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獣人国
ガインの目的
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「くっ……本格的に不味くなってきたな。おい、今は喧嘩している場合じゃないんだぞ!!俺に付いて来い!!」
「リディア、このままだと俺達も危ないと思うけど」
「あんたの魔法でどうにか出来るんじゃないの?」
「下手に俺が魔法を使えば建物が崩壊するかも知れないけど……」
ルノの魔法ならば火災でも容易く防げるのではないかとリディアは考えていたが、予想以上に火災の進行速度が速く、建物の耐久性も限界に近付いている。このような状態で強力な魔法を発動させれば建物が崩壊する危険性も高いため、ルノとしてもガインの提案には賛成だった。
「よし、そっちの鎧の奴は真面なようだな。ならさっさと俺に付いて来い!!焼け死ぬ前に抜け出すぞ!!」
「仕方ないわね……」
「わぅうっ……」
ガインの言葉に渋々とリディアは従い、ワン子は炎を怖がるようにルノの背中に張り付く。完全に通路が火の海と化す前にガインの案内の元、全員は外へ繋がる脱出口へ向かう。
「正面扉と裏口はもう駄目だ。だから地下の牢獄に向かうぞ」
「牢獄?どうしてそんな所に向かうんですか?」
「ふっ……少し前に俺の知り合いの傭兵が馬鹿をやって兵士に掴まった事があってな、そいつは自力で牢獄から脱出するために壁を掘り進めて地上へ繋がる脱出路を作り出したんだ。そこから外へ逃げるぞ」
「はあ!?そんな脱出路なんてすぐに見つかって取り壊されるに決まってるでしょ!?」
「生憎だが俺は何度かその脱出路を利用してこの駐屯所に潜り込んだ事がある。巧妙に隠されているから兵士達も気付いていないんだよ。ちなみにその脱出路を作り出したのは小髭族だ。奴等の手先は器用だからな……簡単に見つかるような脱出路なんて用意しねえんだよ」
地下の牢獄から脱出するというガインの話に対してルノ達は半信半疑だが、話している間にも建物に炎が広がり、言い争う余裕もない。ルノ達はガインの後に続いて地下牢へ向かう途中、リディアはどうしてガインがこの街に滞在しているのかを尋ねる。
「ねえ、どうしてあんたがここに居るのよ?それにさっきの奴等……一体何を企んでいるのよ」
「俺が何か悪巧みしているような言い方は止めろ……この街に連中には世話になっているからな、だから色々と手助けしてやったんだよ」
「嘘ね。あんたが無償で人助けするなんて有り得ないわ。しかも相手が腐ってもこの国の軍隊なら尚更よ」
「……昔から勘のいいガキだな」
リディアの質問にガインは眉を顰め、仕方がないとばかりに身に付けていた上着をはだける。何の真似かとルノ達は驚いたが、すぐにガインが上着の下に紐で括り付けた小袋を身に付けている事に気付く。それを見たリディアは察しがついたのか鋭い視線を向け、ガインは気まずそうに上着を戻す。
「あんた……まさか!?」
「お前の言う通りだ。俺の目的はこの駐屯所内に隠されている金庫の中身だよ。ここには住民共から回収した金品が集まっているからな……どうにか奴等を利用して文字通りに火事場泥棒をしたわけさ」
「相変わらず人を利用するのが好きなようね……この悪党」
「てめえに言われる筋合いはねえんだよ。魔王軍なんて訳の分からない連中とつるんでいる癖に偉そうに抜かすな!!」
「まあ、確かに……」
「うぐっ!?」
ガインを非難するリディアではあるが、彼女も魔王軍の幹部として王国軍を罠に嵌めて大勢の人間を殺害しようとした事実は存在し、決して人の事は言えない。それでも善良な市民を先導して自国の軍隊と争わせ、その間に自分だけが金品を回収するというガインの行動も褒められる事ではない。
「ふんっ!!例の侵入者というのはお前等の事だろ?無計画に駐屯所に突っ込むなんて無謀な真似をする馬鹿が居るとは思わなかったがな、そのお陰で俺の計画が予定よりも早まったじゃねえか」
「何よ偉そうに!!何の罪もない人間を利用して置いて偉そうに言うんじゃないわよ!!」
「言っておくが俺だってこの街の住民には世話になっているんだ。だから奴等の望み通りに戦闘術を教えたり、訓練も見てやったんだ。そのお陰であいつらも自信を身に付けたし、見事に軍隊の奴等を蹴散らしたんだぞ?恨みを抱かれる筋合いはねえな」
「でも、その人達からお金を貰っていたら話は別ですよね?」
「ああっ!?」
自分の行動を正当化しようとするガインの言葉に流石にルノも黙っておけず、彼に質問を行う。
「ガイン……さんがこの街の住民の人達に戦う術を教えていたとしても、それは無償で教えて居たんですか?お金も貰わずに戦えない人達の訓練を見ていたんですか?」
「あ、当たり前だろうが……」
「嘘ね、どうせあんたの事だから指導料とか言い付けて金を巻き上げていたんでしょ?」
「そうなんですか?」
「う、うるせえ!!当然の報酬だろうが!!」
「いや、そんなの不公平ですよ。だってこの街の人達からも巻き上げたお金をガインさんは一人で盗み出そうとしたんでしょ?自分だけが得をしているのなら貴方の行動は正しいとは思えません」
「て、てめえ……!!」
ルノの正論にガインは怒りを抱くが、実際に彼が盗み出した金品の中には13番街の住民から強奪された金銭も含まれている。
「リディア、このままだと俺達も危ないと思うけど」
「あんたの魔法でどうにか出来るんじゃないの?」
「下手に俺が魔法を使えば建物が崩壊するかも知れないけど……」
ルノの魔法ならば火災でも容易く防げるのではないかとリディアは考えていたが、予想以上に火災の進行速度が速く、建物の耐久性も限界に近付いている。このような状態で強力な魔法を発動させれば建物が崩壊する危険性も高いため、ルノとしてもガインの提案には賛成だった。
「よし、そっちの鎧の奴は真面なようだな。ならさっさと俺に付いて来い!!焼け死ぬ前に抜け出すぞ!!」
「仕方ないわね……」
「わぅうっ……」
ガインの言葉に渋々とリディアは従い、ワン子は炎を怖がるようにルノの背中に張り付く。完全に通路が火の海と化す前にガインの案内の元、全員は外へ繋がる脱出口へ向かう。
「正面扉と裏口はもう駄目だ。だから地下の牢獄に向かうぞ」
「牢獄?どうしてそんな所に向かうんですか?」
「ふっ……少し前に俺の知り合いの傭兵が馬鹿をやって兵士に掴まった事があってな、そいつは自力で牢獄から脱出するために壁を掘り進めて地上へ繋がる脱出路を作り出したんだ。そこから外へ逃げるぞ」
「はあ!?そんな脱出路なんてすぐに見つかって取り壊されるに決まってるでしょ!?」
「生憎だが俺は何度かその脱出路を利用してこの駐屯所に潜り込んだ事がある。巧妙に隠されているから兵士達も気付いていないんだよ。ちなみにその脱出路を作り出したのは小髭族だ。奴等の手先は器用だからな……簡単に見つかるような脱出路なんて用意しねえんだよ」
地下の牢獄から脱出するというガインの話に対してルノ達は半信半疑だが、話している間にも建物に炎が広がり、言い争う余裕もない。ルノ達はガインの後に続いて地下牢へ向かう途中、リディアはどうしてガインがこの街に滞在しているのかを尋ねる。
「ねえ、どうしてあんたがここに居るのよ?それにさっきの奴等……一体何を企んでいるのよ」
「俺が何か悪巧みしているような言い方は止めろ……この街に連中には世話になっているからな、だから色々と手助けしてやったんだよ」
「嘘ね。あんたが無償で人助けするなんて有り得ないわ。しかも相手が腐ってもこの国の軍隊なら尚更よ」
「……昔から勘のいいガキだな」
リディアの質問にガインは眉を顰め、仕方がないとばかりに身に付けていた上着をはだける。何の真似かとルノ達は驚いたが、すぐにガインが上着の下に紐で括り付けた小袋を身に付けている事に気付く。それを見たリディアは察しがついたのか鋭い視線を向け、ガインは気まずそうに上着を戻す。
「あんた……まさか!?」
「お前の言う通りだ。俺の目的はこの駐屯所内に隠されている金庫の中身だよ。ここには住民共から回収した金品が集まっているからな……どうにか奴等を利用して文字通りに火事場泥棒をしたわけさ」
「相変わらず人を利用するのが好きなようね……この悪党」
「てめえに言われる筋合いはねえんだよ。魔王軍なんて訳の分からない連中とつるんでいる癖に偉そうに抜かすな!!」
「まあ、確かに……」
「うぐっ!?」
ガインを非難するリディアではあるが、彼女も魔王軍の幹部として王国軍を罠に嵌めて大勢の人間を殺害しようとした事実は存在し、決して人の事は言えない。それでも善良な市民を先導して自国の軍隊と争わせ、その間に自分だけが金品を回収するというガインの行動も褒められる事ではない。
「ふんっ!!例の侵入者というのはお前等の事だろ?無計画に駐屯所に突っ込むなんて無謀な真似をする馬鹿が居るとは思わなかったがな、そのお陰で俺の計画が予定よりも早まったじゃねえか」
「何よ偉そうに!!何の罪もない人間を利用して置いて偉そうに言うんじゃないわよ!!」
「言っておくが俺だってこの街の住民には世話になっているんだ。だから奴等の望み通りに戦闘術を教えたり、訓練も見てやったんだ。そのお陰であいつらも自信を身に付けたし、見事に軍隊の奴等を蹴散らしたんだぞ?恨みを抱かれる筋合いはねえな」
「でも、その人達からお金を貰っていたら話は別ですよね?」
「ああっ!?」
自分の行動を正当化しようとするガインの言葉に流石にルノも黙っておけず、彼に質問を行う。
「ガイン……さんがこの街の住民の人達に戦う術を教えていたとしても、それは無償で教えて居たんですか?お金も貰わずに戦えない人達の訓練を見ていたんですか?」
「あ、当たり前だろうが……」
「嘘ね、どうせあんたの事だから指導料とか言い付けて金を巻き上げていたんでしょ?」
「そうなんですか?」
「う、うるせえ!!当然の報酬だろうが!!」
「いや、そんなの不公平ですよ。だってこの街の人達からも巻き上げたお金をガインさんは一人で盗み出そうとしたんでしょ?自分だけが得をしているのなら貴方の行動は正しいとは思えません」
「て、てめえ……!!」
ルノの正論にガインは怒りを抱くが、実際に彼が盗み出した金品の中には13番街の住民から強奪された金銭も含まれている。
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