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獣人国
ワン子の出生
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「ねえ、あんた……どうして私達にはため口なのにこの犬娘には敬語を使うのよ。なんか納得できないんだけど?」
「わうっ」
「な、貴様……王女になんて事を!?」
「王女……?」
ガオンの態度の変化に疑問を抱いたリディアがワン子の頭に手を乗せると、慌ててガオンは彼女を注意する。ルノもどうしてガオンがワン子に必要以上に気を遣うのか不思議に思った時、ガオンの背後から男性の声が響き渡った。
「なっ……ど、どうして貴方がその秘密を知っているのですか?」
「何?」
「あ、お父さんです!!」
ワン子を迎えに来たのか階段を上って現れた彼女の父親はガオンの言葉を聞いて激しく動揺し、慌ててワン子を庇うように自分の後ろに隠す。そんな彼の行動にルノとリディアは顔を見合わせ、ガオンも違和感を抱く。
「あの、秘密ってどういう事なんですか?」
「まさか……その犬娘が本当の王女様だって言うの?」
「くっ……やはり、知られてしまいましたか。そうです、この娘は……私達の実の子供ではありません。獣人国王家の血を継ぐ王女様です」
「わふっ!?」
父親の言葉にワン子は驚愕の表情を浮かべ、ワン子本人も知らなかったらしく激しく動揺する。しかし、ワン子が現在行方不明の王女だと知らされたルノとリディアの方が戸惑い、王女と同じ名前である事は知っていたが本当にワン子が獣人族の王女だとは夢にも思わなった。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?噂だと王女の年齢は他の兄弟とそんなに変わらないはずよ!!このワン子とは年齢に差があるわよ!!」
「それは当然でしょう。この子は確かに王族ではありますが、世間一般で知られている王女様ではありません」
「何だと!?それはどういう意味だ?」
「……隠し子なのです。この子は4人目の王の娘、つまりは第二王女なのです」
「わぅんっ!?」
「ええっ!?」
更に驚愕の事実を知らされてその場の全員が驚愕し、世間では国王に二人目の娘が存在したなどという情報は出回っておらず、ワン子の父親によればこの情報を知っているのは獣人王国の人間の中でも極一部らしい。
「実は私は商人ではありますが、元々は獣人王国の貴族の家系なのです。ですが、実家とは既に縁を切っています。しかし、亡くなった国王様とは子供の頃から何かと目を掛けてもらい、実家を追い出された後も援助を受けていました」
「あんた、貴族だったの?どうして家から出たのよ?」
「いえ、お恥ずかしい話なのですが……今の妻と結婚するために貴族の立場を捨てて家を出ました。もしも家を出ていなければ今頃は私も政略結婚をさせられていたでしょう。なので家を出た事に後悔はしていません」
「ほう、惚れた女のためにそこまでするか!!」
「あ、そうなの……意外とロマンチックな理由ね。そういうの結構好きよ」
「ドラマみたいで格好いいですね」
「お父さん凄いです!!」
「あ、ありがとうございます……それで話を戻しますが」
愛する人間のために貴族の立場を捨てたという父親の話に全員が感心する中、少し照れ臭そうに父親は話を本題に戻す。
「実は家を出た後、私は妻と結婚して暮らしていたのですが残念ながら子宝には恵まれませんでした……しかし、ある日、唐突に国王様がお越しになりました。護衛も付けず、たった一人で……いえ、赤ん坊であるワン子を連れて私達の元へ訪れたのです」
「なるほど、そこであんたにこの子を育てるように言い渡したのね」
「はい、その通りです」
「わぅうっ……」
自分の出生の秘密を知ってワン子は不安を抱いたのかルノの服を掴み、そんな彼女を安心させるようにルノは頭を撫でる。
「だが、解せんな。どうして国王陛下は4人目の子供が生まれた事を黙っていた?それに何故敢えて貴族を抜け出した貴様に大切な我が子を預けたのだ?」
「それは……」
ガオンの質問にワン子の父親は言いにくそうにリディアに視線を向け、意味を察した彼女は仕方なくワン子を引き寄せてこの場から離れる。
「ほら、ここから先は大人同士の話よ。下でお菓子でも買ってあげるからあんたは私と一緒に来なさい」
「お菓子!?本当に買ってくれるんですか!?」
リディアが上手くワン子の注意を逸らし、彼女を連れて防壁から降りるのを確認すると父親は安心したように溜息を吐き出し、そしてルノ達に振り返って話の続きを行う。
「……実はワン子は国王様の奥様との子供ではなく、城下町のある女性との間に出来た子供なのです。この女性は国王様がまだ王子だった頃からの付き合いのある女性らしく、若い頃は恋人同士だったようです」
「恋人……」
「おい、まさか……」
「はい……お二人は国王様が即位されてから会う機会がなくなり、泣く泣く別れたそうです。そして国王様は結婚し、3人の子供を授かったのですが……ある時に城下町に赴き、酒場で働いていた女性と再会して意気投合してしまい、その……一夜を共に過ごしたそうです」
「ええっ……」
既に結婚しているにも関わらず、初恋の人との再会によって昔の恋心を思い出した国王は過ちを犯したという話にルノとガオンは眉をしかめる。
「わうっ」
「な、貴様……王女になんて事を!?」
「王女……?」
ガオンの態度の変化に疑問を抱いたリディアがワン子の頭に手を乗せると、慌ててガオンは彼女を注意する。ルノもどうしてガオンがワン子に必要以上に気を遣うのか不思議に思った時、ガオンの背後から男性の声が響き渡った。
「なっ……ど、どうして貴方がその秘密を知っているのですか?」
「何?」
「あ、お父さんです!!」
ワン子を迎えに来たのか階段を上って現れた彼女の父親はガオンの言葉を聞いて激しく動揺し、慌ててワン子を庇うように自分の後ろに隠す。そんな彼の行動にルノとリディアは顔を見合わせ、ガオンも違和感を抱く。
「あの、秘密ってどういう事なんですか?」
「まさか……その犬娘が本当の王女様だって言うの?」
「くっ……やはり、知られてしまいましたか。そうです、この娘は……私達の実の子供ではありません。獣人国王家の血を継ぐ王女様です」
「わふっ!?」
父親の言葉にワン子は驚愕の表情を浮かべ、ワン子本人も知らなかったらしく激しく動揺する。しかし、ワン子が現在行方不明の王女だと知らされたルノとリディアの方が戸惑い、王女と同じ名前である事は知っていたが本当にワン子が獣人族の王女だとは夢にも思わなった。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?噂だと王女の年齢は他の兄弟とそんなに変わらないはずよ!!このワン子とは年齢に差があるわよ!!」
「それは当然でしょう。この子は確かに王族ではありますが、世間一般で知られている王女様ではありません」
「何だと!?それはどういう意味だ?」
「……隠し子なのです。この子は4人目の王の娘、つまりは第二王女なのです」
「わぅんっ!?」
「ええっ!?」
更に驚愕の事実を知らされてその場の全員が驚愕し、世間では国王に二人目の娘が存在したなどという情報は出回っておらず、ワン子の父親によればこの情報を知っているのは獣人王国の人間の中でも極一部らしい。
「実は私は商人ではありますが、元々は獣人王国の貴族の家系なのです。ですが、実家とは既に縁を切っています。しかし、亡くなった国王様とは子供の頃から何かと目を掛けてもらい、実家を追い出された後も援助を受けていました」
「あんた、貴族だったの?どうして家から出たのよ?」
「いえ、お恥ずかしい話なのですが……今の妻と結婚するために貴族の立場を捨てて家を出ました。もしも家を出ていなければ今頃は私も政略結婚をさせられていたでしょう。なので家を出た事に後悔はしていません」
「ほう、惚れた女のためにそこまでするか!!」
「あ、そうなの……意外とロマンチックな理由ね。そういうの結構好きよ」
「ドラマみたいで格好いいですね」
「お父さん凄いです!!」
「あ、ありがとうございます……それで話を戻しますが」
愛する人間のために貴族の立場を捨てたという父親の話に全員が感心する中、少し照れ臭そうに父親は話を本題に戻す。
「実は家を出た後、私は妻と結婚して暮らしていたのですが残念ながら子宝には恵まれませんでした……しかし、ある日、唐突に国王様がお越しになりました。護衛も付けず、たった一人で……いえ、赤ん坊であるワン子を連れて私達の元へ訪れたのです」
「なるほど、そこであんたにこの子を育てるように言い渡したのね」
「はい、その通りです」
「わぅうっ……」
自分の出生の秘密を知ってワン子は不安を抱いたのかルノの服を掴み、そんな彼女を安心させるようにルノは頭を撫でる。
「だが、解せんな。どうして国王陛下は4人目の子供が生まれた事を黙っていた?それに何故敢えて貴族を抜け出した貴様に大切な我が子を預けたのだ?」
「それは……」
ガオンの質問にワン子の父親は言いにくそうにリディアに視線を向け、意味を察した彼女は仕方なくワン子を引き寄せてこの場から離れる。
「ほら、ここから先は大人同士の話よ。下でお菓子でも買ってあげるからあんたは私と一緒に来なさい」
「お菓子!?本当に買ってくれるんですか!?」
リディアが上手くワン子の注意を逸らし、彼女を連れて防壁から降りるのを確認すると父親は安心したように溜息を吐き出し、そしてルノ達に振り返って話の続きを行う。
「……実はワン子は国王様の奥様との子供ではなく、城下町のある女性との間に出来た子供なのです。この女性は国王様がまだ王子だった頃からの付き合いのある女性らしく、若い頃は恋人同士だったようです」
「恋人……」
「おい、まさか……」
「はい……お二人は国王様が即位されてから会う機会がなくなり、泣く泣く別れたそうです。そして国王様は結婚し、3人の子供を授かったのですが……ある時に城下町に赴き、酒場で働いていた女性と再会して意気投合してしまい、その……一夜を共に過ごしたそうです」
「ええっ……」
既に結婚しているにも関わらず、初恋の人との再会によって昔の恋心を思い出した国王は過ちを犯したという話にルノとガオンは眉をしかめる。
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