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獣人国
クズノの策
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『仮に二人の王子が争う場合、将軍はどちらに就こうと考えますか?』
『何?俺を王にするのではないのか!?』
『あくまでも仮の話ですよ。やはり、大将軍が仕えている第一王子に協力するつもりでしたか?』
『ふんっ!!王族の権力争いなど知らん!!俺は自分の領地を守るだけだ!!』
ガオンは王子同士の争いに参加するつもりはなく、仮に国王が死亡した後に二人の王子が権力争いをしても自分は傍観をするつもりだった。しかし、その話を聞いたクズノは首を振って彼に助言を行う。
『いえ、将軍が第一にやるべき事は国王の死後、大将軍であるウォンに加担して第一王子の勢力に加わるべきです』
『何だと?この俺にくだらん兄弟喧嘩に参加しろというのか!?』
『その方法こそが将軍が最短で確実に国王の座に就けるのです』
『意味が分からんぞ!!どうしてガルル如きにこの俺が力を貸さねばならん!?』
王国間の権力争いなどガオンは関わりたくもなかったが、クズノによれば第一王子に協力を申し出る事で大将軍のウォンと接触し、彼から軍の権限を分け与えるように申し出る様に伝える。
『いいですか?将軍が第一王子の派閥に加われば第二王子の人間達の立場が更に悪くなり、第一王子に寝返る者も出てくるでしょう。しかし、臣下全員が第一王子に忠誠を誓うはずはありません。きっと第二王子を見捨てられない人間達が王子を安全な場所へ避難させようとするでしょう』
『ふむ……まあ、確かにそうだな。第二王子のガウを慕う人間は多いと聞く』
第一王子のガルルよりも第二王子のガウの方が民衆からの人望も厚く、家臣の中にも彼を慕う獣人も多い。仮に大将軍のウォンと彼の右腕であるガオンが第一王子の味方になったとしても第二王子の派閥の獣人達は最後まで抵抗を試みると考えられた。
『恐らくは第二王子は家臣の手引きで何処かに身を隠すでしょう。その際に王子を捜索するために軍が派遣されるはずです。将軍は王子の捜索部隊を立候補すればきっと軍権も大将軍から委任されるでしょう』
『しかし、捜索のための兵士の数などたかが知れているぞ?まさか貴様は派遣された軍隊を利用したこの俺に王都を攻め寄せろというのか?』
『いえいえ、そのような無謀な真似はさせませんよ。むしろそんな方法を使わなくとも簡単に二人の王子の命と大将軍の命を奪う策はあるのですから』
『何だとっ!?一体それはどんな策だ!?』
クズノの言葉にガオンは聞き返し、あくまでも話を聞くだけだと事前に伝えていただけにも関わらずに彼はクズノの話に夢中になっており、自分を国王の座に就く方法を問い質す。
『早く言えっ!!この俺をどうやってお前は国王にするつもりだ!?』
『ふふふっ……その策の内容を話す前に説明を加えますが、実はこう見えても私は結構顔が広いのです。この国の貴族の方々とも交流があります』
『一体何の話をしている?お前の自慢話など聞いている暇はないぞ!!』
『まあ、最期まで落ち着いて聞いて下さい。実は私の知り合いの貴族の方には第一王子と懇意の間柄である人物も存在します。その方にお願いし、国王の死後に第二王子が姿を消した際に偽の情報を流して貰います』
『偽の情報だと?』
『はい。将軍もご存知かもしれませんが、獣人国は孤島を所有しています。名前はケモノ島という人口が300人程度の小さな島です』
『ああ、聞いた事はあるが……』
獣人国は海に面した国家であり、大陸の近くに存在する幾つかの孤島も管理している。その中で「ケモノ島」と呼ばれる小さな島が存在し、その場所は観光地としても有名な場所だった。
『ケモノ島の周辺の海域は乱れ、危険性の高い魔物が生息している事から船で上陸するには獣人国が保有している水竜を利用する必要があります。この水竜が存在しなければ渡航も難しい島というのは知っていましたか?』
『ああっ……』
『つまり、この島に渡るには水竜の力が必要不可欠となります。ですが、もしもこの島に第二王子が逃げ込んだという噂を流せば第一王子と大将軍のウォンも真っ先に水竜を従えてケモノ島へと向かうでしょう』
『それがどうした?』
『まだお分かりになりませんか?つまり、邪魔者がケモノ島に集まっている間に将軍が港を占拠してしまえば奴等は国に引き返す事も出来ません。どれほどの軍勢であろうと陸地を抑えてしまえば攻め込む事は出来ません』
『な、なるほど……!!』
やっとクズノの思惑を理解したガオンは納得した表情を浮かべるが、仮に第一王子の勢力をケモノ島に送り込む事に成功しても相手が「水竜」を従えていた場合は非常に厄介な事になる。そもそも港を抑えた所で本当に第一王子の軍勢に対抗出来る保証はない。
『しかし、その方法では第一王子が大軍を引き連れて行った場合はどうする?それに厄介な水竜も同行させているとすれば面倒な事態に陥るぞ』
『その点もご安心ください。肝心なのは第一王子に偽の情報を流してケモノ島に送り込むだけです。将軍は難しく考えずに私兵を集め、そして国王の死後に第二王子の捜索という名目で大将軍から軍隊を引き継げばいいのです』
『うむ……いいだろう。お前の話を信じるぞ』
クズノの説明に完全に不安は拭えたわけではないが、千載一遇の好機を逃がせないと考えたガオンは敢えて彼の策に乗り、獣人国を裏切って自分が王になる事を誓う――
『何?俺を王にするのではないのか!?』
『あくまでも仮の話ですよ。やはり、大将軍が仕えている第一王子に協力するつもりでしたか?』
『ふんっ!!王族の権力争いなど知らん!!俺は自分の領地を守るだけだ!!』
ガオンは王子同士の争いに参加するつもりはなく、仮に国王が死亡した後に二人の王子が権力争いをしても自分は傍観をするつもりだった。しかし、その話を聞いたクズノは首を振って彼に助言を行う。
『いえ、将軍が第一にやるべき事は国王の死後、大将軍であるウォンに加担して第一王子の勢力に加わるべきです』
『何だと?この俺にくだらん兄弟喧嘩に参加しろというのか!?』
『その方法こそが将軍が最短で確実に国王の座に就けるのです』
『意味が分からんぞ!!どうしてガルル如きにこの俺が力を貸さねばならん!?』
王国間の権力争いなどガオンは関わりたくもなかったが、クズノによれば第一王子に協力を申し出る事で大将軍のウォンと接触し、彼から軍の権限を分け与えるように申し出る様に伝える。
『いいですか?将軍が第一王子の派閥に加われば第二王子の人間達の立場が更に悪くなり、第一王子に寝返る者も出てくるでしょう。しかし、臣下全員が第一王子に忠誠を誓うはずはありません。きっと第二王子を見捨てられない人間達が王子を安全な場所へ避難させようとするでしょう』
『ふむ……まあ、確かにそうだな。第二王子のガウを慕う人間は多いと聞く』
第一王子のガルルよりも第二王子のガウの方が民衆からの人望も厚く、家臣の中にも彼を慕う獣人も多い。仮に大将軍のウォンと彼の右腕であるガオンが第一王子の味方になったとしても第二王子の派閥の獣人達は最後まで抵抗を試みると考えられた。
『恐らくは第二王子は家臣の手引きで何処かに身を隠すでしょう。その際に王子を捜索するために軍が派遣されるはずです。将軍は王子の捜索部隊を立候補すればきっと軍権も大将軍から委任されるでしょう』
『しかし、捜索のための兵士の数などたかが知れているぞ?まさか貴様は派遣された軍隊を利用したこの俺に王都を攻め寄せろというのか?』
『いえいえ、そのような無謀な真似はさせませんよ。むしろそんな方法を使わなくとも簡単に二人の王子の命と大将軍の命を奪う策はあるのですから』
『何だとっ!?一体それはどんな策だ!?』
クズノの言葉にガオンは聞き返し、あくまでも話を聞くだけだと事前に伝えていただけにも関わらずに彼はクズノの話に夢中になっており、自分を国王の座に就く方法を問い質す。
『早く言えっ!!この俺をどうやってお前は国王にするつもりだ!?』
『ふふふっ……その策の内容を話す前に説明を加えますが、実はこう見えても私は結構顔が広いのです。この国の貴族の方々とも交流があります』
『一体何の話をしている?お前の自慢話など聞いている暇はないぞ!!』
『まあ、最期まで落ち着いて聞いて下さい。実は私の知り合いの貴族の方には第一王子と懇意の間柄である人物も存在します。その方にお願いし、国王の死後に第二王子が姿を消した際に偽の情報を流して貰います』
『偽の情報だと?』
『はい。将軍もご存知かもしれませんが、獣人国は孤島を所有しています。名前はケモノ島という人口が300人程度の小さな島です』
『ああ、聞いた事はあるが……』
獣人国は海に面した国家であり、大陸の近くに存在する幾つかの孤島も管理している。その中で「ケモノ島」と呼ばれる小さな島が存在し、その場所は観光地としても有名な場所だった。
『ケモノ島の周辺の海域は乱れ、危険性の高い魔物が生息している事から船で上陸するには獣人国が保有している水竜を利用する必要があります。この水竜が存在しなければ渡航も難しい島というのは知っていましたか?』
『ああっ……』
『つまり、この島に渡るには水竜の力が必要不可欠となります。ですが、もしもこの島に第二王子が逃げ込んだという噂を流せば第一王子と大将軍のウォンも真っ先に水竜を従えてケモノ島へと向かうでしょう』
『それがどうした?』
『まだお分かりになりませんか?つまり、邪魔者がケモノ島に集まっている間に将軍が港を占拠してしまえば奴等は国に引き返す事も出来ません。どれほどの軍勢であろうと陸地を抑えてしまえば攻め込む事は出来ません』
『な、なるほど……!!』
やっとクズノの思惑を理解したガオンは納得した表情を浮かべるが、仮に第一王子の勢力をケモノ島に送り込む事に成功しても相手が「水竜」を従えていた場合は非常に厄介な事になる。そもそも港を抑えた所で本当に第一王子の軍勢に対抗出来る保証はない。
『しかし、その方法では第一王子が大軍を引き連れて行った場合はどうする?それに厄介な水竜も同行させているとすれば面倒な事態に陥るぞ』
『その点もご安心ください。肝心なのは第一王子に偽の情報を流してケモノ島に送り込むだけです。将軍は難しく考えずに私兵を集め、そして国王の死後に第二王子の捜索という名目で大将軍から軍隊を引き継げばいいのです』
『うむ……いいだろう。お前の話を信じるぞ』
クズノの説明に完全に不安は拭えたわけではないが、千載一遇の好機を逃がせないと考えたガオンは敢えて彼の策に乗り、獣人国を裏切って自分が王になる事を誓う――
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