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帝国の危機
作戦の成功
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「だが、軍隊をエルフ王国に派遣しろなんて少しおかしくねえか?」
「確かに……しかし、姫様が連れ去られた以上はどうしようもありません。移動の日数を考えたとしても明日には軍隊を出発しないといけません」
「そんな……どうにか姫様を取り返せないのですか!?」
「敵がまだ城内、あるいは帝都に滞在している可能性は残っています。即座に城壁を閉鎖し、捜索を行う必要がありますが……もしも見つからなかった場合、僕達はこの手紙に従うしかありません」
手紙の内容に疑問を抱きながらもドリアは難しい表情を浮かべ、相手の正体が魔王軍だと判明した以上は下手な真似は出来ない。すぐに皇帝へ報告を行い、城内と城下町に兵士を派遣して捜索を行う必要がある。しかし、警戒態勢に入っていた城内を忍び込んだ侵入者が逃走経路を用意していなかったとは思えず、既に抜け出した可能性も高い。
「すぐに皇帝陛下の元へまいりましょう。これからの事は陛下に判断してもらうしかありません」
「先帝はどうする?牢獄入りとはいえ、伝えるべきだろう?」
「そうですね。ではリノンさんにお願いしましょう」
「お、お待ちください!!私も皇帝陛下の元へ……」
「駄目です。この手紙は僕達が渡します。王女の側近とはいえ、一兵士に過ぎない貴女が皇帝陛下に会う事が許されると思っているのですか?」
「そ、それは……」
いつになく厳しい口調でドリアはリノンに注意を行い、彼女には先帝に現状の報告を行うように指示する。下手に護衛を失敗したリノンを皇帝に会わせた場合、冷静さを失った皇帝が彼女を即座に処刑する可能性もある。そう考えたドリアはリノンと他の騎士の命を守るため、先帝に話を伝え、助命を願うように促す。
「いいですか、貴女と他の兵士が助かるには先帝に皇帝陛下へ助命してくれるように申し出るしかないんです。勿論、何らかの厳罰は免れないでしょうが、それでも死罪だけは免れるでしょう」
「し、しかし……」
「貴女だけの問題じゃないんです。他の人間の命が惜しければ僕の指示に従いなさい」
「……申し訳ありません」
ドリアの最もな言い分にリノンは言い返す事も出来ず、彼女はドリアとダンテに頭を下げて地下牢の先帝に駆け寄る。そんな彼女の後姿を見送り、残された二人は深い溜息を吐き出す。
「おい、あいつはともかくとして俺達も先帝に頼んで助命してくれるように願わなくてもいいのかよ?」
「そんな事をすれば先帝が皇帝に恨みを抱かれます。僕達だけでも罪を受けましょう……最悪、殺される事はないでしょう」
「まあ、そうだな……はあっ」
将軍として兵士を統括する立場にある以上、部下が失態を行えば自分達も罰を受けなければならないというのが二人の考えであり、足取りは重いが皇帝の元へ手紙を届けるために歩み始める。二人の立場上、処刑は免れるだろうが何らかの重い罪は架せられるだろう――
――その一方では無事に空間移動で「白原」に引き返していた直央は既に馬車の準備を整え、魔獣達を従えるリーリスの姿を発見した。彼女は旅装束に着替えており、大量の木箱をロプスとミノに運ばせていた。
「さあ、乗せられるだけ乗せて下さいね。全部乗せたら朝まで眠っていいですから!!」
「キュロロッ」
「ブモォッ」
「え、牛……?」
サイクロプスはともかく、ミノタウロスを初めて見た直央は戸惑い、牛と人間が合わさったような外見の生物がいる事に驚く。しかし、リーリスの指示に従っている事から彼もルノが飼育している魔獣だと判断し、リーリスに話しかける。
「リーさん」
「何ですかその中国人みたいな名前……天さんみたいに呼ばないで下さいよ」
「じゃあ、リスさん」
「誰がクルミ大好き小動物ですかっ」
リーリスは直央が戻ってきたことを確認すると安心した表情を浮かべるが、その一方で木箱を運んでいたミノは新しく現れた人間を見て訝しむように腕を組む。
「ブモォッ?」
「あ、紹介が遅れましたね。この子はミノという名前のミノタウロスです。ミノタウロスの事はご存知ですか?」
「あの牛と人間が合わさった迷宮の番人だっけ?」
「だいたいそんな感じです。別に迷宮とかは守ってませんけど」
「ブモモッ」
リーリスの知り合いだと判断したミノが頭を下げると、直央も慌てて頭を下げる。外見は狂暴そうだがリーリスの命令を素直に聞く当たりは見た目よりは大人しいらしく、試しに直央は右手を出すと握手も行ってくれた。
「ルノ君は色々な魔獣を飼っているんだな……他にはいないの?」
「私の知る限りではこれ以上はいませんね。さあ、それよりも作戦はどうでした?」
「成功したと思う……でも、俺達が仕出かしたことを魔王軍の仕業に見せるのはいいとしても、お姫様を説得出来なければどうしようもないですよ?」
「分かってます。その辺は私に任せてください」
直央の言葉にリーリスは馬車に視線を向け、布団に横たわらせている王女の様子を伺う。病のせいで現在は深い眠りについているが、目を覚ましたら現状の報告を行わなければならないだろう。
「確かに……しかし、姫様が連れ去られた以上はどうしようもありません。移動の日数を考えたとしても明日には軍隊を出発しないといけません」
「そんな……どうにか姫様を取り返せないのですか!?」
「敵がまだ城内、あるいは帝都に滞在している可能性は残っています。即座に城壁を閉鎖し、捜索を行う必要がありますが……もしも見つからなかった場合、僕達はこの手紙に従うしかありません」
手紙の内容に疑問を抱きながらもドリアは難しい表情を浮かべ、相手の正体が魔王軍だと判明した以上は下手な真似は出来ない。すぐに皇帝へ報告を行い、城内と城下町に兵士を派遣して捜索を行う必要がある。しかし、警戒態勢に入っていた城内を忍び込んだ侵入者が逃走経路を用意していなかったとは思えず、既に抜け出した可能性も高い。
「すぐに皇帝陛下の元へまいりましょう。これからの事は陛下に判断してもらうしかありません」
「先帝はどうする?牢獄入りとはいえ、伝えるべきだろう?」
「そうですね。ではリノンさんにお願いしましょう」
「お、お待ちください!!私も皇帝陛下の元へ……」
「駄目です。この手紙は僕達が渡します。王女の側近とはいえ、一兵士に過ぎない貴女が皇帝陛下に会う事が許されると思っているのですか?」
「そ、それは……」
いつになく厳しい口調でドリアはリノンに注意を行い、彼女には先帝に現状の報告を行うように指示する。下手に護衛を失敗したリノンを皇帝に会わせた場合、冷静さを失った皇帝が彼女を即座に処刑する可能性もある。そう考えたドリアはリノンと他の騎士の命を守るため、先帝に話を伝え、助命を願うように促す。
「いいですか、貴女と他の兵士が助かるには先帝に皇帝陛下へ助命してくれるように申し出るしかないんです。勿論、何らかの厳罰は免れないでしょうが、それでも死罪だけは免れるでしょう」
「し、しかし……」
「貴女だけの問題じゃないんです。他の人間の命が惜しければ僕の指示に従いなさい」
「……申し訳ありません」
ドリアの最もな言い分にリノンは言い返す事も出来ず、彼女はドリアとダンテに頭を下げて地下牢の先帝に駆け寄る。そんな彼女の後姿を見送り、残された二人は深い溜息を吐き出す。
「おい、あいつはともかくとして俺達も先帝に頼んで助命してくれるように願わなくてもいいのかよ?」
「そんな事をすれば先帝が皇帝に恨みを抱かれます。僕達だけでも罪を受けましょう……最悪、殺される事はないでしょう」
「まあ、そうだな……はあっ」
将軍として兵士を統括する立場にある以上、部下が失態を行えば自分達も罰を受けなければならないというのが二人の考えであり、足取りは重いが皇帝の元へ手紙を届けるために歩み始める。二人の立場上、処刑は免れるだろうが何らかの重い罪は架せられるだろう――
――その一方では無事に空間移動で「白原」に引き返していた直央は既に馬車の準備を整え、魔獣達を従えるリーリスの姿を発見した。彼女は旅装束に着替えており、大量の木箱をロプスとミノに運ばせていた。
「さあ、乗せられるだけ乗せて下さいね。全部乗せたら朝まで眠っていいですから!!」
「キュロロッ」
「ブモォッ」
「え、牛……?」
サイクロプスはともかく、ミノタウロスを初めて見た直央は戸惑い、牛と人間が合わさったような外見の生物がいる事に驚く。しかし、リーリスの指示に従っている事から彼もルノが飼育している魔獣だと判断し、リーリスに話しかける。
「リーさん」
「何ですかその中国人みたいな名前……天さんみたいに呼ばないで下さいよ」
「じゃあ、リスさん」
「誰がクルミ大好き小動物ですかっ」
リーリスは直央が戻ってきたことを確認すると安心した表情を浮かべるが、その一方で木箱を運んでいたミノは新しく現れた人間を見て訝しむように腕を組む。
「ブモォッ?」
「あ、紹介が遅れましたね。この子はミノという名前のミノタウロスです。ミノタウロスの事はご存知ですか?」
「あの牛と人間が合わさった迷宮の番人だっけ?」
「だいたいそんな感じです。別に迷宮とかは守ってませんけど」
「ブモモッ」
リーリスの知り合いだと判断したミノが頭を下げると、直央も慌てて頭を下げる。外見は狂暴そうだがリーリスの命令を素直に聞く当たりは見た目よりは大人しいらしく、試しに直央は右手を出すと握手も行ってくれた。
「ルノ君は色々な魔獣を飼っているんだな……他にはいないの?」
「私の知る限りではこれ以上はいませんね。さあ、それよりも作戦はどうでした?」
「成功したと思う……でも、俺達が仕出かしたことを魔王軍の仕業に見せるのはいいとしても、お姫様を説得出来なければどうしようもないですよ?」
「分かってます。その辺は私に任せてください」
直央の言葉にリーリスは馬車に視線を向け、布団に横たわらせている王女の様子を伺う。病のせいで現在は深い眠りについているが、目を覚ましたら現状の報告を行わなければならないだろう。
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