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帝国の危機
読唇術
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「あ、待って下さい。でも話している内容は分かります」
「え?声は聞こえないんじゃないんですか?」
「いえ、読唇術というスキルも覚えているんです」
「ああ、なるほど……唇の動きで何を喋っているのか見抜く奴ですね」
直央は「読唇術」のスキルも習得しており、エルフ王国に居た時に偶然覚えていた能力である。千里眼を利用して他の人間の会話を確かめようとすると、見知った顔を発見する。
「あれ……?この人は確か……」
「誰ですか?」
「えっと、皇帝陛下も同行しています」
「皇帝陛下が?」
皇帝が賛同しているという言葉にリーリスは驚き、本来ならば国の代表と言える皇帝が軍隊に参加するなど滅多にあり得る事ではない。しかし、孫娘を取り戻すためなのか完全武装した皇帝が討伐軍の先頭を移動しており、傍には帝国四天王も従っていた。
「皇帝と四天王の人達が一緒に居ます。それと、後ろの方には兵士以外にも冒険者みたいな恰好をした人たちも続いています」
「それは帝都の冒険者ギルドで雇った冒険者でしょうね。手紙の指示通りにエルフ王国に向かっているようですね」
「でも、この作戦が上手くいってもバレたら俺達は処刑されませんか?」
「だから何としても王女様の病を治すんですよ。ついでにエルフ王国も救いましょう」
「ついでって……酷くないですか?」
あくまでもリーリスの目的は王女の治療であり、直央には悪いがエルフ王国の救援は二の次である。とはいえ、エルフ王国を救わなければ精霊薬も入手出来ず、あるいはユニコーンの一本角を手に入る機会を失う。エルフ王国を救うためには帝国の軍隊だけでは力不足であり、ルノを見つけ出すか、もしくは高名な冒険者の協力を取り次いで同行を願うしかない。
「陛下達が何を話しているか分かります?」
「えっと……エルフ王国に辿り着くまでに幾つかの街に立ち寄り、兵士の増援を行いながら向かう見たいな事を言っています」
「私の指示通りに「鬼武者」は持ってきましたか?多分、馬車か何かに乗せて運んでいるはずです。神器系の魔道具は収納石では回収出来ないはずですから……」
「ちょっと待って下さい……あ、多分見つけました」
直央は一列に並んでいる馬車の群を発見し、馬車の中身を確認する。ここで千里眼は壁なども無視して内部も確認する事が可能だと判明し、鎖に繋がれた赤色の鎧を発見した。
「なんか鎖に繋がれた鎧があるんですけど……これですか?」
「それです。見張りとかいますか?」
「いえ、いませんけど……」
馬車の中には誰も乗り込んでおらず、鎖で縛りつけられていた鎧が一つだけ放置されていた。馬車には窓の類は存在せず、厳重に戸締りされている。馬車の構造を直央が話すと、リーリスはある考えを抱く。
「直央さんの能力で馬車の中に移動する事とか出来ますか?」
「出来ると思いますけど……」
「なら、この際に鬼武者を少しの間だけ借りておきましょうか」
「え?借りる?」
リーリスの発言に直央は驚き、鬼武者を借りると言っても鎧の大きさは2メートル近くも存在し、直央やリーリスでは体格が合わない。なので内密に借りた所で直央達には使いこなせないように思われたが、リーリスは鬼武者の性能を語る。
「神器である鬼武者は使用者に合わせてサイズが変更するんです。代わりに装着できる人間は戦闘系の職業の人間だけですが……ともかく、鬼武者を装着すれば戦力を大幅に強化出来ます」
「でも、気付かれたら不味いんじゃないですか?」
「エルフ王国に辿り着くまでに直央さんも強くなりたいんでしょう?地道に魔物を倒してSPを稼いで能力強化するより、鬼武者を装着すればより強くなれるかもしれませんよ」
「う~ん……」
直央の能力は魔物を倒す事でレベルを確実に上昇するのだが、生憎とレベルの上昇によるステータスの上昇率は低い。その点ではリーリスの言葉も一理あり、直央は鬼武者が移送されている馬車の内部を確認し、空間移動を利用すれば盗み出せない事はない。
「でも、これが無くなったら帝国の人達も凄く困るんじゃないですか?」
「あくまで借りるだけですよ。エルフ王国に討伐軍が到着するまで定期的に借りて鬼武者の性能を扱いこなしましょう」
「大丈夫かな……」
「まあ、今はいいでしょう。それより、まずは獣人国へ向かいましょう。直央さんの能力を利用すればそんなに時間も掛けずに移動出来るはずですから」
「あ、はい」
「じゃあ、森の中に残していったワンコ達を回収してから向かいましょうか」
千里眼の能力を一旦解除すると、直央は今度は自分が訪れていない地域に千里眼を発動させ、空間移動を利用して長距離移動を行うために行動する。まずは森の中に戻り、魔獣達を同行させて直央は本格的に獣人国へ向かうために千里眼の能力を発動させた。
「え?声は聞こえないんじゃないんですか?」
「いえ、読唇術というスキルも覚えているんです」
「ああ、なるほど……唇の動きで何を喋っているのか見抜く奴ですね」
直央は「読唇術」のスキルも習得しており、エルフ王国に居た時に偶然覚えていた能力である。千里眼を利用して他の人間の会話を確かめようとすると、見知った顔を発見する。
「あれ……?この人は確か……」
「誰ですか?」
「えっと、皇帝陛下も同行しています」
「皇帝陛下が?」
皇帝が賛同しているという言葉にリーリスは驚き、本来ならば国の代表と言える皇帝が軍隊に参加するなど滅多にあり得る事ではない。しかし、孫娘を取り戻すためなのか完全武装した皇帝が討伐軍の先頭を移動しており、傍には帝国四天王も従っていた。
「皇帝と四天王の人達が一緒に居ます。それと、後ろの方には兵士以外にも冒険者みたいな恰好をした人たちも続いています」
「それは帝都の冒険者ギルドで雇った冒険者でしょうね。手紙の指示通りにエルフ王国に向かっているようですね」
「でも、この作戦が上手くいってもバレたら俺達は処刑されませんか?」
「だから何としても王女様の病を治すんですよ。ついでにエルフ王国も救いましょう」
「ついでって……酷くないですか?」
あくまでもリーリスの目的は王女の治療であり、直央には悪いがエルフ王国の救援は二の次である。とはいえ、エルフ王国を救わなければ精霊薬も入手出来ず、あるいはユニコーンの一本角を手に入る機会を失う。エルフ王国を救うためには帝国の軍隊だけでは力不足であり、ルノを見つけ出すか、もしくは高名な冒険者の協力を取り次いで同行を願うしかない。
「陛下達が何を話しているか分かります?」
「えっと……エルフ王国に辿り着くまでに幾つかの街に立ち寄り、兵士の増援を行いながら向かう見たいな事を言っています」
「私の指示通りに「鬼武者」は持ってきましたか?多分、馬車か何かに乗せて運んでいるはずです。神器系の魔道具は収納石では回収出来ないはずですから……」
「ちょっと待って下さい……あ、多分見つけました」
直央は一列に並んでいる馬車の群を発見し、馬車の中身を確認する。ここで千里眼は壁なども無視して内部も確認する事が可能だと判明し、鎖に繋がれた赤色の鎧を発見した。
「なんか鎖に繋がれた鎧があるんですけど……これですか?」
「それです。見張りとかいますか?」
「いえ、いませんけど……」
馬車の中には誰も乗り込んでおらず、鎖で縛りつけられていた鎧が一つだけ放置されていた。馬車には窓の類は存在せず、厳重に戸締りされている。馬車の構造を直央が話すと、リーリスはある考えを抱く。
「直央さんの能力で馬車の中に移動する事とか出来ますか?」
「出来ると思いますけど……」
「なら、この際に鬼武者を少しの間だけ借りておきましょうか」
「え?借りる?」
リーリスの発言に直央は驚き、鬼武者を借りると言っても鎧の大きさは2メートル近くも存在し、直央やリーリスでは体格が合わない。なので内密に借りた所で直央達には使いこなせないように思われたが、リーリスは鬼武者の性能を語る。
「神器である鬼武者は使用者に合わせてサイズが変更するんです。代わりに装着できる人間は戦闘系の職業の人間だけですが……ともかく、鬼武者を装着すれば戦力を大幅に強化出来ます」
「でも、気付かれたら不味いんじゃないですか?」
「エルフ王国に辿り着くまでに直央さんも強くなりたいんでしょう?地道に魔物を倒してSPを稼いで能力強化するより、鬼武者を装着すればより強くなれるかもしれませんよ」
「う~ん……」
直央の能力は魔物を倒す事でレベルを確実に上昇するのだが、生憎とレベルの上昇によるステータスの上昇率は低い。その点ではリーリスの言葉も一理あり、直央は鬼武者が移送されている馬車の内部を確認し、空間移動を利用すれば盗み出せない事はない。
「でも、これが無くなったら帝国の人達も凄く困るんじゃないですか?」
「あくまで借りるだけですよ。エルフ王国に討伐軍が到着するまで定期的に借りて鬼武者の性能を扱いこなしましょう」
「大丈夫かな……」
「まあ、今はいいでしょう。それより、まずは獣人国へ向かいましょう。直央さんの能力を利用すればそんなに時間も掛けずに移動出来るはずですから」
「あ、はい」
「じゃあ、森の中に残していったワンコ達を回収してから向かいましょうか」
千里眼の能力を一旦解除すると、直央は今度は自分が訪れていない地域に千里眼を発動させ、空間移動を利用して長距離移動を行うために行動する。まずは森の中に戻り、魔獣達を同行させて直央は本格的に獣人国へ向かうために千里眼の能力を発動させた。
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