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帝国の危機
直央の空間魔法
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「リーリスさん、やっぱり俺はルノ君を探してみるよ」
「本気ですか?でも、探すと言ってもどうやって……」
「とりあえず、その白原に向かいます」
「白原ですか……でも、ここから移動するとなると相当に時間が掛かりますよ?」
帝都から白原までは馬で移動したとしても数日は掛かるため、直央が今から移動しても帝国軍は既に皇帝の命令を受けて北原に向かっているだろう。それでは本末転倒のように思われるが、直央は掌を差し出す。
「本当は他の人に見せてはいけないんだけど……俺の能力を教えます」
「能力?それは例の「貧弱」の異能の事ですか?」
「いや、実は俺はこの世界に召喚された時から扱える魔法があるんだ」
直央は意識を集中させ、リーリスの前に掌を構える。やがて直央の前に「黒色の渦巻き」が誕生し、人間が通れる程の黒渦が誕生した。最初にそれを見たリーリスは魔術師が扱える「アイテムボックス」のスキルかと思ったが、外見が少々異なる。
「これは……何ですか?アイテムボックスを発動した時に誕生する黒渦と似ていますけど……」
「これは「空間魔法」だよ。魔術師の使うアイテムボックスの更に上位互換に当たる魔法だと思う。この状態だと物体を異空間に回収する事が出来るけど、この黒渦を更に別の場所に誕生させると……」
今度は別の場所に直央が掌を構えた瞬間、新たな黒渦が誕生し、それを確認した直央は右手のみを最初に生成した黒渦の中に伸ばす。通常のアイテムボックスの場合は生物を取り込む事は出来ないが、直央の右手は黒渦の中に飲み込まれ、別の位置に発生させた黒渦から直央の右腕が出現した。
「うわっ!?これは凄い!!この2つの黒渦を繋げて別の場所に移動する事が出来るんですか?」
「そういう事です。これを利用すればどんな距離でも一瞬で移動出来ます。この能力を使って俺は短期間で王国から帝都まで移動しました。ちなみに俺はこの移動法を空間移動と呼んでいます」
「はあっ……ルノさんもたいがいですけど、直央さんも地味に凄い能力を持っているんですね」
ルノでさえも真似できない方法を扱える直央にリーリスは素直に感心する一方、これほどの凄い能力を持っているのならば討伐軍を王国に派遣させる事も可能ではないのか疑問を抱く。
「でも、こんなに凄い魔法があるなら簡単に帰れちゃうじゃないですか。どうして早く教えてくれなかったんですか?」
「いや、実はこの空間魔法にも制限があるんです。一つ目はこの黒渦を発生する事が出来る場所は視界の範囲内のみ、つまりは視界の範囲外の場所には移動出来ないです。あ、でも俺が黒渦を固定しておけば視界の範囲外に移動しても黒渦は消失しないので別の場所から移動する事は出来ます」
「なるほど……ん?なら王国にその空間魔法の黒渦を残して置けば良かったじゃないですか。そうすればいつでも帰れるんじゃないですか?」
「この空間魔法は魔力は消耗しないけど、俺の意識が乱れたり途切れると強制的に解除されるんです……」
「ああ、つまり眠ったり、気絶したり、混乱すると魔法の効果が切れちゃうんですね」
直央の空間魔法は様々な制限が存在するらしく、決して万能とは言い切れない。しかし、それでも使い方によってはルノの初級魔法にも劣らない程に素晴らしい能力である事は間違いなく、直央はこの空間魔法を利用して王国から帝都まで1日も掛からずに移動したという。
「俺は観察眼、遠視、暗視、視力強化、予測眼の技能スキルを習得しています。条件が良ければ数キロ先の場所まで空間移動で一気に移動出来るんです」
「なるほど……確かに帝都の周囲は見晴らしの良い草原が広がっていますからね。だから直央さんだけが昆虫種の追跡を逃れて帝国領まで逃げ切れたんですね」
「そうです。それにここに来る途中で白原にも立ち寄っているので道は覚えていますから、俺もルノ君を探してみます!!」
「あ、ちょっと待ってください。そう言う事なら私も一緒に連れて行って下さいよ。その空間移動というのは他の人間も移動出来るんですか?」
早々に白原に向かおうとする直央をリーリスが引き留めると、直央は困惑した風に答える。
「一応は出来ますけど……良いんですか?リーリスさんは将軍なのに城から勝手に離れても大丈夫なんですか?」
「どうせ私はお飾りの将軍ですからね。能力を買われて将軍職を無理やり押し付けられただけですから気にしないで下さい。ふうっ……自分が完璧美少女である事が恨めしいです」
「えっと……今のは笑う所ですか?」
「何でですかっ!!従弟のルノさんと同様失礼な人ですね!!」
「す、すいません」
結局はリーリスも同行する事を受け入れ、直央は一先ずは城の外へ抜け出してから空間移動を行う事にした。まずは白原に向かい、そしてルノの手掛かりを探す。
「本気ですか?でも、探すと言ってもどうやって……」
「とりあえず、その白原に向かいます」
「白原ですか……でも、ここから移動するとなると相当に時間が掛かりますよ?」
帝都から白原までは馬で移動したとしても数日は掛かるため、直央が今から移動しても帝国軍は既に皇帝の命令を受けて北原に向かっているだろう。それでは本末転倒のように思われるが、直央は掌を差し出す。
「本当は他の人に見せてはいけないんだけど……俺の能力を教えます」
「能力?それは例の「貧弱」の異能の事ですか?」
「いや、実は俺はこの世界に召喚された時から扱える魔法があるんだ」
直央は意識を集中させ、リーリスの前に掌を構える。やがて直央の前に「黒色の渦巻き」が誕生し、人間が通れる程の黒渦が誕生した。最初にそれを見たリーリスは魔術師が扱える「アイテムボックス」のスキルかと思ったが、外見が少々異なる。
「これは……何ですか?アイテムボックスを発動した時に誕生する黒渦と似ていますけど……」
「これは「空間魔法」だよ。魔術師の使うアイテムボックスの更に上位互換に当たる魔法だと思う。この状態だと物体を異空間に回収する事が出来るけど、この黒渦を更に別の場所に誕生させると……」
今度は別の場所に直央が掌を構えた瞬間、新たな黒渦が誕生し、それを確認した直央は右手のみを最初に生成した黒渦の中に伸ばす。通常のアイテムボックスの場合は生物を取り込む事は出来ないが、直央の右手は黒渦の中に飲み込まれ、別の位置に発生させた黒渦から直央の右腕が出現した。
「うわっ!?これは凄い!!この2つの黒渦を繋げて別の場所に移動する事が出来るんですか?」
「そういう事です。これを利用すればどんな距離でも一瞬で移動出来ます。この能力を使って俺は短期間で王国から帝都まで移動しました。ちなみに俺はこの移動法を空間移動と呼んでいます」
「はあっ……ルノさんもたいがいですけど、直央さんも地味に凄い能力を持っているんですね」
ルノでさえも真似できない方法を扱える直央にリーリスは素直に感心する一方、これほどの凄い能力を持っているのならば討伐軍を王国に派遣させる事も可能ではないのか疑問を抱く。
「でも、こんなに凄い魔法があるなら簡単に帰れちゃうじゃないですか。どうして早く教えてくれなかったんですか?」
「いや、実はこの空間魔法にも制限があるんです。一つ目はこの黒渦を発生する事が出来る場所は視界の範囲内のみ、つまりは視界の範囲外の場所には移動出来ないです。あ、でも俺が黒渦を固定しておけば視界の範囲外に移動しても黒渦は消失しないので別の場所から移動する事は出来ます」
「なるほど……ん?なら王国にその空間魔法の黒渦を残して置けば良かったじゃないですか。そうすればいつでも帰れるんじゃないですか?」
「この空間魔法は魔力は消耗しないけど、俺の意識が乱れたり途切れると強制的に解除されるんです……」
「ああ、つまり眠ったり、気絶したり、混乱すると魔法の効果が切れちゃうんですね」
直央の空間魔法は様々な制限が存在するらしく、決して万能とは言い切れない。しかし、それでも使い方によってはルノの初級魔法にも劣らない程に素晴らしい能力である事は間違いなく、直央はこの空間魔法を利用して王国から帝都まで1日も掛からずに移動したという。
「俺は観察眼、遠視、暗視、視力強化、予測眼の技能スキルを習得しています。条件が良ければ数キロ先の場所まで空間移動で一気に移動出来るんです」
「なるほど……確かに帝都の周囲は見晴らしの良い草原が広がっていますからね。だから直央さんだけが昆虫種の追跡を逃れて帝国領まで逃げ切れたんですね」
「そうです。それにここに来る途中で白原にも立ち寄っているので道は覚えていますから、俺もルノ君を探してみます!!」
「あ、ちょっと待ってください。そう言う事なら私も一緒に連れて行って下さいよ。その空間移動というのは他の人間も移動出来るんですか?」
早々に白原に向かおうとする直央をリーリスが引き留めると、直央は困惑した風に答える。
「一応は出来ますけど……良いんですか?リーリスさんは将軍なのに城から勝手に離れても大丈夫なんですか?」
「どうせ私はお飾りの将軍ですからね。能力を買われて将軍職を無理やり押し付けられただけですから気にしないで下さい。ふうっ……自分が完璧美少女である事が恨めしいです」
「えっと……今のは笑う所ですか?」
「何でですかっ!!従弟のルノさんと同様失礼な人ですね!!」
「す、すいません」
結局はリーリスも同行する事を受け入れ、直央は一先ずは城の外へ抜け出してから空間移動を行う事にした。まずは白原に向かい、そしてルノの手掛かりを探す。
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