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獣人国
侵入作戦
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「ちなみにあの街の名前は何て言うの?」
「13番街です!!獣人国では街に番号が振り分けられているんです!!」
「へえ……覚えやすいね」
「それでどうやって侵入するのよ?お得意の空を飛ぶ魔法で近づいたら気付かれるわよ。人間と違って獣人族は感覚が鋭いんだから簡単には侵入できないわよ」
13番街に視線を向けるルノにリディアは一応は注意すると、ルノは上空の様子を伺い、既に夕暮れを超えて夜を迎えようとしていた。この暗闇を利用し、侵入する術を考える。
(俺だけなら適当に騒ぎを起こしている間に忍び込めるけど、ワン子ちゃんを連れて行かないとお父さんとお母さんの顔も分からないからな……リディアも放っておくと逃げ出しそうだし、離れるわけには行かないとなると……)
ワン子の両親を救い出すには全員で行動する必要があり、最初にルノは街に忍び込む前に乗物を作り出す。今回は特に自動車や飛行機のような凝った形状ではなく、大きめの桶のような巨大な氷の容器を作り出した。
「これで良し……じゃあ、中に入って」
「わうっ!?急に氷が出てきました!?」
「何よする気よ……まさか、これに乗って移動する気?」
「いいから乗ってよ。あ、ガー君はマダラバイソンの世話をお願いね」
『シャアッ』
「ウモォッ」
「なんで主人のあたしじゃなくてこいつの命令に従順になってるのよあんた達……」
ルノの命令にガーゴイルは敬礼を行い、マダラバイソンも頷く。その様子を見て2体の主人であるリディアは複雑そうな表情を抱くが、ここで文句を告げても仕方ないので黙ってルノの指示通りに動く。
「じゃあ、俺達はしばらく離れるけど、朝までには必ず戻ってくるからここで大人しくしててね」
『シャッ!!』
「ウモッ!!」
マダラバイソンに乗り込んだガーゴイルが敬礼を行うのを確認すると、氷塊の桶の中にワン子とリディアを乗せると、ルノは自分が乗り込む前に二人を桶の中で屈ませる。
「ほら、他の人には見えないようにしっかり隠れてね」
「わうっ……ちょっとワクワクしてきました」
「子供の頃に桶の中に隠れていた事を思い出すわ……嫌な思い出ね」
「よし、じゃあ出発するよ。俺が良いと言うまで立ち上がらないでね……闇夜!!」
2人が桶の中に屈むのを確認すると、ルノは両手を構えて桶の周囲に「闇夜」の魔法を発動させて黒霧で覆いこむ。3人が乗り込んだ氷桶が黒霧に包まれ、ゆっくりと上空へ浮上した。上手く夜空の暗闇に隠れており、注意深く観察しなければ空を飛ぶルノ達の姿は捕えられないだろう。
「多分、これなら外から見たら暗闇に紛れて俺達の姿は見えないと思うけど……」
「でも、この状態だと私達も何も見えないじゃない」
「今度は急に暗くなりました!?」
黒霧で包まれているので氷桶の中に存在するルノ達の視界も遮られてしまう。しかし、それも見越してルノは次の魔法を発動させる。
「大丈夫、氷塊の魔法で筒を作れば……ほら、これで見えると思う」
「……何よそれ?」
「望遠鏡……的な感じの物」
氷塊の魔法で望遠鏡を想像させる氷の筒を作り出すと、ルノは右目に押し当てて筒を氷桶の周囲に発生させている黒霧の外へ突き出す。流石に本物の望遠鏡のような遠方の景色を映し出す能力は持たないが、元々ルノは「遠視」と呼ばれる視力を強化させる技能スキルを習得しており、筒の中から見える景色を確認しながら13番街へ接近する。
「うん、今のところは俺達に気付いている様子はないけど、念のためにもうちょっと浮上するよ」
「本当に何でもありねあんた……」
「ルノのお兄さんは凄いですっ!!」
「あ、ごめん。そろそろ静かにしてくれる?音で気付かれるかもしれないから……」
定期的に氷望遠鏡で現在位置を把握し、遂には防壁を通過して街の中心街の上空まで移動すると、ルノは魔法を解除してワン子とリディアを抱えた状態で大きな建物の屋根の上へ着地した。
「よし、新入成功」
「あいたっ!?ちょっと、優しく下ろしなさいよ……!?」
「わううっ……高い所は少し苦手です」
着地の際にお尻をぶつけたリディアは軽く悲鳴を上げ、ワン子はルノの右肩にしがみ付いたまま下りない。街の様子を確認する限りでは他の人間に見つかった様子はなく、無事に潜入に成功したといえる。しかし、街道の様子を見てワン子は不思議そうに首を傾ける。
「わふっ?」
「どうかしたのワンちゃん?」
「いえ、気のせいか街の人達が元気がないように見えます……いつもは夜でも賑やかな街なんですけど、今日は凄く静かに感じます」
既に夜中を迎えているとはいえ、過去に13番街に何度も訪れたワン子の話によると普段以上に活気が感じられず、街道を行き交う街の人々の表情も暗かった。それは外部から初めて訪れたルノとリディアでも分かるほどに異様な雰囲気であり、少し様子を調べる事にした。
「13番街です!!獣人国では街に番号が振り分けられているんです!!」
「へえ……覚えやすいね」
「それでどうやって侵入するのよ?お得意の空を飛ぶ魔法で近づいたら気付かれるわよ。人間と違って獣人族は感覚が鋭いんだから簡単には侵入できないわよ」
13番街に視線を向けるルノにリディアは一応は注意すると、ルノは上空の様子を伺い、既に夕暮れを超えて夜を迎えようとしていた。この暗闇を利用し、侵入する術を考える。
(俺だけなら適当に騒ぎを起こしている間に忍び込めるけど、ワン子ちゃんを連れて行かないとお父さんとお母さんの顔も分からないからな……リディアも放っておくと逃げ出しそうだし、離れるわけには行かないとなると……)
ワン子の両親を救い出すには全員で行動する必要があり、最初にルノは街に忍び込む前に乗物を作り出す。今回は特に自動車や飛行機のような凝った形状ではなく、大きめの桶のような巨大な氷の容器を作り出した。
「これで良し……じゃあ、中に入って」
「わうっ!?急に氷が出てきました!?」
「何よする気よ……まさか、これに乗って移動する気?」
「いいから乗ってよ。あ、ガー君はマダラバイソンの世話をお願いね」
『シャアッ』
「ウモォッ」
「なんで主人のあたしじゃなくてこいつの命令に従順になってるのよあんた達……」
ルノの命令にガーゴイルは敬礼を行い、マダラバイソンも頷く。その様子を見て2体の主人であるリディアは複雑そうな表情を抱くが、ここで文句を告げても仕方ないので黙ってルノの指示通りに動く。
「じゃあ、俺達はしばらく離れるけど、朝までには必ず戻ってくるからここで大人しくしててね」
『シャッ!!』
「ウモッ!!」
マダラバイソンに乗り込んだガーゴイルが敬礼を行うのを確認すると、氷塊の桶の中にワン子とリディアを乗せると、ルノは自分が乗り込む前に二人を桶の中で屈ませる。
「ほら、他の人には見えないようにしっかり隠れてね」
「わうっ……ちょっとワクワクしてきました」
「子供の頃に桶の中に隠れていた事を思い出すわ……嫌な思い出ね」
「よし、じゃあ出発するよ。俺が良いと言うまで立ち上がらないでね……闇夜!!」
2人が桶の中に屈むのを確認すると、ルノは両手を構えて桶の周囲に「闇夜」の魔法を発動させて黒霧で覆いこむ。3人が乗り込んだ氷桶が黒霧に包まれ、ゆっくりと上空へ浮上した。上手く夜空の暗闇に隠れており、注意深く観察しなければ空を飛ぶルノ達の姿は捕えられないだろう。
「多分、これなら外から見たら暗闇に紛れて俺達の姿は見えないと思うけど……」
「でも、この状態だと私達も何も見えないじゃない」
「今度は急に暗くなりました!?」
黒霧で包まれているので氷桶の中に存在するルノ達の視界も遮られてしまう。しかし、それも見越してルノは次の魔法を発動させる。
「大丈夫、氷塊の魔法で筒を作れば……ほら、これで見えると思う」
「……何よそれ?」
「望遠鏡……的な感じの物」
氷塊の魔法で望遠鏡を想像させる氷の筒を作り出すと、ルノは右目に押し当てて筒を氷桶の周囲に発生させている黒霧の外へ突き出す。流石に本物の望遠鏡のような遠方の景色を映し出す能力は持たないが、元々ルノは「遠視」と呼ばれる視力を強化させる技能スキルを習得しており、筒の中から見える景色を確認しながら13番街へ接近する。
「うん、今のところは俺達に気付いている様子はないけど、念のためにもうちょっと浮上するよ」
「本当に何でもありねあんた……」
「ルノのお兄さんは凄いですっ!!」
「あ、ごめん。そろそろ静かにしてくれる?音で気付かれるかもしれないから……」
定期的に氷望遠鏡で現在位置を把握し、遂には防壁を通過して街の中心街の上空まで移動すると、ルノは魔法を解除してワン子とリディアを抱えた状態で大きな建物の屋根の上へ着地した。
「よし、新入成功」
「あいたっ!?ちょっと、優しく下ろしなさいよ……!?」
「わううっ……高い所は少し苦手です」
着地の際にお尻をぶつけたリディアは軽く悲鳴を上げ、ワン子はルノの右肩にしがみ付いたまま下りない。街の様子を確認する限りでは他の人間に見つかった様子はなく、無事に潜入に成功したといえる。しかし、街道の様子を見てワン子は不思議そうに首を傾ける。
「わふっ?」
「どうかしたのワンちゃん?」
「いえ、気のせいか街の人達が元気がないように見えます……いつもは夜でも賑やかな街なんですけど、今日は凄く静かに感じます」
既に夜中を迎えているとはいえ、過去に13番街に何度も訪れたワン子の話によると普段以上に活気が感じられず、街道を行き交う街の人々の表情も暗かった。それは外部から初めて訪れたルノとリディアでも分かるほどに異様な雰囲気であり、少し様子を調べる事にした。
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