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帝国の危機
貧弱の勇者の本気
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――屋敷から抜け出した直央が最初に向かったのは王城の裏門であり、流石に警備は厳しかった。先日の魔王軍の襲撃から警備を見直しており、更に今は各領地から呼び寄せた兵士達も集結している。通常時よりも警戒が強まっている一方、直央はよくよく考えると自分が正体を明かせば普通に城内に入り込めるのではないかと考える。
(いや、駄目だ。リーリスさんの作戦だと俺が城に戻った事になると面倒な事になるはず……しょうがない、ここは普通に忍び込むか)
正門と比べたら裏門の方が兵士の数は少なく、直央は城壁を確認して最も警備が薄そうな場所に視線を向ける。空間移動を利用すれば簡単に城壁は登り超えられるが、まだ時刻は夕方を迎えたばかりなので空間に歪みが出来れば流石に兵士達も気付かれるだろう。
(ここは普通に乗り込むか……隠密、無音歩行、握力強化、気配感知、魔力感知を発動させておくか)
ルノと直央の最大の違いは習得しているスキルの数であり、ルノの場合は強力な魔法を扱えるが覚えているスキルの数は意外と少ない。しかし、直央の場合は数百以上のスキルを既に習得しているため、必要に応じて能力を切り替得る事が出来る。
(それと固有スキルの「気配遮断」も使っておくか。後は万が一見つかったときのために「擬態」も利用しておこう)
技能スキルの「隠密」は存在感を消す能力だが、実は「観察眼」などの観察力や洞察力を強化するスキルには無効化されてしまう。更に暗殺者の職業の人間には隠密のスキルは通用しにくいという弱点も存在するため、直央は隠密の上位互換に当たる「気配遮断」と「擬態」を発動させた。
前者は隠密の能力を強化するスキルであり、能力の発動中は暗殺者の職業の人間でも感知するのが難しくなる(但し、気配遮断の能力を単体のみで習得していては何の意味もない)。後者の「擬態」に関してはカメレオンのように周囲の景色と同化し、姿を透明化する能力である(欠点として使用者自体も自身の肉体を感知出来なくなる)。
自分の姿を確認し、ちゃんと姿が見えない事を確認すると直央は瞼を閉じる。自分の姿を見えない状態で移動を行うのは色々と不便な事も多く、直央は「心眼」と呼ばれるスキルを発動させる。名前だけだと観察眼などの瞳を強化するスキルと思われがちだが、正確には感知系の能力であり、心の目であらゆる物を見抜く事が出来る。発動者の目には暗視スコープを利用したように周囲の状況を把握し、行動する事が出来る。
(よし、ちゃんと見えるな……なら行くか)
心眼を発動させた状態ならば直央は自分の姿を確認する事は出来るが、他の人間には彼の存在を把握する事は出来ない。直央は透明人間になったような気分で城壁に近づき、煉瓦の隙間に指を食い込ませてゆっくりと移動する。身体強化系のスキルも豊富のため、直央は易々と城壁を登りきると巡回中の兵士が目の前を横切った。
「「…………」」
目の前にまで接近しても兵士は直央に気付かず、無言で通過する。その様子を確認した直央は内心安堵するが、スキルの効果を見破る人間に見つかる前に移動を開始する。無音歩行のスキルのお陰でどれほど急いで移動しようと足音が鳴り響く事はなく、城壁から飛び降りても着地の音も立てずに直央は王城内に忍び込む事に成功した。
(えっと……リーリスさんの作戦だと適当に騒ぎを起こした方がいいんだっけ)
王女の元に直行して彼女を連れ去るのではなく、途中で敢えて騒動を引き起こした方が城の人間に混乱を引き起こし、行動がやりやすくなるという助言を受けていた事を直央は思い出す。彼は周囲を見渡し、そして右腕に装着した魔導大砲に視線を向ける。
(丁度いいや、この際にこれを使ってみよう)
リーリスから半ば無理やりに押し付けられた魔導大砲の効果を確認するため、直央は大きな被害を与えないように誰も存在しない場所に砲口を構える。ゲームとは異なり、攻撃を仕掛けたとしても直央の能力が解除される事はないので直央は大きな被害を与えないように地面に向けて砲口を構えた。
(確か取っ手の部分を引き寄せるだけでいいんだっけ……うわっ!?)
大砲を発射させるために右手で取っ手を引き寄せた瞬間、腕に装着した大砲の装具から魔力が吸収され、砲口が赤色に光り輝くと火属性の魔力の塊を発射する。大きさは十数センチ程度だが、地面に衝突した瞬間に爆炎とかして半径3メートルの地面を焼き尽くす。
「うわっ!?な、何だ!?」
「爆発!?」
「敵襲!!敵襲だぁっ!!」
唐突に裏庭の方で爆発が起きた事で城壁に配備されていた兵士達が騒ぎ出し、慌てて直央はその場を立ち去る。本人としてはちょっとしたボヤ騒ぎを引き起こせば十分だったのだが、予想外の大砲の威力で城全体が警戒態勢に入ってしまう。
(いや、駄目だ。リーリスさんの作戦だと俺が城に戻った事になると面倒な事になるはず……しょうがない、ここは普通に忍び込むか)
正門と比べたら裏門の方が兵士の数は少なく、直央は城壁を確認して最も警備が薄そうな場所に視線を向ける。空間移動を利用すれば簡単に城壁は登り超えられるが、まだ時刻は夕方を迎えたばかりなので空間に歪みが出来れば流石に兵士達も気付かれるだろう。
(ここは普通に乗り込むか……隠密、無音歩行、握力強化、気配感知、魔力感知を発動させておくか)
ルノと直央の最大の違いは習得しているスキルの数であり、ルノの場合は強力な魔法を扱えるが覚えているスキルの数は意外と少ない。しかし、直央の場合は数百以上のスキルを既に習得しているため、必要に応じて能力を切り替得る事が出来る。
(それと固有スキルの「気配遮断」も使っておくか。後は万が一見つかったときのために「擬態」も利用しておこう)
技能スキルの「隠密」は存在感を消す能力だが、実は「観察眼」などの観察力や洞察力を強化するスキルには無効化されてしまう。更に暗殺者の職業の人間には隠密のスキルは通用しにくいという弱点も存在するため、直央は隠密の上位互換に当たる「気配遮断」と「擬態」を発動させた。
前者は隠密の能力を強化するスキルであり、能力の発動中は暗殺者の職業の人間でも感知するのが難しくなる(但し、気配遮断の能力を単体のみで習得していては何の意味もない)。後者の「擬態」に関してはカメレオンのように周囲の景色と同化し、姿を透明化する能力である(欠点として使用者自体も自身の肉体を感知出来なくなる)。
自分の姿を確認し、ちゃんと姿が見えない事を確認すると直央は瞼を閉じる。自分の姿を見えない状態で移動を行うのは色々と不便な事も多く、直央は「心眼」と呼ばれるスキルを発動させる。名前だけだと観察眼などの瞳を強化するスキルと思われがちだが、正確には感知系の能力であり、心の目であらゆる物を見抜く事が出来る。発動者の目には暗視スコープを利用したように周囲の状況を把握し、行動する事が出来る。
(よし、ちゃんと見えるな……なら行くか)
心眼を発動させた状態ならば直央は自分の姿を確認する事は出来るが、他の人間には彼の存在を把握する事は出来ない。直央は透明人間になったような気分で城壁に近づき、煉瓦の隙間に指を食い込ませてゆっくりと移動する。身体強化系のスキルも豊富のため、直央は易々と城壁を登りきると巡回中の兵士が目の前を横切った。
「「…………」」
目の前にまで接近しても兵士は直央に気付かず、無言で通過する。その様子を確認した直央は内心安堵するが、スキルの効果を見破る人間に見つかる前に移動を開始する。無音歩行のスキルのお陰でどれほど急いで移動しようと足音が鳴り響く事はなく、城壁から飛び降りても着地の音も立てずに直央は王城内に忍び込む事に成功した。
(えっと……リーリスさんの作戦だと適当に騒ぎを起こした方がいいんだっけ)
王女の元に直行して彼女を連れ去るのではなく、途中で敢えて騒動を引き起こした方が城の人間に混乱を引き起こし、行動がやりやすくなるという助言を受けていた事を直央は思い出す。彼は周囲を見渡し、そして右腕に装着した魔導大砲に視線を向ける。
(丁度いいや、この際にこれを使ってみよう)
リーリスから半ば無理やりに押し付けられた魔導大砲の効果を確認するため、直央は大きな被害を与えないように誰も存在しない場所に砲口を構える。ゲームとは異なり、攻撃を仕掛けたとしても直央の能力が解除される事はないので直央は大きな被害を与えないように地面に向けて砲口を構えた。
(確か取っ手の部分を引き寄せるだけでいいんだっけ……うわっ!?)
大砲を発射させるために右手で取っ手を引き寄せた瞬間、腕に装着した大砲の装具から魔力が吸収され、砲口が赤色に光り輝くと火属性の魔力の塊を発射する。大きさは十数センチ程度だが、地面に衝突した瞬間に爆炎とかして半径3メートルの地面を焼き尽くす。
「うわっ!?な、何だ!?」
「爆発!?」
「敵襲!!敵襲だぁっ!!」
唐突に裏庭の方で爆発が起きた事で城壁に配備されていた兵士達が騒ぎ出し、慌てて直央はその場を立ち去る。本人としてはちょっとしたボヤ騒ぎを引き起こせば十分だったのだが、予想外の大砲の威力で城全体が警戒態勢に入ってしまう。
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