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帝国の危機
空間移動
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「じゃあ、俺の身体にしっかりとしがみついて下さい。振り落とされないように気を付けて下さい」
「いや、それは分かりましたけど……別に縄で縛る必要あるんですか?」
城外へ抜け出した直央は縄を利用してリーリスと自分の身体を縛り付ける。彼女の身体を背負い込んだ状態で縄で胴体を縛り付け、しっかりと固定化する。一応は城の外とはいえ、他の人間に見られたら非常に不味い状況である事は間違いなく、リーリスは他の人間に見られていないのかを警戒しながら直央に尋ねる。
「例の空間魔法で移動するという事は分かりましたけど……どうやってここから移動するんですか?」
「それは今から分かるよ。じゃあ、まずはあの屋根の上に移動しようか」
「え?屋根って……おわっ!?」
話している間にも直央は近くの建物の屋根に視線を向け、空間魔法を発動させる。ほぼ同時に二人の目の前と屋根の上に人間が通れる程の黒渦が誕生し、直央は渦の中に入り込む。
「ほら、移動しましたよ」
「うわ、本当に繋がっているんですね。まるでどこでも〇アみたい……」
「え?どこでもド〇?」
「いえ、何でもないです。この話はここまでにしましょう。これ以上続けるとヤバそうですし……」
空間魔法で移動した感想は特になにも感じられず、黒渦に関しても霧のようなもので特に感触はない。直央の背中の中でリーリスは内心この魔法の恐ろしさを考える。
(もしもエルフ王国とバルトロス帝国が敵対した場合、直央さんのこの能力は厄介ですね。条件はありますけどこの空間魔法は一瞬で長距離を移動できるという点では瞬間移動のような物ですね。もしも空間移動を利用して城内に兵士を送り込まれたら……帝国は為す術がないかもしれません)
今までバルトロス帝国が他国よりも秀でた点があるとすれば異世界人のルノの存在が大きく、竜種を圧倒できる戦闘力を持つ人間などルノしか存在しないだろう。しかし、エルフ王国に召喚された勇者の直央の力も侮れず、彼の空間魔法は使い道によっては大きな脅威になる。
(仮に将来的に帝国と王国が敵対した場合、ルノさんと直央さんだとどちらが厄介なんですかね?今のところは直央さんの力はルノさんに及ばないそうですが、それでも将来的にはルノさんに匹敵する程に成長する可能性もありますね……)
直央は「貧弱」と呼ばれる能力のせいで初期のステータスは最低の状態で召喚されたというが、彼の異能の特徴は「レベル」の上昇率が高く、大量のSPを入手できるという点である。素の能力はルノに及ばずとも、大量の能力をSPを消費して覚えた場合は大幅な能力強化も行えるため、絶対にルノが勝るとは限らない。
(ルノさんが早期熟成型なら直央さんは大器晩成型ですね。ルノさんがいる限りは帝国の一大強国も健在かと思いましたが、これは分からなくなってきましたね……)
現在はルノという存在がいるお陰で帝国は他国から優れていたが、勇者である直央の能力も決して侮れず、将来的にはルノを超える逸材になるかもしれない。
「じゃあ、ここからは急いでいくからリーリスさんも気を付けてね」
「この状態で何を気を付けろというんですか?あ、知り合いに見つかっても新手のSMプレイだと勘違いされないようにマスクでも被りますか?」
「それはちょっと……だいたいマスクを付けると俺の空間魔法も上手く発動しない可能性もあるから」
「冗談ですよ。ルノさんと違って直央さんは冗談が通じにくいタイプですね」
「この状況で冗談を言えるリーリスさんが凄いよ……はあ、リンと比べると背中の感触も微妙だし」
「それは暗に私の胸が小さいと言っているんですか?ねえ?こっち向いて下さいよ」
直央はリーリスの言葉を無視して能力を発動させ、遠方の景色を確認する。観察能力を上昇させる「観察眼」視力を上昇させる「遠視」の技能スキルを発揮し、直央は空間移動を行う。
「ここからは急ぎ足で行くよ!!」
「うわっ!?」
リーリスは振り落とされないように直央にしがみつくと、彼は屋根の上から飛び降りる。そのまま地面に向けて降下する寸前、足元に黒渦を発生させて別の建物の屋根の上に移動を行う。
「一気に行くから気を付けてね!!」
「おわぁっ!?」
跳躍を行う度に黒渦を通過して別の建物の屋根の上に移動を行い、遂には帝都を取り囲む城壁にまで移動を行う。途中、城壁の上で兵士と会話していたダンテが二人の姿を確認して驚きの声を上げた。
「うおっ!?な、何だ!?」
「あ、どうも……」
「ううっ……ちょっと酔ってきました」
「えっ……あの、出来れば背中で吐かないで下さい」
「頑張りますから早く移動してください……あ、ちょっと外出するだけですからお気になさらずに」
「はあっ!?おい、どういう意味だ!?」
唐突に現れた二人にダンテは激しく混乱するが、今は状況を説明する暇もないので直央はリーリスを背負ったまま城壁を飛び降りる。その光景に城壁に立っていた兵士達は悲鳴を上げ、ダンテも目を見開く。
「いや、それは分かりましたけど……別に縄で縛る必要あるんですか?」
城外へ抜け出した直央は縄を利用してリーリスと自分の身体を縛り付ける。彼女の身体を背負い込んだ状態で縄で胴体を縛り付け、しっかりと固定化する。一応は城の外とはいえ、他の人間に見られたら非常に不味い状況である事は間違いなく、リーリスは他の人間に見られていないのかを警戒しながら直央に尋ねる。
「例の空間魔法で移動するという事は分かりましたけど……どうやってここから移動するんですか?」
「それは今から分かるよ。じゃあ、まずはあの屋根の上に移動しようか」
「え?屋根って……おわっ!?」
話している間にも直央は近くの建物の屋根に視線を向け、空間魔法を発動させる。ほぼ同時に二人の目の前と屋根の上に人間が通れる程の黒渦が誕生し、直央は渦の中に入り込む。
「ほら、移動しましたよ」
「うわ、本当に繋がっているんですね。まるでどこでも〇アみたい……」
「え?どこでもド〇?」
「いえ、何でもないです。この話はここまでにしましょう。これ以上続けるとヤバそうですし……」
空間魔法で移動した感想は特になにも感じられず、黒渦に関しても霧のようなもので特に感触はない。直央の背中の中でリーリスは内心この魔法の恐ろしさを考える。
(もしもエルフ王国とバルトロス帝国が敵対した場合、直央さんのこの能力は厄介ですね。条件はありますけどこの空間魔法は一瞬で長距離を移動できるという点では瞬間移動のような物ですね。もしも空間移動を利用して城内に兵士を送り込まれたら……帝国は為す術がないかもしれません)
今までバルトロス帝国が他国よりも秀でた点があるとすれば異世界人のルノの存在が大きく、竜種を圧倒できる戦闘力を持つ人間などルノしか存在しないだろう。しかし、エルフ王国に召喚された勇者の直央の力も侮れず、彼の空間魔法は使い道によっては大きな脅威になる。
(仮に将来的に帝国と王国が敵対した場合、ルノさんと直央さんだとどちらが厄介なんですかね?今のところは直央さんの力はルノさんに及ばないそうですが、それでも将来的にはルノさんに匹敵する程に成長する可能性もありますね……)
直央は「貧弱」と呼ばれる能力のせいで初期のステータスは最低の状態で召喚されたというが、彼の異能の特徴は「レベル」の上昇率が高く、大量のSPを入手できるという点である。素の能力はルノに及ばずとも、大量の能力をSPを消費して覚えた場合は大幅な能力強化も行えるため、絶対にルノが勝るとは限らない。
(ルノさんが早期熟成型なら直央さんは大器晩成型ですね。ルノさんがいる限りは帝国の一大強国も健在かと思いましたが、これは分からなくなってきましたね……)
現在はルノという存在がいるお陰で帝国は他国から優れていたが、勇者である直央の能力も決して侮れず、将来的にはルノを超える逸材になるかもしれない。
「じゃあ、ここからは急いでいくからリーリスさんも気を付けてね」
「この状態で何を気を付けろというんですか?あ、知り合いに見つかっても新手のSMプレイだと勘違いされないようにマスクでも被りますか?」
「それはちょっと……だいたいマスクを付けると俺の空間魔法も上手く発動しない可能性もあるから」
「冗談ですよ。ルノさんと違って直央さんは冗談が通じにくいタイプですね」
「この状況で冗談を言えるリーリスさんが凄いよ……はあ、リンと比べると背中の感触も微妙だし」
「それは暗に私の胸が小さいと言っているんですか?ねえ?こっち向いて下さいよ」
直央はリーリスの言葉を無視して能力を発動させ、遠方の景色を確認する。観察能力を上昇させる「観察眼」視力を上昇させる「遠視」の技能スキルを発揮し、直央は空間移動を行う。
「ここからは急ぎ足で行くよ!!」
「うわっ!?」
リーリスは振り落とされないように直央にしがみつくと、彼は屋根の上から飛び降りる。そのまま地面に向けて降下する寸前、足元に黒渦を発生させて別の建物の屋根の上に移動を行う。
「一気に行くから気を付けてね!!」
「おわぁっ!?」
跳躍を行う度に黒渦を通過して別の建物の屋根の上に移動を行い、遂には帝都を取り囲む城壁にまで移動を行う。途中、城壁の上で兵士と会話していたダンテが二人の姿を確認して驚きの声を上げた。
「うおっ!?な、何だ!?」
「あ、どうも……」
「ううっ……ちょっと酔ってきました」
「えっ……あの、出来れば背中で吐かないで下さい」
「頑張りますから早く移動してください……あ、ちょっと外出するだけですからお気になさらずに」
「はあっ!?おい、どういう意味だ!?」
唐突に現れた二人にダンテは激しく混乱するが、今は状況を説明する暇もないので直央はリーリスを背負ったまま城壁を飛び降りる。その光景に城壁に立っていた兵士達は悲鳴を上げ、ダンテも目を見開く。
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