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獣人国
押し寄せる軍隊
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「落ち着け、一体何が起きた?」
「そ、外に……ウォン将軍の使者が訪れています!!」
「何だと!?もう来たのか!?」
伝令兵の言葉を聞いてガオンは驚きを隠せず、いずれは訪れるとは予測していたとはいえ、すぐに使者の元へ向かおうとする。しかし、伝令兵は丸められた羊皮紙を取り出すとガオンに差し出す。
「そ、それが……この報告書をガオン将軍に見せろとだけ言い残して、既に使者は立ち去られました」
「何?どういう事だ?」
兵士の話によるとウォン将軍が送り込んだ使者は報告書だけを渡すと逃げるように立ち去ったらしく、不思議に思いながらガオンは報告書の内容を読み解くと、記されている文章を見て目を見開く。
「ば、馬鹿な……奴等、何を考えている!?」
「どうかしたんですか?」
「……呼んでみろ」
ガオンの取り乱し様に疑問を抱いたルノが尋ねると、彼は報告書を差し出して中身を読むように促す。重要機密と思われる資料を自分が読んでも大丈夫なのかと心配しながらもルノは中身を確認すると、そこには予想外の内容が記されていた。
「これは……果たし状ですか?」
「似たようなものだ……奴らめ、数日後にこの街に襲撃を仕掛けるつもりらしい」
「ええっ!?」
報告書の内容は「獣人国に反旗を翻したガオン将軍及び配下の兵士は即刻に降伏し、謀反人と供託した疑いがある13番街の民衆にも厳罰を与える。仮にこの命令に従わない場合、3万人の軍隊を派遣して殲滅を行う。降伏の返答は1日以内に行え」と記されていた。
「ふざけおって!!一体何を考えているのだウォンめ……そもそも奴は港からケモノ島に向かったのではないのか!?クズノめ、この俺を騙したのか!!」
「落ち着いて下さい。それよりもこの手紙の内容だと降伏の返事を1日以内に行わないといけないらしいですけど、ここから港まで1日で移動できる距離にあるんですか?」
「無理だ……今から早馬を飛ばしても港まで2日は掛かる。これでは返事のしようがないではないか!!くそがぁっ!!」
ガオンは苛立ちを隠せずに防壁の壁を蹴り付け、このままでは港に滞在している第一王子の軍隊が13番街に襲撃を仕掛けるだろう。しかし、このタイミングで報告書が届いたことにルノは疑問を抱き、そもそも返事が間に合わない事を想定して記された手紙の内容も不審な点が多い。
「もしかして……これもクズノの策略?ガオン将軍とウォン将軍を利用して獣人国の軍隊を争わせようとしているんじゃ……」
「な、」何だと!?くっ……ぬかった!!俺としたことがこのような策に嵌るとは……」
ルノの言葉にガオンは心当たりがあるのか悔しげな表情を浮かべ、何度も床に拳を叩きつけた。しかし、今更悔やんだところで事態は好転せず、恐らく数日後には軍隊が押し寄せてくるだろう。
「今から俺が港に向かってどうにか軍隊を説得してきましょうか?」
「何!?そんな事が出来るのか?」
「俺の飛翔術なら港まで移動するのに1時間も掛かりませんし、それに今回の出来事が魔王軍の策略だと説明すればガオン将軍も厳罰も免れないと思いますし……」
「ううむ……しかし、お前ひとりが向かったところで話を聞いてくれるかどうか……よし、俺も共に連れて行ってくれ!!俺一人ならば奴等も警戒しないだろう。俺が付いて行っても大丈夫か?」
「まあ、氷塊の魔法を使えば間に合うとは思いますけど……一人で大丈夫ですか?」
「仕方あるまい、それと万が一に俺の身に何かあった場合、この街と兵士達の事はお前に任せたいのだが……」
「た、大変です将軍!!」
会話の最中に再び慌てふためいた兵士達が殺到し、今度は何事かと二人は振り返ると、兵士達は防壁の上からある方向を指差す。
「あれをご覧ください!!うぉ、ウォン将軍の部隊が迫っています!!」
「な、何だとぉっ!?」
「えええっ!?」
兵士の言葉にガオンとルノは防壁から身を乗り出すと、確かに砂塵を巻き上げながら接近する騎兵の集団を確認し、その数は5000は軽く存在した。恐らくはウォン将軍が指揮する軍隊の先方隊で間違いなく、先ほど使者を送り込んだにも関わらずに既に兵隊を街にまで差し向けていた事になる。
「早い!!早すぎるだろうが!?一体何を考えているのだウォンの奴め!!」
「あっ……もしかして、さっきのウォン将軍の使者もクズノの差し金だったりして……」
「おのれぇええっ!!あのクソガキがぁああっ!!」
ガオンの虚しい怒鳴り声が街中に響き渡り、配給を受けていた数万人の民衆も異変に気づいたらしく、13番街に接近してくる騎兵の集団を見て悲鳴を上げる。
「ぐ、軍隊だぁっ!?」
「あの旗印……ウォン大将軍の旗だぞ!?」
「な、何でこんな時に……」
「おい、あいつらこっちに向かっているぞ!?」
「お、落ち着け!!落ち着くんだ皆!!」
街の外に並んでいた民衆が大混乱に陥り、ガオンの配下の兵士達も戸惑う。中にはウォン将軍から借り受けた兵士もいるため、彼等は何が起きているのか理解できずに防壁の上に存在するルノとガオンに問い質す。
「そ、外に……ウォン将軍の使者が訪れています!!」
「何だと!?もう来たのか!?」
伝令兵の言葉を聞いてガオンは驚きを隠せず、いずれは訪れるとは予測していたとはいえ、すぐに使者の元へ向かおうとする。しかし、伝令兵は丸められた羊皮紙を取り出すとガオンに差し出す。
「そ、それが……この報告書をガオン将軍に見せろとだけ言い残して、既に使者は立ち去られました」
「何?どういう事だ?」
兵士の話によるとウォン将軍が送り込んだ使者は報告書だけを渡すと逃げるように立ち去ったらしく、不思議に思いながらガオンは報告書の内容を読み解くと、記されている文章を見て目を見開く。
「ば、馬鹿な……奴等、何を考えている!?」
「どうかしたんですか?」
「……呼んでみろ」
ガオンの取り乱し様に疑問を抱いたルノが尋ねると、彼は報告書を差し出して中身を読むように促す。重要機密と思われる資料を自分が読んでも大丈夫なのかと心配しながらもルノは中身を確認すると、そこには予想外の内容が記されていた。
「これは……果たし状ですか?」
「似たようなものだ……奴らめ、数日後にこの街に襲撃を仕掛けるつもりらしい」
「ええっ!?」
報告書の内容は「獣人国に反旗を翻したガオン将軍及び配下の兵士は即刻に降伏し、謀反人と供託した疑いがある13番街の民衆にも厳罰を与える。仮にこの命令に従わない場合、3万人の軍隊を派遣して殲滅を行う。降伏の返答は1日以内に行え」と記されていた。
「ふざけおって!!一体何を考えているのだウォンめ……そもそも奴は港からケモノ島に向かったのではないのか!?クズノめ、この俺を騙したのか!!」
「落ち着いて下さい。それよりもこの手紙の内容だと降伏の返事を1日以内に行わないといけないらしいですけど、ここから港まで1日で移動できる距離にあるんですか?」
「無理だ……今から早馬を飛ばしても港まで2日は掛かる。これでは返事のしようがないではないか!!くそがぁっ!!」
ガオンは苛立ちを隠せずに防壁の壁を蹴り付け、このままでは港に滞在している第一王子の軍隊が13番街に襲撃を仕掛けるだろう。しかし、このタイミングで報告書が届いたことにルノは疑問を抱き、そもそも返事が間に合わない事を想定して記された手紙の内容も不審な点が多い。
「もしかして……これもクズノの策略?ガオン将軍とウォン将軍を利用して獣人国の軍隊を争わせようとしているんじゃ……」
「な、」何だと!?くっ……ぬかった!!俺としたことがこのような策に嵌るとは……」
ルノの言葉にガオンは心当たりがあるのか悔しげな表情を浮かべ、何度も床に拳を叩きつけた。しかし、今更悔やんだところで事態は好転せず、恐らく数日後には軍隊が押し寄せてくるだろう。
「今から俺が港に向かってどうにか軍隊を説得してきましょうか?」
「何!?そんな事が出来るのか?」
「俺の飛翔術なら港まで移動するのに1時間も掛かりませんし、それに今回の出来事が魔王軍の策略だと説明すればガオン将軍も厳罰も免れないと思いますし……」
「ううむ……しかし、お前ひとりが向かったところで話を聞いてくれるかどうか……よし、俺も共に連れて行ってくれ!!俺一人ならば奴等も警戒しないだろう。俺が付いて行っても大丈夫か?」
「まあ、氷塊の魔法を使えば間に合うとは思いますけど……一人で大丈夫ですか?」
「仕方あるまい、それと万が一に俺の身に何かあった場合、この街と兵士達の事はお前に任せたいのだが……」
「た、大変です将軍!!」
会話の最中に再び慌てふためいた兵士達が殺到し、今度は何事かと二人は振り返ると、兵士達は防壁の上からある方向を指差す。
「あれをご覧ください!!うぉ、ウォン将軍の部隊が迫っています!!」
「な、何だとぉっ!?」
「えええっ!?」
兵士の言葉にガオンとルノは防壁から身を乗り出すと、確かに砂塵を巻き上げながら接近する騎兵の集団を確認し、その数は5000は軽く存在した。恐らくはウォン将軍が指揮する軍隊の先方隊で間違いなく、先ほど使者を送り込んだにも関わらずに既に兵隊を街にまで差し向けていた事になる。
「早い!!早すぎるだろうが!?一体何を考えているのだウォンの奴め!!」
「あっ……もしかして、さっきのウォン将軍の使者もクズノの差し金だったりして……」
「おのれぇええっ!!あのクソガキがぁああっ!!」
ガオンの虚しい怒鳴り声が街中に響き渡り、配給を受けていた数万人の民衆も異変に気づいたらしく、13番街に接近してくる騎兵の集団を見て悲鳴を上げる。
「ぐ、軍隊だぁっ!?」
「あの旗印……ウォン大将軍の旗だぞ!?」
「な、何でこんな時に……」
「おい、あいつらこっちに向かっているぞ!?」
「お、落ち着け!!落ち着くんだ皆!!」
街の外に並んでいた民衆が大混乱に陥り、ガオンの配下の兵士達も戸惑う。中にはウォン将軍から借り受けた兵士もいるため、彼等は何が起きているのか理解できずに防壁の上に存在するルノとガオンに問い質す。
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