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帝国の危機
土竜の経験石
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「ふうっ……どうにか運び込めました」
「あの、これは一体?」
「土竜の経験石よ」
「土竜!?」
予想外の言葉に直央は驚きの声を上げ、リーリスは思い出しように頷く。過去にルノが倒した土竜は3体存在し、その内の1体の経験石がドルトンの元へ届ていた事が発覚する。
「そういえば前にルノさんが倒した土竜の死骸から経験石が既に抜き取られていた形跡があったんですけど、こちらの店に渡していたんですね」
「ええ、最初に訪れた時は驚きましたよ。この経験石を軽々と片手で持ち運んでくれたルノさんを見た時は卒倒しかけました」
「これを片手で……」
基本的に人間よりも腕力が秀でている小髭族と吸血鬼の二人がかりで運び込んだ経験石を軽々と運び出すルノの腕力に驚けばいいのか、貴重な経験石を二つも無料でドルトンに渡したルノのお人好しに呆れればいいのか、どちらにしろルノがドルトンとの関係をどれほど大切にしているのかが伺える。
「それにしても意外と小さいんですね。重量はありそうですけど……」
「いや、元々はもっと大きな岩の塊だったのよ。だけど、あの坊やが地面に落とした時に外殻の部分が破壊されて中身が出てきたのよ」
「うわ、これ何十キロあるんですか?重たくて持ち切れない……」
試しに直央が持ち上げようとするが、彼の腕力だけでは経験石を従数センチほど持ち上げるのが限界だった。しかも非常に硬く、普通の岩の数十倍の硬度を誇るという。
「こちらの経験石も受け取ったのはいいのですが、正直に言えばあまりに重すぎて持ち運びも難しいのです。今のところは漬物石の代わりに利用させてもらっていますが……」
「ちょっと!!これ、価値にしたら金貨何百枚すると思っているんですか!?それを漬物石代わりって……どんだけ無駄な使い方をしてるんですか!!」
「そう言われてもこっちも困ってんのよ!!火竜の経験石はまあ、店の知名度を広げる意味も込めて店にならべているけど、こっちの方は使い道に困ってるのよ」
「どうしてですか?火竜の経験石のように店頭に並べるのは駄目なのですか?」
「その事で前に少し困った事がありまして……」
元々は土竜の経験石も火竜の経験石と同様に店頭に設置するつもりだったが、実はドルトンの店に竜種の経験石が2つも流れ込んだという話を聞きつけて大量の冒険者が押し寄せてきた事がある。ドルトンはどちらの経験石も他人に売却するつもりはなかったが、過去に経験石を狙って何度か強盗に襲われた事があるという。
「2つも竜種の経験石が存在すると噂が広まった頃から何度かうちの店に強盗や恐喝を行う輩が現れるようになりました。まあ、パイアさんのお陰で事なきを得ましたが……」
「あの時は本当に大変だったのよ。おじ様を狙ってくる奴等を片っ端からぶっ飛ばしてやったわ」
「そんな大変な事に遭ってたんですか?全然知りませんでした……」
「丁度ルノ様が一時的に帝国を離れていた時期に起きた出来事ですから仕方ありません。一応は我々も帝国兵の方々に頼んで見回りを強化して貰ったり、冒険者ギルドに依頼して腕の立つ冒険者の方々を護衛として雇ったのですが、やはり竜種の経験石となると狙う輩も多く……」
「なるほど、それで盗難に遭った際にせめて1つでも守るために隠してたんですね」
「はい、地下の倉庫で漬物石として利用していました。といっても外見でばれないように偽装はしていましたが……」
「なるほど……泥棒もまさか貴重な経験石が漬物石代わりに使われているとは思わないでしょうね」
最初はふざけているのかと思ったが、ドルトンも考えた上での行動だと知ってリーリスも納得したが、それでも国宝級の価値を誇る代物を漬物石の代用品として扱っていた事は呆れてしまう。
「まあ、事情は分かりました。ですけど、どうして私達に土竜の経験石の存在を知らせてくれたんですか?」
「実は昔、冒険者の方に面白い話を聞いた事があるのです。その話と言うのが粉砕機を利用しないで経験石を破壊する方法なんです」
「そんな方法があるのですか!?」
予想外のドルトンの言葉にジャンヌは驚き、基本的に経験石というのは粉砕機を使用して破壊するのが一般的なため、他に破壊する方法があるなど考えた事もない。だが、ドルトンは常連の冒険者から経験石が複数存在すれば粉砕機を利用せずに経験石を破壊する方法がある事を教わる。
「私の店に通っている冒険者の方の中には駆け出しの方も多いのですが、高額な粉砕機を購入出来ずに仕方なく入手した経験石を私の店で売却する方が居ました。しかし、その方が最近になって経験石を全く持ち込まなくなったのです。不思議に思った私は経験石を持ち込まなくなった理由をそれとなく尋ねた所、面白い方法で経験石を破壊する方法を教えてくれました」
「焦らしますね……どんな方法ですか?」
ドルトンの言葉にリーリスは急かすように答えを問うと、彼は笑顔を浮かべて上を指差す。不思議に思ったリーリス達は天井を見上げるが特に気になる事はなく、そんな彼女達を見てドルトンは笑い声を上げた。
「落とすのです。頑丈な経験石が破壊できる程の高度から錘を吊るして一緒に落とす事で地面に衝突させて破壊するのです」
『……ああっ!!』
あまりにも簡単で単純明快な方法に全員が納得した声を上げ、確かにこの方法ならば粉砕機を利用せずとも破壊できるかもしれない。
「あの、これは一体?」
「土竜の経験石よ」
「土竜!?」
予想外の言葉に直央は驚きの声を上げ、リーリスは思い出しように頷く。過去にルノが倒した土竜は3体存在し、その内の1体の経験石がドルトンの元へ届ていた事が発覚する。
「そういえば前にルノさんが倒した土竜の死骸から経験石が既に抜き取られていた形跡があったんですけど、こちらの店に渡していたんですね」
「ええ、最初に訪れた時は驚きましたよ。この経験石を軽々と片手で持ち運んでくれたルノさんを見た時は卒倒しかけました」
「これを片手で……」
基本的に人間よりも腕力が秀でている小髭族と吸血鬼の二人がかりで運び込んだ経験石を軽々と運び出すルノの腕力に驚けばいいのか、貴重な経験石を二つも無料でドルトンに渡したルノのお人好しに呆れればいいのか、どちらにしろルノがドルトンとの関係をどれほど大切にしているのかが伺える。
「それにしても意外と小さいんですね。重量はありそうですけど……」
「いや、元々はもっと大きな岩の塊だったのよ。だけど、あの坊やが地面に落とした時に外殻の部分が破壊されて中身が出てきたのよ」
「うわ、これ何十キロあるんですか?重たくて持ち切れない……」
試しに直央が持ち上げようとするが、彼の腕力だけでは経験石を従数センチほど持ち上げるのが限界だった。しかも非常に硬く、普通の岩の数十倍の硬度を誇るという。
「こちらの経験石も受け取ったのはいいのですが、正直に言えばあまりに重すぎて持ち運びも難しいのです。今のところは漬物石の代わりに利用させてもらっていますが……」
「ちょっと!!これ、価値にしたら金貨何百枚すると思っているんですか!?それを漬物石代わりって……どんだけ無駄な使い方をしてるんですか!!」
「そう言われてもこっちも困ってんのよ!!火竜の経験石はまあ、店の知名度を広げる意味も込めて店にならべているけど、こっちの方は使い道に困ってるのよ」
「どうしてですか?火竜の経験石のように店頭に並べるのは駄目なのですか?」
「その事で前に少し困った事がありまして……」
元々は土竜の経験石も火竜の経験石と同様に店頭に設置するつもりだったが、実はドルトンの店に竜種の経験石が2つも流れ込んだという話を聞きつけて大量の冒険者が押し寄せてきた事がある。ドルトンはどちらの経験石も他人に売却するつもりはなかったが、過去に経験石を狙って何度か強盗に襲われた事があるという。
「2つも竜種の経験石が存在すると噂が広まった頃から何度かうちの店に強盗や恐喝を行う輩が現れるようになりました。まあ、パイアさんのお陰で事なきを得ましたが……」
「あの時は本当に大変だったのよ。おじ様を狙ってくる奴等を片っ端からぶっ飛ばしてやったわ」
「そんな大変な事に遭ってたんですか?全然知りませんでした……」
「丁度ルノ様が一時的に帝国を離れていた時期に起きた出来事ですから仕方ありません。一応は我々も帝国兵の方々に頼んで見回りを強化して貰ったり、冒険者ギルドに依頼して腕の立つ冒険者の方々を護衛として雇ったのですが、やはり竜種の経験石となると狙う輩も多く……」
「なるほど、それで盗難に遭った際にせめて1つでも守るために隠してたんですね」
「はい、地下の倉庫で漬物石として利用していました。といっても外見でばれないように偽装はしていましたが……」
「なるほど……泥棒もまさか貴重な経験石が漬物石代わりに使われているとは思わないでしょうね」
最初はふざけているのかと思ったが、ドルトンも考えた上での行動だと知ってリーリスも納得したが、それでも国宝級の価値を誇る代物を漬物石の代用品として扱っていた事は呆れてしまう。
「まあ、事情は分かりました。ですけど、どうして私達に土竜の経験石の存在を知らせてくれたんですか?」
「実は昔、冒険者の方に面白い話を聞いた事があるのです。その話と言うのが粉砕機を利用しないで経験石を破壊する方法なんです」
「そんな方法があるのですか!?」
予想外のドルトンの言葉にジャンヌは驚き、基本的に経験石というのは粉砕機を使用して破壊するのが一般的なため、他に破壊する方法があるなど考えた事もない。だが、ドルトンは常連の冒険者から経験石が複数存在すれば粉砕機を利用せずに経験石を破壊する方法がある事を教わる。
「私の店に通っている冒険者の方の中には駆け出しの方も多いのですが、高額な粉砕機を購入出来ずに仕方なく入手した経験石を私の店で売却する方が居ました。しかし、その方が最近になって経験石を全く持ち込まなくなったのです。不思議に思った私は経験石を持ち込まなくなった理由をそれとなく尋ねた所、面白い方法で経験石を破壊する方法を教えてくれました」
「焦らしますね……どんな方法ですか?」
ドルトンの言葉にリーリスは急かすように答えを問うと、彼は笑顔を浮かべて上を指差す。不思議に思ったリーリス達は天井を見上げるが特に気になる事はなく、そんな彼女達を見てドルトンは笑い声を上げた。
「落とすのです。頑丈な経験石が破壊できる程の高度から錘を吊るして一緒に落とす事で地面に衝突させて破壊するのです」
『……ああっ!!』
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