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獣人国
ガイン捕縛
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――脱出路内にてガオンが泣き出してルノ達が困惑する頃、ガインはどうにか脱出路の出口に到着し、身体を起き上げる。いくつかの関節を外して蛇のように移動して抜け出す事に成功した彼は関節を元に戻し、苦痛の表情を浮かべながらも上手く脱出出来た事を喜ぶ。
「ふうっ、やっと抜け出せたか……へへ、どうやらあいつらは追って来れないようだな。それにしても情報屋の野郎、適当な事を言いやがって……穴の大きさが小髭族が通り抜ける程の大きさなんて聞いてねえぞ」
悪態を吐きながらもガインは腰に装着した縄を引き寄せると、穴の中から縄で縛りつけられた複数の小袋が出現する。逃げ出す際に小袋を装着したままだと抜け出す事が出来ないため、事前に長い縄を腰に巻き付け、小袋と結んでおくことで通路内で小袋を引きずりながらガインは外に抜け出したのだ。
「だが、お陰でこれだけあれば生活には困らねえな……へへ、悪いなリディア、まあお前なら何とか逃げ切れるだろうよ」
義理の娘であるリディアを見捨てて置いてきてしまった事に関してはガインも思う所はあったが、彼が一番に大切にしている物は金であり、嬉々とした表情でガインは小袋の中身を確認する。駐屯所内の金庫から漁ってきた金貨が大量に入っており、これだけあれば数年は遊んで暮らす事も出来る。
「しかし、流石に腰が痛いな……俺も年だし、そろそろ引退を考えないとな。おっと、その前に他の奴等に見つかる前に金を隠さないとな!!」
小袋を拾い上げ、街の住民に見つかる前に退去しようとしたガインだが、足元に落ちている小袋を拾い上げようとした時に違和感を覚えた。
「あ?なんで拾えないんだ?」
ガインは両手を伸ばして小袋を拾い上げようとしたが、どう言う事なのか伸ばした腕が地面に届かず、それどころか身体が浮き上がる感覚に襲われる。
「うおおっ!?な、何だぁっ!?」
『シャアアアッ!!』
空中からガインの身体を持ち上げたのはリディアの契約獣であるガーゴイルであり、逃げられないように服を掴んで10メートル近くにまで上昇すると、ガーゴイルは近くの建物の屋根の上にガインを放り落とす。
「いでぇっ!?な、何だてめえは……!?」
『シャギャアッ!!』
「ひいいっ!?」
唐突に現れた化物にガインは慌てて逃げ出そうとしたが、右足の義足をガーゴイルは掴み取ると、容赦なく握りつぶす。義足を破壊された事でまともに立つことも出来なくなったガインは悲鳴を上げ、命乞いを行う。
「や、止めろ!!止めてくれ!!助けてくれぇっ!?」
『…………』
情けなく泣き叫びながら命乞いを行うガインに対してガーゴイルは腕を組み、黙って様子を伺う。そんなガーゴイルの行動にガインは違和感を覚え、まるで自分の言葉が通じたかのように何もしないガーゴイルに恐る恐る問い質す。
「お、お前……人間の言葉が分かるのか?」
『シャアッ』
「うお、マジか!?」
質問に応じる様にガーゴイルはうなずくとガインは驚いた表情を浮かべ、話が通じる相手ならば命は助かるのではないかと考えたが、相手が魔物である事に変わりはない。
(こ、こいつ……普通の魔物じゃないな。多分、魔物使いに使役されている契約獣だな……待てよ、魔物使いと言えば……!?)
嫌な予感を覚えたガインは自分が抜け出した脱出路に視線を向けると、子供が通過できるような小さな穴が徐々に拡大化して数人の人間が姿を現した。最初に出てきたのは氷鎧を装着したルノと、その後ろに続くように彼から解放されて黙って付き従うガオン、最後にワン子と手を繋いだリディアが現れた。
『ふうっ……どうにか抜け出したね』
「ここは……そうか、駐屯所の前の空き家か。こんな場所に抜け道があったとは……」
「あ、見てください!!屋根の上にさっきのおじさんとお姉さんのガーゴイルがいます!?」
「ええ、知ってるわよ。距離はぎりぎりだったけど、どうにか呼び寄せる事に成功したようね」
姿を現したのは駐屯所内でガインが見捨てたルノ達で間違いなく、ガインの前に立つガーゴイルは主人の姿を見て両手で大きく手を振る。彼を呼び寄せたのはリディアであり、先に外に逃げ出したガインを捕まえるためにわざわざ街の外から呼び寄せたのだ。
「お、お前等!?生きてたのか……うおっ!?」
『シャアアッ!!』
ガインが驚愕の声を上げると、ガーゴイルは彼の腕を掴んで屋根の上から飛び降りる。ガインは地面に接近する光景を視界にとらえ、悲鳴を上げる。
「ぎゃあああっ!?」
「うるさい奴ね……飛びなさい!!」
『シャアッ!!』
地面に直撃する寸前にガーゴイルは飛翔すると腕を掴まれていたガインも浮き上がり、再び今度は別の建物の上に移動を行う。危うく死にかけたガインは息を荒げながら涙を流し、そんな育て親の情けない姿にリディアは溜息を吐く。
「ふうっ、やっと抜け出せたか……へへ、どうやらあいつらは追って来れないようだな。それにしても情報屋の野郎、適当な事を言いやがって……穴の大きさが小髭族が通り抜ける程の大きさなんて聞いてねえぞ」
悪態を吐きながらもガインは腰に装着した縄を引き寄せると、穴の中から縄で縛りつけられた複数の小袋が出現する。逃げ出す際に小袋を装着したままだと抜け出す事が出来ないため、事前に長い縄を腰に巻き付け、小袋と結んでおくことで通路内で小袋を引きずりながらガインは外に抜け出したのだ。
「だが、お陰でこれだけあれば生活には困らねえな……へへ、悪いなリディア、まあお前なら何とか逃げ切れるだろうよ」
義理の娘であるリディアを見捨てて置いてきてしまった事に関してはガインも思う所はあったが、彼が一番に大切にしている物は金であり、嬉々とした表情でガインは小袋の中身を確認する。駐屯所内の金庫から漁ってきた金貨が大量に入っており、これだけあれば数年は遊んで暮らす事も出来る。
「しかし、流石に腰が痛いな……俺も年だし、そろそろ引退を考えないとな。おっと、その前に他の奴等に見つかる前に金を隠さないとな!!」
小袋を拾い上げ、街の住民に見つかる前に退去しようとしたガインだが、足元に落ちている小袋を拾い上げようとした時に違和感を覚えた。
「あ?なんで拾えないんだ?」
ガインは両手を伸ばして小袋を拾い上げようとしたが、どう言う事なのか伸ばした腕が地面に届かず、それどころか身体が浮き上がる感覚に襲われる。
「うおおっ!?な、何だぁっ!?」
『シャアアアッ!!』
空中からガインの身体を持ち上げたのはリディアの契約獣であるガーゴイルであり、逃げられないように服を掴んで10メートル近くにまで上昇すると、ガーゴイルは近くの建物の屋根の上にガインを放り落とす。
「いでぇっ!?な、何だてめえは……!?」
『シャギャアッ!!』
「ひいいっ!?」
唐突に現れた化物にガインは慌てて逃げ出そうとしたが、右足の義足をガーゴイルは掴み取ると、容赦なく握りつぶす。義足を破壊された事でまともに立つことも出来なくなったガインは悲鳴を上げ、命乞いを行う。
「や、止めろ!!止めてくれ!!助けてくれぇっ!?」
『…………』
情けなく泣き叫びながら命乞いを行うガインに対してガーゴイルは腕を組み、黙って様子を伺う。そんなガーゴイルの行動にガインは違和感を覚え、まるで自分の言葉が通じたかのように何もしないガーゴイルに恐る恐る問い質す。
「お、お前……人間の言葉が分かるのか?」
『シャアッ』
「うお、マジか!?」
質問に応じる様にガーゴイルはうなずくとガインは驚いた表情を浮かべ、話が通じる相手ならば命は助かるのではないかと考えたが、相手が魔物である事に変わりはない。
(こ、こいつ……普通の魔物じゃないな。多分、魔物使いに使役されている契約獣だな……待てよ、魔物使いと言えば……!?)
嫌な予感を覚えたガインは自分が抜け出した脱出路に視線を向けると、子供が通過できるような小さな穴が徐々に拡大化して数人の人間が姿を現した。最初に出てきたのは氷鎧を装着したルノと、その後ろに続くように彼から解放されて黙って付き従うガオン、最後にワン子と手を繋いだリディアが現れた。
『ふうっ……どうにか抜け出したね』
「ここは……そうか、駐屯所の前の空き家か。こんな場所に抜け道があったとは……」
「あ、見てください!!屋根の上にさっきのおじさんとお姉さんのガーゴイルがいます!?」
「ええ、知ってるわよ。距離はぎりぎりだったけど、どうにか呼び寄せる事に成功したようね」
姿を現したのは駐屯所内でガインが見捨てたルノ達で間違いなく、ガインの前に立つガーゴイルは主人の姿を見て両手で大きく手を振る。彼を呼び寄せたのはリディアであり、先に外に逃げ出したガインを捕まえるためにわざわざ街の外から呼び寄せたのだ。
「お、お前等!?生きてたのか……うおっ!?」
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ガインが驚愕の声を上げると、ガーゴイルは彼の腕を掴んで屋根の上から飛び降りる。ガインは地面に接近する光景を視界にとらえ、悲鳴を上げる。
「ぎゃあああっ!?」
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