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外伝 〈一人旅〉
イレアの奥の手
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「これでどうだ!!」
『ぐうううっ……!!』
「やった!!」
無数の光球に囲まれた巨狼は徐々に縮小化し、やがて炎が消えて元の人間の姿へと戻る。それを確認したルノは掌を構え、風圧の魔法を放つ。
「風圧!!」
「ぐああっ!?」
「おっしゃあっ!!」
イレアの肉体が吹き飛ばされ、その光景に誰もが歓声を上げた時、イレアは最後の力を振り絞って背中に炎を纏わせた。
「まだだっ……!!」
「なっ!?」
巨狼の腕と化した炎がイレアの肉体を支え、ゆっくりと地面に着地させる。しかし、光球は未だに照らされているので黒炎の腕は即座に消失してしまい、大量の魔力を消費した影響なのかイレアの肉体がやせ細る。
「う、ぐうっ……」
「もう降参しろ!!その状態で何とか出来ると思っているのか?」
「は、ははははっ!!」
ルノの言葉にイレアは乾いた笑みを浮かべ、狂ったように笑い声をあげた。そんな彼女の姿に全員が戸惑うが、イレアは自分の懐からリディアに突き刺そうとした短剣を取り出し、胸元に突き刺す。
「ふんっ!!」
「なっ!?」
「何てことをっ!!」
イレアは短剣を自分の心臓に突き立てた姿に悲鳴が上がり、彼女は口元から吐血しながらも跪き、苦痛の表情を浮かべる。それでもルノを睨みつけ、最期に彼に一言だけ告げた。
「地獄を……味わえ」
「えっ……」
「う、おオァアアアアアアアッ……!!」
短剣から黒色の煙が舞い上がり、イレアの全身の皮膚が急速的に腐り果てる。それだけでは留まらず、イレアの肉体から先ほどの黒炎が纏まり、徐々に別の生物の形状へと変化する。
「何だっ!?何が起きてる!?」
「こ、こいつ……自分を死人にしたのよ!!」
「死人?」
「死霊使いの最終手段よ!!自分自身をアンデッドに変化させる禁断の秘術よ!!」
リディアの言葉にルノはイレアに視線を向けると、既に彼女は全身に炎を纏わせ、四つん這いの状態になっていた。光球の光を浴び続けているにも関わらず、炎は収まるどころか勢いを増しており、徐々に先ほどの巨狼へと変異しようとしていた。
『オォオオオオッ……!!』
「完全に理性を失っている……元に戻る方法はあるの?」
「な、何言ってんのよ!!この状況でもそいつを救うつもり!?もう無理よ!!死人となった人間は元に戻れないの!!」
「……そう」
ルノはリディアの言葉を聞いて悲し気な表情を浮かべ、やがて決意を抱いたように両手を構える。未だに叫び続けるイレアに対し、ルノはステータス画面を開いて強化スキル「紫電」を解放すると、囚人達を避難させる。
「離れてろっ!!巻き添えを喰らうぞ!!」
「は、はい!!」
「おい、逃げるぞ!!」
「ひいいっ!!」
これまでのルノの行動を見ていた囚人達は彼の言葉を聞いて一目散に距離を取り、その場から離れる。その光景を確認したルノは両手を構えたまま全身に紫色の電流を迸らせ、巨狼へと変化しているイレアに標準を定めた。
『ウガァアアアアッ――!!』
遂に完全な狼へと変化を果たしたイレアはルノに向けて襲い掛かろうとしたが、既にルノは迎撃の準備を済ませており、2つの強化スキルを解除させた状態で魔法を放つ。
「――紫電砲!!」
次の瞬間、ルノの掌から巨大な紫色の電撃が放たれ、巨狼の肉体を飲み込む。聖属性と雷属性の合成魔術を受けた巨狼は一瞬にして身体が灰と化し、更に後方100メートルに存在した物体を焼き尽くす。そのあまりの光景に囚人達は目を見開き、ルノは両手を降ろした時には前方100メートルの地面にクレーターが出来上がっていた。
「はあっ……はっ、ふうっ……」
流石にルノも疲労は隠せず、額に汗を流して跪き、周囲を照らしていた光球を掻き消す。その光景を建物の影から見て居たリディアは身体を震わせ、あまりの光景に股間が湿ってしまう。最も失禁をしたのは彼女だけではなく、他の囚人達も同様であり、間近でルノの魔法を見ていた人間達は無意識に失禁してしまう。
「す、凄すぎる……」
「何だよ今の……」
「ら、雷神だ……兄貴は雷神様の化身だ!!」
「やべえ……」
囚人達は怯えた表情を浮かべる一方、ルノはゆっくりと起き上がり、早急に帝国に戻らなければならない事を思い出す。イレアからもう少し情報が欲しかったが、贅沢は言っていられず、リディアに視線を向ける。
「リディア!!」
「は、はい!?何でしょうか!?」
名前を呼ばれたリディアは即座に返事すると、彼女の態度の変化にルノは戸惑うが、すぐに気を取り直して彼女に問い質す。
「今から俺は帝国に戻る……お前も来い。もう魔王軍に戻るつもりはないんでしょ?だったら包み隠さず魔王軍の情報全てを話してもらうから」
「分かりました!!何でも言う事を聞きます!!」
「えっ……?そ、そう……なんか偉く素直になったね」
リディアの変わりようにルノは困惑するが、彼女の力は必要なのは間違いなく、帝国に戻る準備を行う。
『ぐうううっ……!!』
「やった!!」
無数の光球に囲まれた巨狼は徐々に縮小化し、やがて炎が消えて元の人間の姿へと戻る。それを確認したルノは掌を構え、風圧の魔法を放つ。
「風圧!!」
「ぐああっ!?」
「おっしゃあっ!!」
イレアの肉体が吹き飛ばされ、その光景に誰もが歓声を上げた時、イレアは最後の力を振り絞って背中に炎を纏わせた。
「まだだっ……!!」
「なっ!?」
巨狼の腕と化した炎がイレアの肉体を支え、ゆっくりと地面に着地させる。しかし、光球は未だに照らされているので黒炎の腕は即座に消失してしまい、大量の魔力を消費した影響なのかイレアの肉体がやせ細る。
「う、ぐうっ……」
「もう降参しろ!!その状態で何とか出来ると思っているのか?」
「は、ははははっ!!」
ルノの言葉にイレアは乾いた笑みを浮かべ、狂ったように笑い声をあげた。そんな彼女の姿に全員が戸惑うが、イレアは自分の懐からリディアに突き刺そうとした短剣を取り出し、胸元に突き刺す。
「ふんっ!!」
「なっ!?」
「何てことをっ!!」
イレアは短剣を自分の心臓に突き立てた姿に悲鳴が上がり、彼女は口元から吐血しながらも跪き、苦痛の表情を浮かべる。それでもルノを睨みつけ、最期に彼に一言だけ告げた。
「地獄を……味わえ」
「えっ……」
「う、おオァアアアアアアアッ……!!」
短剣から黒色の煙が舞い上がり、イレアの全身の皮膚が急速的に腐り果てる。それだけでは留まらず、イレアの肉体から先ほどの黒炎が纏まり、徐々に別の生物の形状へと変化する。
「何だっ!?何が起きてる!?」
「こ、こいつ……自分を死人にしたのよ!!」
「死人?」
「死霊使いの最終手段よ!!自分自身をアンデッドに変化させる禁断の秘術よ!!」
リディアの言葉にルノはイレアに視線を向けると、既に彼女は全身に炎を纏わせ、四つん這いの状態になっていた。光球の光を浴び続けているにも関わらず、炎は収まるどころか勢いを増しており、徐々に先ほどの巨狼へと変異しようとしていた。
『オォオオオオッ……!!』
「完全に理性を失っている……元に戻る方法はあるの?」
「な、何言ってんのよ!!この状況でもそいつを救うつもり!?もう無理よ!!死人となった人間は元に戻れないの!!」
「……そう」
ルノはリディアの言葉を聞いて悲し気な表情を浮かべ、やがて決意を抱いたように両手を構える。未だに叫び続けるイレアに対し、ルノはステータス画面を開いて強化スキル「紫電」を解放すると、囚人達を避難させる。
「離れてろっ!!巻き添えを喰らうぞ!!」
「は、はい!!」
「おい、逃げるぞ!!」
「ひいいっ!!」
これまでのルノの行動を見ていた囚人達は彼の言葉を聞いて一目散に距離を取り、その場から離れる。その光景を確認したルノは両手を構えたまま全身に紫色の電流を迸らせ、巨狼へと変化しているイレアに標準を定めた。
『ウガァアアアアッ――!!』
遂に完全な狼へと変化を果たしたイレアはルノに向けて襲い掛かろうとしたが、既にルノは迎撃の準備を済ませており、2つの強化スキルを解除させた状態で魔法を放つ。
「――紫電砲!!」
次の瞬間、ルノの掌から巨大な紫色の電撃が放たれ、巨狼の肉体を飲み込む。聖属性と雷属性の合成魔術を受けた巨狼は一瞬にして身体が灰と化し、更に後方100メートルに存在した物体を焼き尽くす。そのあまりの光景に囚人達は目を見開き、ルノは両手を降ろした時には前方100メートルの地面にクレーターが出来上がっていた。
「はあっ……はっ、ふうっ……」
流石にルノも疲労は隠せず、額に汗を流して跪き、周囲を照らしていた光球を掻き消す。その光景を建物の影から見て居たリディアは身体を震わせ、あまりの光景に股間が湿ってしまう。最も失禁をしたのは彼女だけではなく、他の囚人達も同様であり、間近でルノの魔法を見ていた人間達は無意識に失禁してしまう。
「す、凄すぎる……」
「何だよ今の……」
「ら、雷神だ……兄貴は雷神様の化身だ!!」
「やべえ……」
囚人達は怯えた表情を浮かべる一方、ルノはゆっくりと起き上がり、早急に帝国に戻らなければならない事を思い出す。イレアからもう少し情報が欲しかったが、贅沢は言っていられず、リディアに視線を向ける。
「リディア!!」
「は、はい!?何でしょうか!?」
名前を呼ばれたリディアは即座に返事すると、彼女の態度の変化にルノは戸惑うが、すぐに気を取り直して彼女に問い質す。
「今から俺は帝国に戻る……お前も来い。もう魔王軍に戻るつもりはないんでしょ?だったら包み隠さず魔王軍の情報全てを話してもらうから」
「分かりました!!何でも言う事を聞きます!!」
「えっ……?そ、そう……なんか偉く素直になったね」
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