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帝国の危機
ダンテの勘
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「ば、馬鹿野郎!!なに考えているんだあいつら!?」
ダンテは慌てて城壁に身を乗り出して様子を伺うと、何故か飛び降りたはずのリーリス達の姿は見えず、代わりに空中で浮揚している「黒渦」が存在した。
「な、なんだありゃ?」
「ダンテ様!!あそこを見てください!!」
「どうした?」
兵士の言葉にダンテは顔を向けると、何時の間にか草原を駆け抜ける直央の姿が存在し、一瞬の間に数百メートルも離れた場所に移動していた。何が起きているのか理解できないが、ダンテはまたリーリスが面倒事に首を突っ込んでいると確信する。
「たく、あの研究馬鹿は何を考えてんだ!?他国の勇者を連れて何処へ行く気だ?」
「ダンテ将軍!!ここにおられましたか!!」
「あん?どうした?」
声を掛けられてダンテは振り返ると、皇帝に直々に使えている近衛兵である事に気付き、疑問を抱く。基本的に近衛兵は皇帝陛下の身辺の身の回りの世話を任されているはずの彼等が自分の元へ訪れた事に違和感を覚えた。
「ダンテ将軍!!皇帝陛下がお呼びです!!すぐに第一会議室にお越し下さい」
「陛下がだと……他の将軍は?」
「既にドリア様、ギリョウ様には声をかけています!!ヒカゲ様は任務中なので連絡の手段はありませんが、配下の方には既に言伝を頼んでいます。リーリス様にも一応は伝えましたが……」
「只事じゃなさそうだな……あいつ、逃げやがったのか?」
「は?」
近衛兵の話を聞いてダンテは直央達が消え去った方向に視線を向け、この状況下でまさか二人で逃げ出したのかと考えてしまう。しかし、ダンテはリーリスとは仲が良いわけではないが国を見捨てるような人間ではないと信じており、今回の行動も何か意味があるのかと考える。
(あの馬鹿、何を考えてんだ……勇者を連れ出したのが気になるな。というか、あいつら勝手に行動して大丈夫なのか?)
エルフ王国の勇者である直央は表向きは帝国に保護されている立場であり、勝手に帝都へ抜け出す事自体が問題である。仮に将軍であるリーリスが手引きした場合でも罪は免れない。
「ダンテ様、リーリス様は何処でしょうか?城内を探しましたが姿が見えず、こちらにいらっしゃるのではないかと思ったのですが……」
「あ~……知るかよ。おい、お前等も見てねえよな?」
「え!?いや、さっき……」
「見てねえよな!?」
「は、はい!!我々も見ていません!!」
ダンテの言葉に彼の配下の兵士達は戸惑うが、ダンテが語気を強めて問い質すと慌てて頷く。その彼等の態度に近衛兵は訝しむが、すぐに他の人間に陛下の命令を知らせるために立ち去ろうとする。
「では我々は失礼します!!もしもリーリス様の姿を見かけたら会議室に集まるようにお知らせください!!」
「ああ、分かった分かった……おい、会議室に召集されたのは将軍だけか?先帝も一緒なのか?」
「それは……」
「あん?どうしたんだよ?」
先帝の言葉が出た瞬間に近衛兵が顔色を変えた事にダンテは違和感を抱き、先帝の身に何か起きたのかと考える。近衛兵はしばらくの間は黙っていたが、やがて観念したように報告した。
「先帝様は城内の牢獄へ送り込まれました。これは皇帝陛下の判断です」
「牢獄……だと!?どういう事だ!?」
「わ、我々も詳しい事は知らないんです!!会議室に行けば皇帝陛下が説明されると聞いております!!」
「おい、待て!!どうして先帝が牢獄送りされたんだ!!」
逃げるように報告を終えると近衛兵は立ち去り、そんな彼にダンテは引き留めようとしたが、皇帝の判断と聞いて思い留まる。この国では皇帝こそが絶対の権限を持っており、もしも近衛兵の言葉が真実ならば先帝を地下に送り込んだのは皇帝自身だとダンテは悟る。
「だ、ダンテ様……どういう事でしょうか?先帝様が牢獄送りなどと……」
「そんな馬鹿な!!絶対にあり得ぬ!!」
「いや……嘘を吐いている様子じゃなかった。だが、牢獄だと?どうして陛下はそんな事を……まさか」
ダンテは消え去ったリーリスと直央の二人を思い出し、二人が帝都を抜け出した理由は皇帝が関わっているのではないかと判断する。ダンテは早急に城内に戻る為、兵士に命令を出す。
「馬を用意しろ!!それと冒険者ギルドに立ち寄ってギルドマスターにも城に来るように伝えておけ!!一応はS級冒険者どもにもな!!」
「冒険者にも……ですか?」
「嫌な予感がする……万が一の事を考えてお前等はここに残っていろ。それと街の警備に回している兵士達にも連絡しろ!!」
兵士の命令を与えるとダンテは急ぎ足で城壁を離れようとしたが、一度だけリーリス達が走り去った草原の方向に視線を向けるが、既に姿は見当たらなかった。
(何を考えているのか知らないが、あの魔術師を連れてとっとと戻ってこいよ!!)
二人が城から離れた理由はダンテも知らないが、リーリスが大事な局面で全く無意味な行動を取った事は一度もなく、今回の行動も何か意味があるとダンテは信じていた。
ダンテは慌てて城壁に身を乗り出して様子を伺うと、何故か飛び降りたはずのリーリス達の姿は見えず、代わりに空中で浮揚している「黒渦」が存在した。
「な、なんだありゃ?」
「ダンテ様!!あそこを見てください!!」
「どうした?」
兵士の言葉にダンテは顔を向けると、何時の間にか草原を駆け抜ける直央の姿が存在し、一瞬の間に数百メートルも離れた場所に移動していた。何が起きているのか理解できないが、ダンテはまたリーリスが面倒事に首を突っ込んでいると確信する。
「たく、あの研究馬鹿は何を考えてんだ!?他国の勇者を連れて何処へ行く気だ?」
「ダンテ将軍!!ここにおられましたか!!」
「あん?どうした?」
声を掛けられてダンテは振り返ると、皇帝に直々に使えている近衛兵である事に気付き、疑問を抱く。基本的に近衛兵は皇帝陛下の身辺の身の回りの世話を任されているはずの彼等が自分の元へ訪れた事に違和感を覚えた。
「ダンテ将軍!!皇帝陛下がお呼びです!!すぐに第一会議室にお越し下さい」
「陛下がだと……他の将軍は?」
「既にドリア様、ギリョウ様には声をかけています!!ヒカゲ様は任務中なので連絡の手段はありませんが、配下の方には既に言伝を頼んでいます。リーリス様にも一応は伝えましたが……」
「只事じゃなさそうだな……あいつ、逃げやがったのか?」
「は?」
近衛兵の話を聞いてダンテは直央達が消え去った方向に視線を向け、この状況下でまさか二人で逃げ出したのかと考えてしまう。しかし、ダンテはリーリスとは仲が良いわけではないが国を見捨てるような人間ではないと信じており、今回の行動も何か意味があるのかと考える。
(あの馬鹿、何を考えてんだ……勇者を連れ出したのが気になるな。というか、あいつら勝手に行動して大丈夫なのか?)
エルフ王国の勇者である直央は表向きは帝国に保護されている立場であり、勝手に帝都へ抜け出す事自体が問題である。仮に将軍であるリーリスが手引きした場合でも罪は免れない。
「ダンテ様、リーリス様は何処でしょうか?城内を探しましたが姿が見えず、こちらにいらっしゃるのではないかと思ったのですが……」
「あ~……知るかよ。おい、お前等も見てねえよな?」
「え!?いや、さっき……」
「見てねえよな!?」
「は、はい!!我々も見ていません!!」
ダンテの言葉に彼の配下の兵士達は戸惑うが、ダンテが語気を強めて問い質すと慌てて頷く。その彼等の態度に近衛兵は訝しむが、すぐに他の人間に陛下の命令を知らせるために立ち去ろうとする。
「では我々は失礼します!!もしもリーリス様の姿を見かけたら会議室に集まるようにお知らせください!!」
「ああ、分かった分かった……おい、会議室に召集されたのは将軍だけか?先帝も一緒なのか?」
「それは……」
「あん?どうしたんだよ?」
先帝の言葉が出た瞬間に近衛兵が顔色を変えた事にダンテは違和感を抱き、先帝の身に何か起きたのかと考える。近衛兵はしばらくの間は黙っていたが、やがて観念したように報告した。
「先帝様は城内の牢獄へ送り込まれました。これは皇帝陛下の判断です」
「牢獄……だと!?どういう事だ!?」
「わ、我々も詳しい事は知らないんです!!会議室に行けば皇帝陛下が説明されると聞いております!!」
「おい、待て!!どうして先帝が牢獄送りされたんだ!!」
逃げるように報告を終えると近衛兵は立ち去り、そんな彼にダンテは引き留めようとしたが、皇帝の判断と聞いて思い留まる。この国では皇帝こそが絶対の権限を持っており、もしも近衛兵の言葉が真実ならば先帝を地下に送り込んだのは皇帝自身だとダンテは悟る。
「だ、ダンテ様……どういう事でしょうか?先帝様が牢獄送りなどと……」
「そんな馬鹿な!!絶対にあり得ぬ!!」
「いや……嘘を吐いている様子じゃなかった。だが、牢獄だと?どうして陛下はそんな事を……まさか」
ダンテは消え去ったリーリスと直央の二人を思い出し、二人が帝都を抜け出した理由は皇帝が関わっているのではないかと判断する。ダンテは早急に城内に戻る為、兵士に命令を出す。
「馬を用意しろ!!それと冒険者ギルドに立ち寄ってギルドマスターにも城に来るように伝えておけ!!一応はS級冒険者どもにもな!!」
「冒険者にも……ですか?」
「嫌な予感がする……万が一の事を考えてお前等はここに残っていろ。それと街の警備に回している兵士達にも連絡しろ!!」
兵士の命令を与えるとダンテは急ぎ足で城壁を離れようとしたが、一度だけリーリス達が走り去った草原の方向に視線を向けるが、既に姿は見当たらなかった。
(何を考えているのか知らないが、あの魔術師を連れてとっとと戻ってこいよ!!)
二人が城から離れた理由はダンテも知らないが、リーリスが大事な局面で全く無意味な行動を取った事は一度もなく、今回の行動も何か意味があるとダンテは信じていた。
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