここに居る限りは軍隊が襲う事はないが、逆に言えば王子がここに居ない限りは奴等は襲撃を仕掛けてくる。下手に拷問紛いの事をして王子が死んだらどうする気だ?」
「拷問!?」
「お兄さんが魔法の力で大きな竜をまた作るのはどうですか?きっと兵士の皆さんも驚いて逃げちゃうと思います!!」
「竜だとっ!?」
「さっきからうるさいなこの人……」
会話の最中にちょくちょく反応するガルルを無視してルノ達は話し合い、どうやって穏便に獣人国の軍隊を追い返すのか悩む。先日のようにルノの魔法の力を見せつけて強引に降伏させるという手段もあるが、この方法だとルノがこの国から立ち去った時に問題がある。ルノの力で降伏した兵士達がルノが居なくなった後に従い続けるとは限らず、根本的な解決には至らない。
今回の相手が国家の軍隊である事が問題であり、相手が人間(性格には獣人だが)である以上はルノは本気で戦う事は出来ない。人殺しを恐れるルノが軍隊を相手に強力な魔法を使用する事は出来ず、せいぜい怖がらせる程度の事しか出来ないのも問題だった。だが、あまりにこの国に長居すると帝国の皆に迷惑を掛けてしまうと考えたルノはどうにか軍隊を退散させる方法を考える。
(何か方法はないかな……ガルル王子を改心させて軍隊を引き換えさせる?いや、この王子が素直に改心するとは思えないし……待てよ?)
妙案が思いついたルノは他の人間に自分が考え付いた案を口にすると、全員に驚かれるが確かに実現性が高く、確実に軍隊の戦意をそぐ方法なので全員が賛同した――
――数十分後、遂に獣人国の軍隊の本隊が到着し、彼等は最初に13番街を包囲すると陣を築く。王子が街に捕らわれている以上は迂闊に襲撃を仕掛ける事は出来ないが、兵力差は5倍も存在するので自分達が優位であると考え、あくまでも立場が不利であるとは考えずに軍隊を指揮するがルファンは降伏勧告を行う。
「我が名は獣人国の大将軍に任命されたがルファンだ!!謀反人のガオンに告げる!!今すぐに王子を解放して兵士ともども投稿しろ!!そうすれば街の住民には手を出さない!!」
数騎の部下と共にガルファンは街の城門の前で大声をあげるが、城壁の上に立つ兵士達は何も反応を返さず、黙って将軍の様子を伺う。そんな彼等の態度にガルファンは脅迫するように言葉を続ける。
「王子を返さなければこのまま街を包囲する!!そんな事になればお前達の方が困るだろう?あと数日も経てば街の食料も尽きて全員が餓死してしまうだけだぞ!!」
ガルファンの言葉通り、街の備蓄が少ない13番街では籠城したところで数日も持たずに食料が失ってしまう。その一方でガルファンが率いる軍隊は大量の物資を運んでおり、約一か月分の食料を既に確保していた。
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