最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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獣人国

元凶を断つ

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「これでワン子の両親の場所は分かったわね。でも、どうする気よ?まさか刑務所に乗り込んで救い出す気?」
「う~んっ……」
「言っておくけど、ここで村人を救い出してもそいつらは何処に行くのよ?村に戻っても軍隊がまた捕まえに来たらどうするのよ?それとも、あんたが村人を守るの?」
「それは出来ないよ」


ルノの目的は帝国へ帰還する事であり、流石にワン子の両親を含めた村人を守り続ける事は出来ない。だが、村人をわざわざ救い出しながらその後は放置するという方法では後味が悪く、根本的な問題を解決する事を決めた。


「要はこの街に滞在している軍隊の指揮を任されているガオン将軍が問題なんでしょ?だからガオン将軍をどうにか説得すればいいんじゃないかな?」
「お、おい!!何を考えてるんだお前?」
「ガオン将軍を説得するだと?そんな事が出来るはずが……」
「すいません、静かにしてください」
「「うあっ!?」」


騒ぎ出した兵士の二人の頭を掴み、ルノは小刻みに頭部を動かす。それだけの動作で兵士の二人は頭部の脳に振動が走り、意識を失ってしまう。


「ちょ、ちょっと……今何をしたのよ?」
「えっと、脳震盪?まあ、少し眠ってもらっただけだよ。あ、しまった!!気絶させる前にガオン将軍の居場所を聞いておけば良かった」
「あんた、何を考えているのよ?まさか本当に将軍を説得できると思っているの?」
「だって話を聞く限りではガオン将軍が勝手に行動しているだけでしょ?それならガオン将軍を説得して軍隊の暴走を止めさせれば問題解決するんじゃないの?」
「だからどうやってあんたはその将軍とやらを説得する気よ!?」
「……力尽くでも?」


リディアの言葉にルノは黙って握り拳を見せつけると、異様な説得力を感じ取ったリディアは冷や汗を流し、確かにルノの力ならば大抵の相手は脅迫できるだろう。しかし、そんな事をすればルノの「他国では目立たない」という目的が意味を為さないのではないかと指摘する。


「あんた、少し前まで目立ちたくはないと言ってたじゃない……そんな事をすればあんたはともかく、帝国の立場も不味いんじゃないの?」
「でもさ、よくよく考えたら要は俺の正体が気付かれなければいいだけの話でしょ?つまり、どれだけ目立とうと正体がバレなければ問題ないんじゃないかな?」
「まあ、確かにそうね……」
「あの……ルノのお兄さんは危険な事をしようとしているんですか?」


話を聞いていたワン子が不安そうな表情を抱き、自分達のためにルノが危険を犯そうとしているのかと彼女は心配したようにルノの服の袖を掴む。だが、彼女を安心させるようにルノは頭を撫でやり、安心させるように笑顔を浮かべた。


「大丈夫だよ。絶対にワンちゃんの両親と他の人達も救い出してみるからね。ということでリディア、君も強力してもらうよ」
「え?あたしも!?」
「だって一人にしたら逃げちゃうかもしれないし……一緒に付いてきてもらうからね」
「じょ、冗談でしょ!?ガーゴイルも連れてきていないあたしに何をしろっていうのよ!?」
「別に何もしなくていいよ。リディアとワンちゃんは黙って乗ってればいいから」
「え、乗る……?」
「じゃあ、早速準備を始めようか」


ルノはガオン将軍の居場所を探す前に自分達が見つかっても問題ない準備を行うため、地面に掌を構えて「土塊」の魔法を発動させた。都合が良い事に帝国の街と違い、獣人族の街の地面は煉瓦は敷き詰められていない事が幸いし、瞬く間にルノは土砂を固めて人間が乗り込めるほどの乗物を作り出した。


「出でよ土竜!!なんてねっ」
「嘘っ!?」
「わうっ!?」


リディアとワン子の目の前で竜種の土竜を想像させる形状をした土人形が形成され、背中の甲羅の部分には人間が乗り込めるほどの窪みが存在した。更にルノは四肢の部分に氷塊の魔法を発動させて氷の手足を作り出すと、二人を背中の窪みに乗るように促す。


「さあ、この中に乗って。落ちない様に気を付けてね」
「あんた、本当に何でもありね……」
「大きい亀さんですぅっ」
「亀じゃなくて土竜なんだけどね」


ワン子を抱えたリディアが恐る恐る小型の土竜の背中に乗り込むのを確認すると、続けてルノは今度は自分の外見を隠すために氷塊の魔法で「氷鎧」を生み出す。大臣が使用していた「鬼武者」を参考にした氷塊の鎧を身に纏い、更に氷が透けて中身が見えない様にするために土塊の魔法を利用して表面を泥で覆いこむ。


「こんな感じかな……これで俺達だとバレることはないでしょ」
「小型の土竜に得体の知れない甲冑の騎士を見たらさぞかし驚くでしょうね……」
「なんだかわくわくしてきました!!」


この状態ならば正体は気付かれないと判断したルノは不安を抱くリディアと期待感を募らせるワン子を連れ、街道に身を乗り出す――
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