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獣人国
猛虎部隊の降伏
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各地に派遣していた猛虎部隊の本隊が帰還してから翌日の朝、13番街の城壁では大量の兵士と民衆が溢れかえっていた。兵士に強制的に連れ出された一般人は全員が解放され、更に運び出された大量の物資は元の街に戻す事が決まり、ついでにルノが量産した大量の食料も送り届ける準備を行う。
「食料は沢山あります!!焦らず並んで受け取ってください!!」
「怪我をされた方はこちらへ来てください!!すぐに治療を行いますので!!」
「追加分の荷物が届きました!!」
街の外では配給が行われ、大勢の人間の行列が出来上がっていた。13番街の住民だけではなく、他の村や街の人間も数多く並んでおり、その数は数万人は存在した。その様子を防壁の上からルノ達は眺め、リディアは呆れた表情を浮かべる。
「とんでもない数の人間が集まってるわね……それだけ苦しめられた人間がいると考えると複雑な気持ちになるわね」
「魔王軍に行動していた時に何十万人の人を苦しめようとしたリディアが言うと違和感あるけどね」
「……昔の話よ、もう黒歴史だから忘れなさいよ」
ルノの言葉を聞いてリディアは自分の過去の所業を思い出し、眉をしかめる。まだルノと出会う前は彼女は他人がどうなろうと知った事ではないと考えていたが、数多くの苦しんでいる人々を目の当たりにすると自分の行為の愚かさに罪悪感を抱く。
「ちょっとあんた、そんな所でサボってないでこっちの仕事を手伝いな!!まだまだ運び出す荷物はあるんだからね!!」
「くそっ……どうして俺がこんなことを」
「そこのあんたも文句を言ってないでさっさと荷物を運びな!!たくっ、碌に使えない奴だね!!」
防壁の下では配給用の食料が詰め込まれた布袋を運ぶミルとガインの姿もあり、二人以外にも大勢の街の住民が荷物の運搬を手伝っていた。勿論、このような事態を引き起こした要因である猛虎部隊の兵士達も参加しており、彼等は自分達が奪い取った物資を送り返す作業に集中していた。
「なあ……どうしてこんな事になったんだ?泣く子も黙る猛虎部隊の精鋭である俺達がどうしてこんな事を……」
「仕方ないだろ……逆らえば何をされるか分からないんだ。それにガオン将軍の命令だぞ」
「でも、俺は少しだけ安心したかな。一般人から無理やり食料や金品を奪うなんて盗賊みたいな事なんてもう二度とやりたくねえよ」
「……俺もだよ」
帰還した猛虎部隊の兵士達は今度は回収した物資を返却するために派遣された村や街に送り返される事が決まり、ガオンの指示の元で彼等は大量の荷物を今度は連行した民衆の力を借りずに送り届ける事になった。一部の人間は自分達の扱いに不満を抱くが、今回の命令を下したのはガオンではなく彼に指示を与えたルノだと知ると文句を言う事も出来ない。
昨夜にルノの力を思い知らされた猛虎部隊の兵士達は彼には絶対にか敵わない事を悟り、更に将軍であるガオンが屈服した時点で猛虎部隊はルノに降伏した事に等しい。逆らおうにも荒野の一帯を凍り付かせたり火の海へと変えたルノの力を思い知らされた彼等に戦うという手段は考えられなかった。
「あいつらも随分と大人しくなったわね……でも、正直に言えばあんたが魔法を使えばぱぱっと荷物を運び出せるんじゃないの?」
兵士の様子を見て不意に疑問を抱いたリディアがルノに話しかけるが、彼女の言葉を聞いたルノは首を振る。
「そんな事をすれば兵士達の罰にならないでしょ。それに俺達は別の用事があるんだから、ここにはもう長居出来ないよ」
「わうっ?お兄さんとお姉さんは何処かへ行っちゃうんですか?」
会話の途中で聞きなれた女の子の声が響き渡り、何時の間にか存在したのかワン子が階段を駆け上がって二人の元へ訪れる。今日は両親の姿も見えず、買い物の途中なのか背中には大量の果物が入った籠を背負っていた。
「あれ、ワンちゃん?どうしたのこんな所で?」
「実はお母さんから買い物を頼まれたんですけど、お兄さんとお姉さんの匂いがしたのでここに来ました!!」
「相変わらず鼻がいいわね。ねえ、ちなみに私達の匂いってどんな感じなの?」
「ルノのお兄さんは向日葵のような匂いです!!リディアのお姉さんは……血の滴る生肉のような匂いです!!じゅるりっ……」
「どんな匂いよ!?あんた、私を食べる気!?」
「あはははっ」
ワン子の言葉にリディアは突っ込むと、その様子を見ていたルノは笑い声をあげ、最初の頃と比べるとリディアも随分と丸くなった事が伺える。だが、そんな3人の元に暗い表情を浮かべたガオンが姿を現す。
「おおっ……やっと見つけたぞ」
「あ、ガオンのおじさんです」
「む、お前は……い、いや、貴方様はワン子殿か」
「……殿?」
ガオンはワン子の姿を見て慌てて言い方を変え、その場に跪く。そんなガオンの行動に3人は首を傾げるが、未だにルノ達が連れているワン子の事を獣人国の第一王女だと勘違いしたままのガオンは態度を改める。
「食料は沢山あります!!焦らず並んで受け取ってください!!」
「怪我をされた方はこちらへ来てください!!すぐに治療を行いますので!!」
「追加分の荷物が届きました!!」
街の外では配給が行われ、大勢の人間の行列が出来上がっていた。13番街の住民だけではなく、他の村や街の人間も数多く並んでおり、その数は数万人は存在した。その様子を防壁の上からルノ達は眺め、リディアは呆れた表情を浮かべる。
「とんでもない数の人間が集まってるわね……それだけ苦しめられた人間がいると考えると複雑な気持ちになるわね」
「魔王軍に行動していた時に何十万人の人を苦しめようとしたリディアが言うと違和感あるけどね」
「……昔の話よ、もう黒歴史だから忘れなさいよ」
ルノの言葉を聞いてリディアは自分の過去の所業を思い出し、眉をしかめる。まだルノと出会う前は彼女は他人がどうなろうと知った事ではないと考えていたが、数多くの苦しんでいる人々を目の当たりにすると自分の行為の愚かさに罪悪感を抱く。
「ちょっとあんた、そんな所でサボってないでこっちの仕事を手伝いな!!まだまだ運び出す荷物はあるんだからね!!」
「くそっ……どうして俺がこんなことを」
「そこのあんたも文句を言ってないでさっさと荷物を運びな!!たくっ、碌に使えない奴だね!!」
防壁の下では配給用の食料が詰め込まれた布袋を運ぶミルとガインの姿もあり、二人以外にも大勢の街の住民が荷物の運搬を手伝っていた。勿論、このような事態を引き起こした要因である猛虎部隊の兵士達も参加しており、彼等は自分達が奪い取った物資を送り返す作業に集中していた。
「なあ……どうしてこんな事になったんだ?泣く子も黙る猛虎部隊の精鋭である俺達がどうしてこんな事を……」
「仕方ないだろ……逆らえば何をされるか分からないんだ。それにガオン将軍の命令だぞ」
「でも、俺は少しだけ安心したかな。一般人から無理やり食料や金品を奪うなんて盗賊みたいな事なんてもう二度とやりたくねえよ」
「……俺もだよ」
帰還した猛虎部隊の兵士達は今度は回収した物資を返却するために派遣された村や街に送り返される事が決まり、ガオンの指示の元で彼等は大量の荷物を今度は連行した民衆の力を借りずに送り届ける事になった。一部の人間は自分達の扱いに不満を抱くが、今回の命令を下したのはガオンではなく彼に指示を与えたルノだと知ると文句を言う事も出来ない。
昨夜にルノの力を思い知らされた猛虎部隊の兵士達は彼には絶対にか敵わない事を悟り、更に将軍であるガオンが屈服した時点で猛虎部隊はルノに降伏した事に等しい。逆らおうにも荒野の一帯を凍り付かせたり火の海へと変えたルノの力を思い知らされた彼等に戦うという手段は考えられなかった。
「あいつらも随分と大人しくなったわね……でも、正直に言えばあんたが魔法を使えばぱぱっと荷物を運び出せるんじゃないの?」
兵士の様子を見て不意に疑問を抱いたリディアがルノに話しかけるが、彼女の言葉を聞いたルノは首を振る。
「そんな事をすれば兵士達の罰にならないでしょ。それに俺達は別の用事があるんだから、ここにはもう長居出来ないよ」
「わうっ?お兄さんとお姉さんは何処かへ行っちゃうんですか?」
会話の途中で聞きなれた女の子の声が響き渡り、何時の間にか存在したのかワン子が階段を駆け上がって二人の元へ訪れる。今日は両親の姿も見えず、買い物の途中なのか背中には大量の果物が入った籠を背負っていた。
「あれ、ワンちゃん?どうしたのこんな所で?」
「実はお母さんから買い物を頼まれたんですけど、お兄さんとお姉さんの匂いがしたのでここに来ました!!」
「相変わらず鼻がいいわね。ねえ、ちなみに私達の匂いってどんな感じなの?」
「ルノのお兄さんは向日葵のような匂いです!!リディアのお姉さんは……血の滴る生肉のような匂いです!!じゅるりっ……」
「どんな匂いよ!?あんた、私を食べる気!?」
「あはははっ」
ワン子の言葉にリディアは突っ込むと、その様子を見ていたルノは笑い声をあげ、最初の頃と比べるとリディアも随分と丸くなった事が伺える。だが、そんな3人の元に暗い表情を浮かべたガオンが姿を現す。
「おおっ……やっと見つけたぞ」
「あ、ガオンのおじさんです」
「む、お前は……い、いや、貴方様はワン子殿か」
「……殿?」
ガオンはワン子の姿を見て慌てて言い方を変え、その場に跪く。そんなガオンの行動に3人は首を傾げるが、未だにルノ達が連れているワン子の事を獣人国の第一王女だと勘違いしたままのガオンは態度を改める。
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