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獣人国
街長からの相談
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「その……お尋ねしたいのですが、貴方様は一体何者なのでしょうか?我々の味方をしてくれた事は分かるのですが、どうしてここまで危険な真似をして助けてくれたのでしょうか?」
「えっと……成り行きで?」
「な、成り行き?」
アオンの質問にルノは腕を組んで考えるが、正直に言えばここまでの事態を引き起こすつもりはなかった。当初の目的は攫われたワン子の両親や村の人間達の救出に向かったのだが、何時の間にか目的が人攫いを行う将軍に抗議を告げるために変わり、最終的には将軍を捕まえてしまう。駐屯所が火災に見舞われた事はルノも予想外であり、ここまで大事にする気はなかった。
しかし、こうなった以上はルノも無関係ではいられず、最初の目的である刑務所に捕まっているはずのワン子の両親や他の村の人間達の救助のためにガオンに振り返る。刑務所に向かう前にガオンが犯した罪を先に償わさせなければならない。
「ガオン将軍、貴方はどうして民衆から金銭や食料品、それに薬品まで回収したのか答えてください」
「……近いうちに俺はこの国に反旗を翻し、軍隊を占拠するために物資が必要不可欠だったのだ。だから部下を使ってお前達から物資を回収していた」
「何だって!?」
「じゃ、じゃあ反乱を起こすつもりだったのか!!」
「な、何てことを……!!」
国を裏切って獣人国を乗っ取ろうとした事をガオンはあっさりと自白し、妙に潔く質問に答えるガオンにルノは疑問を抱くが、どうして彼がそのような計画を立てたのかを問う。
「どうしてそんな無謀な真似をしたんですか?」
「それは俺が国王になるためだ。男ならば誰しもが一度は国の頂点に立ちたいと考えるだろう……そう思っていたのだがな」
「思っていた?」
「今はもう、正直に言えばどうでもいい……どうして俺はこんな事をしたのかさえも分からん」
「ふざけるな!!」
「そんな勝手な理由で私達を……!!」
意気消沈したガオンの言葉に住民は罵声を浴びせ、彼の身勝手な目的のせいで彼等は大切な物を多く失った。中には兵士に反抗して殺された人間も存在し、ルノもワン子が暮らしていた村で発見した死体の山を思い出してしまう。だが、どうしてもルノには気になる事があった。
「……教えてください。この計画はガオン将軍が考えたんですか?」
「いや、協力者がいる。俺の屋敷に忍び込んできた男だ。確か名前は……クズノと言っていたか」
「クズノ……」
ルノは人混みに紛れているリディアに視線を向けると、彼女は他の人間に気付かれない様に頷く。魔王軍が獣人国でも何らかの活動をしていた事はリディアから聞かされており、今回の事態も魔王軍が関与している事が判明した。
「そのクズノという人は何処にいるんですか?」
「奴の居場所は知らん。だが、会いたいと思った時に急に姿を見せてくる変わった奴だ。しかし、奴の資金提供によって俺は大量の傭兵を雇ったり、噂を流してケモノ島に第二王子が逃げ込んだという嘘の情報を第一王子に流した。今考えれば人間の癖に妙に俺の事を買っていたな……」
ガオンも話している途中でクズノの行動に疑問を抱くようになり、どうして自分が得体の知れない人間と協力関係を結んだのか不思議に思う。ルノはガオンが嘘を吐ている様子は見えず、まるで人が変わったように大人しくなった彼の態度に疑問を抱く。
(この人、こんなに大人しかったかな?まさか、洗脳系の能力か何かで操られてたりとか……いや、それでも言い訳にはならないか)
クズノが何らかの方法でガオンを煽てて国への反乱を決意させたとしても、ガオンの命令によって彼の配下は民衆に大きな被害を与えた事実に変わりはない。しかし、反乱を起こそうとしていたとはいえ、相手はこの国の将軍である。下手に手を出せば今回は獣人国と本格的に敵対関係になってしまう。
(流石にこれ以上目立つのは不味いかな……姿も見られたかもしれないし、だからと言って放っておくのもな……)
建物を消火するためにルノは姿を晒してしまい、人間よりも視覚に優れている獣人族の民衆は彼の姿をはっきりと捉えていた。幸いと言うべきか魔法を使用した後にルノは即座に身を隠して氷鎧を再び装着したので中身は気付かれていないと思うが、生憎とガオンとガインはルノの正体を知っている。
(この二人に口止めはしたけど、俺が帰った後に他の人に話さないとは限らないし……仕方ない、こうなったら街の人達に聞いてみるか)
自分だけが考えていても仕方がないため、ルノはガオンの対処をどのようするべきか住民に委ねようとした時、街長のアオンが言いにくそうに先に答えた。
「あの……申し訳ありませんが、貴方様の名前だけでもお教え下さりませんか?」
「あ、はい。名前は……えっと」
名前を尋ねられて馬鹿正直に答えるわけにいかず、助けを求める様にルノはリディアに視線を向けると、自分で考えろとばかりに彼女は視線を反らす。仕方がないのでルノは適当に自分の名前に一文字加えた名前を告げる。
「名前は……ルノンです」
「ルノン様、ですか。あまり聞きなれない名前ですな……やはり、外国の御方ですか?」
「まあ、外国と言えばそうですけど……」
この世界とは異なる場所から訪れたという点では外国と言っても問題はなく、ルノは自分が外国から訪れた旅人だと答えた。
「えっと……成り行きで?」
「な、成り行き?」
アオンの質問にルノは腕を組んで考えるが、正直に言えばここまでの事態を引き起こすつもりはなかった。当初の目的は攫われたワン子の両親や村の人間達の救出に向かったのだが、何時の間にか目的が人攫いを行う将軍に抗議を告げるために変わり、最終的には将軍を捕まえてしまう。駐屯所が火災に見舞われた事はルノも予想外であり、ここまで大事にする気はなかった。
しかし、こうなった以上はルノも無関係ではいられず、最初の目的である刑務所に捕まっているはずのワン子の両親や他の村の人間達の救助のためにガオンに振り返る。刑務所に向かう前にガオンが犯した罪を先に償わさせなければならない。
「ガオン将軍、貴方はどうして民衆から金銭や食料品、それに薬品まで回収したのか答えてください」
「……近いうちに俺はこの国に反旗を翻し、軍隊を占拠するために物資が必要不可欠だったのだ。だから部下を使ってお前達から物資を回収していた」
「何だって!?」
「じゃ、じゃあ反乱を起こすつもりだったのか!!」
「な、何てことを……!!」
国を裏切って獣人国を乗っ取ろうとした事をガオンはあっさりと自白し、妙に潔く質問に答えるガオンにルノは疑問を抱くが、どうして彼がそのような計画を立てたのかを問う。
「どうしてそんな無謀な真似をしたんですか?」
「それは俺が国王になるためだ。男ならば誰しもが一度は国の頂点に立ちたいと考えるだろう……そう思っていたのだがな」
「思っていた?」
「今はもう、正直に言えばどうでもいい……どうして俺はこんな事をしたのかさえも分からん」
「ふざけるな!!」
「そんな勝手な理由で私達を……!!」
意気消沈したガオンの言葉に住民は罵声を浴びせ、彼の身勝手な目的のせいで彼等は大切な物を多く失った。中には兵士に反抗して殺された人間も存在し、ルノもワン子が暮らしていた村で発見した死体の山を思い出してしまう。だが、どうしてもルノには気になる事があった。
「……教えてください。この計画はガオン将軍が考えたんですか?」
「いや、協力者がいる。俺の屋敷に忍び込んできた男だ。確か名前は……クズノと言っていたか」
「クズノ……」
ルノは人混みに紛れているリディアに視線を向けると、彼女は他の人間に気付かれない様に頷く。魔王軍が獣人国でも何らかの活動をしていた事はリディアから聞かされており、今回の事態も魔王軍が関与している事が判明した。
「そのクズノという人は何処にいるんですか?」
「奴の居場所は知らん。だが、会いたいと思った時に急に姿を見せてくる変わった奴だ。しかし、奴の資金提供によって俺は大量の傭兵を雇ったり、噂を流してケモノ島に第二王子が逃げ込んだという嘘の情報を第一王子に流した。今考えれば人間の癖に妙に俺の事を買っていたな……」
ガオンも話している途中でクズノの行動に疑問を抱くようになり、どうして自分が得体の知れない人間と協力関係を結んだのか不思議に思う。ルノはガオンが嘘を吐ている様子は見えず、まるで人が変わったように大人しくなった彼の態度に疑問を抱く。
(この人、こんなに大人しかったかな?まさか、洗脳系の能力か何かで操られてたりとか……いや、それでも言い訳にはならないか)
クズノが何らかの方法でガオンを煽てて国への反乱を決意させたとしても、ガオンの命令によって彼の配下は民衆に大きな被害を与えた事実に変わりはない。しかし、反乱を起こそうとしていたとはいえ、相手はこの国の将軍である。下手に手を出せば今回は獣人国と本格的に敵対関係になってしまう。
(流石にこれ以上目立つのは不味いかな……姿も見られたかもしれないし、だからと言って放っておくのもな……)
建物を消火するためにルノは姿を晒してしまい、人間よりも視覚に優れている獣人族の民衆は彼の姿をはっきりと捉えていた。幸いと言うべきか魔法を使用した後にルノは即座に身を隠して氷鎧を再び装着したので中身は気付かれていないと思うが、生憎とガオンとガインはルノの正体を知っている。
(この二人に口止めはしたけど、俺が帰った後に他の人に話さないとは限らないし……仕方ない、こうなったら街の人達に聞いてみるか)
自分だけが考えていても仕方がないため、ルノはガオンの対処をどのようするべきか住民に委ねようとした時、街長のアオンが言いにくそうに先に答えた。
「あの……申し訳ありませんが、貴方様の名前だけでもお教え下さりませんか?」
「あ、はい。名前は……えっと」
名前を尋ねられて馬鹿正直に答えるわけにいかず、助けを求める様にルノはリディアに視線を向けると、自分で考えろとばかりに彼女は視線を反らす。仕方がないのでルノは適当に自分の名前に一文字加えた名前を告げる。
「名前は……ルノンです」
「ルノン様、ですか。あまり聞きなれない名前ですな……やはり、外国の御方ですか?」
「まあ、外国と言えばそうですけど……」
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