318 / 657
獣人国
元凶を断つ
しおりを挟む
「これでワン子の両親の場所は分かったわね。でも、どうする気よ?まさか刑務所に乗り込んで救い出す気?」
「う~んっ……」
「言っておくけど、ここで村人を救い出してもそいつらは何処に行くのよ?村に戻っても軍隊がまた捕まえに来たらどうするのよ?それとも、あんたが村人を守るの?」
「それは出来ないよ」
ルノの目的は帝国へ帰還する事であり、流石にワン子の両親を含めた村人を守り続ける事は出来ない。だが、村人をわざわざ救い出しながらその後は放置するという方法では後味が悪く、根本的な問題を解決する事を決めた。
「要はこの街に滞在している軍隊の指揮を任されているガオン将軍が問題なんでしょ?だからガオン将軍をどうにか説得すればいいんじゃないかな?」
「お、おい!!何を考えてるんだお前?」
「ガオン将軍を説得するだと?そんな事が出来るはずが……」
「すいません、静かにしてください」
「「うあっ!?」」
騒ぎ出した兵士の二人の頭を掴み、ルノは小刻みに頭部を動かす。それだけの動作で兵士の二人は頭部の脳に振動が走り、意識を失ってしまう。
「ちょ、ちょっと……今何をしたのよ?」
「えっと、脳震盪?まあ、少し眠ってもらっただけだよ。あ、しまった!!気絶させる前にガオン将軍の居場所を聞いておけば良かった」
「あんた、何を考えているのよ?まさか本当に将軍を説得できると思っているの?」
「だって話を聞く限りではガオン将軍が勝手に行動しているだけでしょ?それならガオン将軍を説得して軍隊の暴走を止めさせれば問題解決するんじゃないの?」
「だからどうやってあんたはその将軍とやらを説得する気よ!?」
「……力尽くでも?」
リディアの言葉にルノは黙って握り拳を見せつけると、異様な説得力を感じ取ったリディアは冷や汗を流し、確かにルノの力ならば大抵の相手は脅迫できるだろう。しかし、そんな事をすればルノの「他国では目立たない」という目的が意味を為さないのではないかと指摘する。
「あんた、少し前まで目立ちたくはないと言ってたじゃない……そんな事をすればあんたはともかく、帝国の立場も不味いんじゃないの?」
「でもさ、よくよく考えたら要は俺の正体が気付かれなければいいだけの話でしょ?つまり、どれだけ目立とうと正体がバレなければ問題ないんじゃないかな?」
「まあ、確かにそうね……」
「あの……ルノのお兄さんは危険な事をしようとしているんですか?」
話を聞いていたワン子が不安そうな表情を抱き、自分達のためにルノが危険を犯そうとしているのかと彼女は心配したようにルノの服の袖を掴む。だが、彼女を安心させるようにルノは頭を撫でやり、安心させるように笑顔を浮かべた。
「大丈夫だよ。絶対にワンちゃんの両親と他の人達も救い出してみるからね。ということでリディア、君も強力してもらうよ」
「え?あたしも!?」
「だって一人にしたら逃げちゃうかもしれないし……一緒に付いてきてもらうからね」
「じょ、冗談でしょ!?ガーゴイルも連れてきていないあたしに何をしろっていうのよ!?」
「別に何もしなくていいよ。リディアとワンちゃんは黙って乗ってればいいから」
「え、乗る……?」
「じゃあ、早速準備を始めようか」
ルノはガオン将軍の居場所を探す前に自分達が見つかっても問題ない準備を行うため、地面に掌を構えて「土塊」の魔法を発動させた。都合が良い事に帝国の街と違い、獣人族の街の地面は煉瓦は敷き詰められていない事が幸いし、瞬く間にルノは土砂を固めて人間が乗り込めるほどの乗物を作り出した。
「出でよ土竜!!なんてねっ」
「嘘っ!?」
「わうっ!?」
リディアとワン子の目の前で竜種の土竜を想像させる形状をした土人形が形成され、背中の甲羅の部分には人間が乗り込めるほどの窪みが存在した。更にルノは四肢の部分に氷塊の魔法を発動させて氷の手足を作り出すと、二人を背中の窪みに乗るように促す。
「さあ、この中に乗って。落ちない様に気を付けてね」
「あんた、本当に何でもありね……」
「大きい亀さんですぅっ」
「亀じゃなくて土竜なんだけどね」
ワン子を抱えたリディアが恐る恐る小型の土竜の背中に乗り込むのを確認すると、続けてルノは今度は自分の外見を隠すために氷塊の魔法で「氷鎧」を生み出す。大臣が使用していた「鬼武者」を参考にした氷塊の鎧を身に纏い、更に氷が透けて中身が見えない様にするために土塊の魔法を利用して表面を泥で覆いこむ。
「こんな感じかな……これで俺達だとバレることはないでしょ」
「小型の土竜に得体の知れない甲冑の騎士を見たらさぞかし驚くでしょうね……」
「なんだかわくわくしてきました!!」
この状態ならば正体は気付かれないと判断したルノは不安を抱くリディアと期待感を募らせるワン子を連れ、街道に身を乗り出す――
「う~んっ……」
「言っておくけど、ここで村人を救い出してもそいつらは何処に行くのよ?村に戻っても軍隊がまた捕まえに来たらどうするのよ?それとも、あんたが村人を守るの?」
「それは出来ないよ」
ルノの目的は帝国へ帰還する事であり、流石にワン子の両親を含めた村人を守り続ける事は出来ない。だが、村人をわざわざ救い出しながらその後は放置するという方法では後味が悪く、根本的な問題を解決する事を決めた。
「要はこの街に滞在している軍隊の指揮を任されているガオン将軍が問題なんでしょ?だからガオン将軍をどうにか説得すればいいんじゃないかな?」
「お、おい!!何を考えてるんだお前?」
「ガオン将軍を説得するだと?そんな事が出来るはずが……」
「すいません、静かにしてください」
「「うあっ!?」」
騒ぎ出した兵士の二人の頭を掴み、ルノは小刻みに頭部を動かす。それだけの動作で兵士の二人は頭部の脳に振動が走り、意識を失ってしまう。
「ちょ、ちょっと……今何をしたのよ?」
「えっと、脳震盪?まあ、少し眠ってもらっただけだよ。あ、しまった!!気絶させる前にガオン将軍の居場所を聞いておけば良かった」
「あんた、何を考えているのよ?まさか本当に将軍を説得できると思っているの?」
「だって話を聞く限りではガオン将軍が勝手に行動しているだけでしょ?それならガオン将軍を説得して軍隊の暴走を止めさせれば問題解決するんじゃないの?」
「だからどうやってあんたはその将軍とやらを説得する気よ!?」
「……力尽くでも?」
リディアの言葉にルノは黙って握り拳を見せつけると、異様な説得力を感じ取ったリディアは冷や汗を流し、確かにルノの力ならば大抵の相手は脅迫できるだろう。しかし、そんな事をすればルノの「他国では目立たない」という目的が意味を為さないのではないかと指摘する。
「あんた、少し前まで目立ちたくはないと言ってたじゃない……そんな事をすればあんたはともかく、帝国の立場も不味いんじゃないの?」
「でもさ、よくよく考えたら要は俺の正体が気付かれなければいいだけの話でしょ?つまり、どれだけ目立とうと正体がバレなければ問題ないんじゃないかな?」
「まあ、確かにそうね……」
「あの……ルノのお兄さんは危険な事をしようとしているんですか?」
話を聞いていたワン子が不安そうな表情を抱き、自分達のためにルノが危険を犯そうとしているのかと彼女は心配したようにルノの服の袖を掴む。だが、彼女を安心させるようにルノは頭を撫でやり、安心させるように笑顔を浮かべた。
「大丈夫だよ。絶対にワンちゃんの両親と他の人達も救い出してみるからね。ということでリディア、君も強力してもらうよ」
「え?あたしも!?」
「だって一人にしたら逃げちゃうかもしれないし……一緒に付いてきてもらうからね」
「じょ、冗談でしょ!?ガーゴイルも連れてきていないあたしに何をしろっていうのよ!?」
「別に何もしなくていいよ。リディアとワンちゃんは黙って乗ってればいいから」
「え、乗る……?」
「じゃあ、早速準備を始めようか」
ルノはガオン将軍の居場所を探す前に自分達が見つかっても問題ない準備を行うため、地面に掌を構えて「土塊」の魔法を発動させた。都合が良い事に帝国の街と違い、獣人族の街の地面は煉瓦は敷き詰められていない事が幸いし、瞬く間にルノは土砂を固めて人間が乗り込めるほどの乗物を作り出した。
「出でよ土竜!!なんてねっ」
「嘘っ!?」
「わうっ!?」
リディアとワン子の目の前で竜種の土竜を想像させる形状をした土人形が形成され、背中の甲羅の部分には人間が乗り込めるほどの窪みが存在した。更にルノは四肢の部分に氷塊の魔法を発動させて氷の手足を作り出すと、二人を背中の窪みに乗るように促す。
「さあ、この中に乗って。落ちない様に気を付けてね」
「あんた、本当に何でもありね……」
「大きい亀さんですぅっ」
「亀じゃなくて土竜なんだけどね」
ワン子を抱えたリディアが恐る恐る小型の土竜の背中に乗り込むのを確認すると、続けてルノは今度は自分の外見を隠すために氷塊の魔法で「氷鎧」を生み出す。大臣が使用していた「鬼武者」を参考にした氷塊の鎧を身に纏い、更に氷が透けて中身が見えない様にするために土塊の魔法を利用して表面を泥で覆いこむ。
「こんな感じかな……これで俺達だとバレることはないでしょ」
「小型の土竜に得体の知れない甲冑の騎士を見たらさぞかし驚くでしょうね……」
「なんだかわくわくしてきました!!」
この状態ならば正体は気付かれないと判断したルノは不安を抱くリディアと期待感を募らせるワン子を連れ、街道に身を乗り出す――
0
お気に入りに追加
11,307
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。


調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。