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獣人国
思いついたら即行動
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「よし、じゃあ出発しようか」
「え、今から向かうの!?」
リディアの承諾を得たルノは氷塊の魔法を発動させて氷自動車を生み出す。慌てふためくリディアの背中を押してルノは氷自動車に彼女を乗せ、即座に出発する。
「善は急げ、というでしょ?あ、この世界に諺あるのかな……」
「その言葉は知っているけど、いくら何でも早過ぎよ!?」
「あ、ガー君は悪いけど残ってくれる?マダラパイソの面倒を見ててね」
『シャッス!!』
「ちょっと、あんたの主人は私よ!?なんで普通に従ってんのよ!!しかも変な鳴き声まで覚えてるし……きゃああっ!?」
騒ぐリディアを無視してルノは氷自動車を発信させ、彼女の気が変わる前に行動を行う。その様子をガーゴイルとマダラパイソンは見送り、残された2匹は街長の屋敷に向かう事にした――
――数分後、先ほど牙竜を目撃した場所に降り立ったルノは不機嫌そうな態度のリディアを連れて荒野を移動する。あれから時間が経過しているので牙竜が別の地域に移動する可能性はあったが、何事もなく川辺の方で水を飲む牙竜の姿を発見した。
「ほら、あれだよ。あの牙竜を仲間に出来る?」
「たくもう……あいつね、確かに私が前に飼っていた奴より強そうね」
氷自動車の中から二人は牙竜から50メートル程離れた場所で様子を伺い、これ以上に接近すると気づかれる恐れがあるのでリディアとルノは「観察眼」の能力を発動させて牙竜を調べる。リディアによれば過去に彼女が飼育していた牙竜よりも年齢を重ねているらしく、捕まえることが出来れば大きな戦力を期待出来るという。
「あれは牙竜の成体よ。私が飼っていた2体よりも厄介そうね」
「従えさせられる?」
「まあ、別に問題ないわよ。だけど、契約するにはあいつに直接触れないと出来ないわ。どうやって取り押さえるのよ?」
「どうやって……力尽くで?」
「……まあ、方法はあんたに任せるわ」
魔物使いが魔獣と契約を交わすには直接相手の魔物に触れる必要があるため、最初に牙竜を暴れないように拘束する必要があった。ルノは彼女の言葉を聞いて捕縛する方法を考え、出来れば牙竜自身も傷つけない方法で捕まえる方法を考える。
(これから行動を共にするなら大きな怪我は負わせたくないな……氷塊の魔法で鎖や手錠を生み出して捕まえる?それとも土塊の魔法で地面を流砂に変えて胴体の部分だけを鎮めるか、それとも白雷で麻痺させるか……そうだ!!)
良晏を思いついたルノは牙竜に向けて接近し、先日に食料確保のために購入しておいた懐に入っている品物を握りしめる。やがて距離が30メートルにまで縮まると、川辺で横になっていた牙竜が臭いを感じ取って振り返る。
『ガアアッ……!?』
「は、はろ~?」
一応は外国語でルノは挨拶を試みるが、牙竜は自分の元に接近してくるルノを警戒するように睨みつける。普通の魔物ならばひ弱な人間の少年など見つけたら一目散に襲い掛かるのだが、生存本能が優れた牙竜はルノの正体がただの人間の子供ではない事を見抜く。
――こいつは危険だ!!離れろ!!
牙竜の本能がルノの事を警戒するように指示を出し、特に武器も持たずに歩み寄ってくるルノに対して牙竜は最大限の警戒を行う。
――油断すれば殺される!!
外見を見た限りではただの人間の少年にしか見えないが、牙竜の本能はルノが持つ力を感じ取る。しかし、生まれたときから常に自分以外の存在を餌として認識し、これまで勝ち続けてきた牙竜には戦わずに逃走という選択肢を選ぶ事は出来ない。
――隙を見せたら迷わず殺せ!!
警戒を維持しながらもルノが一瞬でも隙を見せたら襲い掛かる事を決意した牙竜は唸り声をあげ、何時でも飛び掛かる準備を整える。牙竜は竜種の中では速度に特化した種であり、実際に地上で牙竜を上回る移動速度を誇る魔物はいない。
戦う事を決めた牙竜は前屈態勢を整え、正面から接近してくるルノに襲い掛かる準備を行う。仮に10メートル以内に接近すれば風のような速さでルノの頭部を噛み砕く自信はあり、牙竜は自分の攻撃範囲内に早くルノが訪れるように内心焦る。
――敵は確実に殺す!!
覚悟を決めた牙竜はルノを確実に仕留めるために両前足に力を籠め、鋭利な牙を開く。だが、そんな牙竜を見ても得に警戒心も抱いた様子も見せずにルノは歩み寄り、ある程度まで近づくと懐に隠していた物を取りだす。
「ていっ」
『ッ……!?』
あと一歩ルノが踏み出せば飛び掛かろうとした牙竜の視界にルノが投げ飛ばした物体が目に入り、その正体を知って困惑した。ルノが投擲したのは植物の「種子」であり、こんな物を投げつけてどうするつもりなのかと牙竜が疑問を抱いた瞬間、種に向けてルノは掌を翳す。
「光球!!」
『ウガァッ――!?』
ルノの掌から銀色の強烈な光が放たれ、その光を浴びた種が空中で大きな蔓に成長して牙竜の肉体に絡みつき、そのまま地面に根付いて牙竜の巨体を固定化する。閃光によって視界を奪われただけでなく、急成長した植物によって牙竜は肉体を拘束された。
「え、今から向かうの!?」
リディアの承諾を得たルノは氷塊の魔法を発動させて氷自動車を生み出す。慌てふためくリディアの背中を押してルノは氷自動車に彼女を乗せ、即座に出発する。
「善は急げ、というでしょ?あ、この世界に諺あるのかな……」
「その言葉は知っているけど、いくら何でも早過ぎよ!?」
「あ、ガー君は悪いけど残ってくれる?マダラパイソの面倒を見ててね」
『シャッス!!』
「ちょっと、あんたの主人は私よ!?なんで普通に従ってんのよ!!しかも変な鳴き声まで覚えてるし……きゃああっ!?」
騒ぐリディアを無視してルノは氷自動車を発信させ、彼女の気が変わる前に行動を行う。その様子をガーゴイルとマダラパイソンは見送り、残された2匹は街長の屋敷に向かう事にした――
――数分後、先ほど牙竜を目撃した場所に降り立ったルノは不機嫌そうな態度のリディアを連れて荒野を移動する。あれから時間が経過しているので牙竜が別の地域に移動する可能性はあったが、何事もなく川辺の方で水を飲む牙竜の姿を発見した。
「ほら、あれだよ。あの牙竜を仲間に出来る?」
「たくもう……あいつね、確かに私が前に飼っていた奴より強そうね」
氷自動車の中から二人は牙竜から50メートル程離れた場所で様子を伺い、これ以上に接近すると気づかれる恐れがあるのでリディアとルノは「観察眼」の能力を発動させて牙竜を調べる。リディアによれば過去に彼女が飼育していた牙竜よりも年齢を重ねているらしく、捕まえることが出来れば大きな戦力を期待出来るという。
「あれは牙竜の成体よ。私が飼っていた2体よりも厄介そうね」
「従えさせられる?」
「まあ、別に問題ないわよ。だけど、契約するにはあいつに直接触れないと出来ないわ。どうやって取り押さえるのよ?」
「どうやって……力尽くで?」
「……まあ、方法はあんたに任せるわ」
魔物使いが魔獣と契約を交わすには直接相手の魔物に触れる必要があるため、最初に牙竜を暴れないように拘束する必要があった。ルノは彼女の言葉を聞いて捕縛する方法を考え、出来れば牙竜自身も傷つけない方法で捕まえる方法を考える。
(これから行動を共にするなら大きな怪我は負わせたくないな……氷塊の魔法で鎖や手錠を生み出して捕まえる?それとも土塊の魔法で地面を流砂に変えて胴体の部分だけを鎮めるか、それとも白雷で麻痺させるか……そうだ!!)
良晏を思いついたルノは牙竜に向けて接近し、先日に食料確保のために購入しておいた懐に入っている品物を握りしめる。やがて距離が30メートルにまで縮まると、川辺で横になっていた牙竜が臭いを感じ取って振り返る。
『ガアアッ……!?』
「は、はろ~?」
一応は外国語でルノは挨拶を試みるが、牙竜は自分の元に接近してくるルノを警戒するように睨みつける。普通の魔物ならばひ弱な人間の少年など見つけたら一目散に襲い掛かるのだが、生存本能が優れた牙竜はルノの正体がただの人間の子供ではない事を見抜く。
――こいつは危険だ!!離れろ!!
牙竜の本能がルノの事を警戒するように指示を出し、特に武器も持たずに歩み寄ってくるルノに対して牙竜は最大限の警戒を行う。
――油断すれば殺される!!
外見を見た限りではただの人間の少年にしか見えないが、牙竜の本能はルノが持つ力を感じ取る。しかし、生まれたときから常に自分以外の存在を餌として認識し、これまで勝ち続けてきた牙竜には戦わずに逃走という選択肢を選ぶ事は出来ない。
――隙を見せたら迷わず殺せ!!
警戒を維持しながらもルノが一瞬でも隙を見せたら襲い掛かる事を決意した牙竜は唸り声をあげ、何時でも飛び掛かる準備を整える。牙竜は竜種の中では速度に特化した種であり、実際に地上で牙竜を上回る移動速度を誇る魔物はいない。
戦う事を決めた牙竜は前屈態勢を整え、正面から接近してくるルノに襲い掛かる準備を行う。仮に10メートル以内に接近すれば風のような速さでルノの頭部を噛み砕く自信はあり、牙竜は自分の攻撃範囲内に早くルノが訪れるように内心焦る。
――敵は確実に殺す!!
覚悟を決めた牙竜はルノを確実に仕留めるために両前足に力を籠め、鋭利な牙を開く。だが、そんな牙竜を見ても得に警戒心も抱いた様子も見せずにルノは歩み寄り、ある程度まで近づくと懐に隠していた物を取りだす。
「ていっ」
『ッ……!?』
あと一歩ルノが踏み出せば飛び掛かろうとした牙竜の視界にルノが投げ飛ばした物体が目に入り、その正体を知って困惑した。ルノが投擲したのは植物の「種子」であり、こんな物を投げつけてどうするつもりなのかと牙竜が疑問を抱いた瞬間、種に向けてルノは掌を翳す。
「光球!!」
『ウガァッ――!?』
ルノの掌から銀色の強烈な光が放たれ、その光を浴びた種が空中で大きな蔓に成長して牙竜の肉体に絡みつき、そのまま地面に根付いて牙竜の巨体を固定化する。閃光によって視界を奪われただけでなく、急成長した植物によって牙竜は肉体を拘束された。
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