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帝国の危機
魔物の力を借りる
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「リーリスさん、一つ聞きたい事があるんですけど……このスラミン君達は魔物なんですよね」
「ぷるんっ?」
「え?……そうですけど?」
スラミンを抱えながら妙な質問をしてきた直央にリーリスが不思議そうな表情を浮かべるが、直央は真面目な表情で抱きかかえたスラミンや周囲に待機する黒狼達に視線を向ける。
「この子達はルノ君が飼っている魔物なんですよね?」
「まあ、そうですね。今は私が面倒を見ていますけど……」
「でも、魔物は普通は簡単に人間には懐かないんじゃないですか?」
エルフ王国で暮らしていた直央は魔物の危険性を教わっており、この世界に生息する殆どの魔物は人種と敵対していると言っても過言ではない。無論、中にはスライムのように人畜無害な種も存在するが、基本的には魔物の殆どは人間の事は餌として認識している。
「そうですね。大抵の魔物は人種を敵として認識しているのは間違いないですね。でも、環境によっては人間に懐く事もあります。この子達はルノさんが連れてきた魔物ですけど、ルノさんの言う事をよく聞いてくれるいい子達です」
「ウォンッ!!」
「ブモォッ……」
リーリスの言葉に同意するようにルウとミノが鳴き声を上げ、他の魔獣達も頷く。その様子を見て直央は彼等がルノやリーリスに良く懐いている事を再確認すると、ある質問を行う。
「確か職業の中には魔物を操作する職もあると聞いた事があるけど……えっと、魔物使いだっけ?」
「ああ、なるほど……別に魔物使いの職業でなくとも魔物と心を通わせる事は出来ますよ」
「じゃあ、ルノ君はどうやってこの子達と飼うようになったのか教えて欲しいんですけど……」
「……もしかして直央さん、まさかとは思いますけど魔物を仲間にしようと考えています?」
直央の質問にリーリスは彼が何を考えているのかを予測し、ある結論に至る。現状、他の人間から協力を得られるのは難しいと判断した直央は昆虫種に対抗するため、自分もルノに習って強力な魔獣を仲間に出来ないのかを考えていた。
「やっぱり、難しいですかね?でも、もしも魔物を仲間にする方法があるなら試してみたいんですけど……」
「いや、はっきりと言いますけど無理だと思いますよ?魔物はそう簡単に人間に懐く存在じゃないんです。それにルウ達がルノさんに懐いたのはルノさんの人外離れした力と人柄に惹かれたからです」
魔物使いの職業の人間ではないルノがたくさんの魔獣を従えさせる事に成功したのは彼の持つ「力」が大きく関係しており、ルウ達がルノに逆らわずに従っているのはルノが絶対的な強者であると認識しているからに過ぎない。ロプスやスラミンはともかく、魔獣の森に暮らしていたルウ達がルノに従ったのは自分達では到底敵わない存在だと本能で察し、自分達の主人に相応しいと判断したからこそ彼等はルノに懐いたのだ。
「元々優しい性格のロプスとスラミンはともかく、ルウやミノはルノさんの圧倒的な力を見せつけられて懐いたんです。ですけど、私達にそんな真似は出来ませんし、そもそも魔物を仲間にする方法なんて私達は持ち合わせていませんよ」
「うっ……やっぱり無理ですか?」
「絶対に不可能……とまでは言いきりませんけど、限りなく不可能に近い考えですね。そもそも昆虫種と対抗できるだけの力を持つ魔物自体が滅多に存在しないんです。仮に昆虫種を圧倒する魔物を見つけたとしても上手く手懐げる方法が直央さんにはあるんですか?」
「う~ん……」
突拍子もない考えとは本人も自覚していたいのか、直央はリーリスの言葉を聞いても何も言い返せない。しかし、このまま討伐軍と合流してエルフ王国に向かったとしても王国を必ず救い出せる保証はなく、どうにか昆虫種を圧倒できる強力な魔物を従えさせる方法はないのかを考える。
「仮に直央さんの考えた事を実行する場合、私達ではなく、本当の魔物使いの職業の人間を仲間に引き入れた方が良いでしょうね。でも、魔物使いの職業に就いているからと言って確実に魔物を従えさせる手段があるとは限りません」
「え?そうなんですか?」
「直央さんはどうも誤解しているようですが、魔物使いが強力な魔物を従えるにはそれ相応の危険を負う必要があるんです。自分の力量よりも遥かに上回る魔物は従えさせられませんし、仮に仲間に出来たとしても長期間の調教を行わなければ自由自在に従える事も難しいです。そもそも魔物使いの職業の人間自体が滅多に存在しませんからね」
「そうか……」
勇者である直央も流石に暗殺者系統以外の職業の能力は覚えられず、SPを消費して魔物使いのスキルを習得する事は出来ない。従って彼の提案は実行できないと諦めかけた時、馬車の方から物音が響いた。
※明日からは2話投稿になります。この章が終るまでは2話投稿です。
「ぷるんっ?」
「え?……そうですけど?」
スラミンを抱えながら妙な質問をしてきた直央にリーリスが不思議そうな表情を浮かべるが、直央は真面目な表情で抱きかかえたスラミンや周囲に待機する黒狼達に視線を向ける。
「この子達はルノ君が飼っている魔物なんですよね?」
「まあ、そうですね。今は私が面倒を見ていますけど……」
「でも、魔物は普通は簡単に人間には懐かないんじゃないですか?」
エルフ王国で暮らしていた直央は魔物の危険性を教わっており、この世界に生息する殆どの魔物は人種と敵対していると言っても過言ではない。無論、中にはスライムのように人畜無害な種も存在するが、基本的には魔物の殆どは人間の事は餌として認識している。
「そうですね。大抵の魔物は人種を敵として認識しているのは間違いないですね。でも、環境によっては人間に懐く事もあります。この子達はルノさんが連れてきた魔物ですけど、ルノさんの言う事をよく聞いてくれるいい子達です」
「ウォンッ!!」
「ブモォッ……」
リーリスの言葉に同意するようにルウとミノが鳴き声を上げ、他の魔獣達も頷く。その様子を見て直央は彼等がルノやリーリスに良く懐いている事を再確認すると、ある質問を行う。
「確か職業の中には魔物を操作する職もあると聞いた事があるけど……えっと、魔物使いだっけ?」
「ああ、なるほど……別に魔物使いの職業でなくとも魔物と心を通わせる事は出来ますよ」
「じゃあ、ルノ君はどうやってこの子達と飼うようになったのか教えて欲しいんですけど……」
「……もしかして直央さん、まさかとは思いますけど魔物を仲間にしようと考えています?」
直央の質問にリーリスは彼が何を考えているのかを予測し、ある結論に至る。現状、他の人間から協力を得られるのは難しいと判断した直央は昆虫種に対抗するため、自分もルノに習って強力な魔獣を仲間に出来ないのかを考えていた。
「やっぱり、難しいですかね?でも、もしも魔物を仲間にする方法があるなら試してみたいんですけど……」
「いや、はっきりと言いますけど無理だと思いますよ?魔物はそう簡単に人間に懐く存在じゃないんです。それにルウ達がルノさんに懐いたのはルノさんの人外離れした力と人柄に惹かれたからです」
魔物使いの職業の人間ではないルノがたくさんの魔獣を従えさせる事に成功したのは彼の持つ「力」が大きく関係しており、ルウ達がルノに逆らわずに従っているのはルノが絶対的な強者であると認識しているからに過ぎない。ロプスやスラミンはともかく、魔獣の森に暮らしていたルウ達がルノに従ったのは自分達では到底敵わない存在だと本能で察し、自分達の主人に相応しいと判断したからこそ彼等はルノに懐いたのだ。
「元々優しい性格のロプスとスラミンはともかく、ルウやミノはルノさんの圧倒的な力を見せつけられて懐いたんです。ですけど、私達にそんな真似は出来ませんし、そもそも魔物を仲間にする方法なんて私達は持ち合わせていませんよ」
「うっ……やっぱり無理ですか?」
「絶対に不可能……とまでは言いきりませんけど、限りなく不可能に近い考えですね。そもそも昆虫種と対抗できるだけの力を持つ魔物自体が滅多に存在しないんです。仮に昆虫種を圧倒する魔物を見つけたとしても上手く手懐げる方法が直央さんにはあるんですか?」
「う~ん……」
突拍子もない考えとは本人も自覚していたいのか、直央はリーリスの言葉を聞いても何も言い返せない。しかし、このまま討伐軍と合流してエルフ王国に向かったとしても王国を必ず救い出せる保証はなく、どうにか昆虫種を圧倒できる強力な魔物を従えさせる方法はないのかを考える。
「仮に直央さんの考えた事を実行する場合、私達ではなく、本当の魔物使いの職業の人間を仲間に引き入れた方が良いでしょうね。でも、魔物使いの職業に就いているからと言って確実に魔物を従えさせる手段があるとは限りません」
「え?そうなんですか?」
「直央さんはどうも誤解しているようですが、魔物使いが強力な魔物を従えるにはそれ相応の危険を負う必要があるんです。自分の力量よりも遥かに上回る魔物は従えさせられませんし、仮に仲間に出来たとしても長期間の調教を行わなければ自由自在に従える事も難しいです。そもそも魔物使いの職業の人間自体が滅多に存在しませんからね」
「そうか……」
勇者である直央も流石に暗殺者系統以外の職業の能力は覚えられず、SPを消費して魔物使いのスキルを習得する事は出来ない。従って彼の提案は実行できないと諦めかけた時、馬車の方から物音が響いた。
※明日からは2話投稿になります。この章が終るまでは2話投稿です。
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