321 / 657
獣人国
ガオン将軍の精鋭部隊
しおりを挟む
「隊長!!大丈夫ですか?」
「くっ……平気だ!!それよりも奴を止めろっ!!」
「止めろと言われても……」
小型の土竜を引き連れながら兵士達の駐屯所に向かうルノに対して隊長は部下たちに引き留めるように命じるが、誰も行動に移らない。先ほどから力尽くで止めようとしても武器は全て弾かれ、腕力にも圧倒的な差が存在する。獣人族は基本的に魔術師の職業の人間は少ないため、この場には魔法を扱える人間もいない。そもそも魔術師の職業の兵士達はほぼ全員が第一王子のガルルの傍に付いているため、この街には攻撃魔法を扱える人兵士は存在しない。
「何としても止めるんだ!!もしもガオン将軍の元に奴を送れば我々も罰則は免れないだぞ!?」
「し、しかし……止めると言ってもどうやって?」
「いいから早く行け!!全員で抑えつけるんだ!!」
「く、くそっ……行くぞ!!」
隊長の命令に逆らえず、兵士達は自棄を起こしたようにルノの元に向かう。数人がかりでルノの肉体にしがみ付き、必死に引き留めようとしたが、全く進行速度を落とさずにルノは移動を続ける。
『あの……離れてくれませんか?』
「ぐぎぎぎぎっ!?」
「と、止まらないっ……!!」
「何なんだこいつはぁっ!?」
必死の表情を浮かべて兵士達は氷鎧越しにルノの身体を抑えつけようとするが、地面に踏ん張ろうとした兵士ごと引きずって屋敷に向かう。数人では止めるのは不可能だと判断した兵士達は今度は大人数でルノの氷鎧に飛びついた。
「これならどうだ!!」
「よし、足を掴んだ……うおおっ!?」
「ま、まだ止まらないのかっ!?」
『もう、いい加減にしてください!!』
身体の至る箇所にむさ苦しい男性兵士に纏わりつかれ、流石に苛立ちを抱いたルノは虫を振り払うように腕を振り抜く。それだけの動作で氷鎧に張り付いていた兵士達が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられてしまう。
「ぎゃああっ!?」
「うわぁっ!?」
「ひいいっ!?」
右腕にしがみ付いていた兵士達が地面に転倒し、怯えた表情を浮かべながら地面を這いつくばる姿を見て様子を観察していた一般人達も堪えきれずに笑い声を漏らす。
「ぷっ……」
「ちょ、ちょっと……笑っちゃ駄目よ」
「いや、そうは言ってもよ……ぶははっ!!」
「き、貴様等っ!!誰だ笑ったのは!?」
自分達の醜態を見て笑い声を上げる民衆に兵士達は頬を赤くして怒鳴り散らすが、先ほどの行動を見て彼等に威厳も何も感じられず、少し前までは兵士に怯えていた人間達も彼等を嘲笑する。
「ふんっ!!何よ偉そうに……普段はあんなに威張って癖に何て様よ!!」
「大の大人が一人を相手に手こずってんじゃねえよ!!」
「こいつらぁっ……!!」
「構うなっ!!今は奴を止めるんだ!!」
民衆の反応に怒りを抱いた兵士達だが、すぐに隊長が慌てて命令を下す。今は民衆に構っている暇はなく、もしもルノをガオン将軍の元へ訪れた場合は彼の命が危うい。侵入者にみっともなく捕まり、更に上司である将軍の居場所を漏らした事など知られたら兵士隊長は死罪を言い渡されてもおかしくはない。
「早くそいつを止めるんだ!!でなければ貴様等全員を鞭打ちの刑に処すぞ!!」
「そうは言っても止まらないんですよ!?こいつ、とんでもない怪力で……」
『もう、しつっこい!!』
「うわぁあああっ!?」
兵士隊長の言葉に苛立ちを隠さずに怒鳴り返し、兵士達も決してふざけているわけではなく、真面目にルノを取り押さえようとしていた。しかし、圧倒的な力の差で抗う事も出来ず、遂にはルノが怒ったように身体を震わせて兵士全員を吹き飛ばす。
『いい加減にしてください!!これ以上邪魔をするなら……本気で怒りますよ』
「ひいっ!?す、すいません……!!」
「もう許してください!!」
「お、お前等……敵を相手に命乞いをするな!!恥知らず共がっ!!」
威嚇するように両腕を掲げた状態でルノが怒鳴り声を上げると兵士達はその場に跪き、命乞いを行う。その様子を見た兵士隊長が兵士達を罵倒するが、いい加減に無茶な命令を繰り返し言いつけられていた兵士達も不満を爆発させる。
「うるせえっ!!しょんべんを漏らしたあんたに言われる筋合いはねえよ!!」
「そうだそうだ!!さっきから臭いんだよ馬鹿!!」
「止めろというのならお前が止めて見せろ!!この馬鹿隊長がっ!!」
「き、貴様等ぁっ……!?」
「ふんっ!!普段は怒鳴り散らしている癖にこんな時に限って俺達を頼りにしようなんて都合が良いんだよ……もうやってられるかっ!!全部お前のせいだ!!」
命令を下すだけで何もしない兵士隊長に全員が怒り狂い、全員が不貞腐れたようにその場に座り込む。勝手に仲間割れを始めた兵士達を後目にルノと土竜は遂に建物の前に到着した。
「くっ……平気だ!!それよりも奴を止めろっ!!」
「止めろと言われても……」
小型の土竜を引き連れながら兵士達の駐屯所に向かうルノに対して隊長は部下たちに引き留めるように命じるが、誰も行動に移らない。先ほどから力尽くで止めようとしても武器は全て弾かれ、腕力にも圧倒的な差が存在する。獣人族は基本的に魔術師の職業の人間は少ないため、この場には魔法を扱える人間もいない。そもそも魔術師の職業の兵士達はほぼ全員が第一王子のガルルの傍に付いているため、この街には攻撃魔法を扱える人兵士は存在しない。
「何としても止めるんだ!!もしもガオン将軍の元に奴を送れば我々も罰則は免れないだぞ!?」
「し、しかし……止めると言ってもどうやって?」
「いいから早く行け!!全員で抑えつけるんだ!!」
「く、くそっ……行くぞ!!」
隊長の命令に逆らえず、兵士達は自棄を起こしたようにルノの元に向かう。数人がかりでルノの肉体にしがみ付き、必死に引き留めようとしたが、全く進行速度を落とさずにルノは移動を続ける。
『あの……離れてくれませんか?』
「ぐぎぎぎぎっ!?」
「と、止まらないっ……!!」
「何なんだこいつはぁっ!?」
必死の表情を浮かべて兵士達は氷鎧越しにルノの身体を抑えつけようとするが、地面に踏ん張ろうとした兵士ごと引きずって屋敷に向かう。数人では止めるのは不可能だと判断した兵士達は今度は大人数でルノの氷鎧に飛びついた。
「これならどうだ!!」
「よし、足を掴んだ……うおおっ!?」
「ま、まだ止まらないのかっ!?」
『もう、いい加減にしてください!!』
身体の至る箇所にむさ苦しい男性兵士に纏わりつかれ、流石に苛立ちを抱いたルノは虫を振り払うように腕を振り抜く。それだけの動作で氷鎧に張り付いていた兵士達が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられてしまう。
「ぎゃああっ!?」
「うわぁっ!?」
「ひいいっ!?」
右腕にしがみ付いていた兵士達が地面に転倒し、怯えた表情を浮かべながら地面を這いつくばる姿を見て様子を観察していた一般人達も堪えきれずに笑い声を漏らす。
「ぷっ……」
「ちょ、ちょっと……笑っちゃ駄目よ」
「いや、そうは言ってもよ……ぶははっ!!」
「き、貴様等っ!!誰だ笑ったのは!?」
自分達の醜態を見て笑い声を上げる民衆に兵士達は頬を赤くして怒鳴り散らすが、先ほどの行動を見て彼等に威厳も何も感じられず、少し前までは兵士に怯えていた人間達も彼等を嘲笑する。
「ふんっ!!何よ偉そうに……普段はあんなに威張って癖に何て様よ!!」
「大の大人が一人を相手に手こずってんじゃねえよ!!」
「こいつらぁっ……!!」
「構うなっ!!今は奴を止めるんだ!!」
民衆の反応に怒りを抱いた兵士達だが、すぐに隊長が慌てて命令を下す。今は民衆に構っている暇はなく、もしもルノをガオン将軍の元へ訪れた場合は彼の命が危うい。侵入者にみっともなく捕まり、更に上司である将軍の居場所を漏らした事など知られたら兵士隊長は死罪を言い渡されてもおかしくはない。
「早くそいつを止めるんだ!!でなければ貴様等全員を鞭打ちの刑に処すぞ!!」
「そうは言っても止まらないんですよ!?こいつ、とんでもない怪力で……」
『もう、しつっこい!!』
「うわぁあああっ!?」
兵士隊長の言葉に苛立ちを隠さずに怒鳴り返し、兵士達も決してふざけているわけではなく、真面目にルノを取り押さえようとしていた。しかし、圧倒的な力の差で抗う事も出来ず、遂にはルノが怒ったように身体を震わせて兵士全員を吹き飛ばす。
『いい加減にしてください!!これ以上邪魔をするなら……本気で怒りますよ』
「ひいっ!?す、すいません……!!」
「もう許してください!!」
「お、お前等……敵を相手に命乞いをするな!!恥知らず共がっ!!」
威嚇するように両腕を掲げた状態でルノが怒鳴り声を上げると兵士達はその場に跪き、命乞いを行う。その様子を見た兵士隊長が兵士達を罵倒するが、いい加減に無茶な命令を繰り返し言いつけられていた兵士達も不満を爆発させる。
「うるせえっ!!しょんべんを漏らしたあんたに言われる筋合いはねえよ!!」
「そうだそうだ!!さっきから臭いんだよ馬鹿!!」
「止めろというのならお前が止めて見せろ!!この馬鹿隊長がっ!!」
「き、貴様等ぁっ……!?」
「ふんっ!!普段は怒鳴り散らしている癖にこんな時に限って俺達を頼りにしようなんて都合が良いんだよ……もうやってられるかっ!!全部お前のせいだ!!」
命令を下すだけで何もしない兵士隊長に全員が怒り狂い、全員が不貞腐れたようにその場に座り込む。勝手に仲間割れを始めた兵士達を後目にルノと土竜は遂に建物の前に到着した。
0
お気に入りに追加
11,309
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。