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獣人国
ワン子の扱い
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「話は読めたぞ……国王陛下がお前に娘を任せたのは他の王族や家臣に存在を知られないようにするためだな?」
「はい、そうなんです。あの子は残念ながら平民の血を継いでいます……だから王族の後継者とは認められないんです」
「平民の血が流れているだけで……」
「他国の方ではどうかは知りませんが、獣人国は代々王族は自国の貴族としか結婚が許されていません。だからワン子が生まれたと知った国王様は貴族ではない私の元へ赴き、あの子の事を任せたのです」
「何と不憫な……可哀そうな子だ」
話を聞き終えたガオンは心底同乗するように心痛な表情を浮かべ、我が子の面影があるワン子の辛い出生を聞いて同乗せざるを得ない。そんな彼の意外な反応にルノは戸惑いながらもワン子の事を尋ねる。
「それでこの事はワン子にはどう話すんですか?全てを話すつもりですか?」
「正直に言えばあの子には普通の平民として生活を送ってもらいたいと思っていました。自分が捨てられた王族などと知れば傷つくかと思い黙っていましたが、既に将軍に正体を知られた以上は話すしかありません」
「う、うむ……その、すまないな」
「いえ、これも運命なのでしょう。いずれワン子が大人になった時に話そうと思っていたので気にしないでください」
ガオンがワン子が王女だと思い込んだ理由はただの勘違いなのだが、実際にワン子が王族の隠し子だと判明し、彼女には全てを知る権利がある。父親改め養父は妻と相談した後にワン子に全てを話すことを決めた。
「では私は妻の元へ戻ります。申し訳ありませんが、ワン子の事は少しの間だけ頼んで構いませんか?」
「大丈夫です」
「お願いします……あの子は貴方達によく懐いていますから出来れば王女だと知っても態度は変えないようにお願いします」
「そ、そうだな……」
父親は階段を降りると、残されたルノはガオンに視線を向け、何時からワン子の正体を気づいていたのかを尋ねる。
「そういえばガオンさんはどうしてワン子が王女だと知ったんですか?もしかして事前に国王陛下から話を聞いていたとか……?」
「う、うむ。それはだな……その、何だ、そう!!あの娘を見たときに本能が教えてくれたのだ!!あれほどの威厳を放つ娘が平民の娘ではないとな!!」
「威厳……?」
ルノは防壁の上からリディアと遊ぶワン子の姿を確認し、現在はリディアが投げた骨を本物の犬の用に嬉しそうに口で受け止めては彼女の元に戻って渡していた。
「ほ~ら、取ってきなさい!!」
「きゃんきゃんっ♪」
嬉々とした表情で再び投げられた骨をワン子は犬のように四つん這いの状態で駆け抜け、地面に落ちる前に骨を加える。その光景を見て何処に「威厳」を感じるのかとルノはジト目でガオンを見つめると、全身から冷や汗を流しながらガオンは首を逸らす。
「……まあ、ワン子に威厳があるかはどうとして、ガオンさんはこの事実を知ってどう対処するつもりですか?」
「た、対処?」
「一応は立場上はガオンさんは臣下のわけですし、ワン子の事を放っておいてもいいんですか?確かガオンさんは第一王子の派閥じゃ……」
「何だ、そんな事か。安心しろ、俺はあの子の事を誰かに漏らすつもりはない。平和に暮らしている少女を差し出すような真似はせん」
第一王子の派閥に属しているガオンがワン子の存在を第一王子に話さないのかとルノは心配するが、元々ガオンが第一王子に従ったのはクズノからの提案であり、別に彼自身は二人の王子の権力争いに興味はない。それに第一王子は自分が王位を継承するためならば弟や妹の命さえ狙う輩のため、ワン子の存在を報告すれば彼女は無事でいられるはずがない。
「お前が心配する理由は分かるが、もう俺は何もしない……今回の件で民衆に大きな迷惑を掛けた。だから彼等に償いを行った後は軍を抜けるつもりだ」
「え?軍人を辞めちゃうんですか?」
「ああ……というより、いずれ俺の行動は第一王子の耳にも届くだろう。奴の性格から考えて自分に反旗を翻そうとした人間を許すはずがない。きっと近いうちに使者を送り込んで俺を港へ呼び寄せて処刑するか拷問にかけるだろう」
「そう、ですか……」
ガオンの話を聞いてルノは自分の行動で彼が殺されるかもしれないと知り、複雑な感情を抱く。確かにガオンの犯した行動は許される事ではないが、それでも根っからの悪人ではなく、子供を気遣う心を持っている人間だと知ってルノは思い悩む。そんな彼の顔を見てガオンは苦笑いを浮かべた。
「お前の気にすることではない。これは俺の罪だ……昔、国王陛下に民衆を何よりも大事にしろと何度も注意されたのに結局俺はその約束を果たせなかった。ならばせめて最後は彼等に償った後、潔く罰を受けよう」
「ガオンさん……」
「さて、俺はそろそろ行くぞ。部下共を説得して働かせねばな……」
「しょ、将軍!!こちらに居たのですね!!大変です!!」
「何?」
配給の仕事に戻ろうとしたガオンの元に一人の兵士が訪れ、非常に焦った表情を浮かべながら兵士はガオンの前に跪き、顔色を青くさせて報告を行う。
「はい、そうなんです。あの子は残念ながら平民の血を継いでいます……だから王族の後継者とは認められないんです」
「平民の血が流れているだけで……」
「他国の方ではどうかは知りませんが、獣人国は代々王族は自国の貴族としか結婚が許されていません。だからワン子が生まれたと知った国王様は貴族ではない私の元へ赴き、あの子の事を任せたのです」
「何と不憫な……可哀そうな子だ」
話を聞き終えたガオンは心底同乗するように心痛な表情を浮かべ、我が子の面影があるワン子の辛い出生を聞いて同乗せざるを得ない。そんな彼の意外な反応にルノは戸惑いながらもワン子の事を尋ねる。
「それでこの事はワン子にはどう話すんですか?全てを話すつもりですか?」
「正直に言えばあの子には普通の平民として生活を送ってもらいたいと思っていました。自分が捨てられた王族などと知れば傷つくかと思い黙っていましたが、既に将軍に正体を知られた以上は話すしかありません」
「う、うむ……その、すまないな」
「いえ、これも運命なのでしょう。いずれワン子が大人になった時に話そうと思っていたので気にしないでください」
ガオンがワン子が王女だと思い込んだ理由はただの勘違いなのだが、実際にワン子が王族の隠し子だと判明し、彼女には全てを知る権利がある。父親改め養父は妻と相談した後にワン子に全てを話すことを決めた。
「では私は妻の元へ戻ります。申し訳ありませんが、ワン子の事は少しの間だけ頼んで構いませんか?」
「大丈夫です」
「お願いします……あの子は貴方達によく懐いていますから出来れば王女だと知っても態度は変えないようにお願いします」
「そ、そうだな……」
父親は階段を降りると、残されたルノはガオンに視線を向け、何時からワン子の正体を気づいていたのかを尋ねる。
「そういえばガオンさんはどうしてワン子が王女だと知ったんですか?もしかして事前に国王陛下から話を聞いていたとか……?」
「う、うむ。それはだな……その、何だ、そう!!あの娘を見たときに本能が教えてくれたのだ!!あれほどの威厳を放つ娘が平民の娘ではないとな!!」
「威厳……?」
ルノは防壁の上からリディアと遊ぶワン子の姿を確認し、現在はリディアが投げた骨を本物の犬の用に嬉しそうに口で受け止めては彼女の元に戻って渡していた。
「ほ~ら、取ってきなさい!!」
「きゃんきゃんっ♪」
嬉々とした表情で再び投げられた骨をワン子は犬のように四つん這いの状態で駆け抜け、地面に落ちる前に骨を加える。その光景を見て何処に「威厳」を感じるのかとルノはジト目でガオンを見つめると、全身から冷や汗を流しながらガオンは首を逸らす。
「……まあ、ワン子に威厳があるかはどうとして、ガオンさんはこの事実を知ってどう対処するつもりですか?」
「た、対処?」
「一応は立場上はガオンさんは臣下のわけですし、ワン子の事を放っておいてもいいんですか?確かガオンさんは第一王子の派閥じゃ……」
「何だ、そんな事か。安心しろ、俺はあの子の事を誰かに漏らすつもりはない。平和に暮らしている少女を差し出すような真似はせん」
第一王子の派閥に属しているガオンがワン子の存在を第一王子に話さないのかとルノは心配するが、元々ガオンが第一王子に従ったのはクズノからの提案であり、別に彼自身は二人の王子の権力争いに興味はない。それに第一王子は自分が王位を継承するためならば弟や妹の命さえ狙う輩のため、ワン子の存在を報告すれば彼女は無事でいられるはずがない。
「お前が心配する理由は分かるが、もう俺は何もしない……今回の件で民衆に大きな迷惑を掛けた。だから彼等に償いを行った後は軍を抜けるつもりだ」
「え?軍人を辞めちゃうんですか?」
「ああ……というより、いずれ俺の行動は第一王子の耳にも届くだろう。奴の性格から考えて自分に反旗を翻そうとした人間を許すはずがない。きっと近いうちに使者を送り込んで俺を港へ呼び寄せて処刑するか拷問にかけるだろう」
「そう、ですか……」
ガオンの話を聞いてルノは自分の行動で彼が殺されるかもしれないと知り、複雑な感情を抱く。確かにガオンの犯した行動は許される事ではないが、それでも根っからの悪人ではなく、子供を気遣う心を持っている人間だと知ってルノは思い悩む。そんな彼の顔を見てガオンは苦笑いを浮かべた。
「お前の気にすることではない。これは俺の罪だ……昔、国王陛下に民衆を何よりも大事にしろと何度も注意されたのに結局俺はその約束を果たせなかった。ならばせめて最後は彼等に償った後、潔く罰を受けよう」
「ガオンさん……」
「さて、俺はそろそろ行くぞ。部下共を説得して働かせねばな……」
「しょ、将軍!!こちらに居たのですね!!大変です!!」
「何?」
配給の仕事に戻ろうとしたガオンの元に一人の兵士が訪れ、非常に焦った表情を浮かべながら兵士はガオンの前に跪き、顔色を青くさせて報告を行う。
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