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獣人国

住民の対処

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「それではルノン様とお呼びしてよろしいでしょうか?」
「別に様付けしなくてもいいですけど……普通にルノンでいいですよ」
「いえ、我々の恩人を呼び捨てになど出来ません!!貴方のお陰で我々は誰一人犠牲を出さずに済んだのですから!!」
「俺が指導してやっただろうが……いてっ!?」
「うるっさいわね。あんたは黙ってなさいよおっさん」


街長の言葉にガインが拗ねた態度を取るが、そんな彼の後頭部をリディアが蹴りつける。そんな二人のやり取りに気付きながらもルノは街長にこれからどうするのかを尋ねる。


「街長さんとしてはこの人達はどうするつもりなんですか?ガインさんはともかく、将軍と兵士の人達をどう扱うのか考えているんですか?」
「その事なのですが……実を言えば我々も困っています」


ガオンが犯した罪は街の住民達にとっては許しがたい事だが、問題なのは彼が盗賊ではなく国の将軍である事である。ガオンの部隊が民衆に暴行を加え、金銭の類を奪い取ったのは事実だが、彼が将軍である以上は今回の住民の反乱は国家への反逆と捉えれるかもしれない。

勿論、住民達も別に国家に対して反旗を翻すつもりはなく、ガオンの暴走を止められれば今まで通りの生活を送れると思っていた。しかし、街に滞在していたガオンの配下の傭兵達は逃げ出してしまい、駐屯所に至っては家事を引き起こしてしまった。もしも国から別の軍隊が派遣されれば状況判断的に住民達が暴動を引き起こしてガオンを人質に取ったと勘違いされても仕方がない。


「我々としても将軍をこのままどのように扱うべきか迷っているのです。下手に手を出せば確実に獣人国に仇を為した判断されかねません。そうなればこの街は……」
「なるほど……それは困りますよね」
「それにガオン将軍は第一王子の派閥です。今、この国は第一王子と第二王子の争いが起きています。もしもガオン将軍が捕まったと聞けばきっと第一王子はこの街に軍勢を送り込むでしょう。そんな事になれば我々は生き延びる手段はありません」
「つまり、将軍に迂闊な手出しは出来ないと」
「…………」


街長の非常に困った表情を見てルノはガオンに視線を向けると、彼は黙りこくったまま縄で縛られた状態で座り込む。まるで観念したように自分の処遇を待ち構えるガオンの潔さにルノは不思議に思うが、そんな態度が住民達の怒りを煽る。


「こいつ!!何を黙ってやがる!!」
「お前のせいでどれだけの人が傷つけられたと思ってやがる!!」
「殺せ!!こんな屑、生かす価値はねえ!!」
「ま、待て!!止めろっ!!」
「ガオン様!!」


血気盛んな獣人がガオンに向けて兵士から奪い取った武器を構えると、ガオンを殺そうと近づく。その様子を見た側近の兵士達が慌てて止めようとしたが、その前にルノがガオンと住民の間に割って入った。


「ちょっと待って下さい。この人の事より、皆さんに渡して置く物があるんです」
「な、何?」
「渡す物……だと?」
「一先ずは皆さんが兵士から奪われた物をお返しします」
「何だと……うおっ!?」


ルノは右手を前に翳した瞬間、焼け焦げた建物の残骸から無数の物体が空へ浮上し、住民達の前に設置される。残骸から出現したのはルノが倉庫から回収して置いた食料、武器、薬品の類であり、蓋が開いてまずは食料と薬品のみを住民達に解放した。


「とりあえずはこれが回収して置いた物資です。皆さんが持っていた分もあると思うので確認してください」
「何だって!?」
「おい、見ろよ!!凄いぞ、こんなにたくさん……」
「薬もこんなにあるぞ!!すぐに教会へ運び込んで怪我してる奴等の治療へ使えっ!!」


大量の氷箱に住民達はガオンの怒りを忘れて群がり、奪われた物資を取り戻す。薬品の類は兵士に逆らって怪我をした人間の元へすぐに運び込まれ、食料の類もすぐに分け与えられる。この街だけではなく他の村々の分も存在し、元々はガオンが第一王子の軍隊と徹底抗戦するために集めた物資なので彼の私財で集めた物も多い。


「お、お前……そうか、お前が倉庫を荒らした犯人だったのか!?」
「あ、はい。でも、元々は街の人達の分なんですから悪く思わないで下さいね」
「……何という奴だ」


ガオンは短時間で数週間もかけて集めた物資をほぼ全て回収していたルノに呆れ、怒る気力も湧かない。結果的には住民達の興味が別に移った事でガオンは命拾いしたが、しばらくすれば冷静さを取り戻した住民達が彼を殺そうとするだろう。その前にルノは冷静に話が通じる街長と相談してガオンの処遇を考える事にした。


「街長さん。ガオン将軍とその兵士の人達に関してなんですけど、俺に任せてくれませんか?」
「任せる……とは?」
「もういい加減に獣人国の軍隊の人達にはうんざりしてきたんで……直接文句を言いに行きます」


ルノの最後の言葉にその場に居た人間全員が背筋が震え、彼が決して冗談で言っているわけではない事を理解した――




ルノ君の怒り度:40% ←少し落ち着いた
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