最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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獣人国

水竜

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「ええい!!一体何の騒ぎだ!!」
「ガルル様、危険ですのでお下がりください!!」
「うるさい!!ウォンは何処だ!?」


船上に存在したガルルは全身に海水を浴びてしまい、怒り狂いながら騒動の原因を問い質すためにウォンの姿を探す。自分を避難させようとする兵士を振り払い、ガルルは湾内に存在するウォンを発見して怒鳴りつけた。


「そこに居たのかウォン!!これは何の騒ぎだ?」
「ガルル様……敵襲です。あの男が攻撃を仕掛けてきました」
「男だと……何だあれは!?」


ガルルはウォンが指差す方向に視線を向けると、ガーゴイルを背負いながら飛行するルノの姿を発見して目を見開く。空を飛ぶ人間など見た事がなく、ガルルは何者なのかウォンに問い質す。


「や、奴は何者だ!?」
「分かりません……しかし、ガーゴイルを解き放って港を調査し、先ほどの水飛沫も奴の仕業です」
「という事は敵と言う事か……おのれ!!」


先程自分に襲い掛かった水飛沫の事を思い返し、ガルルは怒りを抑えきれずに船の先端へ移動を行うと、海面に視線を向ける。海中で巨大な物体が蠢く光景を確認すると、ガルルは船に兵士達に命令を下す。


「魔物使い共を呼び出せ!!水竜を解き放ち、奴を殺せ!!」
「水竜を……ですか!?」
「よ、よろしいのですか!?」
「いいから早くやれ!!」


ガルルが兵士達を怒鳴りつけると、彼等は慌てて船内に配備している魔物使いの職業の兵士を呼び出し、海中に潜む水竜を解き放つ――




――その一方でガーゴイルを背負ったルノは無事に氷潜水艦に到着し、リディアに迎えられながら避難を終える。ガーゴイルを無事に連れ出してきたルノを見てリディアは安堵の息を吐き、すぐにガーゴイルの頭を叩く。


「この馬鹿!!あんまり心配させるんじゃないわよ!!」
『シャアアッ……』
「まあまあ……無事だったんだからさ」


主人に叱りつけられたガーゴイルは気落ちしたように跪くが、ルノがリディアを宥める。そもそもガーゴイルが捕まった理由はリディアが安易に危険な場所へ向かわせた事もあり、ガーゴイルだけを責めることは出来ない。


「それよりも情報は掴めたの?港の方で情報は集められた?」
「……仕方ないわね、今回はお仕置きは無しにしてあげるわ。それと……うちの下僕を助けてくれてありがとう」
「え、あっ……うん」


初めて真面にリディアからお礼を告げられた事にルノは戸惑うが、彼女は気恥ずかしそうに頬を赤く染め、誤魔化すように自分が集めた情報を伝えようとした。


「じゃあ、何から話せばいいかしらね……とりあえず、あいつらの正体は獣人国の軍隊で間違いないわ」
「やっぱりか……でも、どうしてこんな場所で軍船を集めているの?」
「兵士達の話を聞いた限り、どうやら船を集めているのはこの国の第一王子らしいわ。どうやら先代の国王が死んだ事で子供同士が王座を巡って争っているようね」
「王子?」
「獣人国には2人の王子がいるのよ。名前は確か兄貴の方がガルル、弟の方がガウね。妹の方は……ワン子だったかしら?」
「妹さんがめっちゃ可愛い名前なのが気になる」


リディアはガーゴイルを利用して聞き集めた情報と自分の推測を交えて説明を行い、港を占拠している軍隊が第一王子のガルルと獣人国の大将軍のウォンが集めた事を伝える。


「あいつらは第一王子のガルルが従えている大将軍のウォンとかいう奴が集めた軍隊よ。どうやら逃げた第二王子を追うために船を集めているようね」
「第二王子を追いかけているという事は……殺すつもり?」
「王座を継ぐには邪魔な相手だと判断したんじゃないの?別に兄弟同士の争いなんて珍しくもないでしょ」
「それは……そうかもしれないけど」


平和な日本に暮らしているルノには理解し難いが、先王の死後に王座を賭けて実の兄弟同士が殺し合う事はよくある事であり、リディアは注意を行う。


「あんたがお人好しなのは理解しているけど、間違っても今回の兄弟同士の抗争に参加しようと考えるんじゃないわよ?ここはあんたの国じゃないんだから、他国の面倒事に積極的に関わらろうとしないでよ?」
「それは分かっているけど……」
「とにかく!!私達はさっさと帝国に戻るわよ。ここからすぐに離れて、適当な場所に立ち寄って身体を休めましょう。持ち込んだ食料を売り出せばどうにか当分の路銀ぐらい簡単に集まるでしょ?」
「……分かった」


リディアの言葉は正論であり、他国の内乱に関わってはいけないことはルノも理解している。しかし、このまま自分が見過ごせば大勢の人間が被害を受けるのではないかと考えてしまうが、だからといって自分に何が出来るのか分からない。


(リディアの言う通りなんだろうけど……)


この状況で他国の争いごとに参加する事は正しい事ではないという事はルノも理解している。それでも自分に出来る事がないのかと考えてしまい、思い悩む。
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