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獣人国
カーレース(氷車VS騎兵集団)
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「ほら、しっかり掴まってないと怪我しますよ!!」
「んん~!?」
氷車を操作しながらルノは地上を疾走し、空中へ浮上させようとした。しかし、飛び立とうとした氷車の背後から熱線が放たれ、飛行を妨げる。
「うわっ!?危なっ!?」
「ふんがっ!?」
『あそこだ!!逃がすな!!』
『王子を取り返せっ!!』
氷車の外から兵士達の声が響き渡り、直後に馬ではなく狼に乗り込んだ兵士の集団が現れる。彼等はガルフォンの直属の配下である騎兵部隊であり、ガルムと呼ばれる狼型の魔獣を駆使して氷車の追跡を行う。
『王子を取り返せ!!』
『魔術師部隊も強力しろ!!』
『絶対に逃すな!!』
「これは……少し不味いかも」
氷車の周囲にガルムに乗り込んだ兵士達が取り囲み、彼等の背中には先ほどまで氷盾に攻撃を与えていた魔術師も同乗していた。兵士達は氷車と堂々の速度で移動を行い、どうにか氷車を破壊して車内のガルル王子を救出するために追跡を行う。
『このっ!!このっ!!』
『駄目だ、硬すぎて武器が弾かれる!!』
『車輪を狙えっ!!』
『いや、この妙な馬車は浮かんで移動しているぞ!?車輪が回っていない……何なんだこれは!?』
「しつこい人達だな……王子さん、少し頭を下げて!!」
「んがっ!?」
前方に移動して氷車の走行を阻止しようとした兵士の集団をルノは横に逸れて回避すると、プロレーサー並みのドライブテクニックで障害物を回避しながら移動を行う。氷車はあくまでもルノの意思で操作するので運転技術は必要とはせず、兵士達の妨害を受けながらもルノは13番街に向けて氷車を移動させる。
「んん~!!」
「静かにしてください!!これ以上に騒ぐと凍らせますよ!!」
『王子を離せ!!フレイム……!!』
隣の座席で喚く王子にルノは怒鳴ると、今度は運転席側の窓に向けて杖を構える魔術師の姿を確認し、相手が魔法を発動させる前に減速して攻撃を躱す。
『アロー!!』
『うわぁっ!?』
『ば、馬鹿野郎!!何処を狙ってやがるんだ!!』
氷車が回避した事でガルムに乗り込んだ魔術師の砲撃魔法が氷車の反対側にて追跡していた兵士達に危うく衝突しかけ、車外で兵士の罵声が響き渡る。魔術師の方も故意で狙ったわけではないが、やはり乗りなれない狼の背中から高速移動中の氷車を狙い撃つ事は難しく、せいぜい彼等が出来るのは氷車が空を飛行する行動に移る事を阻害する程度のことしか出来ない。
(このままじゃ不味いな……速度をもっと上昇させる事は出来るけど、兵士の周りを取り囲まれた状態じゃ兵士の人達を巻き込むかもしれない)
現在の氷車は前後左右を兵士達に取り囲まれており、ここで下手に速度を上昇させれば兵士達を突き飛ばしてしまう。現在の移動速度はルノの体感的に100キロを超えており、この速度で氷車が衝突した兵士は狼ともども地面に叩きつけられるだけで大怪我を負い、下手をしたら死んでしまう可能性もある。
(空に逃げようにも魔術師が邪魔をして上手くいかないし、まさに八方塞がりな状況だな……ん?あれは……)
ルノは前方の窓から見える空を見て空中に点のような物が浮かんでいる事に気づき、その正体に気づいたルノはこの状況を打破するために掌を前方に構えた。
「一か八か……助けてください!!」
「ふんがっ……!?」
ガルルは正面の窓に手を伸ばしたルノを見て疑問を抱き、助手席から前方に自分も視線を向けると、空中からこちらに向けて接近する物体を確認して目を見開く。
『おあぁああああっ!?』
『な、何だ!?』
『円盤!?空から円盤が来るぞ!?』
『誰か乗ってるぞあれ!?』
車外からガオンの悲鳴が響き渡り、兵士達の慌てふためく声も同時に上がった。空の上から氷塊の円盤にしがみついたガオンが姿を現し、氷車の前方を塞ぐ先頭集団に向けて突進するように接近する。唐突に現れた円盤と将軍を見て先頭を塞いでいた兵士達は悲鳴をあげて左右に分かれてしまい、その隙を逃さずにルノは氷車を前進させて外にいるガオンに大声を上げる。
「ガオンさん!!後ろの荷台に乗って!!」
「うおおおおおっ!?」
「ふがぁっ!?」
ルノの声に反応してガオンは空中で円盤を手放すと軽トラの形状をしていた氷車の荷台に見事に着地(墜落)すると、後続の兵士の集団から一気に距離を離すためにルノは移動速度を上昇させた。
「飛ばしますよ!!二人とも、しっかり掴まっててください!!」
「ふぎぎぎっ……!?」
「ちょ、落ちる!!助けてくれぇっ!?」
氷車の速度が上昇した事でガルルはシートベルトが存在しない座席に押し付けられ、危うく荷台から落ちそうになったガオンは振り落とされないように必死に車体にしがみつく。やがて兵士達の姿が見えなくなるまでルノは氷車を移動させ、もう安全だと判断した時点で速度を落として二人の様子を伺う。
「ふう、もう大丈夫ですよ。大丈夫ですか二人とも……」
「おえええっ……!!」
「…………」
ルノが荷台に振り返るとガオンは既に嘔吐しており、助手席のガルルに至っては途中で気絶していたのか白目を剥いたまま動かなかった――
「んん~!?」
氷車を操作しながらルノは地上を疾走し、空中へ浮上させようとした。しかし、飛び立とうとした氷車の背後から熱線が放たれ、飛行を妨げる。
「うわっ!?危なっ!?」
「ふんがっ!?」
『あそこだ!!逃がすな!!』
『王子を取り返せっ!!』
氷車の外から兵士達の声が響き渡り、直後に馬ではなく狼に乗り込んだ兵士の集団が現れる。彼等はガルフォンの直属の配下である騎兵部隊であり、ガルムと呼ばれる狼型の魔獣を駆使して氷車の追跡を行う。
『王子を取り返せ!!』
『魔術師部隊も強力しろ!!』
『絶対に逃すな!!』
「これは……少し不味いかも」
氷車の周囲にガルムに乗り込んだ兵士達が取り囲み、彼等の背中には先ほどまで氷盾に攻撃を与えていた魔術師も同乗していた。兵士達は氷車と堂々の速度で移動を行い、どうにか氷車を破壊して車内のガルル王子を救出するために追跡を行う。
『このっ!!このっ!!』
『駄目だ、硬すぎて武器が弾かれる!!』
『車輪を狙えっ!!』
『いや、この妙な馬車は浮かんで移動しているぞ!?車輪が回っていない……何なんだこれは!?』
「しつこい人達だな……王子さん、少し頭を下げて!!」
「んがっ!?」
前方に移動して氷車の走行を阻止しようとした兵士の集団をルノは横に逸れて回避すると、プロレーサー並みのドライブテクニックで障害物を回避しながら移動を行う。氷車はあくまでもルノの意思で操作するので運転技術は必要とはせず、兵士達の妨害を受けながらもルノは13番街に向けて氷車を移動させる。
「んん~!!」
「静かにしてください!!これ以上に騒ぐと凍らせますよ!!」
『王子を離せ!!フレイム……!!』
隣の座席で喚く王子にルノは怒鳴ると、今度は運転席側の窓に向けて杖を構える魔術師の姿を確認し、相手が魔法を発動させる前に減速して攻撃を躱す。
『アロー!!』
『うわぁっ!?』
『ば、馬鹿野郎!!何処を狙ってやがるんだ!!』
氷車が回避した事でガルムに乗り込んだ魔術師の砲撃魔法が氷車の反対側にて追跡していた兵士達に危うく衝突しかけ、車外で兵士の罵声が響き渡る。魔術師の方も故意で狙ったわけではないが、やはり乗りなれない狼の背中から高速移動中の氷車を狙い撃つ事は難しく、せいぜい彼等が出来るのは氷車が空を飛行する行動に移る事を阻害する程度のことしか出来ない。
(このままじゃ不味いな……速度をもっと上昇させる事は出来るけど、兵士の周りを取り囲まれた状態じゃ兵士の人達を巻き込むかもしれない)
現在の氷車は前後左右を兵士達に取り囲まれており、ここで下手に速度を上昇させれば兵士達を突き飛ばしてしまう。現在の移動速度はルノの体感的に100キロを超えており、この速度で氷車が衝突した兵士は狼ともども地面に叩きつけられるだけで大怪我を負い、下手をしたら死んでしまう可能性もある。
(空に逃げようにも魔術師が邪魔をして上手くいかないし、まさに八方塞がりな状況だな……ん?あれは……)
ルノは前方の窓から見える空を見て空中に点のような物が浮かんでいる事に気づき、その正体に気づいたルノはこの状況を打破するために掌を前方に構えた。
「一か八か……助けてください!!」
「ふんがっ……!?」
ガルルは正面の窓に手を伸ばしたルノを見て疑問を抱き、助手席から前方に自分も視線を向けると、空中からこちらに向けて接近する物体を確認して目を見開く。
『おあぁああああっ!?』
『な、何だ!?』
『円盤!?空から円盤が来るぞ!?』
『誰か乗ってるぞあれ!?』
車外からガオンの悲鳴が響き渡り、兵士達の慌てふためく声も同時に上がった。空の上から氷塊の円盤にしがみついたガオンが姿を現し、氷車の前方を塞ぐ先頭集団に向けて突進するように接近する。唐突に現れた円盤と将軍を見て先頭を塞いでいた兵士達は悲鳴をあげて左右に分かれてしまい、その隙を逃さずにルノは氷車を前進させて外にいるガオンに大声を上げる。
「ガオンさん!!後ろの荷台に乗って!!」
「うおおおおおっ!?」
「ふがぁっ!?」
ルノの声に反応してガオンは空中で円盤を手放すと軽トラの形状をしていた氷車の荷台に見事に着地(墜落)すると、後続の兵士の集団から一気に距離を離すためにルノは移動速度を上昇させた。
「飛ばしますよ!!二人とも、しっかり掴まっててください!!」
「ふぎぎぎっ……!?」
「ちょ、落ちる!!助けてくれぇっ!?」
氷車の速度が上昇した事でガルルはシートベルトが存在しない座席に押し付けられ、危うく荷台から落ちそうになったガオンは振り落とされないように必死に車体にしがみつく。やがて兵士達の姿が見えなくなるまでルノは氷車を移動させ、もう安全だと判断した時点で速度を落として二人の様子を伺う。
「ふう、もう大丈夫ですよ。大丈夫ですか二人とも……」
「おえええっ……!!」
「…………」
ルノが荷台に振り返るとガオンは既に嘔吐しており、助手席のガルルに至っては途中で気絶していたのか白目を剥いたまま動かなかった――
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