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獣人国
魔王の謎
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「ともかく、クズノが動いているなら今後は用心した方がいいわ。これまで以上に気を付けて行動しなさい」
「分かった。色々とありがとうリディア」
「な、何よ……意外と素直に礼を言うのね」
感謝の言葉を告げたルノにリディアは戸惑うが、これまでの道中でルノも彼女の事をそれなりに信頼しており、少なくとも味方でいる間は頼りになる相手だと認識していた。出会いは最悪ではあったが子供が好きな一面や孤児院のために仕送りしていた事を知った事で根は悪い人間ではないと判断した。
(でも、油断は出来ないな。目を離さないようにしないと……)
リディアがルノの味方でいるのは彼女が魔王軍に命を狙われるようになったから仕方なく同行している節があり、もしも何らかの理由で魔王軍がリディアが戻ることを許したのならば彼女が裏切る可能性は否定できない。最も今の所は魔王軍もルノ達の動向に気づいている様子はなく、仮に知られていたとしても魔王軍の中にルノと対抗出来る存在が残っているとは考えにくい。
(そういえば魔王は誰かに自分は作り出されたとか言ってたけど……一体何者だろう?)
ルノは魔王との戦闘を思い返し、魔王は自分がこれまでの歴史上に登場した魔王とは別の存在である事を話していた。その話が事実ならば魔王軍の中にルノが苦戦を強いられた魔王を作り出した存在が居る事になるが、それがクズノだった場合は非常に厄介な事になる。
(魔王は宇宙に飛ばす事は出来たけど、もう一度同じような奴と戦えば今度は不味いかも……ステータスはもう上昇しないから成長の異能に頼れないし、もう一度戦闘法を見直してみようかな?)
先日にルノが対立した「スライム」の魔王は「魔法を吸収し、内部で反芻して何倍にも威力を上昇させて放つ」という非常に厄介な能力を持っていた。だが、後になって考えれば魔王はルノに対して妙なまでに相性の悪い相手であり、不自然さが残っていた。
(まるで俺のような魔術師と戦うことを予測していたような能力だな……魔法が使えない相手には何の役にも立たない能力というのも気になるし)
魔王の能力はあくまでも対魔術師との戦闘に特化した能力であり、例えばダンテやギリョウのような魔法が扱えない戦闘職の人間には何の意味もない能力である(最も魔王自身の身体能力もルノに匹敵する程に高いが)。仮に魔王の能力がルノを倒すために作り出された能力だとした場合、魔王を作り出した存在はルノを恐れて彼に対抗するためだけの能力を作り出した可能性も否定できない。
(仮に魔王を作り出せる存在が残っていたらまたあんな面倒な相手と戦う事になるのか……そう考えると今度は確実に相手を倒す方法か封じる手段を見つけないと)
再び魔王のような存在が現れた時の場合に備え、ルノは用心のために魔法以外の対抗手段を身に着ける事を決めた。一応は四天王から護身術程度の戦闘技術は教わって入るが、素の身体能力が高すぎるルノの場合は魔法無しでも魔物を圧倒出来る程の高い運動能力を持っているので本格的に格闘技を学ぶ必要はなかった。
しかし、再び魔王のような存在と戦う事態に陥った場合に備え、今度は宇宙に放り出さずとも倒せる手段を身に着けるためにルノは魔法以外の戦闘技術も学ぶ事に決めた。だが、現状は住民達を救い出し、横暴を行う獣人国の軍隊に鉄槌を下すために行動する事に集中する。
「さてと……そろそろミルさんの所に行こうか。これぐらいのお金があれば回復薬も作ってくれるんだよね?」
「そうね。でも、本当にあの婆さんに回復薬を作ってもらうの?腕は確かだけど、流石に一人だけだと作れる量も限られているわよ」
「大丈夫、その点についてもケンさんと相談してミルさん以外の薬師にも声を掛けてる。無理やり兵士に連行されて回復薬の制作を強要されていた他の村の薬師さんも結構居たらしいからその人たちにも協力を頼んであるんだ」
「あら、意外と抜け目ないわね……というか、それならミルに頼む必要もなかったんじゃない?」
「ううん、回復薬を作れる人は一人でも多い方がいいよ。薬師の人達も生活があるから無償で手伝って貰う訳にはいかないし、ちゃんと後で作った分の料金は払う約束はしてある」
「変なところで真面目よねあんたって……いきなり駐屯所に殴り込んだ奴の台詞とは思えないわ」
『シャアアッ……』
自分の知らない間にミル以外の薬師にも仕事を依頼していた事にリディアは戸惑いながらも感心し、考え無しで行動しているように思えて裏では計算して動いていたルノの評価を見直す。何となくではあるがお互いに認め合って少しだけ距離が縮んだように感じた二人は早速ミルの元に向かい、まずは回復薬の制作を依頼する事にした。
「分かった。色々とありがとうリディア」
「な、何よ……意外と素直に礼を言うのね」
感謝の言葉を告げたルノにリディアは戸惑うが、これまでの道中でルノも彼女の事をそれなりに信頼しており、少なくとも味方でいる間は頼りになる相手だと認識していた。出会いは最悪ではあったが子供が好きな一面や孤児院のために仕送りしていた事を知った事で根は悪い人間ではないと判断した。
(でも、油断は出来ないな。目を離さないようにしないと……)
リディアがルノの味方でいるのは彼女が魔王軍に命を狙われるようになったから仕方なく同行している節があり、もしも何らかの理由で魔王軍がリディアが戻ることを許したのならば彼女が裏切る可能性は否定できない。最も今の所は魔王軍もルノ達の動向に気づいている様子はなく、仮に知られていたとしても魔王軍の中にルノと対抗出来る存在が残っているとは考えにくい。
(そういえば魔王は誰かに自分は作り出されたとか言ってたけど……一体何者だろう?)
ルノは魔王との戦闘を思い返し、魔王は自分がこれまでの歴史上に登場した魔王とは別の存在である事を話していた。その話が事実ならば魔王軍の中にルノが苦戦を強いられた魔王を作り出した存在が居る事になるが、それがクズノだった場合は非常に厄介な事になる。
(魔王は宇宙に飛ばす事は出来たけど、もう一度同じような奴と戦えば今度は不味いかも……ステータスはもう上昇しないから成長の異能に頼れないし、もう一度戦闘法を見直してみようかな?)
先日にルノが対立した「スライム」の魔王は「魔法を吸収し、内部で反芻して何倍にも威力を上昇させて放つ」という非常に厄介な能力を持っていた。だが、後になって考えれば魔王はルノに対して妙なまでに相性の悪い相手であり、不自然さが残っていた。
(まるで俺のような魔術師と戦うことを予測していたような能力だな……魔法が使えない相手には何の役にも立たない能力というのも気になるし)
魔王の能力はあくまでも対魔術師との戦闘に特化した能力であり、例えばダンテやギリョウのような魔法が扱えない戦闘職の人間には何の意味もない能力である(最も魔王自身の身体能力もルノに匹敵する程に高いが)。仮に魔王の能力がルノを倒すために作り出された能力だとした場合、魔王を作り出した存在はルノを恐れて彼に対抗するためだけの能力を作り出した可能性も否定できない。
(仮に魔王を作り出せる存在が残っていたらまたあんな面倒な相手と戦う事になるのか……そう考えると今度は確実に相手を倒す方法か封じる手段を見つけないと)
再び魔王のような存在が現れた時の場合に備え、ルノは用心のために魔法以外の対抗手段を身に着ける事を決めた。一応は四天王から護身術程度の戦闘技術は教わって入るが、素の身体能力が高すぎるルノの場合は魔法無しでも魔物を圧倒出来る程の高い運動能力を持っているので本格的に格闘技を学ぶ必要はなかった。
しかし、再び魔王のような存在と戦う事態に陥った場合に備え、今度は宇宙に放り出さずとも倒せる手段を身に着けるためにルノは魔法以外の戦闘技術も学ぶ事に決めた。だが、現状は住民達を救い出し、横暴を行う獣人国の軍隊に鉄槌を下すために行動する事に集中する。
「さてと……そろそろミルさんの所に行こうか。これぐらいのお金があれば回復薬も作ってくれるんだよね?」
「そうね。でも、本当にあの婆さんに回復薬を作ってもらうの?腕は確かだけど、流石に一人だけだと作れる量も限られているわよ」
「大丈夫、その点についてもケンさんと相談してミルさん以外の薬師にも声を掛けてる。無理やり兵士に連行されて回復薬の制作を強要されていた他の村の薬師さんも結構居たらしいからその人たちにも協力を頼んであるんだ」
「あら、意外と抜け目ないわね……というか、それならミルに頼む必要もなかったんじゃない?」
「ううん、回復薬を作れる人は一人でも多い方がいいよ。薬師の人達も生活があるから無償で手伝って貰う訳にはいかないし、ちゃんと後で作った分の料金は払う約束はしてある」
「変なところで真面目よねあんたって……いきなり駐屯所に殴り込んだ奴の台詞とは思えないわ」
『シャアアッ……』
自分の知らない間にミル以外の薬師にも仕事を依頼していた事にリディアは戸惑いながらも感心し、考え無しで行動しているように思えて裏では計算して動いていたルノの評価を見直す。何となくではあるがお互いに認め合って少しだけ距離が縮んだように感じた二人は早速ミルの元に向かい、まずは回復薬の制作を依頼する事にした。
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