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帝国の危機
スープ
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――結果から言えば獣人国に出向いて有力な冒険者に助力を求めるという手段は中止となり、日の国と獣人国の対立という新たな問題をリーリスと直央は抱える事になった。エルフ王国の救援どころかこのままでは帝国も危険に晒される可能性が高くなり、二人はどうするべきか思い悩む。
「本当にどうしましょうかね……ここにきて獣人国と日の国にまで問題が生じるなんて完全に予想外ですよ」
「なんか、すいません……俺達のせいで色々と迷惑を掛けてしまって」
「別に直央さんが悪いわけでもないし、そもそも帝国としてもエルフ王国は重要な存在なんです。仮に直央さんが救援を求めなくても遅かれ早かれ今の事態に陥っていたはずです」
直央としては他国の人間を巻き込んだ事に後ろめたさを感じるが、リーリスとしてはこれまでの出来事が全て魔王軍の策略としか思えず、仮に直央が帝国に訪れなくてもエルフ王国への救援のために帝国は動いていただろう。そもそも直央が帝国に訪れていなければ病で苦しんでいる王女の容態も悪化して亡くなっていた可能性もある。
ちなみに二人が現在滞在しているのは日の国の都からそれほど離れていない場所に存在する山の麓に存在し、周囲を魔獣達に見張らせて食事も兼ねて休憩を行う。しかし、現状の問題に悩まされる直央はリーリスが作ったスープを口にする事もせず、頭を抑えたまま考え込む。
「ですけど、本当に八方塞がりですね……まるで私達の考えを先読みしたように行動が潰されている感じです」
「あの……例えばなんですけど、他の国に救援を求めるというのは……」
「無理ですね。残っている国と言えば巨人国ぐらいですけど、巨人国とエルフ王国の間には帝国の領地です。第一に巨人国の協力を得られても巨人国からエルフ王国まで軍隊が移動するのに数か月はかかります」
「それじゃあ、他に頼れる冒険者に協力を求めるのは……」
「それも難しいです。S級の冒険者ならともかく、普通の冒険者だと大きな戦力になるとは思えませんし、そもそも帝国領地の有力な冒険者は既に討伐軍に収集されています」
「なら……本当に何も出来ないんですか?」
リーリスの言葉に直央は落ち込み、ここまで来る間の行動が全て水の泡と化したのかと落ち込みかけるが、そんな彼にリーリスは慰めの言葉を掛ける。
「まあ、落ち込んでいてもしょうがないですよ。こうなったら討伐軍と合流してやれるだけやりましょう」
「でも、このまま討伐軍がエルフ王国に到着しても勝てる保証はないんですよね」
「……そうですね。エルフ王国の軍隊ですら敵わなかった存在に帝国が急遽呼び集めた1万と数千程度の軍勢で勝てる保証はありません。だけど、私達に出来る手段はもうないんです」
帝国の討伐軍がエルフ王国の領地へ到達しても問題は山積みであり、まず第一にエルフ王国の軍隊を打ち破るほどの力を持つ昆虫種の大群を討伐軍だけで殲滅できるのか、そもそもエルフ王国が未だに持ち応えているのかも不明のため、到着した時には既に昆虫種にエルフ王国が滅ぼされている可能性も否定できない。
だが、幾ら悩み詰めた所で現状の二人がやれるだけの事は全て行っており、他に方法が思いつかない限りは道を引き返して討伐軍と合流し、エルフ王国を救うために昆虫種の大群と戦わねばならない。しかし、直央は本当に自分達が何かやり残している事がないのかを考える。
(他の国には協力は求められないし、ルノ君も見つからない……でも、本当に何もないのか?エルフ王国を救う方法は……)
名案が思い付かない直央は頭を抱えたまま動かず、折角リーリスが渡してくれたスープも冷めてしまう。そんな彼を見て、馬車の中からスラミンが飛び出して彼の頭の上に乗り込む。
「ぷるるんっ!!」
「うわ、何だっ!?ど、どうしたのスラミン君?」
「ぷるぷるっ……」
スラミンは直央の頭の上から下りると、直央が口にしていないスープの皿を示す。食べ物を粗末にするなとばかりにスラミンは直央の周りを跳ねまわり、そんな彼の姿を見て直央は苦笑いを浮かべる。
「ああ、……リーリスさんが作ってくれたスープを食べない事に怒っていたのか。ごめんね、折角のスープを冷ますところだった」
「ぷるぷるっ!!」
謝るのは自分ではなく、料理を作ってくれたリーリスに謝れとばかりにスラミンは直央の頭の上を飛び跳ねると、直央は慌ててリーリスに頭を下げる。
「ごめん、リーリスさん……折角作ってくれた料理なのに」
「いえ、別に気にしないで下さい。直央さんの気持ちを考えると怒るきにもなれませんから……」
「ぷるぷるっ……」
リーリスに改めて謝罪すると直央はスープが冷める前に味わおうとした時、不意に視界に入ったスラミンを見て直央はある事に気が付いた。
「本当にどうしましょうかね……ここにきて獣人国と日の国にまで問題が生じるなんて完全に予想外ですよ」
「なんか、すいません……俺達のせいで色々と迷惑を掛けてしまって」
「別に直央さんが悪いわけでもないし、そもそも帝国としてもエルフ王国は重要な存在なんです。仮に直央さんが救援を求めなくても遅かれ早かれ今の事態に陥っていたはずです」
直央としては他国の人間を巻き込んだ事に後ろめたさを感じるが、リーリスとしてはこれまでの出来事が全て魔王軍の策略としか思えず、仮に直央が帝国に訪れなくてもエルフ王国への救援のために帝国は動いていただろう。そもそも直央が帝国に訪れていなければ病で苦しんでいる王女の容態も悪化して亡くなっていた可能性もある。
ちなみに二人が現在滞在しているのは日の国の都からそれほど離れていない場所に存在する山の麓に存在し、周囲を魔獣達に見張らせて食事も兼ねて休憩を行う。しかし、現状の問題に悩まされる直央はリーリスが作ったスープを口にする事もせず、頭を抑えたまま考え込む。
「ですけど、本当に八方塞がりですね……まるで私達の考えを先読みしたように行動が潰されている感じです」
「あの……例えばなんですけど、他の国に救援を求めるというのは……」
「無理ですね。残っている国と言えば巨人国ぐらいですけど、巨人国とエルフ王国の間には帝国の領地です。第一に巨人国の協力を得られても巨人国からエルフ王国まで軍隊が移動するのに数か月はかかります」
「それじゃあ、他に頼れる冒険者に協力を求めるのは……」
「それも難しいです。S級の冒険者ならともかく、普通の冒険者だと大きな戦力になるとは思えませんし、そもそも帝国領地の有力な冒険者は既に討伐軍に収集されています」
「なら……本当に何も出来ないんですか?」
リーリスの言葉に直央は落ち込み、ここまで来る間の行動が全て水の泡と化したのかと落ち込みかけるが、そんな彼にリーリスは慰めの言葉を掛ける。
「まあ、落ち込んでいてもしょうがないですよ。こうなったら討伐軍と合流してやれるだけやりましょう」
「でも、このまま討伐軍がエルフ王国に到着しても勝てる保証はないんですよね」
「……そうですね。エルフ王国の軍隊ですら敵わなかった存在に帝国が急遽呼び集めた1万と数千程度の軍勢で勝てる保証はありません。だけど、私達に出来る手段はもうないんです」
帝国の討伐軍がエルフ王国の領地へ到達しても問題は山積みであり、まず第一にエルフ王国の軍隊を打ち破るほどの力を持つ昆虫種の大群を討伐軍だけで殲滅できるのか、そもそもエルフ王国が未だに持ち応えているのかも不明のため、到着した時には既に昆虫種にエルフ王国が滅ぼされている可能性も否定できない。
だが、幾ら悩み詰めた所で現状の二人がやれるだけの事は全て行っており、他に方法が思いつかない限りは道を引き返して討伐軍と合流し、エルフ王国を救うために昆虫種の大群と戦わねばならない。しかし、直央は本当に自分達が何かやり残している事がないのかを考える。
(他の国には協力は求められないし、ルノ君も見つからない……でも、本当に何もないのか?エルフ王国を救う方法は……)
名案が思い付かない直央は頭を抱えたまま動かず、折角リーリスが渡してくれたスープも冷めてしまう。そんな彼を見て、馬車の中からスラミンが飛び出して彼の頭の上に乗り込む。
「ぷるるんっ!!」
「うわ、何だっ!?ど、どうしたのスラミン君?」
「ぷるぷるっ……」
スラミンは直央の頭の上から下りると、直央が口にしていないスープの皿を示す。食べ物を粗末にするなとばかりにスラミンは直央の周りを跳ねまわり、そんな彼の姿を見て直央は苦笑いを浮かべる。
「ああ、……リーリスさんが作ってくれたスープを食べない事に怒っていたのか。ごめんね、折角のスープを冷ますところだった」
「ぷるぷるっ!!」
謝るのは自分ではなく、料理を作ってくれたリーリスに謝れとばかりにスラミンは直央の頭の上を飛び跳ねると、直央は慌ててリーリスに頭を下げる。
「ごめん、リーリスさん……折角作ってくれた料理なのに」
「いえ、別に気にしないで下さい。直央さんの気持ちを考えると怒るきにもなれませんから……」
「ぷるぷるっ……」
リーリスに改めて謝罪すると直央はスープが冷める前に味わおうとした時、不意に視界に入ったスラミンを見て直央はある事に気が付いた。
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