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獣人国
ワン子と父母の再会
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――駐屯所で起きた騒動の翌日、刑務所内には大勢の人間が賑わっていた。各地方の村や街から兵士に逆らって捕まった民衆が解放され、迎えに来た家族や友人あるいは恋人が感動の再会を果たす。
「お父さん!!お母さん!!無事だったんですね!!」
「おお、ワン子!!」
「良かった……生きていたのね!!」
解放された民衆の中にはワン子の父母も存在したらしく、彼女は嬉しそうに家族の元へ駆け寄る。その様子を氷鎧を装着したルノと若干涙目のリディアが遠目で眺め、紆余曲折はあったが無事に彼女を家族と再会させる事に成功した。
「良かった……ワン子の両親は無事だったのか」
「ぐすっ……ふ、ふん!!うるさいのが消えてせいせいしたわ」
『シャアアッ!!』
「ウモォッ」
リディアの傍には街の外から呼び寄せたガーゴイルとマダラバイソンも存在し、主人を慰めるように擦り寄る。何だかんだで子供の事は嫌いではなかったのかリディアは少し寂しそうに親子の再会を果たすワン子の様子を眺めると、涙を誤魔化すようにルノに振り返る。
「そ、それでこれからどうするのよ?例の港に向かって獣人国の軍隊をとっちめるの?」
「いや……別に喧嘩を売りに行くわけじゃないよ。それにまだやり残した事があるからさ」
「何よやり残した事って?」
「ガオン将軍の配下の後始末だよ。将軍を捕まえる事は出来たけど、まだ地方には将軍の命令で民衆から物資を強奪している部隊も残っているらしいから、まずはその人達を止めないといけない」
当初は獣人国の軍隊が駐屯している港に向かってガオン将軍を引き渡そうかと考えたルノだが、他の地方にはまだガオン将軍の部隊が民衆を相手に苦しめている可能性が高い。今からガオンの兵士に指令を伝えさせるという手段もあるが、ガオンが捕まったと知った部隊が彼の救出のために13番街に向かってくる可能性もあるため、少々面倒ではあるがルノはガオンを連れて各地方の彼の部隊を捕縛する事を決めた。
「今日から忙しくなるよ。出来れば早いうちに部隊の人達を説得して港にいる軍隊に引き渡したいからね」
「でも、引き渡すと言ってもあいつらと会うって事でしょ?私達が最初にどんな目に遭ったのか覚えているの?」
「それはそうだけど、あの時は状況的に敵と思われても仕方なかったし……」
最初に獣人国の港に訪れた時にルノ達は軍隊から攻撃を受けたが、それは彼等がルノ達の事を第二王子が放った偵察兵と勘違いしたからであり、今度はちゃんと話をつけるためにルノはガオンを連れて行けば問題ないと判断した。第一王子にしてもガオンは配下であり、しかも裏切りを企んでいたと知れば話を聞かざるを得ず、ルノ達が敵ではないと信じてくれるかもしれない。
「でも、残念だけどワン子ちゃんとはここでお別れだね。リディアはちゃんと別れの言葉を言わないでいいの?」
「湿っぽいのは嫌いなのよ……縁があればまた会えるでしょ。ほら、行くわよ」
両親と再会したワン子は連れて行くわけにはいかず、残念ながら彼女とはここで別れる事になる。別れの挨拶をすれば余計に悲しくなると判断したルノとリディアは彼女が両親と再会の喜びを分かち合っている間に離れる事にした。
「さてと……出発の前に色々と準備をしないとね」
「準備?また何かやらかすつもり?」
「人聞きが悪いな……街の人達のために食料を用意するだけだよ」
「食料?どういう意味よ。あんたが昨日の内に駐屯所にあった食料は全部渡したんでしょ?」
「この街の人達だけじゃなくて他の村の人達に配る分も用意するんだよ」
ガオンの部隊が民衆から強奪した物資は全て取り戻したが、搔き集められた物資の大半は13番街以外の村や街からであり、未だに物資が返却されていない場所も多い。そのためにルノはガオンの部隊の凶行を止める一方で各地の村や街に配給を行うつもりだった。
「海獄島で覚えた食料の生産方法を生かす時がやってきたよ」
「……本当に何でもありよねあんた」
『シャアアッ……』
「ウモォッ?」
光球の魔法を利用して植物を急成長させ、食用の果物を大量調達するつもりのルノにリディアとガーゴイルは呆れ、唯一事情を知らないマダラバイソンは首を傾げる。
「それと薬草もいっぱい用意しないといけないな。あ、でも薬草を回復薬に作り替えるには専門家の人にも手伝って欲しいな。確か薬師や治療魔導士の人なら質の良い回復薬を調合出来るんだよね?」
「まあ、そうね。私も回復薬の調合ぐらいなら出来るけど、専門の職業の人間の方が効果の高い薬を作れるはずよ」
しかし、今回のルノの目的は食料だけではなく、兵士に痛めつけられて傷つけられた人達のための薬品も欲しかった。だが、回復薬の素材となる薬草の方はルノの魔法でどうにか用意できるが、肝心の薬草を調合して回復薬を作り出せる人間の協力も必要だった。この場にリーリスが居ればよかったのだが、生憎と彼女は帝国に残っているはずなので力を借りる事は出来ない。
「お父さん!!お母さん!!無事だったんですね!!」
「おお、ワン子!!」
「良かった……生きていたのね!!」
解放された民衆の中にはワン子の父母も存在したらしく、彼女は嬉しそうに家族の元へ駆け寄る。その様子を氷鎧を装着したルノと若干涙目のリディアが遠目で眺め、紆余曲折はあったが無事に彼女を家族と再会させる事に成功した。
「良かった……ワン子の両親は無事だったのか」
「ぐすっ……ふ、ふん!!うるさいのが消えてせいせいしたわ」
『シャアアッ!!』
「ウモォッ」
リディアの傍には街の外から呼び寄せたガーゴイルとマダラバイソンも存在し、主人を慰めるように擦り寄る。何だかんだで子供の事は嫌いではなかったのかリディアは少し寂しそうに親子の再会を果たすワン子の様子を眺めると、涙を誤魔化すようにルノに振り返る。
「そ、それでこれからどうするのよ?例の港に向かって獣人国の軍隊をとっちめるの?」
「いや……別に喧嘩を売りに行くわけじゃないよ。それにまだやり残した事があるからさ」
「何よやり残した事って?」
「ガオン将軍の配下の後始末だよ。将軍を捕まえる事は出来たけど、まだ地方には将軍の命令で民衆から物資を強奪している部隊も残っているらしいから、まずはその人達を止めないといけない」
当初は獣人国の軍隊が駐屯している港に向かってガオン将軍を引き渡そうかと考えたルノだが、他の地方にはまだガオン将軍の部隊が民衆を相手に苦しめている可能性が高い。今からガオンの兵士に指令を伝えさせるという手段もあるが、ガオンが捕まったと知った部隊が彼の救出のために13番街に向かってくる可能性もあるため、少々面倒ではあるがルノはガオンを連れて各地方の彼の部隊を捕縛する事を決めた。
「今日から忙しくなるよ。出来れば早いうちに部隊の人達を説得して港にいる軍隊に引き渡したいからね」
「でも、引き渡すと言ってもあいつらと会うって事でしょ?私達が最初にどんな目に遭ったのか覚えているの?」
「それはそうだけど、あの時は状況的に敵と思われても仕方なかったし……」
最初に獣人国の港に訪れた時にルノ達は軍隊から攻撃を受けたが、それは彼等がルノ達の事を第二王子が放った偵察兵と勘違いしたからであり、今度はちゃんと話をつけるためにルノはガオンを連れて行けば問題ないと判断した。第一王子にしてもガオンは配下であり、しかも裏切りを企んでいたと知れば話を聞かざるを得ず、ルノ達が敵ではないと信じてくれるかもしれない。
「でも、残念だけどワン子ちゃんとはここでお別れだね。リディアはちゃんと別れの言葉を言わないでいいの?」
「湿っぽいのは嫌いなのよ……縁があればまた会えるでしょ。ほら、行くわよ」
両親と再会したワン子は連れて行くわけにはいかず、残念ながら彼女とはここで別れる事になる。別れの挨拶をすれば余計に悲しくなると判断したルノとリディアは彼女が両親と再会の喜びを分かち合っている間に離れる事にした。
「さてと……出発の前に色々と準備をしないとね」
「準備?また何かやらかすつもり?」
「人聞きが悪いな……街の人達のために食料を用意するだけだよ」
「食料?どういう意味よ。あんたが昨日の内に駐屯所にあった食料は全部渡したんでしょ?」
「この街の人達だけじゃなくて他の村の人達に配る分も用意するんだよ」
ガオンの部隊が民衆から強奪した物資は全て取り戻したが、搔き集められた物資の大半は13番街以外の村や街からであり、未だに物資が返却されていない場所も多い。そのためにルノはガオンの部隊の凶行を止める一方で各地の村や街に配給を行うつもりだった。
「海獄島で覚えた食料の生産方法を生かす時がやってきたよ」
「……本当に何でもありよねあんた」
『シャアアッ……』
「ウモォッ?」
光球の魔法を利用して植物を急成長させ、食用の果物を大量調達するつもりのルノにリディアとガーゴイルは呆れ、唯一事情を知らないマダラバイソンは首を傾げる。
「それと薬草もいっぱい用意しないといけないな。あ、でも薬草を回復薬に作り替えるには専門家の人にも手伝って欲しいな。確か薬師や治療魔導士の人なら質の良い回復薬を調合出来るんだよね?」
「まあ、そうね。私も回復薬の調合ぐらいなら出来るけど、専門の職業の人間の方が効果の高い薬を作れるはずよ」
しかし、今回のルノの目的は食料だけではなく、兵士に痛めつけられて傷つけられた人達のための薬品も欲しかった。だが、回復薬の素材となる薬草の方はルノの魔法でどうにか用意できるが、肝心の薬草を調合して回復薬を作り出せる人間の協力も必要だった。この場にリーリスが居ればよかったのだが、生憎と彼女は帝国に残っているはずなので力を借りる事は出来ない。
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