239 / 657
帝国の危機
自称「貧弱」の勇者
しおりを挟む
「それで……どうすればルノ君に会わせてくれるですか?」
「別に会わせないとは言いませんよ。ですけど、ルノさんは帝国の重要人物なんです。こそこそと屋敷に忍び込んで会おうとせずにちゃんと許可を取って下さいよ」
「そういう訳にもいかないんだよ……すぐにルノ君に伝えないといけない事があるんだ」
直央は沈痛な表情を浮かべてリーリスの言葉を拒否し、彼女がルノと会わせる気がないのならば立ち去ろうとする。しかし、みすみす直央を見逃すわけにはいかず、リーリスは彼を引き留めた。
「ちょっと待ってください!!別に会わせないとは言ってませんよ?だけど、私もルノさんを探しているんです。ここで何が起きたのか知っていますか?」
「そうなんですか?いや、俺がここに来た時はもう屋敷の中にルノ君は居なかったけど……」
「それはどれくらい前の時間ですか?」
「そんなに時間は経っていないはずだけど……10分ぐらい前?」
「という事は最低でもルノさんが抜けだしたのは最低でも10分前ですか……それだけの時間があればルノさんが手紙の場所に向かった可能性が高いですね」
「ぷるぷるっ……」
魔法を使用すれば音速を超えて移動出来るルノならば他の人間に相談せず、魔王軍が書き残した手紙の場所に移動している可能性も高い。すぐにでも追いかけたいところだが、生憎と普通の馬で移動すれば到着までに何日もかかってしまう。これまでの移動手段をルノに任せてばかりなのが災いし、リーリスは悔し気に爪を噛む。
「しまった……こんな事なら転移魔法でも研究しておけば良かったですね。私とした事が油断してました」
「どういう事?ルノ君はここにはいないの?」
「ああっ……まあ、多分ですけど割と早く戻ってくると思いますよ。ルノさんに勝てる存在なんてこの星に居るとは思いませんし……あっ、戻ってくるまでお茶します?」
「そんな悠長な事を言ってられないんだ!!」
「うわ、びっくりした!?もう、急に怒鳴らないで下さいよ……」
「あ、すいません……でも、本当に時間がないんです」
軽い様子でお茶を誘ってきたリーリスに対し、直央は怒鳴りつける。そんな彼の態度に疑問を抱いたリーリスは直央がこの屋敷に訪れた目的を問う。
「そういえばどうして直央さんはここに来たんですか?ルノさんの所に遊びに来たわけではないんですよね」
「ああっ……どうしてもルノ君に伝えたい事がある。だから俺はここに来た」
「話してくださいよ。何があったんですか?」
リーリスの言葉に直央は黙り込み、どのように話せばいいのか悩んでいる様子であり、そんな彼の態度に痺れを切らしてリーリスは転がっていた椅子と机を立て直して座り込む。
「ほらほら、遠慮せずに教えてくださいよ。あ、お茶飲みます?」
「なんで他人の家でそんなに態度偉そうなの……ここ、ルノ君の家なんだよね?」
「いいんですよ。私のルノさんの仲なんですから……何気に二か月ぐらいは寝食を共にするような仲なんですよ」
「え?そうなの?そういえば日の国に居た時も一緒の部屋に居たような……」
「ぷるぷるっ……」
直央は用意された椅子に座り込み、スラミンが何処からか水を入れたコップを差し出す。まさか他人の家でスライムにもてなされるとは思わなかった直央は戸惑うが、水を飲み干すと何処から話すべきか悩む。
「……話す前に軽く自己紹介をしませんか?俺は直央です。エルフ王国に召喚された一応は「勇者」です……そちらは?」
「どうも初めまして、私は帝国の開発部の所長兼帝国四天王の末席を任されているリーリスと申します」
「えっ……帝国四天王ってあの?」
帝国四天王の名前はエルフ王国でも有名であり、直央は自分と相対しているリーリスが予想以上に重要人物だった事に驚きを隠せない。だが、そんな彼の考えを読み取ったようにリーリスは補足する。
「まあ、将軍と言っても私は他の4人と比べて戦闘能力は劣りますので基本は後方支援に徹しています。なので戦闘方面では一度も役に立った事がありません!!逆に凄いでしょう?」
「それ、自慢する事じゃないと思うけど……というか、四天王なのに5人いるんですか?」
「ああ、このやり取りも懐かしいですね。ルノさんと最初に出会った時も同じことを言われましたよ。流石は同郷の人間ですね」
「そうなのか……いや、それはどうでもいいんですよ!!」
「ぷるるんっ……」
「ちょ、だから急に怒鳴らいで下さいよ。ほら、スラミンが怖がっちゃうじゃないですか」
「あ、ごめん……」
机の上のスラミンが直央の怒鳴り声を聞いてリーリスの元に移動し、ぷるぷると震える。その様子を見て直央は冷静さを取り戻し、本題に入る。
「……本当はルノ君に力を貸してもらいたかったけど、貴方が帝国の将軍なら伝えない訳にはいかない。今、エルフ王国では大変な事が起きているんです」
「エルフ王国が?それは聞き捨てなりませんね……何があったんです?」
帝国と双璧を為す強大国家として知られているエルフ王国が危機に瀕していると聞き、リーリスは詳細を尋ねる。
「別に会わせないとは言いませんよ。ですけど、ルノさんは帝国の重要人物なんです。こそこそと屋敷に忍び込んで会おうとせずにちゃんと許可を取って下さいよ」
「そういう訳にもいかないんだよ……すぐにルノ君に伝えないといけない事があるんだ」
直央は沈痛な表情を浮かべてリーリスの言葉を拒否し、彼女がルノと会わせる気がないのならば立ち去ろうとする。しかし、みすみす直央を見逃すわけにはいかず、リーリスは彼を引き留めた。
「ちょっと待ってください!!別に会わせないとは言ってませんよ?だけど、私もルノさんを探しているんです。ここで何が起きたのか知っていますか?」
「そうなんですか?いや、俺がここに来た時はもう屋敷の中にルノ君は居なかったけど……」
「それはどれくらい前の時間ですか?」
「そんなに時間は経っていないはずだけど……10分ぐらい前?」
「という事は最低でもルノさんが抜けだしたのは最低でも10分前ですか……それだけの時間があればルノさんが手紙の場所に向かった可能性が高いですね」
「ぷるぷるっ……」
魔法を使用すれば音速を超えて移動出来るルノならば他の人間に相談せず、魔王軍が書き残した手紙の場所に移動している可能性も高い。すぐにでも追いかけたいところだが、生憎と普通の馬で移動すれば到着までに何日もかかってしまう。これまでの移動手段をルノに任せてばかりなのが災いし、リーリスは悔し気に爪を噛む。
「しまった……こんな事なら転移魔法でも研究しておけば良かったですね。私とした事が油断してました」
「どういう事?ルノ君はここにはいないの?」
「ああっ……まあ、多分ですけど割と早く戻ってくると思いますよ。ルノさんに勝てる存在なんてこの星に居るとは思いませんし……あっ、戻ってくるまでお茶します?」
「そんな悠長な事を言ってられないんだ!!」
「うわ、びっくりした!?もう、急に怒鳴らないで下さいよ……」
「あ、すいません……でも、本当に時間がないんです」
軽い様子でお茶を誘ってきたリーリスに対し、直央は怒鳴りつける。そんな彼の態度に疑問を抱いたリーリスは直央がこの屋敷に訪れた目的を問う。
「そういえばどうして直央さんはここに来たんですか?ルノさんの所に遊びに来たわけではないんですよね」
「ああっ……どうしてもルノ君に伝えたい事がある。だから俺はここに来た」
「話してくださいよ。何があったんですか?」
リーリスの言葉に直央は黙り込み、どのように話せばいいのか悩んでいる様子であり、そんな彼の態度に痺れを切らしてリーリスは転がっていた椅子と机を立て直して座り込む。
「ほらほら、遠慮せずに教えてくださいよ。あ、お茶飲みます?」
「なんで他人の家でそんなに態度偉そうなの……ここ、ルノ君の家なんだよね?」
「いいんですよ。私のルノさんの仲なんですから……何気に二か月ぐらいは寝食を共にするような仲なんですよ」
「え?そうなの?そういえば日の国に居た時も一緒の部屋に居たような……」
「ぷるぷるっ……」
直央は用意された椅子に座り込み、スラミンが何処からか水を入れたコップを差し出す。まさか他人の家でスライムにもてなされるとは思わなかった直央は戸惑うが、水を飲み干すと何処から話すべきか悩む。
「……話す前に軽く自己紹介をしませんか?俺は直央です。エルフ王国に召喚された一応は「勇者」です……そちらは?」
「どうも初めまして、私は帝国の開発部の所長兼帝国四天王の末席を任されているリーリスと申します」
「えっ……帝国四天王ってあの?」
帝国四天王の名前はエルフ王国でも有名であり、直央は自分と相対しているリーリスが予想以上に重要人物だった事に驚きを隠せない。だが、そんな彼の考えを読み取ったようにリーリスは補足する。
「まあ、将軍と言っても私は他の4人と比べて戦闘能力は劣りますので基本は後方支援に徹しています。なので戦闘方面では一度も役に立った事がありません!!逆に凄いでしょう?」
「それ、自慢する事じゃないと思うけど……というか、四天王なのに5人いるんですか?」
「ああ、このやり取りも懐かしいですね。ルノさんと最初に出会った時も同じことを言われましたよ。流石は同郷の人間ですね」
「そうなのか……いや、それはどうでもいいんですよ!!」
「ぷるるんっ……」
「ちょ、だから急に怒鳴らいで下さいよ。ほら、スラミンが怖がっちゃうじゃないですか」
「あ、ごめん……」
机の上のスラミンが直央の怒鳴り声を聞いてリーリスの元に移動し、ぷるぷると震える。その様子を見て直央は冷静さを取り戻し、本題に入る。
「……本当はルノ君に力を貸してもらいたかったけど、貴方が帝国の将軍なら伝えない訳にはいかない。今、エルフ王国では大変な事が起きているんです」
「エルフ王国が?それは聞き捨てなりませんね……何があったんです?」
帝国と双璧を為す強大国家として知られているエルフ王国が危機に瀕していると聞き、リーリスは詳細を尋ねる。
0
お気に入りに追加
11,311
あなたにおすすめの小説


夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。