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獣人国
ガオンの大誤算
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「――将軍?どうかされましたか?」
「っ……!?」
側近の兵士に言葉を掛けられてガオンは過去の出来事から呼び戻され、頭を抑えて現在の状況に頭を悩ませる。二週間程前、ガオンはクズノの思惑通りに彼の支援を受けて大量の私兵を雇う。更に二人の思惑通りに両王子の争いが勃発し、第一王子のガルルが王位を継承するために弟の第二王子と妹の王女の命を狙った。
事前に危険を察知していた第二王子のガウが妹のワン子を連れて姿を消し去り、獣人国領内では二人の捜索のために軍隊が派遣されていた。捜索部隊を一任されているのはガオンであり、彼はクズノの指示通りに大将軍のウォンに願い出て軍隊の指揮権を得る。更に同時期にクズノが虚偽の情報を流してケモノ島に第二王子が潜伏しているという噂を流す。
結果的には全てがクズノの思惑通りに事が進み、偽の発見情報を掴まされたガルルとウォンは港を占拠し、獣人国が飼育している水竜の一体を呼び寄せて出航の準備を行う。その間に軍隊を利用してガオンは王子と王女の捜索という名目で民衆から食料、武器、薬品などの必要物資を奪い取る。ガルルとウォンがケモノ島に出向次第に港を占拠し、彼等が大陸に戻れないように封鎖すれば計画は果たされるはずだった。
(くそっ……どうしてこうなった!!もう少しで周辺地域の民衆共から物資を奪い取れたというのに……いや、嘆いている暇はない。今は一刻も早く侵入者とやらを始末し、計画通りに準備を進めるしかない)
街中に侵入者が現れ、用意しておいた兵士達が次々と被害を受けているのはガオンも予想外であり、あと少しで全ての計画を果たして王位に就けると考えていたガオンは苛立ちを隠せない。そんな彼の態度に他の兵士達は困惑し、どのように行動するべきかを問い質す。
「ガオン将軍、我々も侵入者の討伐に向かうべきでは……」
「馬鹿な事を言うな!!あんな得体の知れない相手に迂闊に近づけるか!!」
「しかし、このまま放置すれば兵士達に大きな被害が出るかも知れません!!」
「ふん、安心しろ……この街に集まった兵士は金で呼び集めた傭兵に過ぎん。あんな奴等がどうなろうと何も問題はない」
現在の13番街に集まっている兵士はガオンの直属の部下とクズノの支援を受けて呼び集めた傭兵達しか存在せず、ウォンに任された軍隊の大半は他の街の捜索に向かわせている。彼等が傍に居るとガオンの行動をウォンに報告する恐れがあるため、敢えて他の兵士達は他の街の捜索を行わせていた。
幾ら軍隊の指揮権を得たからと言っても獣人国の兵士の大半は大将軍であるウォンを敬愛しており、仮にガオンが大々的に獣人国の反旗を起こす行動を行えば当然だが彼等の中にもガオンに反抗する勢力が生まれる可能性が高い。なのでガオンは任された軍隊の兵士の殆どを港から遠方に存在する街へ送り込み、計画が果たされるまで邪魔されない様にする。
問題があるとすれば民衆から物資を奪い取るために呼び寄せたのが金で雇われた傭兵とガオンの直属の配下の兵士達だけという点であり、傭兵の中でも金に汚い人間が予想以上に街中で問題を起こしてしまい、想像以上に民衆から不満を買ってしまう。
(あの傭兵どもがどうなろうと問題はない。むしろ数が減れば支払う報酬が減って助かるぐらいだからな……だが、問題は奴等だけでは侵入者の対応が出来なかった場合だ)
敢えて傭兵だけに侵入者の討伐に向かわせたが、もしも彼等全員が返り討ちに遭えば流石に計画にも大きな支障が生まれる。この駐屯所には既に周辺地域の村や街から集めた大量の物資が集まっており、それを狙われたら非常に不味い事態に陥ってしまう。
(金はともかく、兵糧や薬品を奪われるわけにはいかん。もしも建物を放火されたら不味い事になるな……やはり、物資だけでも先に安全を確保しておくか?)
侵入者の目的は不明だが、物資を狙われた場合を想定してガオンは側近の兵士達に新たな命令を下す。
「おい!!武器庫、食糧庫、薬品庫の確認に向かえ!!もしも敵の狙いが物資だった場合、何としても守り通せ!!」
「分かりました。では、すぐに兵士を……」
「失礼します!!」
ガオンの側近達が命令通りに倉庫の確認に向かおうとした瞬間、扉が大きく開け放たれて非常に焦った表情を浮かべる兵士が入り込む。先ほど追い出した傭兵ではなく、ガオンに長らく仕える部下の一人であり、唐突に入ってきた兵士にガオンは訝しむ。
「どうした?例の侵入者を討ち取ったのか?」
「そ、それどころではありません!!駐屯所内に存在した兵士の殆どは逃げ出し、建物の外で民衆が暴動を起こしています!!」
「何だとっ!?」
兵士の報告を受けてガオンは目を見開き、慌てて彼は壁際に移動して窓の外の様子を確認する。すると、建物の周囲には無数の民衆の姿が存在し、怒りの表情を浮かべながら怒鳴り声を上げていた。
「っ……!?」
側近の兵士に言葉を掛けられてガオンは過去の出来事から呼び戻され、頭を抑えて現在の状況に頭を悩ませる。二週間程前、ガオンはクズノの思惑通りに彼の支援を受けて大量の私兵を雇う。更に二人の思惑通りに両王子の争いが勃発し、第一王子のガルルが王位を継承するために弟の第二王子と妹の王女の命を狙った。
事前に危険を察知していた第二王子のガウが妹のワン子を連れて姿を消し去り、獣人国領内では二人の捜索のために軍隊が派遣されていた。捜索部隊を一任されているのはガオンであり、彼はクズノの指示通りに大将軍のウォンに願い出て軍隊の指揮権を得る。更に同時期にクズノが虚偽の情報を流してケモノ島に第二王子が潜伏しているという噂を流す。
結果的には全てがクズノの思惑通りに事が進み、偽の発見情報を掴まされたガルルとウォンは港を占拠し、獣人国が飼育している水竜の一体を呼び寄せて出航の準備を行う。その間に軍隊を利用してガオンは王子と王女の捜索という名目で民衆から食料、武器、薬品などの必要物資を奪い取る。ガルルとウォンがケモノ島に出向次第に港を占拠し、彼等が大陸に戻れないように封鎖すれば計画は果たされるはずだった。
(くそっ……どうしてこうなった!!もう少しで周辺地域の民衆共から物資を奪い取れたというのに……いや、嘆いている暇はない。今は一刻も早く侵入者とやらを始末し、計画通りに準備を進めるしかない)
街中に侵入者が現れ、用意しておいた兵士達が次々と被害を受けているのはガオンも予想外であり、あと少しで全ての計画を果たして王位に就けると考えていたガオンは苛立ちを隠せない。そんな彼の態度に他の兵士達は困惑し、どのように行動するべきかを問い質す。
「ガオン将軍、我々も侵入者の討伐に向かうべきでは……」
「馬鹿な事を言うな!!あんな得体の知れない相手に迂闊に近づけるか!!」
「しかし、このまま放置すれば兵士達に大きな被害が出るかも知れません!!」
「ふん、安心しろ……この街に集まった兵士は金で呼び集めた傭兵に過ぎん。あんな奴等がどうなろうと何も問題はない」
現在の13番街に集まっている兵士はガオンの直属の部下とクズノの支援を受けて呼び集めた傭兵達しか存在せず、ウォンに任された軍隊の大半は他の街の捜索に向かわせている。彼等が傍に居るとガオンの行動をウォンに報告する恐れがあるため、敢えて他の兵士達は他の街の捜索を行わせていた。
幾ら軍隊の指揮権を得たからと言っても獣人国の兵士の大半は大将軍であるウォンを敬愛しており、仮にガオンが大々的に獣人国の反旗を起こす行動を行えば当然だが彼等の中にもガオンに反抗する勢力が生まれる可能性が高い。なのでガオンは任された軍隊の兵士の殆どを港から遠方に存在する街へ送り込み、計画が果たされるまで邪魔されない様にする。
問題があるとすれば民衆から物資を奪い取るために呼び寄せたのが金で雇われた傭兵とガオンの直属の配下の兵士達だけという点であり、傭兵の中でも金に汚い人間が予想以上に街中で問題を起こしてしまい、想像以上に民衆から不満を買ってしまう。
(あの傭兵どもがどうなろうと問題はない。むしろ数が減れば支払う報酬が減って助かるぐらいだからな……だが、問題は奴等だけでは侵入者の対応が出来なかった場合だ)
敢えて傭兵だけに侵入者の討伐に向かわせたが、もしも彼等全員が返り討ちに遭えば流石に計画にも大きな支障が生まれる。この駐屯所には既に周辺地域の村や街から集めた大量の物資が集まっており、それを狙われたら非常に不味い事態に陥ってしまう。
(金はともかく、兵糧や薬品を奪われるわけにはいかん。もしも建物を放火されたら不味い事になるな……やはり、物資だけでも先に安全を確保しておくか?)
侵入者の目的は不明だが、物資を狙われた場合を想定してガオンは側近の兵士達に新たな命令を下す。
「おい!!武器庫、食糧庫、薬品庫の確認に向かえ!!もしも敵の狙いが物資だった場合、何としても守り通せ!!」
「分かりました。では、すぐに兵士を……」
「失礼します!!」
ガオンの側近達が命令通りに倉庫の確認に向かおうとした瞬間、扉が大きく開け放たれて非常に焦った表情を浮かべる兵士が入り込む。先ほど追い出した傭兵ではなく、ガオンに長らく仕える部下の一人であり、唐突に入ってきた兵士にガオンは訝しむ。
「どうした?例の侵入者を討ち取ったのか?」
「そ、それどころではありません!!駐屯所内に存在した兵士の殆どは逃げ出し、建物の外で民衆が暴動を起こしています!!」
「何だとっ!?」
兵士の報告を受けてガオンは目を見開き、慌てて彼は壁際に移動して窓の外の様子を確認する。すると、建物の周囲には無数の民衆の姿が存在し、怒りの表情を浮かべながら怒鳴り声を上げていた。
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