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獣人国
お邪魔します(死刑宣告)
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『ふうっ……やっと辿り着いた』
全ての兵士達を振り払い、駐屯所に到着したルノは扉の前に立つ。街道で騒動が起きる前は見張りの兵士も立っていたが、何時の間にか逃げ出していた。扉の前に移動したルノの行動に街道に存在する人々は様子を伺い、彼が何をするのか観察する。
『さてと……すいませ~ん』
「おい、ノックしてるぞ……」
「ていうか挨拶までしたぞ!?」
最初にルノは扉を軽く叩き、中にいる人間に挨拶を行う。誰もがルノが力尽くで入り込むと思っていただけに動揺が広がり、更にルノは驚愕の言葉を口にした。
『あれ?返事がないな……留守なのかな?誰かいませんか~?』
「天然かっ!?」
「そりゃ、誰も出るはずないだろ……」
返事がない事に不思議そうに首を傾げながら再度扉をノックするルノに民衆は呆れるが、そんなルノの様子を見兼ねて土竜の甲羅の部分に隠れていたリディアが声を掛ける。
「ちょっと、居留守に決まってるでしょうが!!いいからさっさと入りなさいよ」
『いや、でも扉を破壊するのはちょっと……器物破損で捕まっちゃうかも』
「ここまでしておいて何で今更犯罪を恐れてるのよ!?」
「お、おい!!今度は土竜と何か話し始めたぞ!?」
「というか、あの土竜は人間の言葉が喋れるのか!?」
土竜の背中が見えない人間達にはリディアの声が土竜が発しているようにしか聞こえず、魔物が人語を話している事に混乱が広がる。しかし、当のルノ達は彼等の動揺に気付かずに駐屯所の扉を押し開く。
『仕方ないな……じゃあ、御邪魔します!!』
ルノは扉の取っ手を掴むと、力尽くで押し出して扉の鍵どころか扉ごと破壊して中に入り込む。扉が破壊された事で煙が舞い上がり、中に隠れていた兵士達の悲鳴が響き渡った。
「う、うわぁっ!?中まで入り込んできたぞっ!?」
「鋼鉄製の扉だぞ!?どうやって入ってきた!?」
「そんな事より誰が相手するんだよ!!俺は逃げるぞ!!」
「ま、待て!!俺も逃げる!!」
『う~ん……なんか凄い騒ぎになったな』
「目立ち過ぎよ……」
「くぅんっ……」
扉を破壊して中に入り込むと大勢の兵士達が慌てふためき、殆どの人間が戦意喪失していた。彼等は窓から街道の様子を伺っており、数十人の兵士が束になっても敵わないルノを見て完全に怖気づいていた。それでも中には骨のある人物も居たらしく、兵士の一人がルノの前に立ちはだかる。
「おっと、待ちな!!ここから先に進みたければ俺が相手になるぜ!!」
「おお!!ゴリ隊長だ!!ゴリ隊長が来てくれたぞ!!」
『うわ、なんか大きい人が出てきた……』
逃げ惑う兵士達を掻き分け、姿を現したのは体長が2メートルを超える大男が現れる。全身が毛むくじゃらであり、一見はゴリラを想像させる筋骨隆々の大男はルノの前に移動すると、冷や汗を流しながらも向き合う。
「へへっ……俺はガオン将軍の直属の部下のゴリだ」
『ゴリラ?』
「ゴリだ!!ゴリラじゃねえ!!ゴ・リ・だ!!」
『あ、すいません……それでゴリダさんが何の用ですか?』
「ゴ・リ!!だは要らねえんだよ!!」
素で名前を間違えたルノにゴリは怒り狂うが、彼も先ほどの街道の騒動を目にしているのでルノの危険性は理解しており、気を取り直してゴリは話しかける。
「まあいい……それよりもお前は何者だ?どうしてガオン将軍に会いたがってる?」
『まあ、色々とありまして……とりあえず文句を言いに来ました』
「文句だと?」
『貴方達が第二王子の捜索を理由にしてこの街や他の場所でも民衆の人達に迷惑をかけているのは知っています。その事で文句を言いに来ました』
「なんだと……お前、第二王子の回し者か!?」
『え、いや……』
第二王子という単語が出た途端にゴリは動揺の声を上げ、実際のところはルノは第二王子と面識すらないのだが、勝手に勘違いしたゴリは好戦的な表情を浮かべてルノと向かい合う。
「なるほど、だいたい予想出来たぜ……お前は第二王子が雇った刺客だな!?ガオン将軍を探しているのは将軍の命を狙っているわけか!!」
『全然違うんですけど……』
「うるせえっ!!将軍の命が狙いなら容赦はしねえぞ!!うほぉおおおっ!!」
見当違いの推理でルノを第二王子が送り込んだ殺し屋だと判断したゴリは唐突に胸元を叩き、本物のゴリラのような鳴き声を上げる。その直後にゴリの筋肉が膨れ上がり、それを見た兵士達が活気立つ。
「おおっ!!ゴリさんが雄たけびを上げたぞ!?」
「俺は知ってるぜ!!あの人が本気で戦う時はああいう奇怪な鳴き声を出すのを!!」
「この声を聞いて無事に生き残れた敵はいないと聞いた事があるぞっ!!」
「やっちまえ!!」
『いちいちうるさいな……』
「余所見してんじゃねえっ!!」
ゴリが戦闘態勢に入った途端に騒ぎ出した兵士達をルノが顔を向け、その隙を逃さずにゴリは腰に付けていたナックルを装着してルノの顔面に向けて放つ。
全ての兵士達を振り払い、駐屯所に到着したルノは扉の前に立つ。街道で騒動が起きる前は見張りの兵士も立っていたが、何時の間にか逃げ出していた。扉の前に移動したルノの行動に街道に存在する人々は様子を伺い、彼が何をするのか観察する。
『さてと……すいませ~ん』
「おい、ノックしてるぞ……」
「ていうか挨拶までしたぞ!?」
最初にルノは扉を軽く叩き、中にいる人間に挨拶を行う。誰もがルノが力尽くで入り込むと思っていただけに動揺が広がり、更にルノは驚愕の言葉を口にした。
『あれ?返事がないな……留守なのかな?誰かいませんか~?』
「天然かっ!?」
「そりゃ、誰も出るはずないだろ……」
返事がない事に不思議そうに首を傾げながら再度扉をノックするルノに民衆は呆れるが、そんなルノの様子を見兼ねて土竜の甲羅の部分に隠れていたリディアが声を掛ける。
「ちょっと、居留守に決まってるでしょうが!!いいからさっさと入りなさいよ」
『いや、でも扉を破壊するのはちょっと……器物破損で捕まっちゃうかも』
「ここまでしておいて何で今更犯罪を恐れてるのよ!?」
「お、おい!!今度は土竜と何か話し始めたぞ!?」
「というか、あの土竜は人間の言葉が喋れるのか!?」
土竜の背中が見えない人間達にはリディアの声が土竜が発しているようにしか聞こえず、魔物が人語を話している事に混乱が広がる。しかし、当のルノ達は彼等の動揺に気付かずに駐屯所の扉を押し開く。
『仕方ないな……じゃあ、御邪魔します!!』
ルノは扉の取っ手を掴むと、力尽くで押し出して扉の鍵どころか扉ごと破壊して中に入り込む。扉が破壊された事で煙が舞い上がり、中に隠れていた兵士達の悲鳴が響き渡った。
「う、うわぁっ!?中まで入り込んできたぞっ!?」
「鋼鉄製の扉だぞ!?どうやって入ってきた!?」
「そんな事より誰が相手するんだよ!!俺は逃げるぞ!!」
「ま、待て!!俺も逃げる!!」
『う~ん……なんか凄い騒ぎになったな』
「目立ち過ぎよ……」
「くぅんっ……」
扉を破壊して中に入り込むと大勢の兵士達が慌てふためき、殆どの人間が戦意喪失していた。彼等は窓から街道の様子を伺っており、数十人の兵士が束になっても敵わないルノを見て完全に怖気づいていた。それでも中には骨のある人物も居たらしく、兵士の一人がルノの前に立ちはだかる。
「おっと、待ちな!!ここから先に進みたければ俺が相手になるぜ!!」
「おお!!ゴリ隊長だ!!ゴリ隊長が来てくれたぞ!!」
『うわ、なんか大きい人が出てきた……』
逃げ惑う兵士達を掻き分け、姿を現したのは体長が2メートルを超える大男が現れる。全身が毛むくじゃらであり、一見はゴリラを想像させる筋骨隆々の大男はルノの前に移動すると、冷や汗を流しながらも向き合う。
「へへっ……俺はガオン将軍の直属の部下のゴリだ」
『ゴリラ?』
「ゴリだ!!ゴリラじゃねえ!!ゴ・リ・だ!!」
『あ、すいません……それでゴリダさんが何の用ですか?』
「ゴ・リ!!だは要らねえんだよ!!」
素で名前を間違えたルノにゴリは怒り狂うが、彼も先ほどの街道の騒動を目にしているのでルノの危険性は理解しており、気を取り直してゴリは話しかける。
「まあいい……それよりもお前は何者だ?どうしてガオン将軍に会いたがってる?」
『まあ、色々とありまして……とりあえず文句を言いに来ました』
「文句だと?」
『貴方達が第二王子の捜索を理由にしてこの街や他の場所でも民衆の人達に迷惑をかけているのは知っています。その事で文句を言いに来ました』
「なんだと……お前、第二王子の回し者か!?」
『え、いや……』
第二王子という単語が出た途端にゴリは動揺の声を上げ、実際のところはルノは第二王子と面識すらないのだが、勝手に勘違いしたゴリは好戦的な表情を浮かべてルノと向かい合う。
「なるほど、だいたい予想出来たぜ……お前は第二王子が雇った刺客だな!?ガオン将軍を探しているのは将軍の命を狙っているわけか!!」
『全然違うんですけど……』
「うるせえっ!!将軍の命が狙いなら容赦はしねえぞ!!うほぉおおおっ!!」
見当違いの推理でルノを第二王子が送り込んだ殺し屋だと判断したゴリは唐突に胸元を叩き、本物のゴリラのような鳴き声を上げる。その直後にゴリの筋肉が膨れ上がり、それを見た兵士達が活気立つ。
「おおっ!!ゴリさんが雄たけびを上げたぞ!?」
「俺は知ってるぜ!!あの人が本気で戦う時はああいう奇怪な鳴き声を出すのを!!」
「この声を聞いて無事に生き残れた敵はいないと聞いた事があるぞっ!!」
「やっちまえ!!」
『いちいちうるさいな……』
「余所見してんじゃねえっ!!」
ゴリが戦闘態勢に入った途端に騒ぎ出した兵士達をルノが顔を向け、その隙を逃さずにゴリは腰に付けていたナックルを装着してルノの顔面に向けて放つ。
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