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帝国の危機
ソウシの忠告
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「ところでリーさん、この男の人は誰ですか?前に来たときは別の人ですよね、新しい男っすか?」
「もう好きに呼んでください……それとこの人は直央さんです。まあ、ルノさんの代理みたいな人だと思ってください」
「どんな説明してるの……」
「よく分かりませんけど、あの兄さんと同じく普通の人間じゃなさそうですね」
ソウシは直央に視線を向け、武士の本能なのか彼が普通の人間ではない事に気付く。一方で直央もソウシが只者ではない事を悟り、無意識に互いの顔を見る。だが、話を進めたいリーリスは二人の間に割って入り、本題に戻す。
「はいはい、男同士で見つめ合ってないでさっさと教えてくださいよ。一体何が起きてるんですか?」
「おっと、いけねえ……じゃあ、まずはここから離れましょうか。他の人間に知られると不味いんで……」
行列から離れるとソウシは近くに生えていた大木に背中を預け、青空組の隊員に通達された情報を語る。
「一週間ぐらい前、獣人国から日の国へ避難民が来たのが事の切っ掛けです」
「避難民?獣人国の人間が日の国へ逃げ込んだんですか?」
「まあ、表向きはただの避難民と言っていますが、実際のところは獣人国の中でも相当に重要な存在ですね。俺達も詳しい事は教わっていませんが、恐らくは獣人国の有力貴族、あるいは将軍、下手をしたら王族関係者……ともかく獣人国にとっては貴重な人材が日の国へ逃げ込んできたんですよ」
「そんな大物がどうして日の国へ?何か起きたんですか?」
「……こいつは機密情報なんですが、まあ姉御ならいいでしょう。実は獣人国で内乱が起きたんですよ」
「内乱?」
物騒な単語が出た事にリーリスは疑問を抱き、直央も不安を抱く。獣人国で内乱が生じたという報告は帝国や王国には届いていないが、日の国の日影が入手した情報によると現在の獣人国では大きな騒乱が起きているらしい。
「まだ帝国には情報が伝わってないんですかい?実は少し前に獣人国の国王が無くなったんですよ。ああ、別に暗殺とか病死じゃなくて、普通に老衰で逝っちまったらしいです」
「そんな言い方は失礼じゃないんですか?」
「問題なのはこの国王には3人の子供が居るんですけど、どいつもこいつも国王が50代の頃に生まれたガキどもでしてね。一番上の長男だって19才のガキで世間知らず、次男はそれなりに有能だが成人していない17才のガキ、最後の長女は14才のお姫様ですよ」
「お姫様の説明だけ優しくないですか?」
「俺は女には優しい男なんでね」
ソウシの説明によると獣人国では国を治めていた国王が死亡してしまい、問題なのは彼が跡継ぎを決める前に死んでしまったために兄弟同士で醜い権力争いに勃発したという。
「獣人国は大変みたいですよ。普通なら長男を跡継ぎに継ぐべきなんですが、次男の方が有能だからこいつを国王に継がせるべきだと後押しする家臣が大勢出てきちまった。それで切れた長男が次男を殺そうと将軍を送り込んだが、それを守るために別の将軍が現れて……という感じで今現在の獣人国は二人の王子の争いで大変な事になってるんですよ」
「なるほど……あれ、王女の方はどうしたんですか?」
「さあ?王女に関しては何も聞いてませんね……俺は」
含みのあるソウシの言い方にリーリスと直央は顔を見合わせ、先ほど彼が獣人国に日の国から避難してきた人間が訪れたという話を思い出し、ある結論に至る。
「まさか……王女がこの国へ訪れたんですか?」
「俺は何も言ってませんよ。ですけど、この人物が原因で日の国まで大変な目に遭っているのは間違いないですけどね」
言葉の割には面白そうな表情を浮かべながらソウシは腕を組み、そんな彼の反応から直央とリーリスは獣人国の軍勢が日の国へ向かっている理由を悟る。彼等の目的は日の国ではなく、この国へ避難した王女の命を狙っているのだ。
「……仮に王女がこの国へ避難していたと仮定します。ソウシさんは王女さんを狙って獣人国が軍隊を差し向けたと考えているんですか?」
「まあ、あくまでも仮の話ですけどね。俺の予想じゃ、恐らく長男当たりが次男だけではなく、王位継承権を持っている王女を狙って軍隊を差し向けたんでしょうね」
「でも、幾ら王族だからって他国の人間を簡単に受け入れるんですか?こんな事態に陥る事を想定しなかったとは思えないんですけど……」
「獣人国の先王とうちの国の殿様は親密な関係でしてね。もしもお互いの国に危機が訪れた際、必ず助け合うという約束をしてたんですよ。まあ、お陰でこんな事態に陥ったんですけどね」
「そう言う事ですか……」
「じゃあ、獣人国はその王女様を狙って日の国の侵攻を企んでるですか?」
「だからあくまでも仮の話だと言ったでしょう?俺は王女様がこの国に来たとは断言してませんよ?」
ソウシが告げたのはあくまでも彼が推察した内容に過ぎず、王女が訪れたという証拠はない。しかし、彼の話は筋が通っており、信憑性はかなり高い。
「もう好きに呼んでください……それとこの人は直央さんです。まあ、ルノさんの代理みたいな人だと思ってください」
「どんな説明してるの……」
「よく分かりませんけど、あの兄さんと同じく普通の人間じゃなさそうですね」
ソウシは直央に視線を向け、武士の本能なのか彼が普通の人間ではない事に気付く。一方で直央もソウシが只者ではない事を悟り、無意識に互いの顔を見る。だが、話を進めたいリーリスは二人の間に割って入り、本題に戻す。
「はいはい、男同士で見つめ合ってないでさっさと教えてくださいよ。一体何が起きてるんですか?」
「おっと、いけねえ……じゃあ、まずはここから離れましょうか。他の人間に知られると不味いんで……」
行列から離れるとソウシは近くに生えていた大木に背中を預け、青空組の隊員に通達された情報を語る。
「一週間ぐらい前、獣人国から日の国へ避難民が来たのが事の切っ掛けです」
「避難民?獣人国の人間が日の国へ逃げ込んだんですか?」
「まあ、表向きはただの避難民と言っていますが、実際のところは獣人国の中でも相当に重要な存在ですね。俺達も詳しい事は教わっていませんが、恐らくは獣人国の有力貴族、あるいは将軍、下手をしたら王族関係者……ともかく獣人国にとっては貴重な人材が日の国へ逃げ込んできたんですよ」
「そんな大物がどうして日の国へ?何か起きたんですか?」
「……こいつは機密情報なんですが、まあ姉御ならいいでしょう。実は獣人国で内乱が起きたんですよ」
「内乱?」
物騒な単語が出た事にリーリスは疑問を抱き、直央も不安を抱く。獣人国で内乱が生じたという報告は帝国や王国には届いていないが、日の国の日影が入手した情報によると現在の獣人国では大きな騒乱が起きているらしい。
「まだ帝国には情報が伝わってないんですかい?実は少し前に獣人国の国王が無くなったんですよ。ああ、別に暗殺とか病死じゃなくて、普通に老衰で逝っちまったらしいです」
「そんな言い方は失礼じゃないんですか?」
「問題なのはこの国王には3人の子供が居るんですけど、どいつもこいつも国王が50代の頃に生まれたガキどもでしてね。一番上の長男だって19才のガキで世間知らず、次男はそれなりに有能だが成人していない17才のガキ、最後の長女は14才のお姫様ですよ」
「お姫様の説明だけ優しくないですか?」
「俺は女には優しい男なんでね」
ソウシの説明によると獣人国では国を治めていた国王が死亡してしまい、問題なのは彼が跡継ぎを決める前に死んでしまったために兄弟同士で醜い権力争いに勃発したという。
「獣人国は大変みたいですよ。普通なら長男を跡継ぎに継ぐべきなんですが、次男の方が有能だからこいつを国王に継がせるべきだと後押しする家臣が大勢出てきちまった。それで切れた長男が次男を殺そうと将軍を送り込んだが、それを守るために別の将軍が現れて……という感じで今現在の獣人国は二人の王子の争いで大変な事になってるんですよ」
「なるほど……あれ、王女の方はどうしたんですか?」
「さあ?王女に関しては何も聞いてませんね……俺は」
含みのあるソウシの言い方にリーリスと直央は顔を見合わせ、先ほど彼が獣人国に日の国から避難してきた人間が訪れたという話を思い出し、ある結論に至る。
「まさか……王女がこの国へ訪れたんですか?」
「俺は何も言ってませんよ。ですけど、この人物が原因で日の国まで大変な目に遭っているのは間違いないですけどね」
言葉の割には面白そうな表情を浮かべながらソウシは腕を組み、そんな彼の反応から直央とリーリスは獣人国の軍勢が日の国へ向かっている理由を悟る。彼等の目的は日の国ではなく、この国へ避難した王女の命を狙っているのだ。
「……仮に王女がこの国へ避難していたと仮定します。ソウシさんは王女さんを狙って獣人国が軍隊を差し向けたと考えているんですか?」
「まあ、あくまでも仮の話ですけどね。俺の予想じゃ、恐らく長男当たりが次男だけではなく、王位継承権を持っている王女を狙って軍隊を差し向けたんでしょうね」
「でも、幾ら王族だからって他国の人間を簡単に受け入れるんですか?こんな事態に陥る事を想定しなかったとは思えないんですけど……」
「獣人国の先王とうちの国の殿様は親密な関係でしてね。もしもお互いの国に危機が訪れた際、必ず助け合うという約束をしてたんですよ。まあ、お陰でこんな事態に陥ったんですけどね」
「そう言う事ですか……」
「じゃあ、獣人国はその王女様を狙って日の国の侵攻を企んでるですか?」
「だからあくまでも仮の話だと言ったでしょう?俺は王女様がこの国に来たとは断言してませんよ?」
ソウシが告げたのはあくまでも彼が推察した内容に過ぎず、王女が訪れたという証拠はない。しかし、彼の話は筋が通っており、信憑性はかなり高い。
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