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帝国の危機
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「さて……調べると言っても何処から探せばいいのか悩みますね。そういえばルノさんが飼っていた魔獣達がどうなったのかも調べないといけませんね」
「魔獣か……そういえばルノ君は屋敷で飼っていた魔獣を浚われてここまで来たんだっけ?」
「そうですよ。ちなみに屋敷にいたスラミンは私が預かっています」
ルノが姿を消した後、屋敷に取り残されたスラミンはリーリスが一時的に引き取っており、現在は自宅で預かっている。普通の動物と違って餌にも困らず、水を与えるだけで良いので特に困らないが、主人が不在な事に不安を抱いて普段以上にぷるぷると震える事が多い。
「ルノ君がここに来ていたとしたら魔獣達もここに居たのかな……?」
「どうですかね。あの手紙はルノさんを引き寄せるための罠で既に始末されている可能性もありますけど……生きてる事を祈りましょう」
「ここにも調査の人は訪れているんですよね。その人達から魔獣がここにいた話は聞いていないんですか?」
「特に何も……ルノさんの飼育している魔獣達は帝国内でも珍しい種ばかりですからね。仮に見かけていたとしたら報告しないはずがありませんし……」
「仮にルノ君が魔王軍に捕まったとしたら他の魔獣達も捕らわれた可能性もある……?」
二人にとっては考えたくはない事だが、ルノが魔王軍に捕縛、あるいは殺害されていた場合はここまでの行動が無意味になる。だが、二人は諦めずにルノが手紙を見て最初に訪れたと思われるこの場所で手掛かりを探す。
「何でもいいのでとにかく調べてみましょう。調査範囲が広いのは面倒ですが、逆に言えば調査の際に見落としたがあった可能性もあります」
「そうですね。でも……もしも手掛かりが見つからなかったら帝国軍は本当に北原に向かうんですか?」
「どうですかね……いくら皇帝の命令とはいえ、目的地を急遽変更させる場合は準備にも時間が掛かります。元々はエルフ王国へ向かうために一か月分の武器と兵糧を用意してますけど、北原に向かうとしたら更に準備は必要になりますから分かりません」
「考え直してくれるといいんですけど……それにしてもこの状況でユニコーンが北原に現れるなんて……かなり怪しくありませんか?」
「……そうですね。私もそう思います」
敷地内を移動しながらルノに繋がる手掛かりを捜索しながらも直央とリーリスは北原に突如として出現した「ユニコーン」の件で話し合う。帝国軍がエルフ王国の救援を決断し、軍隊を派遣しようとした途端にユニコーンの目撃情報が帝都に届いた事が偶然だとは思えず、魔王軍の策略ではないのかと二人は考える。
「ユニコーンの目撃情報がもしも魔王軍が流した偽情報だった場合……帝国軍は無駄足になりますよね」
「その通りです。そして魔王軍にとっては一番都合の良い展開です。エルフ王国に現れたという昆虫種の大群に関しても確実に魔王軍が関与しているはずですからね」
「じゃあ、やっぱりユニコーンが北原に現れたという報告は虚なんですか?」
「それは分かりません。偶然にも本当にユニコーンが出現したという可能性もあります……最も、私としては今まで見つからなかったユニコーンが簡単に人前に姿を晒すとは思えませんけど」
仮に帝国軍が北原に出向いた場合、軍隊が帝都に引き返すのは相当な日数を要する。北原に派遣された軍隊がエルフ王国へ向かうにしても到着する頃にはエルフ王国が滅びている可能性も高く、そもそもエルフ王国に到着する頃には軍隊も疲弊しているだろう。そう考えると魔王軍にとっては非常に都合の良い展開であり、今回のユニコーンの一件が罠である可能性が非常に高い。
「ですが皇帝陛下はもう討伐軍を北原に向かわせる事を決断しています。この命令を覆すにはそれ相応の理由を用意しないと聞き入れてくれませんよ」
「それは分かってますけど……どうしてもユニコーンの捕縛のためだけに討伐軍を派遣させないといけないんですか?エルフ王国に先に軍隊を派遣して他の部隊にユニコーンの捕獲を命じればいいだけじゃないんですか?」
「ユニコーンは危険種に指定されてますからね。基本的には森人族以外の種族には心を開きませんし、それに精霊薬の調合に必要なユニコーンの一本角はユニコーンを討伐しないと手に入りません。だから軍隊を派遣するしかないと考えているんですよ」
「えっ!?そんなに危険な魔物なんですか?」
ユニコーンが危険種として指定されているという話は直央も初耳らしく、リーリスは簡単にユニコーンの生態を説明する。精霊薬の素材に必要な魔獣なので彼女も独自でユニコーンの情報を集めており、直央にユニコーンの特徴を伝えた。
「ユニコーンの別名は「一角獣」その額に生えている角は一角兎のように経験石で構成されています。しかし、その戦闘力は並の魔物の比ではなく、サイクロプスやミノタウロスさえも凌駕すると言われています。実際に過去に武装した1000人の兵士がユニコーンの角を狙って戦闘を挑んだ際、1人も残らずに返り討ちにされたという記録があるほどですよ」
「魔獣か……そういえばルノ君は屋敷で飼っていた魔獣を浚われてここまで来たんだっけ?」
「そうですよ。ちなみに屋敷にいたスラミンは私が預かっています」
ルノが姿を消した後、屋敷に取り残されたスラミンはリーリスが一時的に引き取っており、現在は自宅で預かっている。普通の動物と違って餌にも困らず、水を与えるだけで良いので特に困らないが、主人が不在な事に不安を抱いて普段以上にぷるぷると震える事が多い。
「ルノ君がここに来ていたとしたら魔獣達もここに居たのかな……?」
「どうですかね。あの手紙はルノさんを引き寄せるための罠で既に始末されている可能性もありますけど……生きてる事を祈りましょう」
「ここにも調査の人は訪れているんですよね。その人達から魔獣がここにいた話は聞いていないんですか?」
「特に何も……ルノさんの飼育している魔獣達は帝国内でも珍しい種ばかりですからね。仮に見かけていたとしたら報告しないはずがありませんし……」
「仮にルノ君が魔王軍に捕まったとしたら他の魔獣達も捕らわれた可能性もある……?」
二人にとっては考えたくはない事だが、ルノが魔王軍に捕縛、あるいは殺害されていた場合はここまでの行動が無意味になる。だが、二人は諦めずにルノが手紙を見て最初に訪れたと思われるこの場所で手掛かりを探す。
「何でもいいのでとにかく調べてみましょう。調査範囲が広いのは面倒ですが、逆に言えば調査の際に見落としたがあった可能性もあります」
「そうですね。でも……もしも手掛かりが見つからなかったら帝国軍は本当に北原に向かうんですか?」
「どうですかね……いくら皇帝の命令とはいえ、目的地を急遽変更させる場合は準備にも時間が掛かります。元々はエルフ王国へ向かうために一か月分の武器と兵糧を用意してますけど、北原に向かうとしたら更に準備は必要になりますから分かりません」
「考え直してくれるといいんですけど……それにしてもこの状況でユニコーンが北原に現れるなんて……かなり怪しくありませんか?」
「……そうですね。私もそう思います」
敷地内を移動しながらルノに繋がる手掛かりを捜索しながらも直央とリーリスは北原に突如として出現した「ユニコーン」の件で話し合う。帝国軍がエルフ王国の救援を決断し、軍隊を派遣しようとした途端にユニコーンの目撃情報が帝都に届いた事が偶然だとは思えず、魔王軍の策略ではないのかと二人は考える。
「ユニコーンの目撃情報がもしも魔王軍が流した偽情報だった場合……帝国軍は無駄足になりますよね」
「その通りです。そして魔王軍にとっては一番都合の良い展開です。エルフ王国に現れたという昆虫種の大群に関しても確実に魔王軍が関与しているはずですからね」
「じゃあ、やっぱりユニコーンが北原に現れたという報告は虚なんですか?」
「それは分かりません。偶然にも本当にユニコーンが出現したという可能性もあります……最も、私としては今まで見つからなかったユニコーンが簡単に人前に姿を晒すとは思えませんけど」
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「それは分かってますけど……どうしてもユニコーンの捕縛のためだけに討伐軍を派遣させないといけないんですか?エルフ王国に先に軍隊を派遣して他の部隊にユニコーンの捕獲を命じればいいだけじゃないんですか?」
「ユニコーンは危険種に指定されてますからね。基本的には森人族以外の種族には心を開きませんし、それに精霊薬の調合に必要なユニコーンの一本角はユニコーンを討伐しないと手に入りません。だから軍隊を派遣するしかないと考えているんですよ」
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