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獣人国
第二王子の行方
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「あの……少しよろしいでしょうか?」
「どうかした?何か策が思いついたのか?」
ルノ達の話を聞いていたワン子の養父がガルルの元へ近寄り、怯えているガルルに優しく尋ねた。
「第一王子様、一つだけお聞かせください。第二王子様のガウ様と王女のワン子様の行方はご存じですか?」
「何だと……お前達はガウに付き従っているんじゃないのか?そうだ、奴は何処にいる!!ここに連れてこい!!」
「落ち着いて下さいガルル王子!!ここにはガウ王子は居ません!!」
「嘘を吐くな!!お前達が僕ではなくガウの奴に寝返って国を乗っ取ろうとしていたのは知っているんだぞ!!ガオン将軍まで誑かすとは……忌々しい奴等だ!!」
ガルルの言葉に全員が顔を見合わせ、何故かガルルはルノ達がガウ王子を手を組んで自分を陥れようとしていると考えており、溜息を吐きながらガオンが皆の代わりに説明する。
「だから何度も言っているだろう。別に俺が反乱を企てたのは第二王子のためではない、クズノという男に騙されて国を裏切ったのだと……」
「そんなはずがあるか!!ガウの奴が僕の王位を狙っていた事は知っているんだ!!あいつのせいで僕はこんな目に……」
「話を聞かん男だな……いいか?何度でも言うが我等は第二王子の事など知らん。そもそも奴の居場所さえ知らんのだ」
「そういえばあんた、ケモノ島に第二王子が潜んでいると思い込んで港で出航の準備をしていたんじゃないの?」
リディアは最初に獣人国の港に訪れた際、ガーゴイルを利用して兵士達の会話を盗み聞きしたときの事を思い出す。あの時はケモノ島と呼ばれる島に第二王子が潜伏しているという情報が第一王子の元へ届き、第二王子を仕留めるために船の準備と水竜を同行させてケモノ島に向かうと聞いていたのだが、第一王子は不満そうに言い返す。
「白々しい演技をするな。ケモノ島の報告はお前達が流した虚偽の報告だと知っているぞ。港で軍隊が出発した後にガオン将軍が港を占拠して逆に僕達を追い詰めるつもりだったんだろう?」
「お今て、その情報は誰から聞いた?」
「惚けるな!!お前等の行動は全てクスキという僕の配下が調べ上げているんだ!!」
「ちょっと待ちなさい、あんた今なんて言ったの?」
ガルルの言葉を聞いてリディアは血相を変え、何か気になる事があるのかとルノがリディアに視線を向けると、彼女は他の人間に聞こえないようにルノの耳にそっと耳打ちした。
(クスキはクズノのよく使う偽名よ……つまり、こいつもクズノと接触していた事になるわ)
(何だって……!?)
どうやらクズノはガオンだけではなく、獣人国の王子であるガルルとも接触していたらしく、話を聞く限りではガルルはクスキという人物を相当に信頼していた。そして今回の一件もクスキからの連絡を受けて13番街に襲撃を仕掛けるように命じたという。
「あんた、そのクスキという奴とどういう関係なのよ?」
「関係だと?あいつは僕の優秀な部下さ、種族が人間であるという事が少し気に食わないけど、色々と情報を集めてくれる便利な奴さ。あいつの助言のお陰で僕は弟の本性を知ることが出来たんだ!!」
「本性だと?」
「お前等はガウのうわべに騙されているんだよ!!あいつはいつも父上に媚びを売っては僕の事を小馬鹿にしていたんだ!!普段はいい子ちゃんぶっていたけど、影で他の家臣と手を組んで僕の王位を狙おうとしていたんだぞ!!」
「……でも、本当に第二王子が王座を狙っていたんですか?証拠はあるんですか?」
「そ、それは……ない、けど……」
第二王子であるガウと第一王子であるガルルの不仲は世間に広まる程に有名な話だったが、第二王子のガウを王位継承に促す家臣は多数存在した。しかし、肝心のガウが王座を狙っているという証拠はなく、むしろ自分が王位に就くために他の兄妹を狙うガルルの方が裏切ったとしか思えない。
「どうしようもない奴ね……いい?あんたが信頼しているそのクスキという奴が黒幕よ」
「な、何を言っている!?いい加減なことを言うな!!」
「いいから最後まで話を聞きなさいよ!!このすっとこどっこい!!」
「シャアッ!!」
「あいだぁっ!?」
リディアの意思に応じてガーゴイルがガルルの頭を軽く叩き、勢いは強くはなかったとはいえ、岩石のような硬度を誇る肉体を持つガーゴイルの拳骨を喰らってガルルは頭を抑える。そんな彼に対してリディアはクズノの正体を明かす。
「クスキというのは偽名で、その男の本当の名前は「クズノ」よ。クズノがあんたに近づいたのは第一王子という立場を利用して色々と仕出かすつもりだったのよ。ちなみにこの猫のおっさんもクズノの奴に騙されていたわ」
「誰が猫だ!!ごほんっ……まあいい、ガルル王子よ。この女の言うとおりだ、俺達はクズノとやらの掌の上で弄ばれていたのだ」
「そ、そんなバカな……」
衝撃の事実にガルル王子は動揺を隠せず、自分の味方をしてくれていたクズノが裏切り者だと伝えられても信じられるはずがなく、必死に否定しようとしたが上手く言葉に出来なかった。
「どうかした?何か策が思いついたのか?」
ルノ達の話を聞いていたワン子の養父がガルルの元へ近寄り、怯えているガルルに優しく尋ねた。
「第一王子様、一つだけお聞かせください。第二王子様のガウ様と王女のワン子様の行方はご存じですか?」
「何だと……お前達はガウに付き従っているんじゃないのか?そうだ、奴は何処にいる!!ここに連れてこい!!」
「落ち着いて下さいガルル王子!!ここにはガウ王子は居ません!!」
「嘘を吐くな!!お前達が僕ではなくガウの奴に寝返って国を乗っ取ろうとしていたのは知っているんだぞ!!ガオン将軍まで誑かすとは……忌々しい奴等だ!!」
ガルルの言葉に全員が顔を見合わせ、何故かガルルはルノ達がガウ王子を手を組んで自分を陥れようとしていると考えており、溜息を吐きながらガオンが皆の代わりに説明する。
「だから何度も言っているだろう。別に俺が反乱を企てたのは第二王子のためではない、クズノという男に騙されて国を裏切ったのだと……」
「そんなはずがあるか!!ガウの奴が僕の王位を狙っていた事は知っているんだ!!あいつのせいで僕はこんな目に……」
「話を聞かん男だな……いいか?何度でも言うが我等は第二王子の事など知らん。そもそも奴の居場所さえ知らんのだ」
「そういえばあんた、ケモノ島に第二王子が潜んでいると思い込んで港で出航の準備をしていたんじゃないの?」
リディアは最初に獣人国の港に訪れた際、ガーゴイルを利用して兵士達の会話を盗み聞きしたときの事を思い出す。あの時はケモノ島と呼ばれる島に第二王子が潜伏しているという情報が第一王子の元へ届き、第二王子を仕留めるために船の準備と水竜を同行させてケモノ島に向かうと聞いていたのだが、第一王子は不満そうに言い返す。
「白々しい演技をするな。ケモノ島の報告はお前達が流した虚偽の報告だと知っているぞ。港で軍隊が出発した後にガオン将軍が港を占拠して逆に僕達を追い詰めるつもりだったんだろう?」
「お今て、その情報は誰から聞いた?」
「惚けるな!!お前等の行動は全てクスキという僕の配下が調べ上げているんだ!!」
「ちょっと待ちなさい、あんた今なんて言ったの?」
ガルルの言葉を聞いてリディアは血相を変え、何か気になる事があるのかとルノがリディアに視線を向けると、彼女は他の人間に聞こえないようにルノの耳にそっと耳打ちした。
(クスキはクズノのよく使う偽名よ……つまり、こいつもクズノと接触していた事になるわ)
(何だって……!?)
どうやらクズノはガオンだけではなく、獣人国の王子であるガルルとも接触していたらしく、話を聞く限りではガルルはクスキという人物を相当に信頼していた。そして今回の一件もクスキからの連絡を受けて13番街に襲撃を仕掛けるように命じたという。
「あんた、そのクスキという奴とどういう関係なのよ?」
「関係だと?あいつは僕の優秀な部下さ、種族が人間であるという事が少し気に食わないけど、色々と情報を集めてくれる便利な奴さ。あいつの助言のお陰で僕は弟の本性を知ることが出来たんだ!!」
「本性だと?」
「お前等はガウのうわべに騙されているんだよ!!あいつはいつも父上に媚びを売っては僕の事を小馬鹿にしていたんだ!!普段はいい子ちゃんぶっていたけど、影で他の家臣と手を組んで僕の王位を狙おうとしていたんだぞ!!」
「……でも、本当に第二王子が王座を狙っていたんですか?証拠はあるんですか?」
「そ、それは……ない、けど……」
第二王子であるガウと第一王子であるガルルの不仲は世間に広まる程に有名な話だったが、第二王子のガウを王位継承に促す家臣は多数存在した。しかし、肝心のガウが王座を狙っているという証拠はなく、むしろ自分が王位に就くために他の兄妹を狙うガルルの方が裏切ったとしか思えない。
「どうしようもない奴ね……いい?あんたが信頼しているそのクスキという奴が黒幕よ」
「な、何を言っている!?いい加減なことを言うな!!」
「いいから最後まで話を聞きなさいよ!!このすっとこどっこい!!」
「シャアッ!!」
「あいだぁっ!?」
リディアの意思に応じてガーゴイルがガルルの頭を軽く叩き、勢いは強くはなかったとはいえ、岩石のような硬度を誇る肉体を持つガーゴイルの拳骨を喰らってガルルは頭を抑える。そんな彼に対してリディアはクズノの正体を明かす。
「クスキというのは偽名で、その男の本当の名前は「クズノ」よ。クズノがあんたに近づいたのは第一王子という立場を利用して色々と仕出かすつもりだったのよ。ちなみにこの猫のおっさんもクズノの奴に騙されていたわ」
「誰が猫だ!!ごほんっ……まあいい、ガルル王子よ。この女の言うとおりだ、俺達はクズノとやらの掌の上で弄ばれていたのだ」
「そ、そんなバカな……」
衝撃の事実にガルル王子は動揺を隠せず、自分の味方をしてくれていたクズノが裏切り者だと伝えられても信じられるはずがなく、必死に否定しようとしたが上手く言葉に出来なかった。
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