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帝国の危機
直央の懇願
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――リーリスと共に直央は皇帝がいるというジャンヌの部屋の元へ向かう途中、兵士に連行される先帝の姿を見かける。沈痛な表情で兵士に囲まれながら移動する彼を見て真っ先にリーリスは驚いた声を上げた。
「ちょ、何してるんですかっ!?何事ですか?」
「おお、リーリスか……すまぬ、儂では止められなかった」
「どういう事です?ちょっと、離れて下さいよ!!」
「申し訳ありませんリーリス様……これは皇帝陛下の命令です。先帝様は地下牢へ送らねばなりません」
「地下牢!?どう言う事なんですか?」
兵士達に下がるように命じても彼等は言う事を聞かず、先帝を歩かせる。その光景を見て異常を察したリーリスと直央は彼等の後に続く。
「どういう事ですか?何があったんです!!」
「弟の……皇帝陛下の命令だ。軍隊が北原から戻ってくるまで儂は地下牢で監禁される事になる」
「そんな無茶苦茶な……!!」
「我々も本意ではないのです!!しかし、皇帝陛下の命令には逆らえません……!!」
皇帝の兄であり、先代の皇帝でもあるバルトスは民衆の支持や兵士達の人望は現皇帝よりも上である。しかし、バルトロス王国では皇帝の権力は絶対のため、いくら先代の皇帝であろうと逆らえる事は出来ない。
「自分の兄弟を地下牢に送るなんて……皇帝陛下は何を考えているんですか!!」
「貴様!!皇帝陛下を侮辱するか!!」
「止めよ!!ナオ殿は異国から訪れた人間、大目に見てやれ」
「は、はい……」
直央が我慢できずに皇帝の不満を口にすると兵士達が武器を構えようとするが、先帝がそれを抑える。これから地下牢に送り込まれるとはいえ、先帝の事を慕う人間は多い。しかし、皇帝が許すまで地下牢に投獄される事は間違いなく、もう皇帝を止める事は出来ない。
「すまないナオ殿……儂も説得をしたのだが弟の意思は固い。このままでは集めた軍隊は北原に向かってしまうだろう」
「そんな……」
「もう弟を止める事は出来ん。しかし、このまま見過ごせばとんでもない事態に陥る。下手をすれば巨人国を敵に回す事になるかもしれん。いや、もしかしたら他の国も……」
同盟国が危機であるというのに北原に軍隊を出兵させれば当然だが他の諸国から避難を浴びるだろう。巨人国は当然として巨人国と同盟国である獣人国も動き出し、風前の灯火のエルフ王国へも再び出兵する可能性もある。どうにか止めなければ帝国も危機に晒されてしまうが、今の先帝では皇帝を引き留める事は出来なかった。
「せめてジャンヌの容態が回復すれば希望はあるが……どうにもならんのかリーリス?」
「無理です。ユニコーンの一本角を欠片でもいいので集める事が出来れば精霊薬の調合に取り掛かれますが、その肝心のユニコーンが北原にいる以上はどうしようも……」
「ちょっと待って!!」
二人の会話を聞いていた直央が口を挟み、何事かと全員が彼に振り返る。直央は考え込むように顎に手を当てて何かを思い出したように呟く。
「精霊薬……エルフ王国の秘薬の事だよね」
「そうですけど……あ、そういえば直央さんはエルフ王国から来たんですよね!?」
「という事は精霊薬の在処を知っておるのか!?」
精霊薬は元々はエルフ王国が所有する希少な回復薬だが、エルフ王国に召喚された直央は精霊薬の在処を知っていた。
「知っています。本当は他の人間に教えてはいけないと言われてるんですけど……精霊薬は確かにエルフ王国に存在します。そして俺は薬がある場所を知っています」
「真か!?」
「本当ですか!?」
「はい。精霊薬は確かに世界樹の頂上部に封印されているはずです。前に一度だけ精霊薬を保存する場所に入った事があるんですけど、本来は王国の危機の際にしか訪れてはいけない場所なんです」
――エルフ王国の中心に存在する「世界樹」とは全長が1キロを軽く超える巨大な大樹であり、今尚も成長をしている。そして王国に住む森人族は世界樹の内部を掘って城の代わりに暮らしており、根本の周囲には街を形成していた。
勇者である直央は世界樹で召喚され、それ以降はずっと世界樹の中で暮らしていた。しかし、勇者と言っても直央はルノと違って常に誰かの監視下でしか行動できず、一時期は監禁に近い状態で暮らしていたという。だが、時間が経過すると徐々に直央は王国の森人族達と打ち解け、どうにか信頼関係を築いた。
だが、ある時に直央は偶然にも「精霊薬」の存在を知ってしまう。あらゆる病気、怪我、死人でさえも蘇生する事が出来る回復薬の存在を知った直央は本当にそんな物が存在するのかを自分の世話役である「リン」という将軍に尋ねた事がある。
『本当にどんな病気も治すことが出来る薬があるの?』
『はい。本来は森人族以外の種族には知らせてはならない事なのですが……直央様にはお話しします』
共にベッドで横たわって居たリンから聞いた話を直央は思い返し、精霊薬が現在は何処に存在するのかを口にした。
「ちょ、何してるんですかっ!?何事ですか?」
「おお、リーリスか……すまぬ、儂では止められなかった」
「どういう事です?ちょっと、離れて下さいよ!!」
「申し訳ありませんリーリス様……これは皇帝陛下の命令です。先帝様は地下牢へ送らねばなりません」
「地下牢!?どう言う事なんですか?」
兵士達に下がるように命じても彼等は言う事を聞かず、先帝を歩かせる。その光景を見て異常を察したリーリスと直央は彼等の後に続く。
「どういう事ですか?何があったんです!!」
「弟の……皇帝陛下の命令だ。軍隊が北原から戻ってくるまで儂は地下牢で監禁される事になる」
「そんな無茶苦茶な……!!」
「我々も本意ではないのです!!しかし、皇帝陛下の命令には逆らえません……!!」
皇帝の兄であり、先代の皇帝でもあるバルトスは民衆の支持や兵士達の人望は現皇帝よりも上である。しかし、バルトロス王国では皇帝の権力は絶対のため、いくら先代の皇帝であろうと逆らえる事は出来ない。
「自分の兄弟を地下牢に送るなんて……皇帝陛下は何を考えているんですか!!」
「貴様!!皇帝陛下を侮辱するか!!」
「止めよ!!ナオ殿は異国から訪れた人間、大目に見てやれ」
「は、はい……」
直央が我慢できずに皇帝の不満を口にすると兵士達が武器を構えようとするが、先帝がそれを抑える。これから地下牢に送り込まれるとはいえ、先帝の事を慕う人間は多い。しかし、皇帝が許すまで地下牢に投獄される事は間違いなく、もう皇帝を止める事は出来ない。
「すまないナオ殿……儂も説得をしたのだが弟の意思は固い。このままでは集めた軍隊は北原に向かってしまうだろう」
「そんな……」
「もう弟を止める事は出来ん。しかし、このまま見過ごせばとんでもない事態に陥る。下手をすれば巨人国を敵に回す事になるかもしれん。いや、もしかしたら他の国も……」
同盟国が危機であるというのに北原に軍隊を出兵させれば当然だが他の諸国から避難を浴びるだろう。巨人国は当然として巨人国と同盟国である獣人国も動き出し、風前の灯火のエルフ王国へも再び出兵する可能性もある。どうにか止めなければ帝国も危機に晒されてしまうが、今の先帝では皇帝を引き留める事は出来なかった。
「せめてジャンヌの容態が回復すれば希望はあるが……どうにもならんのかリーリス?」
「無理です。ユニコーンの一本角を欠片でもいいので集める事が出来れば精霊薬の調合に取り掛かれますが、その肝心のユニコーンが北原にいる以上はどうしようも……」
「ちょっと待って!!」
二人の会話を聞いていた直央が口を挟み、何事かと全員が彼に振り返る。直央は考え込むように顎に手を当てて何かを思い出したように呟く。
「精霊薬……エルフ王国の秘薬の事だよね」
「そうですけど……あ、そういえば直央さんはエルフ王国から来たんですよね!?」
「という事は精霊薬の在処を知っておるのか!?」
精霊薬は元々はエルフ王国が所有する希少な回復薬だが、エルフ王国に召喚された直央は精霊薬の在処を知っていた。
「知っています。本当は他の人間に教えてはいけないと言われてるんですけど……精霊薬は確かにエルフ王国に存在します。そして俺は薬がある場所を知っています」
「真か!?」
「本当ですか!?」
「はい。精霊薬は確かに世界樹の頂上部に封印されているはずです。前に一度だけ精霊薬を保存する場所に入った事があるんですけど、本来は王国の危機の際にしか訪れてはいけない場所なんです」
――エルフ王国の中心に存在する「世界樹」とは全長が1キロを軽く超える巨大な大樹であり、今尚も成長をしている。そして王国に住む森人族は世界樹の内部を掘って城の代わりに暮らしており、根本の周囲には街を形成していた。
勇者である直央は世界樹で召喚され、それ以降はずっと世界樹の中で暮らしていた。しかし、勇者と言っても直央はルノと違って常に誰かの監視下でしか行動できず、一時期は監禁に近い状態で暮らしていたという。だが、時間が経過すると徐々に直央は王国の森人族達と打ち解け、どうにか信頼関係を築いた。
だが、ある時に直央は偶然にも「精霊薬」の存在を知ってしまう。あらゆる病気、怪我、死人でさえも蘇生する事が出来る回復薬の存在を知った直央は本当にそんな物が存在するのかを自分の世話役である「リン」という将軍に尋ねた事がある。
『本当にどんな病気も治すことが出来る薬があるの?』
『はい。本来は森人族以外の種族には知らせてはならない事なのですが……直央様にはお話しします』
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