386 / 657
獣人国
第二王子の行方
しおりを挟む
「あの……少しよろしいでしょうか?」
「どうかした?何か策が思いついたのか?」
ルノ達の話を聞いていたワン子の養父がガルルの元へ近寄り、怯えているガルルに優しく尋ねた。
「第一王子様、一つだけお聞かせください。第二王子様のガウ様と王女のワン子様の行方はご存じですか?」
「何だと……お前達はガウに付き従っているんじゃないのか?そうだ、奴は何処にいる!!ここに連れてこい!!」
「落ち着いて下さいガルル王子!!ここにはガウ王子は居ません!!」
「嘘を吐くな!!お前達が僕ではなくガウの奴に寝返って国を乗っ取ろうとしていたのは知っているんだぞ!!ガオン将軍まで誑かすとは……忌々しい奴等だ!!」
ガルルの言葉に全員が顔を見合わせ、何故かガルルはルノ達がガウ王子を手を組んで自分を陥れようとしていると考えており、溜息を吐きながらガオンが皆の代わりに説明する。
「だから何度も言っているだろう。別に俺が反乱を企てたのは第二王子のためではない、クズノという男に騙されて国を裏切ったのだと……」
「そんなはずがあるか!!ガウの奴が僕の王位を狙っていた事は知っているんだ!!あいつのせいで僕はこんな目に……」
「話を聞かん男だな……いいか?何度でも言うが我等は第二王子の事など知らん。そもそも奴の居場所さえ知らんのだ」
「そういえばあんた、ケモノ島に第二王子が潜んでいると思い込んで港で出航の準備をしていたんじゃないの?」
リディアは最初に獣人国の港に訪れた際、ガーゴイルを利用して兵士達の会話を盗み聞きしたときの事を思い出す。あの時はケモノ島と呼ばれる島に第二王子が潜伏しているという情報が第一王子の元へ届き、第二王子を仕留めるために船の準備と水竜を同行させてケモノ島に向かうと聞いていたのだが、第一王子は不満そうに言い返す。
「白々しい演技をするな。ケモノ島の報告はお前達が流した虚偽の報告だと知っているぞ。港で軍隊が出発した後にガオン将軍が港を占拠して逆に僕達を追い詰めるつもりだったんだろう?」
「お今て、その情報は誰から聞いた?」
「惚けるな!!お前等の行動は全てクスキという僕の配下が調べ上げているんだ!!」
「ちょっと待ちなさい、あんた今なんて言ったの?」
ガルルの言葉を聞いてリディアは血相を変え、何か気になる事があるのかとルノがリディアに視線を向けると、彼女は他の人間に聞こえないようにルノの耳にそっと耳打ちした。
(クスキはクズノのよく使う偽名よ……つまり、こいつもクズノと接触していた事になるわ)
(何だって……!?)
どうやらクズノはガオンだけではなく、獣人国の王子であるガルルとも接触していたらしく、話を聞く限りではガルルはクスキという人物を相当に信頼していた。そして今回の一件もクスキからの連絡を受けて13番街に襲撃を仕掛けるように命じたという。
「あんた、そのクスキという奴とどういう関係なのよ?」
「関係だと?あいつは僕の優秀な部下さ、種族が人間であるという事が少し気に食わないけど、色々と情報を集めてくれる便利な奴さ。あいつの助言のお陰で僕は弟の本性を知ることが出来たんだ!!」
「本性だと?」
「お前等はガウのうわべに騙されているんだよ!!あいつはいつも父上に媚びを売っては僕の事を小馬鹿にしていたんだ!!普段はいい子ちゃんぶっていたけど、影で他の家臣と手を組んで僕の王位を狙おうとしていたんだぞ!!」
「……でも、本当に第二王子が王座を狙っていたんですか?証拠はあるんですか?」
「そ、それは……ない、けど……」
第二王子であるガウと第一王子であるガルルの不仲は世間に広まる程に有名な話だったが、第二王子のガウを王位継承に促す家臣は多数存在した。しかし、肝心のガウが王座を狙っているという証拠はなく、むしろ自分が王位に就くために他の兄妹を狙うガルルの方が裏切ったとしか思えない。
「どうしようもない奴ね……いい?あんたが信頼しているそのクスキという奴が黒幕よ」
「な、何を言っている!?いい加減なことを言うな!!」
「いいから最後まで話を聞きなさいよ!!このすっとこどっこい!!」
「シャアッ!!」
「あいだぁっ!?」
リディアの意思に応じてガーゴイルがガルルの頭を軽く叩き、勢いは強くはなかったとはいえ、岩石のような硬度を誇る肉体を持つガーゴイルの拳骨を喰らってガルルは頭を抑える。そんな彼に対してリディアはクズノの正体を明かす。
「クスキというのは偽名で、その男の本当の名前は「クズノ」よ。クズノがあんたに近づいたのは第一王子という立場を利用して色々と仕出かすつもりだったのよ。ちなみにこの猫のおっさんもクズノの奴に騙されていたわ」
「誰が猫だ!!ごほんっ……まあいい、ガルル王子よ。この女の言うとおりだ、俺達はクズノとやらの掌の上で弄ばれていたのだ」
「そ、そんなバカな……」
衝撃の事実にガルル王子は動揺を隠せず、自分の味方をしてくれていたクズノが裏切り者だと伝えられても信じられるはずがなく、必死に否定しようとしたが上手く言葉に出来なかった。
「どうかした?何か策が思いついたのか?」
ルノ達の話を聞いていたワン子の養父がガルルの元へ近寄り、怯えているガルルに優しく尋ねた。
「第一王子様、一つだけお聞かせください。第二王子様のガウ様と王女のワン子様の行方はご存じですか?」
「何だと……お前達はガウに付き従っているんじゃないのか?そうだ、奴は何処にいる!!ここに連れてこい!!」
「落ち着いて下さいガルル王子!!ここにはガウ王子は居ません!!」
「嘘を吐くな!!お前達が僕ではなくガウの奴に寝返って国を乗っ取ろうとしていたのは知っているんだぞ!!ガオン将軍まで誑かすとは……忌々しい奴等だ!!」
ガルルの言葉に全員が顔を見合わせ、何故かガルルはルノ達がガウ王子を手を組んで自分を陥れようとしていると考えており、溜息を吐きながらガオンが皆の代わりに説明する。
「だから何度も言っているだろう。別に俺が反乱を企てたのは第二王子のためではない、クズノという男に騙されて国を裏切ったのだと……」
「そんなはずがあるか!!ガウの奴が僕の王位を狙っていた事は知っているんだ!!あいつのせいで僕はこんな目に……」
「話を聞かん男だな……いいか?何度でも言うが我等は第二王子の事など知らん。そもそも奴の居場所さえ知らんのだ」
「そういえばあんた、ケモノ島に第二王子が潜んでいると思い込んで港で出航の準備をしていたんじゃないの?」
リディアは最初に獣人国の港に訪れた際、ガーゴイルを利用して兵士達の会話を盗み聞きしたときの事を思い出す。あの時はケモノ島と呼ばれる島に第二王子が潜伏しているという情報が第一王子の元へ届き、第二王子を仕留めるために船の準備と水竜を同行させてケモノ島に向かうと聞いていたのだが、第一王子は不満そうに言い返す。
「白々しい演技をするな。ケモノ島の報告はお前達が流した虚偽の報告だと知っているぞ。港で軍隊が出発した後にガオン将軍が港を占拠して逆に僕達を追い詰めるつもりだったんだろう?」
「お今て、その情報は誰から聞いた?」
「惚けるな!!お前等の行動は全てクスキという僕の配下が調べ上げているんだ!!」
「ちょっと待ちなさい、あんた今なんて言ったの?」
ガルルの言葉を聞いてリディアは血相を変え、何か気になる事があるのかとルノがリディアに視線を向けると、彼女は他の人間に聞こえないようにルノの耳にそっと耳打ちした。
(クスキはクズノのよく使う偽名よ……つまり、こいつもクズノと接触していた事になるわ)
(何だって……!?)
どうやらクズノはガオンだけではなく、獣人国の王子であるガルルとも接触していたらしく、話を聞く限りではガルルはクスキという人物を相当に信頼していた。そして今回の一件もクスキからの連絡を受けて13番街に襲撃を仕掛けるように命じたという。
「あんた、そのクスキという奴とどういう関係なのよ?」
「関係だと?あいつは僕の優秀な部下さ、種族が人間であるという事が少し気に食わないけど、色々と情報を集めてくれる便利な奴さ。あいつの助言のお陰で僕は弟の本性を知ることが出来たんだ!!」
「本性だと?」
「お前等はガウのうわべに騙されているんだよ!!あいつはいつも父上に媚びを売っては僕の事を小馬鹿にしていたんだ!!普段はいい子ちゃんぶっていたけど、影で他の家臣と手を組んで僕の王位を狙おうとしていたんだぞ!!」
「……でも、本当に第二王子が王座を狙っていたんですか?証拠はあるんですか?」
「そ、それは……ない、けど……」
第二王子であるガウと第一王子であるガルルの不仲は世間に広まる程に有名な話だったが、第二王子のガウを王位継承に促す家臣は多数存在した。しかし、肝心のガウが王座を狙っているという証拠はなく、むしろ自分が王位に就くために他の兄妹を狙うガルルの方が裏切ったとしか思えない。
「どうしようもない奴ね……いい?あんたが信頼しているそのクスキという奴が黒幕よ」
「な、何を言っている!?いい加減なことを言うな!!」
「いいから最後まで話を聞きなさいよ!!このすっとこどっこい!!」
「シャアッ!!」
「あいだぁっ!?」
リディアの意思に応じてガーゴイルがガルルの頭を軽く叩き、勢いは強くはなかったとはいえ、岩石のような硬度を誇る肉体を持つガーゴイルの拳骨を喰らってガルルは頭を抑える。そんな彼に対してリディアはクズノの正体を明かす。
「クスキというのは偽名で、その男の本当の名前は「クズノ」よ。クズノがあんたに近づいたのは第一王子という立場を利用して色々と仕出かすつもりだったのよ。ちなみにこの猫のおっさんもクズノの奴に騙されていたわ」
「誰が猫だ!!ごほんっ……まあいい、ガルル王子よ。この女の言うとおりだ、俺達はクズノとやらの掌の上で弄ばれていたのだ」
「そ、そんなバカな……」
衝撃の事実にガルル王子は動揺を隠せず、自分の味方をしてくれていたクズノが裏切り者だと伝えられても信じられるはずがなく、必死に否定しようとしたが上手く言葉に出来なかった。
2
お気に入りに追加
11,318
あなたにおすすめの小説
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
6月8日、HOTランキング1位にランクインしました。たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。
カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。
一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。