363 / 657
獣人国
部隊の動揺
しおりを挟む
――各地に派遣されていたガオンの直属部隊の兵士達は大量の物資を運び込みながら13番街に辿り着き、街の様子がおかしい事に気づく。普通ならば自分達の姿が見えた段階で出迎えの兵士が訪れるはずだが、何故か防壁を守護しているのは街に元々配備されていた警備兵と武装した一般人の集団が待機していた。
「おい、あれを見ろよ。あいつら兵士じゃないのか?」
「というより、何で俺達を警戒しているんだ?どうして扉を開かない?」
「何か様子がおかしいな……俺が確認に向かう。お前たちはここで待機しろ!!」
先頭を移動していた部隊の隊長が防壁の異変に気付き、馬を走らせて先に向かう。そして閉ざされた扉の前に到着すると防壁の上に待機している兵士に声を掛ける。
「開門しろ!!我々はガオン様の直属の兵士だぞ!!任務を遂行し、戻ってきた!!」
『…………』
「貴様等……何を考えている!?」
ガオンの名前を口にしても反応しない防壁の兵士達の様子を見て隊長は嫌な予感を覚え、馬をゆっくりと下がらせる。その様子を見た警備兵の隊長を任されている初老の男性が前に出ると、隊長に向けて大声で言い放つ。
「申し訳ないが、この門を開くわけにはいかん!!悪いがこのまま立ち去ってくれ!!」
「何だと!?話を聞いていなかったのか!!我々は……」
「お主達の主人であるガオンは既に我々が捕縛した!!」
「……何、だと!?ふ、ふざけたことを言うな!!」
警備隊長の言葉に防壁の前の部隊長は呆気に取られ、即座に怒りを滲ませて怒鳴り返す。彼が使えるガオンは獣人国の中でも武力に秀でた将軍であり、ただの民間人や警備兵如きに捕まるはずがない。しかし、防壁の上に立つ警備隊長は街で起きた出来事を告げる。
「既にガオンと配下の傭兵達は我々が拘束している!!民衆に手を出したお前達はもう国を守る兵士ではない、ただの賊軍だ!!」
「貴様……言わせておけば調子に乗り追って!!将軍が貴様等如きに捕まるはずがないだろう!!」
「お前が信じようと信じまいと将軍は我らの手中にある!!口の利き方には気を付けろ!!」
「ぬうっ……」
ガオンの直属の配下である部隊長は警備隊長の言葉に口ごもり、有りえない事だとは思うが仮にガオンが彼等に捕まっていた場合は人質に取られた事になる。しかし、長年の間ガオンの傍で使えていた人間にとって彼が一般人や街の警備兵程度の相手に捕まるとは思えず、証拠を見せるように促す。
「ならば将軍を人質にしたという証拠を見せろ!!お前達がガオンを将軍を捕まえたというのならこの場に連れ出せるはずだろう!?」
「それならばガオン将軍をこの場まで連れ出せば信じてくれるのか!?」
「ああ、いいだろう。本当にガオン将軍を捕縛したというのならば我々もお前達の要求を呑もうではないか!!」
捕縛されたガオンの姿を見るまで信じないとばかりに部隊長は扉の前に留まり、防壁に集まった人間達は慌てて話し合いを始める。予想していたとはいえ、やはりガオンを捕まえた姿を見せなければ帰還してきた部隊は信じず、彼を呼び寄せる必要があった。
「警備隊長、敵は思った以上に大群です。恐らくは8000は存在するでしょう……しかも荷物の移送のために駆り出された一般人の姿もあります」
「うむ……なんと酷いことを」
13番街から派遣された兵士だけではなく、物資を運び出すために村や街から強制的に一般人も連れ出されたらしく、荷車を運ぶ若い男達の姿もちらほらと見えた。彼等は何日も重い荷物を運び続けているのか顔色が悪く、中には体調を崩したのか荷台の上に横たわっている人間の姿も見えた。
「奴らめ、罪もない人々まで巻き込みおったな……しかし、思った以上に帰還の日程が早い。これだけの人数に一度に襲われたらどうしようもないぞ」
「隊長、我々は500にも満たしません。一方で敵は8000です。このままだと我々の方が……」
兵力差は10倍以上も存在し、更にガオンの配下は戦慣れをしているので獣人国の兵士の中でも選りすぐりの精鋭が揃えられている。もしも交渉が決裂して戦闘に陥った場合、警備兵達には勝ち目はない。
「どうした!?ガオン将軍を早く見せろ!!この腰抜け共が!!」
何時まで経ってもガオンを連れてこない警備兵達に部隊長は煽るように言葉を掛け、警備隊長は険しい表情を浮かべて街の様子を見る。
「ぬうっ……将軍はまだか!?」
「ここから刑務所まで距離がありますので連れ出すには時間が掛かるかと……」
「一体何時まで待たせる気だ!!いいか、あと5分以内に連れてこなければ貴様等は反逆者と見做して我々は攻撃を開始するぞ!!」
思った以上にガオンを連れ出すのに時間が掛かり、一向に警備兵がガオンの姿を見せない事に部隊長は彼等の言葉が虚偽だと確信し、攻撃を行う準備を整えさせた。
「おい、あれを見ろよ。あいつら兵士じゃないのか?」
「というより、何で俺達を警戒しているんだ?どうして扉を開かない?」
「何か様子がおかしいな……俺が確認に向かう。お前たちはここで待機しろ!!」
先頭を移動していた部隊の隊長が防壁の異変に気付き、馬を走らせて先に向かう。そして閉ざされた扉の前に到着すると防壁の上に待機している兵士に声を掛ける。
「開門しろ!!我々はガオン様の直属の兵士だぞ!!任務を遂行し、戻ってきた!!」
『…………』
「貴様等……何を考えている!?」
ガオンの名前を口にしても反応しない防壁の兵士達の様子を見て隊長は嫌な予感を覚え、馬をゆっくりと下がらせる。その様子を見た警備兵の隊長を任されている初老の男性が前に出ると、隊長に向けて大声で言い放つ。
「申し訳ないが、この門を開くわけにはいかん!!悪いがこのまま立ち去ってくれ!!」
「何だと!?話を聞いていなかったのか!!我々は……」
「お主達の主人であるガオンは既に我々が捕縛した!!」
「……何、だと!?ふ、ふざけたことを言うな!!」
警備隊長の言葉に防壁の前の部隊長は呆気に取られ、即座に怒りを滲ませて怒鳴り返す。彼が使えるガオンは獣人国の中でも武力に秀でた将軍であり、ただの民間人や警備兵如きに捕まるはずがない。しかし、防壁の上に立つ警備隊長は街で起きた出来事を告げる。
「既にガオンと配下の傭兵達は我々が拘束している!!民衆に手を出したお前達はもう国を守る兵士ではない、ただの賊軍だ!!」
「貴様……言わせておけば調子に乗り追って!!将軍が貴様等如きに捕まるはずがないだろう!!」
「お前が信じようと信じまいと将軍は我らの手中にある!!口の利き方には気を付けろ!!」
「ぬうっ……」
ガオンの直属の配下である部隊長は警備隊長の言葉に口ごもり、有りえない事だとは思うが仮にガオンが彼等に捕まっていた場合は人質に取られた事になる。しかし、長年の間ガオンの傍で使えていた人間にとって彼が一般人や街の警備兵程度の相手に捕まるとは思えず、証拠を見せるように促す。
「ならば将軍を人質にしたという証拠を見せろ!!お前達がガオンを将軍を捕まえたというのならこの場に連れ出せるはずだろう!?」
「それならばガオン将軍をこの場まで連れ出せば信じてくれるのか!?」
「ああ、いいだろう。本当にガオン将軍を捕縛したというのならば我々もお前達の要求を呑もうではないか!!」
捕縛されたガオンの姿を見るまで信じないとばかりに部隊長は扉の前に留まり、防壁に集まった人間達は慌てて話し合いを始める。予想していたとはいえ、やはりガオンを捕まえた姿を見せなければ帰還してきた部隊は信じず、彼を呼び寄せる必要があった。
「警備隊長、敵は思った以上に大群です。恐らくは8000は存在するでしょう……しかも荷物の移送のために駆り出された一般人の姿もあります」
「うむ……なんと酷いことを」
13番街から派遣された兵士だけではなく、物資を運び出すために村や街から強制的に一般人も連れ出されたらしく、荷車を運ぶ若い男達の姿もちらほらと見えた。彼等は何日も重い荷物を運び続けているのか顔色が悪く、中には体調を崩したのか荷台の上に横たわっている人間の姿も見えた。
「奴らめ、罪もない人々まで巻き込みおったな……しかし、思った以上に帰還の日程が早い。これだけの人数に一度に襲われたらどうしようもないぞ」
「隊長、我々は500にも満たしません。一方で敵は8000です。このままだと我々の方が……」
兵力差は10倍以上も存在し、更にガオンの配下は戦慣れをしているので獣人国の兵士の中でも選りすぐりの精鋭が揃えられている。もしも交渉が決裂して戦闘に陥った場合、警備兵達には勝ち目はない。
「どうした!?ガオン将軍を早く見せろ!!この腰抜け共が!!」
何時まで経ってもガオンを連れてこない警備兵達に部隊長は煽るように言葉を掛け、警備隊長は険しい表情を浮かべて街の様子を見る。
「ぬうっ……将軍はまだか!?」
「ここから刑務所まで距離がありますので連れ出すには時間が掛かるかと……」
「一体何時まで待たせる気だ!!いいか、あと5分以内に連れてこなければ貴様等は反逆者と見做して我々は攻撃を開始するぞ!!」
思った以上にガオンを連れ出すのに時間が掛かり、一向に警備兵がガオンの姿を見せない事に部隊長は彼等の言葉が虚偽だと確信し、攻撃を行う準備を整えさせた。
1
お気に入りに追加
11,312
あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。