最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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獣人国

民衆の暴動

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武器庫から逃げ出した傭兵達は建物の外へ向けて逃走を開始し、建物の裏口へと向かう。ガオンの元へ戻って倉庫の物資が侵入者に全て奪われたと報告できるはずもなく、だからといって圧倒的な力を誇るルノに立ち向かう勇気もない彼等は逃げる事しか出来なかった。


「くそっ!!何なんだよあいつら!?」
「おい、どうするんだ!?このまま逃げても俺達は犯罪者だぞ!?」
「うるせえ知るか!!自分で考えろ!!」


傭兵達は言い争いをしながらも裏口の扉の前に到着するが、扉の前にはガオンの直属の配下の兵士達が存在し、何故か扉に閂を施した状態で武器を構えていた。その様子を見た傭兵達は訝しむが、ここまで来た以上は彼等を突破して外へ出る事以外の選択肢はない。


「おい、退け!!扉を開けろ!!」
「き、貴様等!?一体何の真似だ!!」
「うるさい!!お前等に構っている暇はないんだよ!!」
「止めろっ!!その扉に近づくなっ!?」


数名の兵士が突如として現れた傭兵達を制止しようとしたが、数は傭兵達の方が圧倒的に多いため、彼等は逆に打ちのめされてしまう。扉の前に辿り着いた傭兵達は急いで閂を開けようとした時、外側が妙に騒がしい事に気付く。


「お、おい?何だ?外が妙にうるさいような……」
「関係ないだろ!!おら、外れるぞ!!」
「止めろ馬鹿共!!外には……!?」


扉の閂が外され、内側から開こうとした瞬間、傭兵達が扉に手を掛ける前に外側の方から勢いよく扉が押し開かれた。


『うおおおおっ!!』
「な、何だぁっ!?」
「愚か者がっ!!開けるなと言っただろ!?」


扉が開け放たれた瞬間に鍬や箒を手にした数人の人間が入り込み、扉の前で集まっていた兵士達を振り払う。唐突に中に入り込んできた街の住民に傭兵は戸惑うが、彼等は怒りの表情を抱いて兵士達に襲い掛かる。


「今までの恨み!!」
「ここで晴らさせてもらうぞ!!」
「天誅!!」
「ふげぇっ!?」


住民の振り下ろした箒の柄が頭に叩きつけられた傭兵は悲鳴を上げて倒れこみ、その間にも次々と住民達が外から押し寄せる。その光景を目にした兵士達は慌てて応戦しようとしたが、圧倒的な数の暴力によって鎮圧されてしまう。


「お前!!うちの母ちゃんに手を出した奴だな!?絶対に許さねえぞ!!」
「ま、待て……ぎゃああっ!?」
「夫の仇!!」
「いや、俺は違っ……ぐあっ!?」
「金を返せ!!このくそ野郎どもが!!」
「ひいいっ!?」


殴り込みをかけてきた住民の殆どは不当な理由で家の中の金銭を奪われ、兵士に痛めつけられていた民衆だった。彼等は駐屯所の騒動を聞きつけ、建物内に存在した兵士の大半が逃げ出した事を知り、この好機を逃さずに武器になりそうな物を搔き集めて襲撃を仕掛けた。

既に建物の周囲には数千人の民衆が囲んでおり、真面な武器を装備する者は少ないが彼等の中にはガオンに加担しなかった傭兵も混じっていた。戦慣れをしている傭兵の指示の元、民衆は退路を封鎖した状態で建物内に入り込む。


「待てよ!?俺達はただ雇われただけだ!!お前等を襲ったのも命令を受けただけで……」
「あんだけ嬉々とした表情で俺達から金や食料を奪っておいて何を言ってやがる!!」
「そうよ!!止めようとしただけで痛めつけてきた癖に今更虫のいい事を言わないで!!」
「くたばれ悪党が!!」
『う、うわぁあああっ!?』


これまでにガオンの権力を盾にして民衆から金を巻き上げていた傭兵達の言葉など信じる者はおらず、今までに受けた屈辱を晴らすために街の住民達は容赦なく彼等を叩きのめす。


「くそっ……貴様等!!こんな事をして只で済むと思うなよ!?ガオン将軍に逆らうとどうなるのか分かっているのか!?」
「うるさい!!ここは俺達の街だ!!お前らみたいな腐った人間が居ていい街じゃないんだよ!!」
「いいから落ち着くんだ!!不満があると言うのならちゃんと話を将軍に通す!!約束する!!」
「黙れ!!何時までも上から目線で言いやがって……袋叩きにしろ!!」


ガオン直属の配下の兵士達は民衆を宥めようとしたが、彼等は聞く耳持たずにガオンの関係者全員を叩きのめす。これまでに民衆が蓄積していた不満が一気に爆発し、彼等は鬼と化して兵士を拘束する。


「よし、この調子で中にいる人間全員を捕まえろ!!俺達から奪った食料も取り返せ!!」
「先に武器庫と薬品庫を確保しろ!!そうすれば奴等は何もできない!!」
「行くぞ!!あと少しで俺達の勝利だ!!」
『おおおおおおおっ!!』


民衆に味方をした傭兵達が指示を与え、興奮した状態の街の住民が一斉に入り込む。その様子を捕まった兵士達は怯えた表情を浮かべて見送り、自分達がどうなるのか考えただけで顔色を悪くさせる。


「ゆ、許して……許してくれぇっ……」
「俺達が悪かった……」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」


兵士達は許しを請うように延々と謝罪の言葉を口にするが、そんな彼等を街の住民達は冷たい視線を向けるだけであり、簡単に許すつもりはなかった。
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