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獣人国
商人に相談
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「わふぅっ……ここに居たんですねレナのお兄さんとリディアのお姉さん。急にいなくなったから迷子になったのかと心配してました」
「そ、そう……それは悪かったわね」
「わう?お姉さんの目元が赤いような気がします。もしかして泣いてたんですか?」
「な、泣いてないわよ!!」
気づかれないようにワン子と別れようとしたにも関わらずに予想外の再会を果たしてしまい、リディアは涙を流した事を誤魔化す用に顔を逸らす。その間にもルノはワン子の父親のケンと話を行う。
「あなた方の事は娘から聞いております。娘の命だけではなく、我々も救い出してくれた事に感謝します」
「いえいえ……あっ、出来れば俺の事は内緒にして貰えますか?」
「はい?」
氷鎧の中身をルノだと知っているワン子は両親にルノの名前を明かしてしまったらしく、一応は正体を隠すために他の人間に名前の事は喋らないように願う。何か事情があると察したケンは承諾し、ワン子の母親も了承した。
「改めまして初めまして……ワン子の母親のミケと申します」
「どうも初めまして……ミケさんは猫型の獣人なんですか?」
「はい、それが何か……?」
「あ、いえ……少し気になっただけなのでお気になさらず」
ワン子の父親は犬型の獣人に対し、母親の方は猫型の獣人だと発覚する。同じ獣人族と言っても人間の白人や黒人のように色々と別れており、ワン子の場合は父親の遺伝を受け継いで犬型の獣人になった事になる。ちなみに別種族同士でも普通に子供が出来るが、この世界にはハーフという存在はなく、必ず両親のどちらかの特徴を受け継いだ種族となる(つまり森人族と人間の間に生まれる子供は「ハーフエルフ」とはならない)。
「それよりもお二人とも大丈夫だったんですか?怪我はないですか?」
「ええ、捕まった時に少々殴られましたが、特に大きな怪我は有りません」
「兵士の方々も我々が抵抗しなければ無暗に痛めつけるような真似はしませんでした。それでも何人かの村人は死んでしまったようですが……」
「…………」
ルノの脳裏に教会の墓地に放置された死体を思い出し、彼らの殆どはガオンが雇い入れた傭兵に殺された事が発覚する。獣人国の正規の兵士たちは抵抗を受けても住民を無暗に傷づけるような真似はせず、殺人を犯すこともなかったようだが金で雇われた荒くれ者の傭兵は立場を利用して抵抗する人間を殺害し、力ずくで民衆を従わせようとしたらしい。
最もその傭兵達もルノによって蹴散らされ、さらに逃げ出そうとしたところ13番街の住民に捕まったらしく、現在では捕まった民衆と入れ替わりで刑務所に収監されているという。因果応報という諺通りにこれからの彼らは犯した罪の分だけ罰を受ける事になる。
「ところで……申し訳ありませんがお二人の話は実は盗み聞きさせて貰いました。どうやらお金にお困りのようですね」
「まあ、恥ずかしい話なんですが……」
「それならば我々に協力させてください。娘の恩人のためとあれば力を貸すことは惜しみません!!」
「え?いや、別にいいわよ。あんた達だって金を搾り取られた後でしょう?他人を気遣う余裕なんてないでしょ?」
「お恥ずかしい限り、確かに我が家にも金銭的な余裕はありません……今の所は」
ケンの言葉を聞いてルノとリディアは彼が資金の援助を行ってくれるのかと思ったが、ケンの家も徴収の対象として兵士たちから金目の物や食料品の類は奪い取られたはずなので他人を助ける余裕はない。しかし、ケンは自分の職業を明かす。
「実は私はこう見えても商人の職業なんです。なので子供の頃から経営学を学び、これまでにいくつかの事業を執り行っています」
「商人?」
「我々の職業は兵士や傭兵のように戦闘向けの職業ではありませんが、逆に戦闘以外の方面、つまりは商売に関わる事ならば自信があります。なのでお二人の力になれるかもしれません」
「なるほど……つまり相談役として助けることが出来るかもしれないわけね」
『シャアッ?』
「ウモォッ?」
魔物であるガーゴイルととマダラパイソンはケンの言いたいことは理解できなかったが、要はケンは資金の援助の代わりに商売に役立つ知識を提示し、娘を助けてくれた二人の力になりたいと告げる。短期間で金貨10枚という大金を稼ぎたいルノにとっては有難い話のため、早速ケンに自分達の事情を話す事にした。
「実はですね――」
「ふむふむ……つまり、回復薬の制作のために腕の良い薬師と契約を交わしたいという事ですか。そして契約金として金貨10枚を支払わなければならないと……しかし、今のルノ様にはそれほどの大金は持ち合わせておらず、同党の価値のある品物を持っていないと」
「持ち物も殆ど日用品ですし、それに売却できる物といったらこういう果物ぐらいでして……」
「こちらですか?」
ルノは異空間から海獄島から取り寄せた果物をケンに渡すと、彼は不思議に思いながらも匂いを嗅ぎ、耳元を揺らす。娘のワン子と同じように犬耳と尻尾は感情に作用して動くらしく、ケンは入念に果物を調べて感心したような表情を抱く。
「そ、そう……それは悪かったわね」
「わう?お姉さんの目元が赤いような気がします。もしかして泣いてたんですか?」
「な、泣いてないわよ!!」
気づかれないようにワン子と別れようとしたにも関わらずに予想外の再会を果たしてしまい、リディアは涙を流した事を誤魔化す用に顔を逸らす。その間にもルノはワン子の父親のケンと話を行う。
「あなた方の事は娘から聞いております。娘の命だけではなく、我々も救い出してくれた事に感謝します」
「いえいえ……あっ、出来れば俺の事は内緒にして貰えますか?」
「はい?」
氷鎧の中身をルノだと知っているワン子は両親にルノの名前を明かしてしまったらしく、一応は正体を隠すために他の人間に名前の事は喋らないように願う。何か事情があると察したケンは承諾し、ワン子の母親も了承した。
「改めまして初めまして……ワン子の母親のミケと申します」
「どうも初めまして……ミケさんは猫型の獣人なんですか?」
「はい、それが何か……?」
「あ、いえ……少し気になっただけなのでお気になさらず」
ワン子の父親は犬型の獣人に対し、母親の方は猫型の獣人だと発覚する。同じ獣人族と言っても人間の白人や黒人のように色々と別れており、ワン子の場合は父親の遺伝を受け継いで犬型の獣人になった事になる。ちなみに別種族同士でも普通に子供が出来るが、この世界にはハーフという存在はなく、必ず両親のどちらかの特徴を受け継いだ種族となる(つまり森人族と人間の間に生まれる子供は「ハーフエルフ」とはならない)。
「それよりもお二人とも大丈夫だったんですか?怪我はないですか?」
「ええ、捕まった時に少々殴られましたが、特に大きな怪我は有りません」
「兵士の方々も我々が抵抗しなければ無暗に痛めつけるような真似はしませんでした。それでも何人かの村人は死んでしまったようですが……」
「…………」
ルノの脳裏に教会の墓地に放置された死体を思い出し、彼らの殆どはガオンが雇い入れた傭兵に殺された事が発覚する。獣人国の正規の兵士たちは抵抗を受けても住民を無暗に傷づけるような真似はせず、殺人を犯すこともなかったようだが金で雇われた荒くれ者の傭兵は立場を利用して抵抗する人間を殺害し、力ずくで民衆を従わせようとしたらしい。
最もその傭兵達もルノによって蹴散らされ、さらに逃げ出そうとしたところ13番街の住民に捕まったらしく、現在では捕まった民衆と入れ替わりで刑務所に収監されているという。因果応報という諺通りにこれからの彼らは犯した罪の分だけ罰を受ける事になる。
「ところで……申し訳ありませんがお二人の話は実は盗み聞きさせて貰いました。どうやらお金にお困りのようですね」
「まあ、恥ずかしい話なんですが……」
「それならば我々に協力させてください。娘の恩人のためとあれば力を貸すことは惜しみません!!」
「え?いや、別にいいわよ。あんた達だって金を搾り取られた後でしょう?他人を気遣う余裕なんてないでしょ?」
「お恥ずかしい限り、確かに我が家にも金銭的な余裕はありません……今の所は」
ケンの言葉を聞いてルノとリディアは彼が資金の援助を行ってくれるのかと思ったが、ケンの家も徴収の対象として兵士たちから金目の物や食料品の類は奪い取られたはずなので他人を助ける余裕はない。しかし、ケンは自分の職業を明かす。
「実は私はこう見えても商人の職業なんです。なので子供の頃から経営学を学び、これまでにいくつかの事業を執り行っています」
「商人?」
「我々の職業は兵士や傭兵のように戦闘向けの職業ではありませんが、逆に戦闘以外の方面、つまりは商売に関わる事ならば自信があります。なのでお二人の力になれるかもしれません」
「なるほど……つまり相談役として助けることが出来るかもしれないわけね」
『シャアッ?』
「ウモォッ?」
魔物であるガーゴイルととマダラパイソンはケンの言いたいことは理解できなかったが、要はケンは資金の援助の代わりに商売に役立つ知識を提示し、娘を助けてくれた二人の力になりたいと告げる。短期間で金貨10枚という大金を稼ぎたいルノにとっては有難い話のため、早速ケンに自分達の事情を話す事にした。
「実はですね――」
「ふむふむ……つまり、回復薬の制作のために腕の良い薬師と契約を交わしたいという事ですか。そして契約金として金貨10枚を支払わなければならないと……しかし、今のルノ様にはそれほどの大金は持ち合わせておらず、同党の価値のある品物を持っていないと」
「持ち物も殆ど日用品ですし、それに売却できる物といったらこういう果物ぐらいでして……」
「こちらですか?」
ルノは異空間から海獄島から取り寄せた果物をケンに渡すと、彼は不思議に思いながらも匂いを嗅ぎ、耳元を揺らす。娘のワン子と同じように犬耳と尻尾は感情に作用して動くらしく、ケンは入念に果物を調べて感心したような表情を抱く。
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