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帝国の危機
精霊薬の在処
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――直央がこの世界に召喚されてから数か月が経過し、エルフ王国のリン将軍が世話役として常に行動を共にしていた。彼女は身の回りの世話は勿論、王国に関する様々な情報を教えてくれた。共に過ごすうちに直央はリンと恋仲になり、日の国に訪れていた時には共に夜を過ごす関係にまで発展していた。
リンが直央に近づいたのはエルフ王国が彼をこの国に引き留めるためという思惑もあっただろうが、それでも直央とリンはお互いに愛し合い、信頼していた。そんなある日、直央はリンから精霊薬の存在を聞かされた事がある。本来は重要機密なのだが、既に直央はエルフ王国にとっては重要な人物として認識されており、リンは精霊薬の秘密を語る。
『現在、全ての精霊薬はこの世界樹の頂上に保管されています。王族しか立ち寄る事が許されていない宝物庫に保管されているのです』
『精霊薬?』
『伝承では全ての病、怪我を治療する事が出来ると言われている回復薬です。過去に精霊薬を利用して死亡した人間さえも蘇らせたことがあると言われています。まあ、流石に死人が生き返るとは思えませんが……』
ベッドの中でお互いに抱き合いながら直央はリンと会話を交わし、どうして急に彼女が精霊薬という存在を教えてくれたのか不思議に思う。
『どうして急にそんな話を?』
『……実は精霊薬は本来は勇者様のために作り出された代物なのです。遥か昔、まだバルトロス帝国が建国される前の時代に初代勇者の一人がこの精霊薬を作り出しました。当時のエルフ王国は精霊薬の材料を渡す事を条件に精霊薬の製造方法を教わりました。しかし、現在では精霊薬は製造する事が出来ないのです』
『え?』
『精霊薬を製造するには莫大な費用と貴重な材料を必要とするのです。だから現在のエルフ王国では4つの精霊薬しか存在せず、そして精霊薬を使用する事は許されていません』
リンの話によればエルフ王国では精霊薬の製造法を発見したのは森人族ではなく初代勇者の一人らしく、彼女と契約を交わしてエルフ王国は精霊薬の製造法を知ることが出来た。しかし、現在では教わった製造法の再現も難しく、過去に作り出された精霊薬しか存在しない。
『精霊薬の使用が許されているのは国家の危機が陥った時だけです。だから使用される事があるとすれば王族の方々や勇者である直央様が取り返しのつかない病気や怪我を負った時でしょう』
『王族はともかく、どうして部外者の俺が……?』
『直央様はもう既にエルフ王国にはなくてはならない存在なのです。それに精霊薬が製作された本当の理由は勇者を救うために作り出されたのです。実際に初代勇者はエルフ王国が今後召喚される勇者の助力を行う事を条件に精霊薬の製造法を明かしたと伝わっています』
精霊薬の使用が許可されるのは国家の大事が起きた時だけであり、決して私用では使ってはならないという法律が定められ、だからこそエルフ王国はバルトロス帝国の要求を断った事という。
『先日、バルトロス帝国から精霊薬を要求されました。しかし、国王様はそれをお断りになったのも初代勇者との古の契約を守ったからです。精霊薬はあくまでもエルフ王国の管理下に置き、王族と勇者のみ使用しなければならない……エルフは契約を重んじます。だから何があろうと他者に渡す訳にはいかないのです』
『そう、なんですか?』
『この話は直央様は勇者だから話しました。しかし、本来は誰にも話してはいけません。決して口外しないで下さいね……私が怒られますから』
身体を抱き締めながら困った風に笑うリンに対し、直央は笑顔で頷く。しかし、結局は彼女との約束は果たせず、直央はエルフ王国の危機を救うために帝国の人間に精霊薬の秘密を明かした――
「――精霊薬は確かに存在します。だけど、本来は他国に渡すわけにはいかない事情があった……だからエルフ王国は要求を拒んだんです」
「なんと……そのような事情があったのか」
「なるほど、まさか精霊薬にそんな秘密があったとは……ん?という事は私が見つけた本の内容は……?」
最初に初代勇者が作り出した精霊薬をエルフ王国は保存しており、初代勇者達は後々に召喚されるであろう新たな勇者のために精霊薬の製造法をエルフ王国に明かした事になる。しかし、その製造法も現在では再現が出来ず、精霊薬を作り出せない以上は迂闊に貴重な精霊薬の使用は控えなければならない。
バルトロス帝国の王女が重い病を患っている事はエルフ王国も承知済みだが、それでも勇者と交わした契約は「勇者かあるいはエルフ王国の王族以外の人間に使用してはならない」という内容のため、エルフ王国は精霊薬の提供を拒んだ事になる。
しかし、ここで疑問があるのはリーリスが所有している「アイラ・ハヅキ」の調合本の存在であり、この人物は初代勇者が死去してから数百年後の時代に誕生した人物である。アイラが残した「精霊薬」の製造法は現在の技術でも再現が可能であり、エルフ王国に伝わっている精霊薬の製造法とは異なる。この事からアイラは初代勇者が生み出した精霊薬の製造法とは異なる方法で精霊薬を生産していた事になる。
リンが直央に近づいたのはエルフ王国が彼をこの国に引き留めるためという思惑もあっただろうが、それでも直央とリンはお互いに愛し合い、信頼していた。そんなある日、直央はリンから精霊薬の存在を聞かされた事がある。本来は重要機密なのだが、既に直央はエルフ王国にとっては重要な人物として認識されており、リンは精霊薬の秘密を語る。
『現在、全ての精霊薬はこの世界樹の頂上に保管されています。王族しか立ち寄る事が許されていない宝物庫に保管されているのです』
『精霊薬?』
『伝承では全ての病、怪我を治療する事が出来ると言われている回復薬です。過去に精霊薬を利用して死亡した人間さえも蘇らせたことがあると言われています。まあ、流石に死人が生き返るとは思えませんが……』
ベッドの中でお互いに抱き合いながら直央はリンと会話を交わし、どうして急に彼女が精霊薬という存在を教えてくれたのか不思議に思う。
『どうして急にそんな話を?』
『……実は精霊薬は本来は勇者様のために作り出された代物なのです。遥か昔、まだバルトロス帝国が建国される前の時代に初代勇者の一人がこの精霊薬を作り出しました。当時のエルフ王国は精霊薬の材料を渡す事を条件に精霊薬の製造方法を教わりました。しかし、現在では精霊薬は製造する事が出来ないのです』
『え?』
『精霊薬を製造するには莫大な費用と貴重な材料を必要とするのです。だから現在のエルフ王国では4つの精霊薬しか存在せず、そして精霊薬を使用する事は許されていません』
リンの話によればエルフ王国では精霊薬の製造法を発見したのは森人族ではなく初代勇者の一人らしく、彼女と契約を交わしてエルフ王国は精霊薬の製造法を知ることが出来た。しかし、現在では教わった製造法の再現も難しく、過去に作り出された精霊薬しか存在しない。
『精霊薬の使用が許されているのは国家の危機が陥った時だけです。だから使用される事があるとすれば王族の方々や勇者である直央様が取り返しのつかない病気や怪我を負った時でしょう』
『王族はともかく、どうして部外者の俺が……?』
『直央様はもう既にエルフ王国にはなくてはならない存在なのです。それに精霊薬が製作された本当の理由は勇者を救うために作り出されたのです。実際に初代勇者はエルフ王国が今後召喚される勇者の助力を行う事を条件に精霊薬の製造法を明かしたと伝わっています』
精霊薬の使用が許可されるのは国家の大事が起きた時だけであり、決して私用では使ってはならないという法律が定められ、だからこそエルフ王国はバルトロス帝国の要求を断った事という。
『先日、バルトロス帝国から精霊薬を要求されました。しかし、国王様はそれをお断りになったのも初代勇者との古の契約を守ったからです。精霊薬はあくまでもエルフ王国の管理下に置き、王族と勇者のみ使用しなければならない……エルフは契約を重んじます。だから何があろうと他者に渡す訳にはいかないのです』
『そう、なんですか?』
『この話は直央様は勇者だから話しました。しかし、本来は誰にも話してはいけません。決して口外しないで下さいね……私が怒られますから』
身体を抱き締めながら困った風に笑うリンに対し、直央は笑顔で頷く。しかし、結局は彼女との約束は果たせず、直央はエルフ王国の危機を救うために帝国の人間に精霊薬の秘密を明かした――
「――精霊薬は確かに存在します。だけど、本来は他国に渡すわけにはいかない事情があった……だからエルフ王国は要求を拒んだんです」
「なんと……そのような事情があったのか」
「なるほど、まさか精霊薬にそんな秘密があったとは……ん?という事は私が見つけた本の内容は……?」
最初に初代勇者が作り出した精霊薬をエルフ王国は保存しており、初代勇者達は後々に召喚されるであろう新たな勇者のために精霊薬の製造法をエルフ王国に明かした事になる。しかし、その製造法も現在では再現が出来ず、精霊薬を作り出せない以上は迂闊に貴重な精霊薬の使用は控えなければならない。
バルトロス帝国の王女が重い病を患っている事はエルフ王国も承知済みだが、それでも勇者と交わした契約は「勇者かあるいはエルフ王国の王族以外の人間に使用してはならない」という内容のため、エルフ王国は精霊薬の提供を拒んだ事になる。
しかし、ここで疑問があるのはリーリスが所有している「アイラ・ハヅキ」の調合本の存在であり、この人物は初代勇者が死去してから数百年後の時代に誕生した人物である。アイラが残した「精霊薬」の製造法は現在の技術でも再現が可能であり、エルフ王国に伝わっている精霊薬の製造法とは異なる。この事からアイラは初代勇者が生み出した精霊薬の製造法とは異なる方法で精霊薬を生産していた事になる。
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