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帝国の危機
魔獣との再会
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「数はどれくらいですか?」
「2人……いや、2匹かも知れない」
直央が言葉を言い終えた瞬間、瓦礫の隙間を潜り抜けて無数の影が飛び出す。それを確認した直央は両手に収めた銅貨を親指で弾き、接近してきた影を撃ち抜く。
「指弾!!」
「「キャウンッ!?」」
「えっ!?」
暗殺者の職業が扱える「指弾」の戦技を発動させ、瓦礫から出現した生物に銅貨を当てる。だが、攻撃を受けた生物の声にリーリスは聞き覚えがあり、驚いた彼女は直央の背中から様子を伺うと見覚えの黒い毛皮の狼が空中に吹き飛ぶ光景を目撃した。
「もしかして……イチ、ニイじゃないですか!?」
「え?」
「グルルルッ……!!」
「ガアッ……!!」
直央の攻撃を受けて地面に倒れたのはルノが飼っている黒狼種の子供の2匹で間違いなく、リーリスは慌てて彼等の元へ駆け寄ろうとする。しかし、それを直央は制して黒狼種の様子がおかしい事を告げる。
「待って!!迂闊に近づくな!!」
「いや、大丈夫ですよ。この子達は私にも懐いてますから……うわぁっ!?」
「ガウッ!!」
リーリスが狼に近づこうとした瞬間、2匹は彼女の右腕に噛みつこうとしたので慌てて直央はリーリスを引き寄せて離れさせる。自分に噛みつこうとした狼達にリーリスは戸惑うが、直央は彼女を下がらせて再び硬貨を放つ。
「跳弾!!」
「ギャウンッ!?」
「アウッ!?」
今度は直接当てるのではなく、直央は地面に向けて放った硬貨が跳弾のように狼達の腹部に衝突させる。2匹は苦痛の表情を浮かべて地面に倒れこみ、痛みを堪えるように身体を丸める。
「ああっ……こんな所をルノさんに見られたら私達殺されるかもしれませんね」
「そんな事よりこの狼達はリーリスさんは知っているの?」
「この子達がさっき話していたルノさんが飼っている魔獣ですよ。でも、どうして急に襲ってきたんでしょうか……私にも懐いていたはずなのに」
リーリスはルノと頻繁に交流していたので彼が飼育している魔獣達とも仲は良く、あのミノタウロスでさえもリーリスに懐いていた。特に黒狼種達はリーリスが定期検診を行っており、病気になったときは彼女が自ら治療を施していたので一番懐いていたはずだが、今の攻防から考えても狼達が本気で彼女に襲い掛かってきたのは間違いない。
「生きていたのは幸いですが、どうして私を襲ってきたんでしょうか……はっ!!まさかおやつをあげると偽って予防接種の注射をした事を根に持っていた!?違うんです、あれはルノさんの頼みで……」
「いや、多分それは違うと思いますよ?」
直央は警戒気味に2匹の狼の元に近づき、起き上がる様子はない事を確認して身体に触れる。2度の攻撃で動く事もままならないのか狼達は唸り声を上げるだけで反抗する様子もなく、リーリスも直央と共に狼の様子を伺う。
「少し身体の様子を調べましょう」
「分かった。俺が抑えます」
「ウォンッ……!!」
狼が暴れないように直央が抑えつけると、リーリスはまずは状態を調べるために身体の様子を伺う。その際に狼の肉体に魔物使いが施す「契約紋」が刻まれていないのかを確認し、何者かが無理やりイチ達を「契約獣」に仕立て上げて自分達を襲ったのではないかと疑ったが、特にそれらしき紋様は見つからない。
「う~ん……特に直央さんの受けた傷以外に怪しい点はないですね。ほら、私ですよ?顔を覚えてませんか?」
「クゥ~ンッ……」
「あれ?急に大人しくなった?」
リーリスが腹部を撫でまわしながら狼の顔を伺うと、先ほどまで興奮していた状態が嘘のように大人しくなり、悲し気な表情を浮かべて彼女を見上げる。それを確認した直央は不思議に思い、身体を離しても抵抗する様子はなく、リーリスが頭を撫でる。
「どうやら私の事を思い出したようですね。でも、どうして急に襲い掛かってきたんでしょうか……」
「クゥンッ」
「よしよし、怖くないですよ~」
2匹の狼は完全に正気を取り戻したのを確認するとリーリスは回復魔法を施し、狼達を治療する。やがて完全に回復すると狼達はリーリスにすりより、身体を擦り付けてきた。
「ウォンッ」
「キュ~ンッ」
「あはははっ……くすぐったいですよ。どうやら元に戻ったようですね」
「痛い目に遭わせてごめんね」
「クゥ~ンッ」
ナオが謝りながら狼達の頭を撫でると、気にしていないとばかりに2匹は直央にも擦り寄る。リーリスは不思議に思いながらも狼を抱き上げ、質問を行う。
「お前達はどうしてここにいるんですか?他の仲間達は?ルノさんがどこに行ったのか分かりますか?」
「ウォンッ!!」
リーリスの言葉を聞いて狼達は鳴き声を上げ、彼女の服の袖を引っ張って別の場所へ誘導しようとする。その姿を見た直央とリーリスは頷き、狼達の後に続く。
「2人……いや、2匹かも知れない」
直央が言葉を言い終えた瞬間、瓦礫の隙間を潜り抜けて無数の影が飛び出す。それを確認した直央は両手に収めた銅貨を親指で弾き、接近してきた影を撃ち抜く。
「指弾!!」
「「キャウンッ!?」」
「えっ!?」
暗殺者の職業が扱える「指弾」の戦技を発動させ、瓦礫から出現した生物に銅貨を当てる。だが、攻撃を受けた生物の声にリーリスは聞き覚えがあり、驚いた彼女は直央の背中から様子を伺うと見覚えの黒い毛皮の狼が空中に吹き飛ぶ光景を目撃した。
「もしかして……イチ、ニイじゃないですか!?」
「え?」
「グルルルッ……!!」
「ガアッ……!!」
直央の攻撃を受けて地面に倒れたのはルノが飼っている黒狼種の子供の2匹で間違いなく、リーリスは慌てて彼等の元へ駆け寄ろうとする。しかし、それを直央は制して黒狼種の様子がおかしい事を告げる。
「待って!!迂闊に近づくな!!」
「いや、大丈夫ですよ。この子達は私にも懐いてますから……うわぁっ!?」
「ガウッ!!」
リーリスが狼に近づこうとした瞬間、2匹は彼女の右腕に噛みつこうとしたので慌てて直央はリーリスを引き寄せて離れさせる。自分に噛みつこうとした狼達にリーリスは戸惑うが、直央は彼女を下がらせて再び硬貨を放つ。
「跳弾!!」
「ギャウンッ!?」
「アウッ!?」
今度は直接当てるのではなく、直央は地面に向けて放った硬貨が跳弾のように狼達の腹部に衝突させる。2匹は苦痛の表情を浮かべて地面に倒れこみ、痛みを堪えるように身体を丸める。
「ああっ……こんな所をルノさんに見られたら私達殺されるかもしれませんね」
「そんな事よりこの狼達はリーリスさんは知っているの?」
「この子達がさっき話していたルノさんが飼っている魔獣ですよ。でも、どうして急に襲ってきたんでしょうか……私にも懐いていたはずなのに」
リーリスはルノと頻繁に交流していたので彼が飼育している魔獣達とも仲は良く、あのミノタウロスでさえもリーリスに懐いていた。特に黒狼種達はリーリスが定期検診を行っており、病気になったときは彼女が自ら治療を施していたので一番懐いていたはずだが、今の攻防から考えても狼達が本気で彼女に襲い掛かってきたのは間違いない。
「生きていたのは幸いですが、どうして私を襲ってきたんでしょうか……はっ!!まさかおやつをあげると偽って予防接種の注射をした事を根に持っていた!?違うんです、あれはルノさんの頼みで……」
「いや、多分それは違うと思いますよ?」
直央は警戒気味に2匹の狼の元に近づき、起き上がる様子はない事を確認して身体に触れる。2度の攻撃で動く事もままならないのか狼達は唸り声を上げるだけで反抗する様子もなく、リーリスも直央と共に狼の様子を伺う。
「少し身体の様子を調べましょう」
「分かった。俺が抑えます」
「ウォンッ……!!」
狼が暴れないように直央が抑えつけると、リーリスはまずは状態を調べるために身体の様子を伺う。その際に狼の肉体に魔物使いが施す「契約紋」が刻まれていないのかを確認し、何者かが無理やりイチ達を「契約獣」に仕立て上げて自分達を襲ったのではないかと疑ったが、特にそれらしき紋様は見つからない。
「う~ん……特に直央さんの受けた傷以外に怪しい点はないですね。ほら、私ですよ?顔を覚えてませんか?」
「クゥ~ンッ……」
「あれ?急に大人しくなった?」
リーリスが腹部を撫でまわしながら狼の顔を伺うと、先ほどまで興奮していた状態が嘘のように大人しくなり、悲し気な表情を浮かべて彼女を見上げる。それを確認した直央は不思議に思い、身体を離しても抵抗する様子はなく、リーリスが頭を撫でる。
「どうやら私の事を思い出したようですね。でも、どうして急に襲い掛かってきたんでしょうか……」
「クゥンッ」
「よしよし、怖くないですよ~」
2匹の狼は完全に正気を取り戻したのを確認するとリーリスは回復魔法を施し、狼達を治療する。やがて完全に回復すると狼達はリーリスにすりより、身体を擦り付けてきた。
「ウォンッ」
「キュ~ンッ」
「あはははっ……くすぐったいですよ。どうやら元に戻ったようですね」
「痛い目に遭わせてごめんね」
「クゥ~ンッ」
ナオが謝りながら狼達の頭を撫でると、気にしていないとばかりに2匹は直央にも擦り寄る。リーリスは不思議に思いながらも狼を抱き上げ、質問を行う。
「お前達はどうしてここにいるんですか?他の仲間達は?ルノさんがどこに行ったのか分かりますか?」
「ウォンッ!!」
リーリスの言葉を聞いて狼達は鳴き声を上げ、彼女の服の袖を引っ張って別の場所へ誘導しようとする。その姿を見た直央とリーリスは頷き、狼達の後に続く。
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