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獣人国

住民奪還計画

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「でも君が家の中に隠れて居たのはどれくらい前なの?」
「えっと……昨日の夜から隠れてました」
「あら?意外と時間が掛かってないのね……でも、まだ臭いなんて残ってるのかしら?」
「大丈夫です!!まだ微かですけど臭いを感じます!!」


時間的には兵士達が住民達を連れ出してから半日ほどしかけいかしておらず、犬型の獣人族の中でも特に嗅覚が鋭いのかワン子は兵士の臭いを辿る事が出来るという。しかし、明らかに反抗して殺された住民の死体も存在する事を考えても彼女だけを向かわせるのは危険だった。


「ワン子ちゃんだけだと心配だから俺達も行くよ。いざというときはこのお姉さんが盾になってくれるからね」
「え、本当ですか?」
「本当じゃないわよ!!何で私を囮に使おうとするのよ!?」
『シャアアッ……』


ルノの言葉に憤慨するリディアに対し、ガーゴイルが日頃の行動が悪いせいだとばかりに鳴き声を上げる。結局はワン子だけを送り込むわけには行かず、彼女の両親と再会させるまでの間はルノ達も同行する事に決めた。


「ワン子ちゃん……いや、ワンちゃんでいい?」
「いいですよ!!友達からもそう呼ばれています!!」
「本当に犬みたいな呼び方ね……いじめられているんじゃないでしょうね」
「がうっ!!そんな事ないです!!」


リディアの言葉に怒ったようにワン子は犬耳と尻尾を震わせるが、小型犬が興奮しているようにしか見えず、全く御枠はない。保護良くをそそられる外見にルノはワン子の頭を撫でやり、彼女の鼻を頼りに村の住民を連れ去ったという兵士達の追跡を行う。


「ウモォッ!!」
「わうっ!?マダラバイソンが村の中に!?」
「あ、大丈夫。こいつは俺達の味方だから……こら、小さい子を怖がらせるんじゃないよ!!」
「あ、大丈夫です。村でも飼ってたので怖くはありませんから」


異変を察知したのか村の外に待機させていたマダラバイソンが姿を現し、それを見たワン子は驚く。だが、村の中でもマダラバイソンを飼育していたので彼女は恐れた様子も見せずにマダラバイソンの身体に触れる。


「わふぅ~凄く滑らかな毛並みです」
「モォッ?」
「それにおっきくて肉もいっぱいついてます……じゅるりっ」
「ウモォッ!?」
「凄いわね、マダラバイソンを怯えさせたわよ……意外と肉食系なのかもしれないわ」
「肉食系女子か……将来性は高そうだね」


涎を垂らして見つめてくるワン子にマダラバイソンは警戒したように距離を離すが、移動の際にはマダラバイソンに乗り込むしかないのでリディアはワン子の身体を持ち上げて背中に乗り込む。


「じゃあ、行くわよ。あんたの鼻だけが頼り何だからね」
「分かりました!!すんすんっ……こっちです!!」


マダラバイソンに乗り込んだワン子は鼻を鳴らしながら連れ去れた住民と兵士達の臭いを探索し、道案内を務める。ルノもマダラバイソンに乗り込み、ガーゴイルは空を飛んで周囲の警戒を行いながらルノ達は村を出発した――




――それから数十分後、臭いを追って辿り着いたのはルノ達が訪れた港町ではなく、村から少し離れた場所に存在した別の街に到着した。こちらの方は煉瓦製の頑丈な防壁で周囲が取り囲まれており、獣人国の軍隊も滞在しているのか防壁の周囲には数多くの警備兵が待機していた。


「くんくんっ……臭いを辿るとあの街に入ったのは間違いありません」
「街か……このまま俺達が向かっても入れてくれるかな?」
「無理ね。ガーゴイルに偵察させたけど、どうやら厳重な警戒態勢に入っているわ。身分証も持っていない私達が入ろうとしても門前払いか、あるいは拘束されるわ」
「ウモォッ……」


街から少し離れた草原の丘からルノ達は城門を警護する大量の兵士の様子を伺い、リディアが送り出したガーゴイルが空から偵察を行った限りでは警備は厳しく、このままでは中に入れないらしい。ルノとリディアは密入国者同然なので身分証も所持しておらず、当然だがワン子もそのような物は持ち合わせていない。


「それにしてもあいつら随分と警戒しているわね……この街に何かあるのかしら?」
「どうにか忍びこめない?」
「防壁は兵士達が見張っているから侵入は難しいわね。一流の暗殺者でも忍び込むのには苦労しそうね……あんたが殺した私のオオツチトカゲがいれば地中から侵入できたかもしれないのに」
「うるさいな……今更蒸し返さないでよ」


リディアがからかうようにルノに街の警備状態を告げると、目立たずに内密に忍び込む事は難しく、だからといって力業で入り込むのは避けたい。兵士達が住民を殺害し、生き残った人間を連れ去ったという理由を知ってルノも獣人国の軍隊に不満を抱いたが、それでも他国の地で目立つような真似は避けたい。


(下手に目立つと俺の正体がばれた時に帝国の立場が悪くなるかもしれないし……どうやって入り込もう)


今回はいつもの力押しではなく、慎重に行動する必要があると考えたルノはもうすぐ日が暮れる事を確認し、ある作戦を思いついた。
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