328 / 657
獣人国
クズノの策
しおりを挟む
『仮に二人の王子が争う場合、将軍はどちらに就こうと考えますか?』
『何?俺を王にするのではないのか!?』
『あくまでも仮の話ですよ。やはり、大将軍が仕えている第一王子に協力するつもりでしたか?』
『ふんっ!!王族の権力争いなど知らん!!俺は自分の領地を守るだけだ!!』
ガオンは王子同士の争いに参加するつもりはなく、仮に国王が死亡した後に二人の王子が権力争いをしても自分は傍観をするつもりだった。しかし、その話を聞いたクズノは首を振って彼に助言を行う。
『いえ、将軍が第一にやるべき事は国王の死後、大将軍であるウォンに加担して第一王子の勢力に加わるべきです』
『何だと?この俺にくだらん兄弟喧嘩に参加しろというのか!?』
『その方法こそが将軍が最短で確実に国王の座に就けるのです』
『意味が分からんぞ!!どうしてガルル如きにこの俺が力を貸さねばならん!?』
王国間の権力争いなどガオンは関わりたくもなかったが、クズノによれば第一王子に協力を申し出る事で大将軍のウォンと接触し、彼から軍の権限を分け与えるように申し出る様に伝える。
『いいですか?将軍が第一王子の派閥に加われば第二王子の人間達の立場が更に悪くなり、第一王子に寝返る者も出てくるでしょう。しかし、臣下全員が第一王子に忠誠を誓うはずはありません。きっと第二王子を見捨てられない人間達が王子を安全な場所へ避難させようとするでしょう』
『ふむ……まあ、確かにそうだな。第二王子のガウを慕う人間は多いと聞く』
第一王子のガルルよりも第二王子のガウの方が民衆からの人望も厚く、家臣の中にも彼を慕う獣人も多い。仮に大将軍のウォンと彼の右腕であるガオンが第一王子の味方になったとしても第二王子の派閥の獣人達は最後まで抵抗を試みると考えられた。
『恐らくは第二王子は家臣の手引きで何処かに身を隠すでしょう。その際に王子を捜索するために軍が派遣されるはずです。将軍は王子の捜索部隊を立候補すればきっと軍権も大将軍から委任されるでしょう』
『しかし、捜索のための兵士の数などたかが知れているぞ?まさか貴様は派遣された軍隊を利用したこの俺に王都を攻め寄せろというのか?』
『いえいえ、そのような無謀な真似はさせませんよ。むしろそんな方法を使わなくとも簡単に二人の王子の命と大将軍の命を奪う策はあるのですから』
『何だとっ!?一体それはどんな策だ!?』
クズノの言葉にガオンは聞き返し、あくまでも話を聞くだけだと事前に伝えていただけにも関わらずに彼はクズノの話に夢中になっており、自分を国王の座に就く方法を問い質す。
『早く言えっ!!この俺をどうやってお前は国王にするつもりだ!?』
『ふふふっ……その策の内容を話す前に説明を加えますが、実はこう見えても私は結構顔が広いのです。この国の貴族の方々とも交流があります』
『一体何の話をしている?お前の自慢話など聞いている暇はないぞ!!』
『まあ、最期まで落ち着いて聞いて下さい。実は私の知り合いの貴族の方には第一王子と懇意の間柄である人物も存在します。その方にお願いし、国王の死後に第二王子が姿を消した際に偽の情報を流して貰います』
『偽の情報だと?』
『はい。将軍もご存知かもしれませんが、獣人国は孤島を所有しています。名前はケモノ島という人口が300人程度の小さな島です』
『ああ、聞いた事はあるが……』
獣人国は海に面した国家であり、大陸の近くに存在する幾つかの孤島も管理している。その中で「ケモノ島」と呼ばれる小さな島が存在し、その場所は観光地としても有名な場所だった。
『ケモノ島の周辺の海域は乱れ、危険性の高い魔物が生息している事から船で上陸するには獣人国が保有している水竜を利用する必要があります。この水竜が存在しなければ渡航も難しい島というのは知っていましたか?』
『ああっ……』
『つまり、この島に渡るには水竜の力が必要不可欠となります。ですが、もしもこの島に第二王子が逃げ込んだという噂を流せば第一王子と大将軍のウォンも真っ先に水竜を従えてケモノ島へと向かうでしょう』
『それがどうした?』
『まだお分かりになりませんか?つまり、邪魔者がケモノ島に集まっている間に将軍が港を占拠してしまえば奴等は国に引き返す事も出来ません。どれほどの軍勢であろうと陸地を抑えてしまえば攻め込む事は出来ません』
『な、なるほど……!!』
やっとクズノの思惑を理解したガオンは納得した表情を浮かべるが、仮に第一王子の勢力をケモノ島に送り込む事に成功しても相手が「水竜」を従えていた場合は非常に厄介な事になる。そもそも港を抑えた所で本当に第一王子の軍勢に対抗出来る保証はない。
『しかし、その方法では第一王子が大軍を引き連れて行った場合はどうする?それに厄介な水竜も同行させているとすれば面倒な事態に陥るぞ』
『その点もご安心ください。肝心なのは第一王子に偽の情報を流してケモノ島に送り込むだけです。将軍は難しく考えずに私兵を集め、そして国王の死後に第二王子の捜索という名目で大将軍から軍隊を引き継げばいいのです』
『うむ……いいだろう。お前の話を信じるぞ』
クズノの説明に完全に不安は拭えたわけではないが、千載一遇の好機を逃がせないと考えたガオンは敢えて彼の策に乗り、獣人国を裏切って自分が王になる事を誓う――
『何?俺を王にするのではないのか!?』
『あくまでも仮の話ですよ。やはり、大将軍が仕えている第一王子に協力するつもりでしたか?』
『ふんっ!!王族の権力争いなど知らん!!俺は自分の領地を守るだけだ!!』
ガオンは王子同士の争いに参加するつもりはなく、仮に国王が死亡した後に二人の王子が権力争いをしても自分は傍観をするつもりだった。しかし、その話を聞いたクズノは首を振って彼に助言を行う。
『いえ、将軍が第一にやるべき事は国王の死後、大将軍であるウォンに加担して第一王子の勢力に加わるべきです』
『何だと?この俺にくだらん兄弟喧嘩に参加しろというのか!?』
『その方法こそが将軍が最短で確実に国王の座に就けるのです』
『意味が分からんぞ!!どうしてガルル如きにこの俺が力を貸さねばならん!?』
王国間の権力争いなどガオンは関わりたくもなかったが、クズノによれば第一王子に協力を申し出る事で大将軍のウォンと接触し、彼から軍の権限を分け与えるように申し出る様に伝える。
『いいですか?将軍が第一王子の派閥に加われば第二王子の人間達の立場が更に悪くなり、第一王子に寝返る者も出てくるでしょう。しかし、臣下全員が第一王子に忠誠を誓うはずはありません。きっと第二王子を見捨てられない人間達が王子を安全な場所へ避難させようとするでしょう』
『ふむ……まあ、確かにそうだな。第二王子のガウを慕う人間は多いと聞く』
第一王子のガルルよりも第二王子のガウの方が民衆からの人望も厚く、家臣の中にも彼を慕う獣人も多い。仮に大将軍のウォンと彼の右腕であるガオンが第一王子の味方になったとしても第二王子の派閥の獣人達は最後まで抵抗を試みると考えられた。
『恐らくは第二王子は家臣の手引きで何処かに身を隠すでしょう。その際に王子を捜索するために軍が派遣されるはずです。将軍は王子の捜索部隊を立候補すればきっと軍権も大将軍から委任されるでしょう』
『しかし、捜索のための兵士の数などたかが知れているぞ?まさか貴様は派遣された軍隊を利用したこの俺に王都を攻め寄せろというのか?』
『いえいえ、そのような無謀な真似はさせませんよ。むしろそんな方法を使わなくとも簡単に二人の王子の命と大将軍の命を奪う策はあるのですから』
『何だとっ!?一体それはどんな策だ!?』
クズノの言葉にガオンは聞き返し、あくまでも話を聞くだけだと事前に伝えていただけにも関わらずに彼はクズノの話に夢中になっており、自分を国王の座に就く方法を問い質す。
『早く言えっ!!この俺をどうやってお前は国王にするつもりだ!?』
『ふふふっ……その策の内容を話す前に説明を加えますが、実はこう見えても私は結構顔が広いのです。この国の貴族の方々とも交流があります』
『一体何の話をしている?お前の自慢話など聞いている暇はないぞ!!』
『まあ、最期まで落ち着いて聞いて下さい。実は私の知り合いの貴族の方には第一王子と懇意の間柄である人物も存在します。その方にお願いし、国王の死後に第二王子が姿を消した際に偽の情報を流して貰います』
『偽の情報だと?』
『はい。将軍もご存知かもしれませんが、獣人国は孤島を所有しています。名前はケモノ島という人口が300人程度の小さな島です』
『ああ、聞いた事はあるが……』
獣人国は海に面した国家であり、大陸の近くに存在する幾つかの孤島も管理している。その中で「ケモノ島」と呼ばれる小さな島が存在し、その場所は観光地としても有名な場所だった。
『ケモノ島の周辺の海域は乱れ、危険性の高い魔物が生息している事から船で上陸するには獣人国が保有している水竜を利用する必要があります。この水竜が存在しなければ渡航も難しい島というのは知っていましたか?』
『ああっ……』
『つまり、この島に渡るには水竜の力が必要不可欠となります。ですが、もしもこの島に第二王子が逃げ込んだという噂を流せば第一王子と大将軍のウォンも真っ先に水竜を従えてケモノ島へと向かうでしょう』
『それがどうした?』
『まだお分かりになりませんか?つまり、邪魔者がケモノ島に集まっている間に将軍が港を占拠してしまえば奴等は国に引き返す事も出来ません。どれほどの軍勢であろうと陸地を抑えてしまえば攻め込む事は出来ません』
『な、なるほど……!!』
やっとクズノの思惑を理解したガオンは納得した表情を浮かべるが、仮に第一王子の勢力をケモノ島に送り込む事に成功しても相手が「水竜」を従えていた場合は非常に厄介な事になる。そもそも港を抑えた所で本当に第一王子の軍勢に対抗出来る保証はない。
『しかし、その方法では第一王子が大軍を引き連れて行った場合はどうする?それに厄介な水竜も同行させているとすれば面倒な事態に陥るぞ』
『その点もご安心ください。肝心なのは第一王子に偽の情報を流してケモノ島に送り込むだけです。将軍は難しく考えずに私兵を集め、そして国王の死後に第二王子の捜索という名目で大将軍から軍隊を引き継げばいいのです』
『うむ……いいだろう。お前の話を信じるぞ』
クズノの説明に完全に不安は拭えたわけではないが、千載一遇の好機を逃がせないと考えたガオンは敢えて彼の策に乗り、獣人国を裏切って自分が王になる事を誓う――
0
お気に入りに追加
11,307
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。