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帝国の危機
ルノの行方
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(もしかしてアイラ・ハヅキは別の方法で精霊薬を作り出す手段を見つけたんでしょうか?だとしたら、どうしてその方法をエルフ王国に伝えなかったのか……何か秘密があるかもしれませんね)
リーリスが歴史上の人物の中で唯一尊敬する「アイラ・ハヅキ」は優秀な薬師でもあり、彼女の残したと思われる調合本には精霊薬の製造法も記されていた。アイラ・ハヅキが残した資料によれば精霊薬の製造に必要な素材は現在でも入手可能であり、決して製造出来ないわけではない。しかし、エルフ王国に伝わる精霊薬の製造法は現在では再現不可能だと直央は教わっている点でリーリスは精霊薬の製造法は2つ存在する事を知る。
(この事実は隠していた方がいいですね。今まではエルフ王国でしか作り出されないと思われていた精霊薬の製造法が他国に知られたら大変な事になりそうですし、それにあの本を狙う輩が現れるかもしれません。それだけは避けねば!!)
折角入手した伝説の薬師の調合本を他の人間に渡してはならないと判断し、リーリスは精霊薬の製造法が2つ存在する事を隠す事にした。幸いにも彼女以外に精霊薬の製造法が複数存在する事を知っている人間は居らず、他の人間に知られないように気を配る必要が出来た。
「ふむ、話は分かったが精霊薬がエルフ王国の世界樹に存在したとは……しかし、我等が出向いた所でエルフ王国は精霊薬を渡すのか?話を聞く限りでは王族か勇者以外の人間に使用する事は禁じられているようだが……」
「必ず説得します。それに国の危機を救ってもらえればきっと国王様も精霊薬を渡してくれるはずです!!」
「確かに北原のヨウラクより、エルフ王国の方が僅かに近いとは思いますけど……それでも危険な事に代わりありません。そもそも肝心の昆虫種の討伐方法も定まってませんからね」
距離的には北原よりもエルフ王国の方が帝都に近いが、重要なのは帝国の討伐軍がエルフ王国の軍隊を破った昆虫種の大群を討伐出来るかである。ルノが健在ならばどうにか出来たかもしれないが、その肝心のルノも行方不明のままであり、現状では帝国軍だけで対処しなければならない。
「仮にエルフ王国に向かったとしても王女様はどうするんですか?エルフ王国の昆虫種の討伐に成功したとしてもきっと相当な時間が掛かるはずです。それに精霊薬を国王が本当に引き渡すとは限りませんし……やっぱり、不安要素が多いですね」
「うむ。弟が納得するとは思えんな……」
「それは……」
直央は何も言い返せず、病で弱っている王女を救い出すには精霊薬が必要不可欠なのだが、それにはユニコーンを捕獲してリーリスが精霊薬を作りだすか、あるいはエルフ王国に赴いて昆虫種を撃退し、精霊薬を譲渡するように交渉するしかない。どちらの方法も危険が大きく、成功する確率は低い。
「どうします?一応、皇帝に面会してエルフ王国の精霊薬の件を伝えてみます?」
「止めておいた方が良い。この儂ですら弟は話を聞かず、牢に送り込んだ……あやつの意思は固い。命令が覆ることはないだろう」
「先帝様、そろそろ……」
黙って先帝と直央達の会話を見過ごしていた兵士達が話しかけ、彼等は地下牢へ先帝を送り込む事を命令されている。皇帝の命令に逆らう事は出来ず、心苦しい表情を浮かべながら兵士達は先帝を取り囲む。そんな彼等に先帝は溜息を吐き出し、最後に直央とリーリスに告げる。
「今回の問題を解決する方法があるとすればルノ殿だけだ……彼が戻ってくればどうにか出来るかも知れん」
「困ったときのルノさん頼りですね」
「そう言われては何も言い返せないのが情けないのう……しかし、ルノ殿が戻ってくれば今回の事態もどうにか出来るかも知れん」
「ルノ君……」
従弟であるルノの噂は直央も耳にしており、エルフ王国にもルノの武勇伝は届いている。曰く、竜種を薙ぎ倒し、多数の魔獣を従え、帝国の危機を幾度も救った英雄と聞いていた。直央も最初の目的は帝国軍ではなく、ルノ個人に救援を求めるために訪れた事を思い出す。
(ルノ君を見つけ出せれば……でも、どうやって?)
直央はルノの屋敷に残されていた魔王軍の幹部が書き記した手紙の存在を思い出し、手紙に記された場所へ向かえば消えたルノの手掛かりが掴めるのではないかと考え、直央はリーリスに問い質す。
「リーリスさん。ルノ君の捜索を行っている部隊から何も情報は入ってないんですか?」
「そうですね……ヒカゲさんが頑張って調査しているようですけど、白原に築いた要塞跡地にルノさんが何者かと戦った痕跡は残っていたようです。ですけど、その後の手掛かりが掴めていないんですよ」
「そうですか……」
「うむ……すまないがもう儂ではこれ以上は力になれん。しかし、何か分かったら牢へ来てくれ」
やはり現状ではルノを探し出すのは難しく、先帝は兵士に連れられて地下牢へ向かう。帝国の中では最も影響力のある人物が地下牢へ送り込まれてしまい、直央はどうする事も出来ない自分の無力さに嫌気が差す。
リーリスが歴史上の人物の中で唯一尊敬する「アイラ・ハヅキ」は優秀な薬師でもあり、彼女の残したと思われる調合本には精霊薬の製造法も記されていた。アイラ・ハヅキが残した資料によれば精霊薬の製造に必要な素材は現在でも入手可能であり、決して製造出来ないわけではない。しかし、エルフ王国に伝わる精霊薬の製造法は現在では再現不可能だと直央は教わっている点でリーリスは精霊薬の製造法は2つ存在する事を知る。
(この事実は隠していた方がいいですね。今まではエルフ王国でしか作り出されないと思われていた精霊薬の製造法が他国に知られたら大変な事になりそうですし、それにあの本を狙う輩が現れるかもしれません。それだけは避けねば!!)
折角入手した伝説の薬師の調合本を他の人間に渡してはならないと判断し、リーリスは精霊薬の製造法が2つ存在する事を隠す事にした。幸いにも彼女以外に精霊薬の製造法が複数存在する事を知っている人間は居らず、他の人間に知られないように気を配る必要が出来た。
「ふむ、話は分かったが精霊薬がエルフ王国の世界樹に存在したとは……しかし、我等が出向いた所でエルフ王国は精霊薬を渡すのか?話を聞く限りでは王族か勇者以外の人間に使用する事は禁じられているようだが……」
「必ず説得します。それに国の危機を救ってもらえればきっと国王様も精霊薬を渡してくれるはずです!!」
「確かに北原のヨウラクより、エルフ王国の方が僅かに近いとは思いますけど……それでも危険な事に代わりありません。そもそも肝心の昆虫種の討伐方法も定まってませんからね」
距離的には北原よりもエルフ王国の方が帝都に近いが、重要なのは帝国の討伐軍がエルフ王国の軍隊を破った昆虫種の大群を討伐出来るかである。ルノが健在ならばどうにか出来たかもしれないが、その肝心のルノも行方不明のままであり、現状では帝国軍だけで対処しなければならない。
「仮にエルフ王国に向かったとしても王女様はどうするんですか?エルフ王国の昆虫種の討伐に成功したとしてもきっと相当な時間が掛かるはずです。それに精霊薬を国王が本当に引き渡すとは限りませんし……やっぱり、不安要素が多いですね」
「うむ。弟が納得するとは思えんな……」
「それは……」
直央は何も言い返せず、病で弱っている王女を救い出すには精霊薬が必要不可欠なのだが、それにはユニコーンを捕獲してリーリスが精霊薬を作りだすか、あるいはエルフ王国に赴いて昆虫種を撃退し、精霊薬を譲渡するように交渉するしかない。どちらの方法も危険が大きく、成功する確率は低い。
「どうします?一応、皇帝に面会してエルフ王国の精霊薬の件を伝えてみます?」
「止めておいた方が良い。この儂ですら弟は話を聞かず、牢に送り込んだ……あやつの意思は固い。命令が覆ることはないだろう」
「先帝様、そろそろ……」
黙って先帝と直央達の会話を見過ごしていた兵士達が話しかけ、彼等は地下牢へ先帝を送り込む事を命令されている。皇帝の命令に逆らう事は出来ず、心苦しい表情を浮かべながら兵士達は先帝を取り囲む。そんな彼等に先帝は溜息を吐き出し、最後に直央とリーリスに告げる。
「今回の問題を解決する方法があるとすればルノ殿だけだ……彼が戻ってくればどうにか出来るかも知れん」
「困ったときのルノさん頼りですね」
「そう言われては何も言い返せないのが情けないのう……しかし、ルノ殿が戻ってくれば今回の事態もどうにか出来るかも知れん」
「ルノ君……」
従弟であるルノの噂は直央も耳にしており、エルフ王国にもルノの武勇伝は届いている。曰く、竜種を薙ぎ倒し、多数の魔獣を従え、帝国の危機を幾度も救った英雄と聞いていた。直央も最初の目的は帝国軍ではなく、ルノ個人に救援を求めるために訪れた事を思い出す。
(ルノ君を見つけ出せれば……でも、どうやって?)
直央はルノの屋敷に残されていた魔王軍の幹部が書き記した手紙の存在を思い出し、手紙に記された場所へ向かえば消えたルノの手掛かりが掴めるのではないかと考え、直央はリーリスに問い質す。
「リーリスさん。ルノ君の捜索を行っている部隊から何も情報は入ってないんですか?」
「そうですね……ヒカゲさんが頑張って調査しているようですけど、白原に築いた要塞跡地にルノさんが何者かと戦った痕跡は残っていたようです。ですけど、その後の手掛かりが掴めていないんですよ」
「そうですか……」
「うむ……すまないがもう儂ではこれ以上は力になれん。しかし、何か分かったら牢へ来てくれ」
やはり現状ではルノを探し出すのは難しく、先帝は兵士に連れられて地下牢へ向かう。帝国の中では最も影響力のある人物が地下牢へ送り込まれてしまい、直央はどうする事も出来ない自分の無力さに嫌気が差す。
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